秋、江別祭も終わりました。
日ごと足早に秋色が濃くなりました。
吹く風も、夏の疲れに気怠く通り過ぎていきました。
9月末になると、わずかな新田にも稲穂が満ちていきました。
金色に輝きながら目礼する稲穂と、しら茶けてきた留葉の葉先が、田をわたる秋風に一斉にふるえ、一斉にとまりました。
倒伏の凹みで巻いた風が、たわわに実った稲の芳しい匂いをすくい、農夫の胸の底に落としました。
藁葺きの納屋のまわりは、セイタカアワダチ草が生い茂り、その足許には薄紫色の野菊が密生していました。
西日に銀色に輝くススキの中のハサ木につながれた馬が、驚いたように嘶きました。
もうじき陽は、北日本製紙株式会社江別工場の煙突の向こうに隠れるところです。
煙突の背の陽は、紅に燃え、穏やかな秋風がわたる頭上は、海藻の陰に見え隠れする桃色の珊瑚のように、一刷毛、うっすらと染まっていきました。
やがて、北東からの風が、唐萁口の開拓地を襲うでしょう。
体の芯が凍る程冷たい風の季節の到来です。
時雨がきて、氷雨がきて、翼となり、そして幾日も雪が降り続き、幌向原野は白一色に埋め尽くされます。
春の土埃りと夏の水、そして冬の雪との年々が、開拓民の年々を染め上げていくのです。
註:江別市総務部「えべつ昭和史」453-454頁.
写真:豊幌の開拓地
同上書453頁掲載写真を複写し、当ブログ掲載いたしております。