デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ベイシーとヘフティのペッパーミルパフォーマンス

2023-04-02 08:38:50 | Weblog
 北海道日本ハムファイターズの本拠地である新球場「エスコンフィールド北海道」が開業した。2020年に着工した時から当地のメディアで度々報道されていたのでイメージはできていたものの完成すると驚くことばかりだ。今までの球場づくりの概念を超えている。各地の名店が並ぶ飲食スペースにクラフトビール、温泉、サウナ、ホテルまである。これだけ揃っていると試合のない日や、野球に興味がない人も楽しめるだろう。

 数ある野球に因んだジャズアルバムの中から「Basie Plays Hefti」を選んだ。ジャケットをよくご覧になってほしい。ベイシーとヘフティの手元にご注目。ワールド・ベースボール・クラシックで優勝した我らが侍ジャパンのメンバーにヌートバー選手がいる。彼が始めたペッパーミルパフォーマンスをしているではないか。胡椒を挽くようなポーズはセントルイス・カージナルスではお馴染みというからビッグ・バンドの神様とアレンジの才人はこのチームを贔屓にしていたのかもしれない。50年間このジャケットを見てきたが気付かなかった。新発見だ。

 エリントン楽団とビリー・ストレイホーン、ベニー・グッドマン楽団とフレッチャー・ヘンダーソン、スタン・ケントン楽団とピート・ルゴロ、ドン・エリス楽団とハンク・レヴィ等々、名アレンジャーがいた時期に最高の演奏を残している。ベイシー楽団とヘフティ然りである。二人が最初に組んだのは「Atomic Basie」で、「Li'l Darlin'」が収録されているのでホームランアルバムだが、この「ペッパーミルのベイシー」もスリーベース・ヒットの迫力がある。余談になるがこの野球ジャケットはどの地域のジャズ喫茶でもかかるが、「Atomic Basie」は広島県と長崎県の店には置かれていない。

 試合終了後、3万人の観客が一斉に球場を出る。シャトルバスやタクシーを待つ長い行列、駐車場から出られない車、最寄りのJR北広島駅まで延々と続く人波、球団もシュミレーションしていただろうが、恐らくは想定外だ。混雑を避けるため試合途中で帰る人が増えると選手の覇気も失われる。早急な対策が必要だ。勝っても負けてもゲームセットまで全力で応援したい。

映画 BLUE GIANT でかかったソニー・スティット

2023-03-19 08:48:24 | Weblog
 ジャズを題材にした細野不二彦の「Blow Up! 」は熱心に読んだので、コミックは嫌いではないが最近はほとんど見ない。「BLUE GIANT」が映画化されたのをジャズ誌で知ったものの原作を読んだことがないし、アニメも苦手なのでスルーしていたが、ジャズ仲間が挙っていい映画だと言うので早速観た。昔の「鉄人28号」や「鉄腕アトム」の記憶しかないだけに綺麗な絵とスムーズな動きに驚いた。

 何より演奏内容が素晴らしい。上原ひろみが書いた楽曲はライブ毎にその会場で映えるように作られている。テナーの馬場智章は札幌出身で当地で聴いたこともあるが一段と成長していたし、石若駿は劇中のドラマーの上達に上手く合わせていた。最近はレコードが見直されているが、そんなファンがニヤリとするシーンがある。主人公が上京してふらりと入ったジャズバーで、ママが壁の引き戸を開けるとレコードがずらりと並んでいるのだ。5メートル、5段、推定5000枚、その中から選んだ一枚は・・・

 ソニー・スティットのジャズランド盤「Low Flame」で、ラベルがオレンジのモノラル盤だ。ジャズランドはリバーサイドの再発がメインのレーベルだが、このアルバムはオリジナル録音である。以前、拙ブログで話題にしたが、スティットはリーダーアルバムを作るのが趣味の人で、その数は優に100枚を超える。かつてSJ誌でディスコグラフィーを掲載していたが、抜けているものが多数あった。その多作の中からマニアックな1枚を選んだのは作者の石塚真一が攻めのアルトとテナーの寛ぎがお気に入りなのだろう。

 平日の昼間の上映なのにやたらと混んでいた。2月17日に封切され、一か月以上経った今も上映中だ。アニメ映画ファンや原作者の画が好きな方、人気俳優が声優を務めているのでそれが目当ての人もいるかもしれないが、多少ともジャズに興味がなければ観ない映画だ。ここからジャズミュージシャンを目指したり、ジャズクラブやジャズ喫茶の扉を開ける人が増えると嬉しい。ジャズはスゲー熱くて激しい・・・劇中のセリフだ。

