「リチウム電池」で遊覧船運航 三方五湖で実験スタート
(2011年3月5日午前9時50分)
ふくい産業支援センターなどは充電式のリチウムイオン電池を動力とする遊覧船を造り4日、福井県美浜町の久々子湖で運航実験を開始した。三方五湖の自然環境を保全する取り組みの一環で、電気容量や安全性が高いリン酸鉄リチウムイオン電池による遊覧船運航は世界初という。
事業は経済産業省の「低炭素社会に向けた技術発掘・社会システム実証モデル事業」の委託を受け、2009年度に着手。同センターのほか福井大、アイエフ産業(福井市)、ナノリサーチ(同)、ニシエフ(小浜市)などで研究開発を進めてきた。
遊覧船は長さ12メートル、幅3メートル、重量9トンで12人乗り。リチウムイオン電池4体、モーター2基を搭載している。1時間充電すれば約40キロ走り、速度は現在、久々子湖を遊覧している船と同様の15~20ノット。年間の二酸化炭素(CO2)排出量はディーゼル船1隻あたり約100トンなのに対し、1・3トンとわずかで、有害物質も排出しない。
搭載したリチウムイオン電池は、電気自動車などに使われているマンガン系でなく、リン酸鉄リチウムイオン電池。開発した荻原隆・福井大大学院工学研究科教授によると、電気容量が約1・5倍で、寿命が長く、安全性に優れ、コストも3分の2以下という。
この日は関係者らが見守る中、船は三方五湖レークセンターを出航。しばらく周囲を巡り、運航に支障がないことを確認した。5日から18日までは乗客を乗せ1日2回程度実験運航し、運航特性や充電方法などをチェックする。 (福井新聞)