団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

中国不動産、香港富豪が大量投げ売り 海外投資家の「中国売り」加速

2014-04-25 11:33:22 | 日記
不動産バブルの本格崩壊が迫り、世界の投資マネーが中国から脱出を急いでいる。不動産価格の暴落や開発業者の大量淘汰(とうた)が予想されるなか、香港の世界的富豪は中国本土の不動産の処分を済ませ、有力金融機関は「不動産バブルは影の銀行(シャドーバンキング)より深刻」「すでに崩壊が始まった」と警鐘を打ち鳴らす。「中国売り」はもう止まらない。

 香港の実業家、李嘉誠(リ・カシン)氏(85)の動向が投資家に波紋を広げている。不動産をはじめ、電力、通信、小売りなど幅広く事業を展開、アジアで最も成功した企業家とされ、「李超人」と異名を取る。

 米フォーブズ誌の世界の富豪ランキングでも、推定資産342億ドル(約3兆4900億円)で15位、アジア人では最上位だ。

 今月上旬、その李嘉誠氏の次男、李沢楷(リチャード・リー)氏が率いる企業が、北京に保有していた複合施設を72億香港ドル(約950億円)で売却すると報じられた。売却資金は日本やタイ、インドネシアなどの事業に回すという。

 巨額とはいえ、1件の不動産取引が大きく報道された理由は、李氏親子が中国本土で保有する不動産がほぼなくなるためだ。

 李嘉誠氏は1990年代から中国本土への投資を拡大させてきたが、昨年8月ごろから売却を加速させてきた。これまでの売却額は200億香港ドル(約2640億円)にのぼるとみられる。

 「李氏は、2008年のリーマン・ショックを予測して、事前に上海市内の不動産を売り抜けたといわれている。今回も中国の不動産バブル崩壊を見越した行動ではないか」(外資系証券エコノミスト)との指摘もある。

資産を中国から逃す動きは李氏に限らない。中国メディアの新浪財経によると、昨年の段階で海外投資家の資金1兆元(約16兆円)が中国から流出したというが、この流れはさらに加速しているようだ。

 中国経済の危険性に警鐘を鳴らしてきた企業文化研究所理事長の勝又壽良(ひさよし)氏は、その背景について語る。

 「中国の人民元には、国際的な投資家が自分の富を安全に蓄えておく機能が存在しない。これは資本の自由な移動が遮断されているためで、元も中国も国際的な信任を受けていない結果といえる」

 足元の不動産市況も低迷ぶりが鮮明になってきた。中国国家統計局が発表した1~3月期の住宅販売額は、前年同期比7・7%減の1兆1000億元(約18兆円)と落ち込み、新規着工面積は25%と大幅減に見舞われた。

 3月の新築住宅価格も、マンション投資が活発だった浙江省温州が前年同月比4・2%下落。他の都市も上昇率が鈍化した。前月比では温州や海南省海口など4都市でマイナスとなっている。

 不動産関連は中国の国内総生産(GDP)の約16%を占めるだけに、専門家も強い警戒を示す。

 野村インターナショナルのアナリストは、「不動産バブルの崩壊リスクは、影の銀行や地方政府の債務問題を上回る」と指摘。フランスの金融大手、ソシエテジェネラルのエコノミストも「多くの都市では、住宅市場が冷え込むだけでなく、崩壊が始まっている」と分析している。

中国では、石炭、太陽光発電、不動産の3業種が相次いでデフォルト(債務不履行)に陥るなど問題業種として知られる。影の銀行による融資もこの3業種向けが急拡大し、その規模は約180兆円に達している。中でも問題視されているのが不動産だ。

 ブルームバーグの報道では、12年時点で9万社近い不動産開発業者が存在するが、米不動産グループの専門家は今後、淘汰が進むとみる。

 前出の勝又氏はこう語る。

 「中国の地方政府は、農地を農民から強制買収し、高値で開発業者に売り渡す形で不動産バブルを生み出し、その結果として中国各地に『鬼城(ゴーストタウン)』が10カ所以上も出現した。非効率で利益を生まない投資が中国経済を支えていたが、現在、すべて逆回転を始めている」

