デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

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初期作品にみるチック・コリアの多様性

2021-02-21 08:22:52 | Weblog
 今月9日に亡くなったチック・コリアの初期作品はジャズの聴きはじめだったこともあり熱心に聴いた。田舎のジャズ喫茶もどきにもあったブルー・ミッチェルの「Down With It」に、ハービー・マンの「Village Gate」、スタン・ゲッツの「Sweet Rain」、ディジー・ガレスピーの「Jazz For A Sunday Afternoon」。サイド参加とはいえ主役に負けない閃きのソロが聴ける。

 そして、アトランティックの傍系「Vortex」レーベルからリリースされた「Tones For Joan's Bones」。ジョー・ファレルとウディ・ショウとの絡みが面白いし、初リーダー作とは思えないほどアイデアが詰まっている。ジャケットは一度見たら忘れられない当時流行りのサイケデリック調だ。次にミロスラフ・ヴィトウス、ロイ・ヘインズと組んだ「Now He Sings, Now He Sobs」。聴いた瞬間、ピアノトリオの名盤に数えられるアルバムだと直観したし、A面2曲目の「Matrix」は多くのピアニストがカバーする名曲だと思った。事実そうなっている。 

 この後マイルスの「Filles De Kilimanjaro」、「In A Silent Way」、「Bitches Brew」というマイルスにとって大きなターニングポイントになる作品に参加し、フェンダー・ローズの魅力を最大限に引き出した。次いでアンソニー・ブラクストンと組んだ前衛ジャズの傑作「Circle」、そして新たなジャズファンを獲得した「Return to Forever」という新世代バンドの結成。ジャズシーンが大きく変わった時だ。72年にゲイリー・バートンとのデュオ。78年には盟友ハービー・ハンコックとのデュオ。2007年には上原ひろみと共演・・・常にシーンを賑わしてきた。

 改めて初期作品を取り出すとソニー・スティットの「Stitt Goes Latin」、ジャケ買いのデイヴ・パイク「Manhattan Latin」、ヒューバート・ロウズ「The Laws of Jazz」、カル・ジェイダー「Soul Burst」、アングルの名画「トルコ風呂」をジャケットに使ったピート・ラロカの「Turkish Women At Bath」と多種多様な名盤が並ぶ。多くのミュージシャンに愛されたチック・コリア。享年79歳。合掌。
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SWING 2021

2021-01-03 08:13:39 | Weblog
 明けましておめでとうございます。早いもので今年はブログ開設15年目になります。閲覧数は200万PVを超えました。当初は毎週日曜日に更新していましたが、ここ数年は大幅に記事が減りました。そんな思いつくまま気の向くままの不定期更新にもかかわらず昨年も多くのアクセスをいただきました。ご覧いただいた皆様に御礼申し上げます。

 まだ晴れないコロナ禍ですが、正月は福笑いジャケットをお楽しみください。若手のメンバーを強力なスウィングと強靭なグルーヴで引っ張るドラマーの佐々木慶一さん、切れ味鋭いカッティングと豊かな歌心が心地良く響くギタリストの志藤奨さん。中央は黒岩静枝さんの指導のもと日毎歌が大きくなるシンガーのBECKYさんです。「ススキノのため息」と呼ばれています。私の隣は毎年面白いジャケットを考案するベーシストの鈴木由一さんです。太い音はバンドの要といえるでしょう。私が隠れ家にしているジャズスポット「DAY BY DAY」の素敵なメンバーです。

 元のジャケットはヘレン・メリルの「Deep In A Dream」です。サド・ジョーンズにジム・ホール、メリルの伴奏者として活躍したディック・カッツ、そしてロン・カーター。豪華メンバーをバックに持ち味のデリケートな表現を崩さずしっとりと歌っています。洗練されたニューヨークのため息はタイトルの如く夢見心地になるでしょう。録音は1965年ですので半世紀以上経っていますが、色褪せるどころか年々輝きを増すようです。当時米ジャズ誌「downbeat」で最高点の五つ星を獲得しただけのことがありますね。