ウェイン・ショーターをリアルタイムで聴いた半世紀

2023-03-12 08:28:55 | Weblog
 3月2日に89歳で亡くなったウェイン・ショーターを最初に聴いたレコードはどれだったろうかとジャズを聴き始めた55年前に想いをめぐらす。田舎のジャズ喫茶もどきにリーダーアルバムはなかったので、メッセンジャーズの「Caravan」か、マイルスの「ESP」だ。それまでに聴いた力強いロリンズや激しいコルトレーンとは違い謎めいた印象だった。

 東京の本格的ジャズ鑑賞店で Vee Jay 時代の59年録音「Introducing」から「Wayning Moments」、そしてブルーノート時代64年の三部作「Night Dreamer」、「JuJu」、「Speak No Evil」と足跡を追うように聴いた。多彩な曲作りに圧倒される。続けて「The All Seeing Eye」、「Adam's Apple」、「Schizophrenia」。何かに憑りつかれたのか雰囲気が変わってきた。そしてリアルタイムで体験した69年録音の「Super Nova」。前作までのオカルティズムは消え、進む方向が変わったのを感じた。ソプラノ・サックスという天使の笑い声にも悪魔の囁きにも聴こえる音色がそう思わせたのかも知れない。

 2007年に「Super Nova」を拙ブログで話題にした。当時はコメント欄でベスト3企画を展開していて、多くの投票からトップに挙がったのは74年録音の「Native Dancer」だ。ウェザー・リポート在籍中の作品で、「ブラジルの声」と呼ばれるミルトン・ナシメントと組んでいる。美しい歌声とショーターの悟りの境地ともいえる深い音とフレーズが見事に調和した芸術性の高い作品だ。盟友のハービー・ハンコックが参加していてマイルス・バンドで切磋琢磨していた頃を彷彿させる。この時代のショーターにとって「動」がWRなら「静」がこのアルバムといえよう。

 80年代後期には「Atlantis」、「Phantom Navigator」、「Joy Ryder」と意欲的な作品を次々とリリースし、1995年の「High Life」はグラミー賞の最優秀コンテンポラリー・ジャズ・パフォーマンス賞に輝いている。2013年に発表した「Without A Net」は何と80歳。そして遺作となった「Emanon」まで常に進化していた。稀代のジャズ音楽家と同じ時代を過ごしたことに感謝したい。

世界最高のドラマーを生涯支えたケイコ・ジョーンズ

2023-03-05 08:30:27 | Weblog
 ジャズ誌で忘れかけていた名前を見ることがある。一時は死亡説まで流れたジャッキー・マクリーンの5年ぶりの新作「Live At Montmrtre」とか、収監、入院を繰り返して半ば引退状態のアート・ペッパーが、「Living Legend」で復帰したという嬉しい話題もあったが、大抵は訃報である。今回もそれだ。ケイコ・ジョーンズが昨年9月に亡くなっていたことを知った。

 ツーショットのジャケット「Poly Currents」も、「Coalition」も、「Keiko’s Birthday Song」が収められた「Puttin' It Together」も久しく聴いていない。一度会ったことがある。正確に言うとライブ会場ですれ違っただけなのだが、印象は強かった。ウィントン・マルサリスとマッコイ・タイナーが参加した97年の「Tribute to John Coltrane : A Love Supreme」である。日本人離れの派手な服装の女性がスタッフ数名を従えて会場を歩いていた。立ち見も出るほどの盛況ぶりを見にきたのだろうか。数メートル手前からシャネルの香水が匂う。

 「Coalition」は70年録音のブルーノート盤で、ジョージ・コールマンとフランク・フォスターの2テナーにウィルバー・リトルのベース。このメンバーだけでかなり強烈なのだが、さらにコンガのキャンディドが参加してポリリズムを全面に打ち出した作品だ。トップに収められている「Shinjitu」はケイコ作で、エルヴィンのドラミングがより映える曲だ。生で見たエルヴィンは全身バネで、スティックを止めようにも止まらない。そして一体腕が何本あるのかと思うほどの複雑な音。フロントを煽るバスドラムとハイハット。楽器のセッティングはケイコというから驚きだ。

 ケイコはライブ前にステージに上がり、メンバーの紹介とエルヴィンの偉大さを語るのが習わしだ。10分を越える長話に「エルヴィンは世界最高のドラマー」とうフレーズが何度も出てくる。当時は退屈したトークも今となれば懐かしいし、鼻に残る強烈な香水もいい思い出だ。世界最高のドラマーを生涯支えた日本人。享年85歳。合掌。