 最近も商船三井の船舶を差し押えるなど、中国当局が日本企業たたきに血道を上げた結果、日本の対中投資は激減した。結果論ではあるが、チャイナリスクを回避する好機かもしれない。

iPS細胞の大量培養に成功 京大、タンクで量産目指す

2014-04-25 11:27:30 | 日記
 ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)を、高い品質を保ちながら大量培養する新技術を京都大などのグループが開発した。従来の技術より生産規模を拡大しやすく、大量のiPS細胞が必要な脊髄(せきずい)損傷などの再生医療に適した量を安定供給する実用システムにつながると期待される。米科学誌ステムセルリポーツ電子版に25日発表する。

 iPS細胞は無限に増える能力を持つが、量産は難しい。培養皿で増やす方法では一枚で得られる量が限られる。底の深い容器に培養液を入れて増やそうとすると細胞が底に沈んで増えなくなる。沈まないようにかき混ぜると細胞が傷つくおそれがある。また、細胞の塊が大きくなると内部まで栄養が届かなくなる。

 京大の中辻憲夫教授(幹細胞生物学)らは、食品添加物に使われる増粘剤を培養液に加えると細胞が沈まなくなることを発見。別の添加剤で細胞の塊同士をくっつきにくくさせ、大きくなった塊を網目に通して安全にバラバラにする技術も確立した。その結果、培養液200ミリリットルの容器で、直径10センチの培養皿約20枚分の高品質なiPS細胞を得ることに成功した。

 中辻さんは「容器を大きくして培養液を増やせば量産につながる」と話す。企業と連携し、3年以内に大型タンクで大量培養するシステム作りをめざす。(阿部彰芳)

朝日新聞デジタル 4月25日(金)5時43分配信

<商船三井船差し押さえ>数十億円支払い 供託金、中国側に

2014-04-24 07:42:53 | 日記
font size="3">
 【北京・工藤哲】中国上海海事法院(裁判所)が「商船三井」所有の船舶1隻を浙江省の港で差し押さえていた問題で、商船三井は、裁判所が決定した29億円余りに金利を加えた数十億円を供託金として中国側に支払った。日中関係筋が23日明らかにした。

 関係筋によると、商船三井側は、差し押さえの状態が続けば業務への支障が大きいと判断し、中国側と交渉し、解決策を探ってきたとみられる。

 この訴訟は、日中戦争開始前年の1936年に、日本の海運会社に船を貸した中国の船会社経営者の親族が、未払い賃料の賠償を求めて88年に提訴。商船三井側は、旧日本軍に徴用されたことで契約は終了したと主張していた。

 海事法院は2007年12月、商船三井の主張を退け1億9000万元(当時のレートで約29億円)の支払いを命じていた。親族は日本の裁判所で損害賠償を求めていたが、敗訴したため上海で提訴していた。

 訴訟は10年12月に確定。上海海事法院は11年12月に差し押さえの執行通知を出していた。この間、双方で和解協議をしていたが合意に至らず、法院側は差し押さえに踏み切った。差し押さえられた船は鉄鋼メーカー向けの専用船で、豪州から中国に鉄鉱石を運ぶのに使われていた。
毎日新聞 4月24日(木)0時59分配信

これで、図に乗っていく中国は又同じことを繰り返すだろう。<

中国は運搬船を接収して軍艦に改造するつもりだろう。

2014-04-21 09:07:14 | 日記
中国:日本船差し押さえ 戦前賃料未払いで 商船三井の1隻

 【上海・隅俊之】日中戦争開始前年の1936年に日本の海運会社に船を貸した中国の船会社経営者の親族が、未払い賃料の賠償を求め勝訴した訴訟で上海海事法院(裁判所)は20日までに、この海運会社を引き継いだ「商船三井」所有の船舶1隻(載貨重量約22万6000トン)を浙江省の港で差し押さえたと発表した。日中戦争時の賠償請求訴訟で日本企業の資産が差し押さえられるのは初めてとみられる。