 今年も気まぐれなアップになりますが、埋もれた名盤に忘れられた珍盤にとモダンジャズを中心にディキシーランド、スウィングからフリージャズ、ヴォーカルまで幅広く話題にしようと思っています。既に600本以上アップしておりますので、気になったタイトルがあればどの記事からでもかまいませんのでコメントをお寄せください。また、ジャズに関するご意見やご感想もお待ちしております。今年もよろしくお願いいたします。
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生誕100年を迎えたチャーリー・パーカーのアドリブに酔いしれる

2020-12-13 07:56:33 | Weblog
 上映時間169分。全編モノクローム。ヴェネツィア国際映画祭で上映された時には途中で席を立つ人が続出する一方、上映後はスタンディング・オベーションが起きたといういわく付きの作品だ。本当にポスターのようなシーンがあるのだろうか?怖いもの見たさで映画館に行った。主人公の少年が体験する暴力と不条理が次から次へと突き刺さる。「異端の鳥」は衝撃だ。

 どの芸術、どんな分野にも流れが大きく変わる時は必ずと言っていいほど異端児が登場する。ジャズ界も同じで異端のジャズマンと呼ばれた人は数多い。なかでも今年生誕100年を迎えたチャーリー・パーカーはジャズの概念を変えた人だ。小生と読者の多くはモダンジャズから入っているのでマイルスの「Kind of Blue」を聴いたあと、パーカーとマイルスが共演した1947年の「Milestones」を聴いても音が悪いという印象だけで演奏内容に大きなズレはないはずだ。またパーカー・ウィズ・ストリングスに続けてフィル・ウッズの「The Thrill Is Gone」をかけても何ら違和感はないだろう。

 ここでパーカーが登場した時代に戻ってみよう。ジェイ・マクシャン楽団のメンバーとして初録音した1940年というとジャズは踊るための音楽だった。サヴォイにリーダー作を吹き込んだ45年といえばファースト・ハードを結成したウディ・ハーマンや、ジューン・クリスティやクリス・コナーを起用したスタン・ケントン楽団が人気を博したスウィング全盛期である。この時代にコード進行に添いながらも瞬時の閃きで即興的なフレーズを吹いたのだから驚く。多くの人は踊る身体以前に頭が付いていかない。この時ジャズが踊る音楽から聴く音楽に変わった。

 正視に耐えられないシーンが続く「異端の鳥」は、「レッド・オクトーバーを追え!」の名演が光るステラン・スカルスガルドや、拙稿でも話題にした映画「スモーク」のハーヴェイ・カイテルといった名優が人間の悪を演じている。救いは「プライベート・ライアン」の狙撃が見事だったバリー・ペッパーの優しい眼差しである。「目には目を」と言ってピストルを渡すシーンは後の展開に見事につながる。久しぶりにもう一度観たい作品に出合った。
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フランシス・テイラーはマイルス王子を待っていた

2020-11-08 07:44:06 | Weblog
 ショーターとハンコックがマイルスに誘われた時の驚きを昨日のことのように嬉しそうに話す。マイルスを真似たあの嗄れた声と口調でだ。その時の歓喜と興奮が伝わってくる。多くのジャズメンとセッションを重ね、様々なバンドで修業を積んだ二人にとって最高の瞬間だったに違いない。関係者の証言で綴られた映画「マイルス・デイヴィス クールの誕生」のワンシーンである。

 マイルスの音楽は勿論のこと多くの証言から彼の人間性も浮き彫りになり興味深い。マイルスの自叙伝の共著者として知られる詩人クインシー・トゥループの話はよく本人を知っているだけに分析が鋭いし、彼しか知り得ないエピソードも出てくる。改めてあの分厚い自叙伝を読みたくなった。また、プロモーターのジョージ・ウェインの証言は商売柄金銭のことになるが、麻薬代欲しさに「1セントだけでいい」と無心したどん底のマイルスを暴露する。笑い話のように語るウェインは、当時のマイルスに熱い期待と深い信頼を寄せていたのだろう。

