デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ツゥー・ベース・ヒット

2006-08-27 07:01:51 | Weblog
 ワールドカップで日本チームが敗退すると途端に関心が薄れるように、高校野球もまた地元選抜チームが負けると興味を失う。特に北海道選抜は良くてベスト・エイト、ともすると一回戦で敗れるケースが多かったが、ここ2、3年は駒大苫小牧高校の大活躍で甲子園から目が離せない。惜しくも三連覇は逃したが、駒苫ナインの健闘は素晴らしいもので拍手を惜しまない。

 マイルス・デイヴィスの58年の名盤「マイルストーンズ」と、枕の野球がどう繋がるのか?このアルバムにジョン・ルイス作の「ツゥー・ベース・ヒット」が収められている。これでようやく話が繋がる。(笑)クラシックの素養があるルイスの曲は格調高いが、ジャズ・チューンとしては地味であまり目立たない。レイ・ブラウン作の「ワン・ベース・ヒット」に呼応するこの曲もマイルスが取り上げるまで、広く知られることはなかった。

 タイトル曲「マイルストーンズ」のインパクトが強くて、「ツゥー・ベース・ヒット」は印象薄いが、これがなかなかの好演だ。マイルスはこの曲が余程気に入ったらしく、同年のニューポート・ジャズ・フェスティバルでも演奏していた。ジャズ喫茶ではタイトル曲の面をかけるので、レコードのA面一曲目だと思っていた。B面一曲目と知ったのは随分後のような気がする。CDで聴くと4曲目になるので、最初にCDを聴いたときは、違うアルバムかと思ったくらいだ。刷り込まれたイメージはなかなか拭えない。

 このアルバムでもポール・チェンバースの力強く「ブーン」と呻るベースが小気味良い。ツゥー・ベース・ヒットを打ったバットから唸る「カキーン」もまた小気味良い。
37年ぶりという決勝再試合の最終回は1点を追う展開だった。あと1点は来年の楽しみか。「半分に千切れぬものか優勝旗」という句が口をつく。
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危険な関係

2006-08-20 06:34:32 | Weblog
 終戦記念日の15日に、小泉首相が靖国神社を参拝し、例年の如く賛否両論が渦巻く。15日という公約を守るのも政治家の務めなら、外交に配慮し、15日以外を選ぶのも政治家の任だとも思う。韓中国を刺激して危険な関係に発展するのは国益の損失に繋がる。公人ともなれば「心の問題」という括りでは解決できないものがあろう。

 その15日の新聞に、デューク・ジョーダンの訃報が伝えられていた。15年ほど前にライブを聴いたが、一曲終わるたびに椅子から立ち上がり客席に礼をする真摯な態度に驚いた。チャーリー・パーカーと熱いバップシーンを生き抜いてきたとは思えない程、温厚な人柄で、握手をして頂いたその手の温もりは忘れられない。その長い指から数々の名演を生みだしたと思うと感慨もひとしおだ。

 写真は名刺代わりの「ジョードゥ」と並ぶジョーダンの傑作「危険な関係のブルース」(原題 No Problem ~だいじょうぶ)で、ロジェ・バディム監督のスワッピングをテーマにしたフランス映画「危険な関係」の主題歌として使われている。この映画のサントラ盤はアート・ブレイキー名義で出ているが、この時はジョーダン作曲にもかかわらず他人名義で登録されており、印税が入ってこなかったそうだ。パーカーの未亡人、ドリスが見かねて自己のレーベルに吹き込ませ、ジョーダン作曲であることを表明している。このアルバムでは表題曲を様々なヴァージョンで3曲吹き込んでいて、ジョーダンの入れ込みようが伝わってくる。

 マイルス・デイヴィスの自伝に、「パーカー・バンド時代、デューク・ジョーダンがコードを間違うので頭にきた」と書かれている。今頃、「マイルス、もう間違えはしないぜ、 No Problem バードを呼んで一曲やろうぜ」とピアノに向かっているのかもしれない・・・合掌
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サムシング・クール