敬称略

キャロル・スローンの美乳

2023-02-05 08:14:25 | Weblog
 訃報なのにこのタイトルは何だ!と熱心なキャロル・スローンのファンから怒られそうだが、彼女の名前を聞くと数々の名盤や個性際立った名唱よりも先に浴衣から開けたおっぱいポロリの写真を思い出す。77年来日時にレコーディングスタジオで、写真家の阿部克自氏が撮ったものだ。氏の著書に載っているのでご覧になった方もあろう。

「Out Of The Blue」は61年に録音された公式デビュー盤だ。この時24歳だが堂々としていて、ボブ・ブルックマイヤーにクラーク・テリー、ジム・ホールという名手をバックにしても引けを取らない。「Prelude To A Kiss」に「Will You Still Be Mine」、「Night And Day」とスタンダードが並ぶがどの曲も作者の意図を尊重した素晴らしい解釈といえる。なかでも「Little Girl Blue」は、同年のニューポート・ジャズ・フェスで歌いスタンディング・オベーションを受けた曲だ。このステージがきっかけでメジャーレーベルのコロムビアと契約を結ぶ。

 このアルバムに続いて「Live At 30th Street」を出したあと、75年に自費出版盤「Subway Tokens」を発表するまで不遇の時代を過ごす。当時コロムビアが売り出しに力を入れたのはバーブラ・ストライサンドとボブ・ディランだったので路線から外れたのだろう。そのブランクの間は米ダウンビート誌にレビューを書いていた。ライナーノーツの仕事が欲しくて駄作でも褒めちぎるどこぞの国のジャズ評論家と違ってズバズバ斬る。自身の耳とジャズ観に自信があるからだ。レビュアーは忖度するとジャズマンは伸びない。また一時期は法律事務所で秘書をしていたという才媛である。

 その写真の両脇には、鼻の下を伸ばしたローランド・ハナと谷間を覗き込むジョージ・ムラツがいる。何とも羨ましい。キャロルにも阿部氏にも許可を取れないので掲載できないが、まだの方は是非探してほしい。小生と同じように歌より先に美乳が浮かぶだろう。ジャズヴォーカルの深い味わいを教えてくれたキャロル・スローン。2023年1月23日没、享年85歳。合掌。

ジャズ喫茶「GROOVY」に飾られた3枚

2023-01-22 08:34:04 | Weblog
 札幌円山のジャズ喫茶「GROOVY」では、レコード棚の上部に月変わりで3枚のレコードジャケットが飾られる。月毎に共通したサムシングを並べたもので演奏内容ではなく、視覚に訴えるジャケットのデザインからマスターが厳選した3枚だ。常連客にとっては月初めに訪れたときの愉しみの一つだ。「これできたか」と唸ったり、「これがあったか」とニヤリとする。

 今年の1枚目はジョージ・ウォーリントンの「The Prestidigitator」だ。アトランティックの傍系レーベル「East-West」からリリースされたもので、J.R.モンテローズが一段と光る。注目すべきはズート・シムズやジェリー・マリガンと共演歴のあるジェリー・ロイドの参加だ。一聴トロンボーンかと思いきやバストランペットだ。低い音色で軽快に飛ばす。次にビヴァリー・ケニーのデッカ三部作の一番人気盤「Sings For Playboys」。エリス・ラーキンスとジョー・ベンジャミンのバックが可憐でハスキーな歌声を盛り立てる。必要以上の音を使わない歌伴の匠とはこれだろう。

 そして、ポール・スミスのタンパ盤「Fine, Sweet And Tasty」。オリジナルはスカイラーク・レーベルの10吋盤「Paul Smith Quartet」だが、タンパのオリジナル、レッドワックス盤も魅力がある。ルーシー・アン・ポークのバックで洒落たフレーズを刻んでいたトニー・リッツィに、トミー・ドーシーのトロンボーンを盛り立てたサム・シェフィッツのベース、レッキング・クルーのオリジナル・メンバーのアーヴ・コットラーのドラム。そして親分のピアノがいい。絶妙なタイミングで入れる一音、溢れる歌心、さり気ないフレーズ、エラ・フィッツジェラルドが選んだトップ伴奏者の妙技を聴ける。

 もうお分かりだろう。今年の干支に因んだ3枚である。オープンして25年になる「GROOVY」に通いだしてまだ1年足らずだが、同じ時代に同じ空気を吸い、ジャズの洗礼を浴びてきただけにマスターとは気が合う。それもそのはず、50年前、中野のジャズ喫茶「ジャズ・オーディオ」で小生が落とした不味いコーヒーを飲んだ人だ。50年経った今、マスターが淹れたコーヒーは各段に美味い。