 そしてマイルスといえば女性だ。ジュリエット・グレコにマルグリット・カントゥ、シシリー・タイソン、ジョー・ゲルバードと美女揃いだが、やはり注目すべきはフランシス・テイラーの証言である。「クインシー・ジョーンズはハンサムね」と言い終わる前に殴り飛ばされたとか、ダンサーの夢である「West Side Story」のキャストを降板しろと脅されたとか、「Someday My Prince Will Come」のジャケット写真撮影の時は10分おきに電話をかけてきたとか・・・嫉妬深くて念入りなマイルスがそこにいる。最後に今でも愛していると言ったフランシスは「ESP」のジャケットより美しかった。 

 ジミー・ヒースとジミー・コブも出演している。今年亡くなった人だ。グレコも9月に帰らぬ人となった。語られる内容は勿論だが彼らの生の声を聞ける貴重なドキュメンタリーでもある。2019年の作品なのでコルトレーンやガーランド、ケリー、エヴァンス、チェンバース、フィリージョーのコメントはなかったが、間違いなく「Miles is cool」と言うだろう。映画館を出たあと小生も「マイルスは最高だ」とつぶやいた。嗄れ声で。
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全身にジャズの血が走る映画「真夏の夜のジャズ」再び

2020-09-27 08:40:42 | Weblog
 映画「真夏の夜のジャズ」を観た。1958年に開催された「ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を捉えたドキュメンタリーで、ジャズファンのバイブルといっていい。監督はマリリン・モンローが亡くなる6週間前に彼女の写真を撮ったことで知られるバート・スターンである。1960年に日本で公開されてから幾度もリバイバル公開されているが、今回はフィルムを修復した「4K版」なので映像が鮮明だ。

 初めて観たのは高校1年生の時だった。田舎ゆえ中央でかかってから8年後のことだ。それも2本立て同時上映のオマケの方である。当時の小さな町の映画館は2本立て興行が主流だった。A級作品と一緒にB級映画を上映するように配給したいわゆる抱き合わせ商法だったのだろう。時にはB級ばかり3本立てというのもあった。おまけに当時は今のシネコンでは考えられない入れ替えなしである。上映中でも途中から入場できたし、煙草も吸えた。朝から夜まで居眠りしながら映画館で過ごせた古き良き昭和の時代である。

 日曜日に母親におにぎりを握ってもらい、颯爽と自転車をこぐ。まず早朝から「真夏~」だ。次にタイトルは忘れてしまったがメインの映画、そして「真夏~」、またメイン、最終上映の「真夏~」と1日に3回観た。ジャズの聴きはじめなので知っていたのはモンクにスティット、アニタ、マリガン、ドルフィー、サッチモぐらいだったが、この時全身にジャズの血が走ったのは間違いない。今回数十年ぶりに観てもあの時の興奮が想い起される。当時は名前すら知らなかったヘンリー・グライムスにエミール・リチャーズ、ピーナッツ・ハッコー、ビル・クロウの姿も眩しい。

 「4K版」では上半身裸でリハーサルするチコ・ハミルトンの汗の飛沫や、アニタの香水の匂い、ネイサン・ガーシュマンの煙草の香ばしい霧が伝わってこなかった。技術の向上に伴いフィルムを修復することで未来に遺すのは喜ばしいことだが、ざらつき感がなくなりジャズ特有の悪魔的な魅力が少しばかり薄れたのは寂しい。だが、超一級のジャズ映画としての価値は変わらない。まだ上映中だ。明日も行こう。
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弘田三枝子が大絶賛されたニューポート・ジャズ祭1965

2020-08-02 08:53:59 | Weblog
 前稿でレナウンのCMソング「ワンサカ娘」を話題にした。映像と相俟って1965年のシルヴィ・ヴァルタンがイメージ強いが、61年のかまやつひろし、次いでデューク・エイセス、ヒデとロザンナ、アン・ルイスと、多くのシンガーが艶やかなドレスのバックで歌っている。その中に7月21日に亡くなられた弘田三枝子さんがカバーしたものがある。はち切れんばかりの若さとパンチのある歌唱に驚く。

