先週21日に観測された幻想的な金環日食をご覧になっただろうか。天文学の進歩で100年先まで観測地と年月日まで計算されているとはいえ、天候に恵まれなければ見ることができないのでこの天体ショーに出会うのは奇跡といっていい。首都圏で見られるのは173年ぶりというから計算した天文学者でさえ日本で目の当たりにするのは初めてだろう。ここ札幌では部分日食だったが、早朝から多くの方が空を見上げていた。
日食ときいて取り出したのはトミー・フラナガンの「エクリプソ」だが、よくタイトルを見ると「Eclypso」で、日食の意味である「Eclipse」とは少し違っている。ならばビリー・コブハムの「Total Eclipse」に変更しようとも思ったが、既にレコードがターンテーブルに乗っているので今週はこの名盤にしよう。フラナガンと親交がある寺井珠重さんによるとフラナガンの代表曲でもある「エクリプソ」は、「Eclipse」と「Calypso」を合わせた造語だという。一種の言葉遊びだが、日食を思わせる神秘的なメロディとカリプソのリズムが溶け合った曲に相応しいタイトルで、タイトルひとつにもフラナガンの思い入れがあるのだろう。
77年の録音でエルヴィン・ジョーンズが参加していることから57年の大名盤「オーヴァーシーズ」を思い起こさせるが、よくありがちな焼き直しではない。トップは数あるロリンズのオリジナル曲でもバップの風味が強い「オレオ」で、流麗なタッチに加え鍵盤の奥から響き渡る低音がツボを刺激し、えも言われぬ快感が襲ってくる。マイルスが異なるフォーマットで何度も録音しているが、編成を変えてまで挑みたくなるのがこの曲の奥深いところだ。それを最小のピアノトリオで最大の表現をできたのは、「サキソフォン・コロサス」でロリンズと共演したフラナガンが作者の意図を汲んでいたからに違いない。
今年は天体ショーがいくつか発生する当たり年だそうで、6月には金星の日面通過が見られるという。この現象が次に観測できるのは105年後というからまさに世紀の天体ショーである。100年に一人しか現れないフラナガンやロリンズと同じ時代を生きている我々はよほど恵まれているのだろう。そして100年に1枚の傑作「オーヴァーシーズ」と「サキソフォン・コロサス」を聴けるのは奇跡かもしれない。
日食ときいて取り出したのはトミー・フラナガンの「エクリプソ」だが、よくタイトルを見ると「Eclypso」で、日食の意味である「Eclipse」とは少し違っている。ならばビリー・コブハムの「Total Eclipse」に変更しようとも思ったが、既にレコードがターンテーブルに乗っているので今週はこの名盤にしよう。フラナガンと親交がある寺井珠重さんによるとフラナガンの代表曲でもある「エクリプソ」は、「Eclipse」と「Calypso」を合わせた造語だという。一種の言葉遊びだが、日食を思わせる神秘的なメロディとカリプソのリズムが溶け合った曲に相応しいタイトルで、タイトルひとつにもフラナガンの思い入れがあるのだろう。
77年の録音でエルヴィン・ジョーンズが参加していることから57年の大名盤「オーヴァーシーズ」を思い起こさせるが、よくありがちな焼き直しではない。トップは数あるロリンズのオリジナル曲でもバップの風味が強い「オレオ」で、流麗なタッチに加え鍵盤の奥から響き渡る低音がツボを刺激し、えも言われぬ快感が襲ってくる。マイルスが異なるフォーマットで何度も録音しているが、編成を変えてまで挑みたくなるのがこの曲の奥深いところだ。それを最小のピアノトリオで最大の表現をできたのは、「サキソフォン・コロサス」でロリンズと共演したフラナガンが作者の意図を汲んでいたからに違いない。
今年は天体ショーがいくつか発生する当たり年だそうで、6月には金星の日面通過が見られるという。この現象が次に観測できるのは105年後というからまさに世紀の天体ショーである。100年に一人しか現れないフラナガンやロリンズと同じ時代を生きている我々はよほど恵まれているのだろう。そして100年に1枚の傑作「オーヴァーシーズ」と「サキソフォン・コロサス」を聴けるのは奇跡かもしれない。