SWING 2023

2023-01-01 08:12:04 | Weblog
 明けましておめでとうございます。心地良い4ビートと五臓六腑に染み渡るグルーヴに包まれながら明日は書こう、来週はアップしようと思いつつも昨年は僅か11回しか更新できませんでした。長い空白にもかかわらず毎日のようにご覧いただいた皆様に感謝申し上げます。また独断と偏見のジャズ雑感にコメントをお寄せいただいた皆様、ありがとうございました。

 毎年恒例の福笑いです。キャプテンハットをかぶっている私の右横は毎年素敵なジャケットを作る鈴木由一さん。強靭なベースラインは身も心も熱くします。ポークパイハットがよく似合うのは佐々木慶一さん。正確なスネアとユーモアのあるシンバル、バスドラの重量感でバンドを引っ張るリーダーです。そして黒岩静枝さんのスケジュールから店の管理までこなすギタリストの志藤奨さん。艶のある音色とメリハリのあるフレーズで酔わせてくれます。私が隠れ家にしているジャズスポット「DAY BY DAY」の素敵なメンバーです。

 元のジャケットはホンカースタイルのテナーサックス奏者4人が競演した「Very Saxy」です。エディ・ロックジョウ・デイヴィスにバディ・テイト、コールマン・ホーキンス、そしてアーネット・コブ。この面子だけで相当強烈ですが、更にシャーリー・スコットのオルガンを入れて濃度マックスに仕上げています。バトル物で定評のあるプレスティッジならではの企画ですね。個性のぶつかり合いが面白い作品です。タイトルは「Very Sexy」にかけたものですが、実にセクシーです。映画の濡れ場やストリップでテナーサックスが使われるのは、楽器の持つ艶めかしい音色にあるのでしょう。

 一年の計は元旦にありと言います。以前のように毎週更新はできませんが、今年は1本でも多くアップしようと思っています。過去に650本の記事を掲載しておりますので、なかには気になるジャズマンや、聴いたことがないアルバムがあるかも知れません。1人のミュージシャンと1枚のレコードから広がるジャズ世界は無限です。奥深いジャズの魅力に触れていただければブログ冥利に尽きます。

ジャズに情熱をかけた男、森寿男

2022-12-18 08:31:39 | Weblog
 今月1日に亡くなられた森寿男さんが、1970年にブルーコーツの三代目リーダーに就任したとき抱負を述べている。「いざリーダーになって改めて人間関係など、責任の重さを感じています。近ごろはフル・バンド界にもかなり新風が吹きこまれているようですが、当ブルーコーツは、機械的ではなしに、あくまでも体で感じさせる暖かみのあるジャズを演奏していくつもりです。」

 瀬川昌久著「ジャズに情熱をかけた男たち ブルーコーツの70年」(長崎出版 2004年刊)から引いた。当時はフルバンドをバックにする歌手が多かったので、シャープ&フラッツやニューハードと並びブルーコーツもテレビやコンサートの仕事でスケジュールを追われていた。その忙しいなか、これぞブルーコーツ・ジャズと誇りうるものを録音したいと語っている。元々ベイシーやエリントンのジャンプ曲やブルース・ナンバーを十八番に据えて、ジャズ路線を印象付けてきたバンドなので、リーダー就任とともにこの路線の継承発展を宣言したのだろう。

 「Dance along with Blue Coats Special」は、結成50周年記念のアルバムで、76年から77年にかけてレコーディングした3枚のLPからベスト曲を選択したCDだ。「Sentimental Journey」をはじめ「It's Been A Long, Long Time」、「Take the A Train」とお馴染みのナンバーが並ぶ。強力にスウィングするリズム陣とブラスのアンサンブルに身体が揺れるし、トランペットの北里典彦やアルト・サックスの五十嵐明要というベテランのソロは各段の味わいがある。SJ誌の人気投票ビッグバンド部門で、1952年から3年連続首位の座を獲得した矜持を見せる演奏だ。

 1946年に発足した日本最古のビッグバンドからは黛敏郎をはじめ秋吉敏子、白木秀雄、笈田敏夫、ナンシー梅木、ダークダックス、上條恒彦等、数多くの音楽家が育っていった。その名門バンドを半世紀に亘ってまとめた森寿男は、2004年にSJ社の南里文雄賞を受賞している。ジャズに情熱をかけた男・・・享年90歳。ブルーコーツは今日もスウィングしている。