 69年に日本レコード大賞の歌唱賞を受賞した「人形の家」を口ずさむ方が多いが、団塊とその前後の世代は洋楽のカバー曲を歌うかもしれない。ヘレン・シャピロの「子供ぢゃないの」をはじめ、コニー・フランシスの「ヴァケーション」に「渚のデイト」、ミーナの「砂に消えた涙」、ジリオラ・チンクェッティの「ナポリは恋人」、フランス・ギャルの「夢みるシャンソン人形」…アメリカのポピュラーソングからカンツォーネ、シャンソンと幅広い。当時はそれだけ日本語の歌詞を付けてまでカバーに値する楽曲が世界中にあったということだろう。どの曲もオリジナルに負けない圧巻の歌いっぷりだ。

 そしてジャズファンが真っ先に思い出すのは、65年のニューポート・ジャズフェスの出演である。日本人では57年に秋吉敏子が出演しているが、シンガーとして招待されたのはミコが初めてだ。大絶賛である。拍手が鳴りやまない。誇らしい。数あるアルバムから「Miko In New York」を選んだ。フェスで共演したビリー・テイラー・トリオがバックで、ジャズ唱法を指導したのはベースのベン・タッカーだ。さぞ教え甲斐があったことだろう。歌唱は勿論のこと、スウィング感、タイミング、リズム感、どれをとっても18歳のシンガーとは思えない。Jポップだかのぽっと出の連中は足もとにも及ばない。

 カバー曲としては異例の20万枚売れた「ヴァケーション」を聴いたのは小学校低学年のころだ。「日本のポピュラー史を語る 時代を映した51人の証言」(シンコーミュージック刊)を編纂した村田久夫氏によると日本人が馴染みやすい英語っぽい日本語を考え出したのは弘田三枝子だと言う。当時、「V・A・C・A・T・I・O・N」とスペルまで覚えた子どもは多いはずだ。享年73歳・・・合掌。
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ステイホームでシルヴィ・ヴァルタンの「Comin' Home Baby」を聴く

2020-05-24 08:11:22 | Weblog
 ステイホームに従い自宅で過ごしている。本を読みジャズを聴く毎日だが、いつになくテレビを観るようになった。ロケもスタジオ収録もできないことから再放送や編集番組が多い。これはこれで普段テレビを観ないので逆に新鮮なのだが、繰り返し入るCMに閉口する。しゃべる犬に、眼鏡を置いたソファーに座るホステスに、気持ち悪いダンスを踊る少年に、ぐるぐる回転する画面に、上から目線の自動車保険・・・

 テレビを消したくなるが、昭和の時代は番組よりもCMが待ち遠しいものがあった。先日破綻したアパレル大手レナウンが、シルヴィ・ヴァルタンを起用したワンサカ娘は今でも脳裏に焼き付いている。シンプルな背景で歌って踊るだけなのだが、これが魅力的だ。流れたのは1965年で、前年発売された「アイドルを探せ」が大ヒットしていた頃だった。思春期ということもあり色っぽい流し目に、欧米では歯の隙間から福が舞い込んでくると言われているキュートなすきっ歯、そして何より艶っぽいブロンドのボブ・カットに強く惹かれた。大人になったらこんな素敵な女性と付き合いたいと思ったものだ。

 今でも現役のヴァルタンは多くのアルバムをリリースしているが、ジャズファンにお薦めの1枚といえば「Twiste Et Chante」だろうか。タイトルのビートルズ・ナンバー「Twist And Shout」をはじめ、カスケーズの大ヒット曲「悲しき雨音」やポール・アンカがヴァルタンのために作った「I'm Watching」等、お馴染みのナンバーばかりだ。バックは兄のエディ・ヴァルタン率いるオーケストラで、イエイエの女王の魅力を余すところなく引き出している。なかでも「Comin' Home Baby」が素晴らしい。メル・トーメの歌唱スタイルがスタンダードになっているが、エディの粋なアレンジで作者のベン・タッカーも驚くだろう。

