先日、NHK・BSで、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の「ニュー・シネマ・パラダイス」完全オリジナル版を見ました。この作品の日本初公開は1989年、その年の外国映画ベストワンに選んだことを覚えています。シチリアに住む映画少年トトと、映画館パラダイス座の映写技師アルフレードとの友情と映画への愛。なによりも、第2次世界大戦直後の、映画きり娯楽がなかった頃の情景が懐かしい。映画館に集まっては、笑いさざめき、涙を流す人々や子供たち。セリフを全部覚えているおじさんや、映画館に寝に来る人もいる。中でも、映画館に入場できない人々のため広場の建物の壁に映写するくだりや、屋外劇場でカーク・ダグラス主演「ユリシーズ」がイタリア語吹き替えで上映されるくだりが楽しい。
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ぼくが映画を意識して見始めたのも、戦後の小学生時代。まずは学校の課外授業の形で、映画館で映画鑑賞の時間がありました。記憶しているのは、ディズニー・アニメ「白雪姫」(38年)や「ダンボ」(41年)、戦災孤児を主人公にした日本映画「鐘の鳴る丘」シリーズ(48~49年)など。まさにパラダイス座の観客そのままに、ぼくら生徒は映画を見て泣き、笑いました。ひとりで映画を見ることを許されたのは中学時代。土曜日の午後になると隣町まで行き、主にアメリカ映画を見る。ジュディ・ガーランド主演のミュージカル「スタア誕生」(54年)を見に行ったとき、映画館は超満員で客がドアからはみだしている。大人たちの肩越しにしか見られず、くやしいので2本立ての作品をもう一回見て、最終回にやっとまともに「スタア誕生」を見た。おかげで帰宅が夜の9時頃になって、親に叱られました。「ニュー・シネマ・パラダイス」を見ると、そんな映画少年時代が思い浮かびます。
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今回放映された完全オリジナル版、ディレクターズ・カット版では、著名な監督になったトトがシチリアに戻り、初恋の人エレナに再会するくだりが付け加えられている。中年のエレナを演じるのは、「禁じられた遊び」(52年)で可憐な少女ポーレットに扮したブリジット・フォッセー。このエピソードは余計で、89年公開版の雰囲気をこわすという評価もあるけれど、そうかな? これは、映画界のエライさんになったトトの、エゴイスティックな感傷。映画少年の未来に待ちかまえていた、唯一残された純粋な思い出。それにしても、戦争直後、司祭にキスシーンやラブシーンやヌードシーンのカットを命じられ、映写技師がフィルムにしおり(紙切れ)を挿入する場面は、おかしかった。カットされた場面を見て、また観客が大騒ぎ! 日本でも、戦中や戦後には同様なことが行われていました。
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