アントニオ猪木さんにコブラツイストをかけられたクリスチャン・マクブライド

2022-10-09 08:35:21 | Weblog
 「猪木信者」ほどではないが、10月1日に亡くなられたアントニオ猪木さんの試合はよく見た。なかでもモハメド・アリ戦は今でも覚えている。「世紀の凡戦」とか、土曜日昼間の試合だったので「真昼の欠闘」等と酷評されたが、立ち続けているアリに対して寝たまま闘う猪木さんのポジションは、ボクシングとレスリングという競技方法でみるなら理に適っているように思える。

 世界的に知名度が高かっただけにその交友は広い。プロレス評論家の門馬忠雄さんの記述によると渡辺貞夫とロマネコンティを飲む仲だという。また猪木さんのツイッターをご覧の方はご存知と思われるが、2014年にギターを手にセッションをしている。何とベースを弾いている対戦相手はクリスチャン・マクブライドだ。音が聴こえないのは残念だが、延髄斬りを決めた時と同じぐらい満足そうな顔をしていた。他にもパット・メセニーとのショットも残されている。熱烈なファンは業界を問わず数多い。

 ファースト・コール・ベーシストのアルバムから2017年の「Bringin’ It」を出した。日本のプロレス界を盛り上げた人には迫力のあるビッグバンドがよく似合う。ハイノートが小気味いいフレディ・ヘンドリックスに、エネルギッシュなフレーズに引き込まれるロン・ブレイク、ベティ・カーターに鍛えられたザヴィア・デイビス等、「元気が一番、元気があれば何でもできる」面々が並ぶ。斬新なオリジナル曲と、敬愛するフレディ・ハバード、マッコイ・タイナー、ウェス・モンゴメリーの楽曲構成は劇的な試合展開をみるようだ。

 国会議員としてフセイン政権下のイラクを訪れ、邦人人質解放に尽力しているし、北朝鮮との国交回復のために何度も足を運び、スポーツを通して友好を訴えた。1988年には観光も旅行も制限されていたソ連にプロレスラーを誕生させる目的で鉄のカーテンを潜っている。猪木さんにとっては地球もリングだったのかもしれない。享年79歳・・・人生の終わりを告げるゴングに涙す。

プロ野球という大看板がなくなる札幌ドームの施設命名権、一体全体誰が買う?

2022-10-02 08:32:33 | Weblog
 先月21日に札幌ドームが施設命名権(Naming Rights)を売却すると報じられた。スポーツ中継やニュースなどで命名した名称が出ることで宣伝効果が見込まれるからこそ企業がその権利を購入するのであって、日本ハムファイターズが来季から北広島市の新球場に移転してメディア露出が激減する施設を誰が買うのか。札幌市民の冷笑、嘲笑、嗤笑、失笑、譏笑、絶笑、放笑、爆笑が聞こえる。

 Rights と聞いて久しぶりにフィル・ウッズの「Rights Of Swing」を取り出した。61年の録音で58年のエピック盤「Warm Woods」以来のリーダー作になる。注目すべきはレーベルがナット・ヘントフ監修の「Candid」だ。僅か2年で消えたマイナーレーベルながらアビー・リンカーンの強烈な叫びに圧倒されるマックス・ローチの「We Insist!」や、黒人を差別した政治家を嗤った「フォーバス知事の寓話」で知られるチャールズ・ミンガスの「Mingus Presents Mingus」等、
メジャーレーベルとは一線を画す作品が多い。

 このアルバムは社会性が強いものではないが、当時ウッズが在籍していたクインシー・ジョーンズ楽団から選抜したメンバーで構成され、ウッズ自身の作、編曲という意欲的なものだ。ベニー・ベイリーをはじめカーティス・フラー、サヒブ・シハブ、ジュリアス・ワトキンスのホーンはよく鳴るし、ビッグバンドで培ったアンサンブルはタイトルの如くスウィングする。トミー・フラナガン、バディ・カトレット、オシー・ジョンソンの安定したリズム隊をバックに主役のウッズは気持ちよさそうに吹いているのでこちらも気分が良くなる。

 翌日の新聞に札幌ドーム社長のインタビューが載った。日ハム関連の売り上げは3割なので、ネーミングライツ売却で穴を埋めると。同じ紙面に札幌市は日ハム移転後に売上高が5割減ると出ていた。繋がった組織なのに損失額を誤魔化そうとするから差が出る。ドームも市もテレビ中継がなくなるためフェンスから撤去される広告収入を忘れてはいないか。引き算を勉強したほうがいい。