 レナウンのCMといえば70年代にアラン・ドロンを起用している。最近のCMではトミー・リー・ジョーンズやオーランド・ブルーム、ロバート・デ・ニーロ、ブルース・ウィリスと外国の俳優が登場するのは珍しくないが、当時は驚きだった。大人になってダーバンのスーツを着て、「D’urban, c’est l’élégance de l’homme moderne」と気取ってみても終ぞシルヴィ・ヴァルタンのようなブロンドのいい女と付き合ったことがない。
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トニー・ウィリアムスの緊急事態宣言はいつ解除されるのか

2020-04-26 08:44:17 | Weblog
 北海道も桜が咲きはじめ、ここ札幌の満開日は5月1日だという。春の風は柔らかいものだが、今年はコロナ禍で景色が暗いせいか風さえも刺すように痛い。いつもの年ならこの時期は札幌ドームで贔屓のチームを応援した後、仲間とススキノに繰り出して宴会をするのだが、緊急事態宣言で一変した。営業自粛要請もあり馴染みのジャズバーや、根城にしている「DAY BY DAY」も臨時休業となれば外出を控えるしかない。

 こんな時は派手なジャズに限る。迫力のあるアンサンブルに度肝を抜かれるビッグバンドや、めくるめくソロに七転八倒するハードバップもいいが、うってつけの1枚があった。「Emergency!」だ。トニー・ウィリアムスがマイルス・バンドを脱退後、結成した「Lifetime」のファーストアルバムである。ドラム、ギター、オルガンのトリオ編成とは思えない重厚感のある音にまずやられる。そして、トニーのシンバルレガートのスピードに負けないジョン・マクラフリンの高速フレーズと、「オルガンのコルトレーン」と呼ばれたラリー・ヤングのモーダルな旋律を彩るまさに緊急事態を思わせる不気味な音色が強烈だ。密度の濃い3人、いわゆる「3密」である。

 発売された当時、ロックだのマイルスの呪縛から脱却できないだのという批判もあったが、ジャズシーンが混沌としていた時代に一つの方向を示唆した作品だ。このバンドに例えばロッド・スチュワートやロバート・プラント、イアン・ギランというヴォーカルが加わればハードロックの名盤になっていたかもしれない。録音は「Bitches Brew」と同じ1969年だが、マイルスは8月で、こちらは5月だ。トニー加入後のマイルスが、トニーのスピードに対抗する形で同じ曲でも年を追うごとにテンポが速くなったように、常に新しいスタイルを模索していたマイルスが、この作品から影響を受けた可能性もあるだろう。

 スポーツ、コンサート等のイベントは中止になり、居酒屋やバーも閉まっている。5月6日までの緊急事態宣言と営業自粛要請ではあるが、延長すべきとの声も上がっている。いつまで続くのか先が見えない不安と、行動を制限された日常でストレスはたまる一方だが、いつかはコロナが消え、気持ちのいい春風を感じる時がくるだろう。それまでの辛抱だ。トニーのブルーノート・リーダー作に「Spring」がある。
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フォードの誇り、フェラーリの矜持、チャーリー・ヘイデンの信念

2020-02-02 09:19:54 | Weblog
 「フォードvsフェラーリ」・・・カーマニア、それもレースファンならタイトルだけでワクワクする映画だ。1966年のル・マン24時間レースの実話を元にしたストーリーで、 マット・デイモン扮するレーシングカー・デザイナーのキャロル・シェルビーも、クリスチャン・ベールが演じるレーサーのケン・マイルズも実在の人物である。手に汗握るレースシーンは勿論のこと、人間ドラマとしても丁寧に描かれており車に興味がない方でも楽しめるだろう。 

