デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

アダムのブルース

2006-01-29 13:19:50 | Weblog
 007のジェイムズ・ボンド・シリーズは小学生の頃から欠かさず観ている。何といっても最新兵器搭載の車と、ボインガールではなく、ボンドガールが魅力だ。当時読んだ映画雑誌に作者のイアン・フレミングが、「生まれ変われるものなら、サミー・デイヴィス・ジュニアになりたい」という記事が載っていた。その頃はサミーの事は知らなくて、一体どんな人なのだろうと思った。数年後にサミーが出演している映画を観てイアン・フレミングの言葉に頷いた。

 昨年、友人から観た事がなかったサミー主演のビデオ「アダムのブルース」を送って頂いた。ジャズ映画でサブ・タイトルは「天才トランペッターの愛と挫折」。監督はレオ・ペン、因みに俳優ショーン・ペンの父親、因みにショーンの最初の妻はマドンナ、因みに・・・切りがないなぁ。(笑)キャストは勿論シナトラ一家で、シナトラ・ジュニアやピーター・ローフォードが出演している。そういえばジャイムズ・スパダ著の「ケネディ兄弟とモンローの秘密を握っていた男 ピーター・ローフォード」という長いタイトルの本は面白かった。(また脱線)

 劇場未公開のB級作品なのだろうが、ジャズファンにとっては超A級作品。サッチモは出てくるし、メル・トーメも出てくる。おまけに吹き替えはナット・アダレイやら、ハンク・ジョーンズ、フランク・ウェス。たまりませんね。さて、さて、極めつけはサミーの恋人役を演じているのが何とシシリー・タイソン。知らないとは言わせませんぞ、マイルス・デイヴィスの「ソーサラー」のジャケットに彼女のポートレイトを使っているではありませんか。そうです、マイルスの4番目の奥様なのです。演技の程は?観てのお楽しみです。

 マイルスとシシリーが知り合ったのは「ソーサラー」が録音された67年頃で、結婚したのは14年後の81年。シシリーはこの間マイルスにどのような演技をしていたのでしょうね。「アダムのブルース」は66年製作なのだが、翌年劇中で演じた役が現実になるとはシシリーも驚いただろうなぁ・・・それも挫折を知らない帝王マイルスだ!
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ある夜、クラブで

2006-01-22 10:53:00 | Weblog
先日、取引先と打ち合わせを兼ねた飲み会があり、二次会にクラブに誘われた。普段薄い財布と相談しながら、場末の半分行灯が切れた居酒屋にしか縁がないので喜んで同行した。クラブとはいっても田舎の事、銀座のクラブのようにフワフワした絨毯が敷かれているわけでもないし、飛び切りの美女がいるわけでもないが、酔いと照明と化粧で美しく見える女性に囲まれ楽しいひと時を過ごした。

 昨年の日本版プレイボーイ誌でビル・エヴァンスの特集をしていた。男の悲しい性(さが)で、グラビアページを丹念に捲り、エヴァンス特集を見たのは結局最後だった。(笑)このページでクリスチャン・ガイイ著の「ある夜、クラブで」という本が紹介されていた。装丁に「ワルツ・フォー・デビー」のジャケット写真を使っていて、ジャズファンなら思わず手に取りたい一冊。よくレコードやCDを中身度返しでジャケットに惹かれて買うのを「ジャケ買い」という。小生は本をよく装丁に惹かれて買うが、これを「想定外」という。先週は強制捜査が想定外の人がいましたね。

 内容はクラブでの出会いから始る大人の恋愛小説で、エヴァンスをモデルにしたような主人公が登場する。主人公の名がシモン・ナルディスにデビー、ジャズクラブのシーンではスコットというベーシストやポールというドラマーが出てくる。エヴァンス・ファンをにやりとさせる名が並ぶ。大人の恋をしている貴方、または疑似体験をしたい貴女にお薦めの一冊です。

 先日のクラブでは、小説のような出会いは当然なく、店内も混んできたので退散することにした。勘定を済ませた先方のために小生がドアを開けると、4、5人の若者が挨拶なしに入ってきた。無礼な輩がいたもんだ。自動ドア以外、自分でドアを開けなくて済むのは銀座のクラブと、刑務所の中だけだ。どちらも入ったことはないが・・・念のため。
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ジス・イズ・ホンダ

2006-01-15 10:47:25 | Weblog
 平岡正明さんの77年の著書「戦後日本ジャズ史」の一節に、『彼は口数のすくない男だ。口数はすくないが、登場した瞬間から、ピアノに向って、自分はなぜジャズをやるのかをいつも問いつづけてきたようにきこえる。それが彼のジャズの志の高さであり、一貫して変わることがない。』と書かれている。

 クラシックを捨ててジャズの道に進んだ人は多い。一度ジャズの麻薬的魅力を知ってしまうと、より黒人のブルース感覚に近づこうとする。彼も若い頃、より黒っぽい音を探していた。ライブ後の打ち上げで彼が、「昔、俺の感覚は黒人にかなり近いと思っていた。けれど俺どうしようもなく日本人だしさ。黒人になろうなんてのはとっくに卒業したね。」と優しく笑っていたのは97年の夏だった。

 13日に友人からのメールで、彼、本田竹広さんの死を知った。本田さんの演奏を最後に聴いたのは、01年のトリオ。この時は体調も良く、回復に向かっていただけに残念だ。97年には当地でスリー・デイズ・ソロ・ライブを開いた。透析を続けながらのライブで、三日に渡って病を撥ね付ける熱い音に酔った日を思い出す。新宿ピットインで何度も演奏したであろう「ボヘミア・アフター・ダーク」を、小生のリクエストに応えてくれた。黒人ではなく日本人の、そして本田さん自身の自信溢れるフレーズに唸った。

 零れ落ちそうになる涙を堪えて、黒人になろうというのを卒業する前の「ジス・イズ・ホンダ」に静かに針を下ろしてみよう。クラシックを捨てた彼の、より黒っぽいフレーズが、あの優しい笑顔と共に甦ってくる・・・合掌
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ミッドナイト・ジャズ・レポート

2006-01-08 17:12:59 | Weblog
 ジャズを聴き始めの中高生の頃、「ミッドナイト・ジャズ・レポート」というラジオ番組を毎週欠かさず聴いていた。確か日曜日の深夜12時頃放送の30分番組だったと思う。ゲイリー・マクファーランドの『アンド・アイ・ラブ・ハー』のテーマ曲に乗せて女性DJが、タイトルをハスキーな声で囁く。大人のジャズの世界を垣間見るようで、平凡パンチのグラビア(笑)を見るくらいにドキドキした。提供がポリドール・レコードで、当時発売権を有していたヴァーヴの新譜中心だった。オスカー・ピーターソンやビル・エヴァンス、スタン・ゲッツ、初めて聴くジャズに夢中になっていた。

 番組の最後にブラインド・フォールド・クイズがあった。目隠しでレコードを掛けて、演奏しているプレイヤーを当てるというクイズだ。音源が豊富なヴァーヴだけに、聴き始めの小生では、さっぱり判らぬプレイヤーばかりだった。無謀な事に毎週、頓珍漢な答えを葉書で送っていた。正解できたのは5通に1通位の割りで、小生でも当てれるプレイヤーは当然正解率が高く、レコード券は一度も当った事はない。

 番組の最終回だったのだろうか、一番正解率が高い人をスタジオに招き、打付本番でブラインド・クイズをしたことがある。放送だと録音しておいて何度も聴いて回答を出すこともできるが、スタジオだとそうはいかない。招かれた方のお名前も、その時の出題も忘れてしまったが、小生では全く見当も付かないプレイヤーを、いとも簡単に当てたのには喫驚した。

 この世界出題者といい、正解者といい、ジャズを聴く以外何もしていないのではないかと思えるような人がいることを知った。
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ご挨拶

2006-01-02 14:42:15 | Weblog
はじめまして、自称及び他称、超絶変態ジャズマニアのデューク・Mです。どうぞ宜しくお願い致します。

昨年までメール・ジャズ・マガジン『デューク・アドリブ帖』のタイトルで配信していたブログ版です。ジャズを中心に政治・経済・哲学・文学・宗教・芸術・風俗等の話題をオールドタイム&タイムリーに展開していきます。

独断と偏見と毒舌に満ち溢れておりますが、それはジャズへの超絶変態的な愛情によるものです。

公開日記のようなブログですが、毎日更新できません。メルマガ同様、毎日曜日アップの週記の予定です。時折ご覧頂ければ幸いです。
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