2006-08-13 07:40:30 | Weblog
 江戸川柳に、「夏やせと答へ姑の名も立てず」とある。姑に減食を強いられたとは言わず、暑さのせいにする奥床しさは、きょう日あまり見られない。全国的に猛暑のなか、当地も30度を越える日が続く。生まれも、育ちも北海道の小生は、マイナス30度が続いても体験上耐えられるが、暑さが続くと句の嫁ではないが、食もすすまず痩せる。

 涼をとる定番といえばジューン・クリスティの「サムシング・クール」で、ジャケットといい、内容といい、扇風機やクーラーとは無縁の世界だ。スタン・ケントン楽団出身で、アニタ・オデイ、クリス・コナーと並びケントン・ガールズと呼ばれているが、三人の中では一番知的で、清楚な印象だ。恵まれない幼年時代を過ごした翳はなく、ビッグバンド専属歌手らしい華やかさに溢れている。写真は54年に発売された10インチLP盤で、両面併せて7曲と曲数はすくない。今のCD感覚からすると物足りないが、この7曲だけで充分涼しくなれる。

 SPでは3分、12インチLP盤でもせいぜい片面25分という収録時間制限があったが、CD時代になり大幅に収録時間が延び、未発表テープや別テイクを加えて再発されるケースが多い。中には貴重なものもあるが、殆どはボツ内容で、収録する必要のないテイクが目立つ。レコード会社のセールス手段のようだが、そのようなボツテープをファンは望んでいるとは思えないし、レコードという単位で量られていた芸術性さえ損なわれている。ジャズとて音楽、本来の音を楽しむという観点からすると、曲数が多い方が楽しめるし、レコードの内容に価値があるのであって、レコード自体には価値がない、という論理で反論されれば否定はできないが、少なくとも「三分間芸術」、「レコード芸術」と呼ばれても、「CD芸術」という言葉は存在しない。

 ジャケットのイラストは、レモン・スカッシュだと勝手に決めているが、小生はこれにジンを足してトム・コリンズというカクテルにしている。さぁ、クリスティと乾杯だ。先ほどまでの暑さはどこへやら、思わずクリスティのような笑みがこぼれる。
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ノックアウト

2006-08-06 07:30:16 | Weblog
 先週、 ライトフライ級王座決定戦をテレビ観戦した。期待したKOはなく、微妙な判定で王者にはなったが、どうにも後味が悪く、釈然としなかった。1ラウンドからダウンを喫しった亀田興毅選手の日頃の言動と重ねてこれでは「地元判定」と嗤われても仕方がない。11ラウンドでは足も覚束ない新王者に残された課題は多い。修羅場、土壇場を潜り抜けてきた王者の正念場はこれからだ。

 亀田選手が受けたようなパンチのジャケットは、ソニー・スティットの「ザ・ハード・スウィング」というアルバムで59年の作品。スティットはレコードを作るのが趣味のような人で、リーダー作だけでも100枚以上ある。全部聴いているわけではないが、出来不出来のない人で、何れも安定したプレイが聴ける。10枚に1枚の割で熱の篭った作品を残すようで、これもその1枚。ワンホーンでバリバリ気持ち良さそうに吹くまくる。聴いているこちらも気持ちが良い。

 スティットはチャーリー・パーカーに似ていると言われ、怒ってアルトからテナーに持ち替えたそうだが、テナーでもやはりパーカーに似ている。「パーカーがテナーを吹いている」と言ってもいい。衣装を変えても意匠は変わらないものだ。パーカーに似ているという表現は、貶した言い方でもあるが、小生はむしろ褒め言葉だと思っている。テクニックとアイデアがなければ、パーカーを真似しようもない。一時、渡辺貞夫さんも似ていると言われていたが、真似ができるだけの力があったからこそ世界のナベサダの名がある。

 亀田選手は K-1 に押されて青息吐息のボクシング界に新風を送ったのは確かだ。スティットがアルトでもテナーでも馴染んだマウスピースで、快音を響かせたように、亀田選手も身体の一部のようなマウスピースにハード・パンチを受けずに、ノックアウト勝利のゴングの快音を響かせてほしものだ。
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