 序盤、当時、フォード社のマーケティング責任者だったリー・アイアコッカが重役陣を相手に、若い世代に車を売るためには何が必要なのかを説くシーンがある。ここで資料として出したのは「勝利のキス」という写真だ。タイムズスクエアで第二次世界大戦終結を喜び合っているなか、看護婦と水兵がキスをしている瞬間をとらえたものだ。撮影したのは報道写真家の草分け的存在として知られる写真家のアルフレッド・アイゼンスタットである。当時、ライフ誌の表紙を飾ったもので、終戦を象徴する写真といえばこれを思い出す。後にクライスラー社の会長に就任する切れ者が、ユーモアを交えながら展開するプレゼンはなかなかに面白い。

 チャーリー・ヘイデンがジャケットにこの写真を使った作品を出している。1995年の録音で、アーニー・ワッツにアラン・ブロードベント、そして何とローレンス・マラブルが参加している。この時66歳。ウエスト・コーストを代表するドラマーではあるが、唯一のリーダー作「Tenorman」は、タイトルばかりかジャケットもジェームス・クレイのリーダー作と間違えるような作りだ。実力がありながら不遇なドラマーを起用したヘイデンに拍手を送りたい。「Now Is The Hour」のタイトル通り、今こそ好機とばかりに遺憾なくいぶし銀のテクニックを披露しているし、サポートするヘイデンもお見事。リーダー作だからといってベースを前面に出す必要がないことをよく知っているベーシストである。

 シェルビーとマイルズは勿論のことヘンリー・フォード2世、エンツォ・フェラーリ、映画では憎まれ役のフォード社副社長レオ・ビーブにしても車への情熱は計り知れないし、何より自社の車と仕事に大きな誇りを持っている。そういえばプライドの欠片もない金の亡者が日本の車メーカーにいた。会社を財布にした挙句、海外逃亡とは呆れる。「Ghosn has gone」では日本の司法が世界に嗤われる。
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DAY BY DAY Jazz Quartet 2020

2020-01-05 08:48:09 | Weblog
 明けましておめでとうございます。気になるレコードがまだまだありますので、今週は書こう、来週こそ更新しようと思いながらもサボり癖が付いてしまい、昨年は僅か3本しかアップできませんでした。そんな目新しいものがないなか毎日多くのアクセスをいただきました。古くからの読者の皆さんは勿論のこと、検索エンジンでヒットしたのをきっかけにご覧いただいた多くの方々に感謝申し上げます。

 不定期更新ですが、外せないのが正月恒例の福笑いです。私の隣は毎年ユニークなジャケットを考え出すベーシストの鈴木由一さんです。繊細且つ大胆な低音の響きは脳天を直撃するでしょう。そして札幌で一番頼りになるドラマー、佐々木慶一さんです。昨年は黒岩静枝さんのサポートは勿論のこと、山岡未樹さんの道内ツアーや自己のユニット「4S」を率いて多くのライブを開催しました。隣はギタリストの志藤奨さんで、私がリクエストする難曲に果敢に挑戦してくれます。練習量がステージにそのまま反映されますので聴くたびに魅了されるでしょう。私が根城にしているジャズスポット「DAY BY DAY」の素敵なメンバーです。

 拝借したジャケットはSAVOYの「Modern Jazz Quartet」です。ミルト・ジャクソンのリーダー・セッションとして、1951年にディジー・ガレスピーのレーベル「Dee Gee」に吹き込まれたものと、52年にマイナーレーベルの「Hi-Lo」に録音したものを集めたオムニバス盤ですが、52年に結成してから20年以上も継続する名門コンボMJQの土台になった作品といえるでしょう。MJQとして形作られた美は完成されておりませんが、ともにガレスピー楽団で切磋琢磨したジャクソンのブルージーなヴァイブと、ジョン・ルイスの折り目正しいピアノの絡みは、ビバップから一歩抜け出した新鮮な空気を感じ取れます。

 今年はチャーリー・パーカー生誕100周年にあたります。ジョン・ルイスにデイヴ・ブルーベック、シェリー・マン、ペギー・リーもともに1920年生まれです。ジャズ史を彩ったビッグ・アーティストを不定期ですが話題にしようと思っておりますので、時折ご覧いただければ幸いです。また、過去の記事で気になるものがございましたら何なりとご意見、ご感想をお寄せください。今年もよろしくお願いいたします。
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