デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

摩訶不思議な共演、カテリーナ・ヴァレンテとチェット・ベイカー 

2017-05-07 09:49:12 | Weblog
 騙された!と言ってもネット通販詐欺や薄野の阿婆擦れに引っかかったわけではない。何か掘り出し物はないかとCD店の棚を漁っているうち「Caterina Valente & Chet Baker」を見付けた。情熱の花とクールな優男の共演がCD化されたとの記事があったのを思い出した。そうか、これか。曲名を確かめようと裏ジャケットを見たが、老眼では読み取れない小さな字が並んでいる。眼鏡ケースを開けるも中身は空だ。この歳になるとよくある失敗だ。

 デジパックの内側には服装の違うツーショット写真が2枚ある。数日かけてレコーディングしたのだろうか。何せ25曲も収録されているのだ。まず、アルバムタイトルになっている「I'll Remember April」から始まる。ギターの短いイントロから少しフェイクをかけながら歌い出す。これはいいぞ。ベイカーがオブリガードを入れる。ベイカーのソロではカテリーナがハミングをはさむという洒落た仕掛けだ。「愛し合った4月の想い出があるから秋の寂しさも恐くない」という失恋の歌だが、ジーン・ポールの書いたメロディーが飛び切り美しいので、カテリーナは楽しかったことだけを想い出したようだ。

 そして、オーケストラをバックにした「I Get A Kick Out Of You」。カテリーナが元気良くキックするもベイカーが出てこない。次の曲はベイカーの独り舞台で、その次はカテリーナ、またベイカーといった並びで、結局15曲目に入っている「Every Time We Say Goodbye 」まで共演はない。ラストのボーナストラックでベイカーが歌っているのだが、後からかぶせたようなカテリーナの声が入っている。ありがたくないボーナスだ。このジャケットを見る限りはアルバム丸ごと共演しているように見える。クレジットをよく確かめなかった小生のミスなのだが、単独の音源もあまり見栄映えしないので尚更釈然としない。

 騙すつもりでジャケットを作ったわけではないだろうが、少ない音源をレコード化するときはカップリングが多く、紛らわしい。多くのジャズリスナーが共演していると勘違いするのがマイルスとモンクのニューポート盤だ。同じニューポート盤でも秋吉敏子とレオン・サッシュは別物の判断が付くが、マイルスとモンクは共演歴があるだけにソロの応酬が聴けるかも知れないと錯覚する。こちらは内容がいいだけに文句を言えない。
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする