Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

戯れ言の饗宴

2014年10月26日 | 音楽
 東京オペラ・プロデュースの公演で「戯れ言の饗宴」La Cena delle Beffe。作曲者はウンベルト・ジョルダーノ(1867‐1948)だ。ジョルダーノというと「アンドレア・シェニエ」で知られている。「フェドーラ」も時々上演されている。でも、その他の作品はというと――。

 「戯れ言の饗宴」は1924年にミラノのスカラ座で初演された。トスカニーニが指揮をした。初演は大成功だった。カーテンコールは24回もあった(英語版のWikipediaより)。その後もニューヨークのメトロポリタン歌劇場など、各地で上演が続いたが、いつしか忘れられた。今回は日本初演だそうだ。

 あらすじを紹介しても仕方がないだろうが、一言でいうと、美女(そうとうな悪女だ)ジネーヴラをめぐる2人の男ジャンネットとネーリの怨念と復讐のドラマだ。プログラムに掲載された岸純信氏の解説によると、ヴェリズモの定義からは外れるそうだが、ともかく甘いメロディーと激情的なメロディーが満載の、コテコテのイタリア・オペラだ(たとえば第2幕のジネーヴラとジャンネットとの二重唱などなかなか魅力的だ)。

 演奏もよかった。ネーリを歌った村田孝高は、豊かな声と安定した歌い方で安心して聴けた。ジャンネットの上原正敏は、時々、声の限界までいくことがあり、ハラハラしたが、それはいいとして、演技に物足りなさが残った。ジネーヴラの翠千賀は、どういうわけか印象が薄かった。でも、皆さん頑張っていたので、拍手だ。

 今回はとくにオーケストラに感心した。時任康文指揮の東京オペラ・フィルハーモニック管弦楽団。オペラ的な(オペラの感興に溢れた)演奏だった。臨時編成のオーケストラかもしれないが、オペラを楽しむに不足はなかった。

 一つだけ注文を付けさせてもらうなら、照明に品がなかった。安キャバレーのような照明だった。残念ながら、公演全体のイメージを損なった。

 それにしても、東京オペラ・プロデュースは頑張っている。新国立劇場が名作路線を邁進し、東京二期会と日本オペラ振興会(藤原歌劇団)もリスクはあまり取れないと思われる現状で(もっとも、東京二期会は演出で頑張っていることは特筆すべきだ)、東京オペラ・プロデュースはレアな作品を丹念に取り上げている。もしも東京オペラ・プロデュースがなかったら、東京のオペラシーンはずいぶん寂しくなるだろう。
(2014、10.26.新国立劇場中劇場)
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