Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

デュトワ&N響

2009年12月14日 | 音楽
 N響の12月定期は‘名誉芸術監督’のデュトワの指揮。すでにAプロとCプロが終わっているので、その感想を。

 Aプロは次のような曲目。
(1)ストラヴィンスキー:バレエ音楽「アゴン」
(2)ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番(ピアノ:キリル・ゲルシュタイン)
(3)R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」(チェロ:ゴーティエ・カプソン、ヴィオラ:店村眞積)

 「アゴン」は、シェーンベルクの没した後に、ストラヴィンスキーが書いた音列技法による曲の一つ。デュトワの指揮は、最初の2つの部分はアグレッシヴな演奏、最後の3つ目の部分は、見知らぬ世界に分け入ったような戸惑いが広がるもの。これは、この曲のイメージ通りの表現。
 ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第2番は、とくに両端楽章で指揮者とピアニストが容赦なくテンポを上げ、オーケストラもそれにぴったりついていくスリリングな演奏。
 交響詩「ドン・キホーテ」は、今になってみると、なぜか印象が薄い。

 Cプロは次のような曲目。
(1)チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン:アラベラ・美歩・シュタインバッハー)
(2)ヤナーチェク:グラゴル・ミサ曲(4人の独唱、合唱、オルガンが加わるが、煩瑣になるといけないので、個々の名前は省略する。)

 アラベラ・美歩のヴァイオリンは、堂々と構えた演奏。第3楽章では意識して荒々しい表現に努めていた。この曲にはどこか崩れた演奏を求めたい気がするが、そういう演奏ではなかった。アンコールにクライスラーを1曲。
 グラゴル・ミサ曲は、オーケストラが明るく輝かしい音で鳴っていて、目の覚めるような思いがした。こういう演奏をきいていると、N響は世界でも一流の力を潜在的にもっていることがわかる。
 なお、この曲にはその前作の「シンフォニエッタ」との共通項がある。それは以前から感じていたが、今回の演奏では、生命の賛歌という意味で「利口な女狐の物語」と共通するものを感じた。この曲はあの色彩豊かで肯定的な音楽が――宇宙的な規模で――拡大された音楽ではなかろうか。

 今年ももう終わりだが、数えてみると、N響の定期は8回きいた。その中ではデュトワ指揮の今回が一番本気になっていると感じた。
(2009.12.05(Aプロ)&12(Cプロ).NHKホール)
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