 中国では最近、戦時中に日本に強制連行された中国人が日本企業に損害賠償を求める集団訴訟が起きている。こうした訴訟で日本企業の敗訴が確定した場合、中国国内にある資産が差し押さえられる可能性もあり、中国に進出する日本企業に懸念が広がりそうだ。

 中国の船会社は36年、日本の海運会社「大同海運」に2隻を1年間貸す契約を締結。だが、日中戦争が本格化した翌37年、2隻は旧日本軍に徴用され最終的に船は沈没した。

 中国の船会社の親族は88年、契約終了後も賃料を払わず、使用されたとして提訴。商船三井は、旧日本軍に徴用されたことで契約は終了したと主張したが、上海海事法院は2007年12月、商船三井の主張を退け1億9000万元(当時のレートで約29億円)の支払いを命じていた。親族は日本の裁判所で損害賠償を求めていたが、敗訴したため上海で提訴していた。

 訴訟は10年12月確定。上海海事法院は11年12月に差し押さえの執行通知を出していた。この間、和解協議をしていたが合意に至らず、差し押さえを実行。商船三井が賠償の支払いに応じない場合は船を売却するなどするという。差し押さえられた船は中国の鉄鋼メーカー向けの専用船で、オーストラリアから中国に鉄鉱石を運ぶのに使われていた。




商船三井の船差し押さえ 国際司法裁判所に政府が提訴を検討


習近平政権による最近の日本非難の動き


 戦後補償をめぐる訴訟で中国の上海海事法院が商船三井の船舶を差し押さえたことに対し、日本政府は昭和47(1972)年の日中共同声明ですでに「解決済み」となっていた日中間の損害賠償問題を中国側が蒸し返したとして警戒を強めている。近く中国に外交ルートを通じて抗議。国際司法裁判所(ICJ)への提訴も視野に対抗措置を検討している。

 政府高官は20日、差し押さえについて「国内外からの中国への投資はどんどん減る」と牽制(けんせい)した上で、「ダメージは中国の方が大きい。やり過ぎだ」と不快感を示した。

 政府は「日中間の請求権の問題は、日中共同声明後、存在していない」(菅義偉(すがよしひで)官房長官)との立場。しかし、中国司法当局が戦時中の「強制連行」をめぐる対日訴訟で3月に訴状を受理して以降、今回の案件で差し押さえに踏み切る可能性もあるとみて、早くからICJへの提訴を含む対応を検討していた。

 中国では戦時中に日本に「強制連行」されたとする当事者らによる日本企業への提訴が続いており、このまま放置すれば日本企業の資産の差し押さえが相次ぎかねないためだ。

 ICJに日本が提訴し、中国側が審理を拒む場合、中国側には拒否理由を説明する義務が生じる。日本側はこうした点も踏まえ、まずは外交ルートによる抗議などを通じ、中国側に理性的な対応を求めていく考えだ。

産経新聞 4月21日(月)7時55分配信

外国人から珍重される日も遠くない?世界が真似できない「日本の卵」の凄さ

2014-04-20 10:29:27 | 日記
日本の卵が世界に誇れる理由は、国産食材の安全性を象徴しているからだ。外国では基本的に卵の生食を勧めていないが(殺菌された卵はある)、日本は生食を基準としている。たしかに日常的に卵を生食する食習慣があるのは世界広しといえど日本だけ、とはいっても、これはすごいことだ。

 かつて外国人から刺身を食べることを『魚を生食するなんて野蛮』と揶揄されたこともあった。しかし、今では世界中の誰もが寿司に夢中だ。時代が変われば人の認識も変わる。そのうち日本の卵も外国人から珍重される時代が来るかもしれない。

 なにより日本人は卵が大好きだ。数年前の調査だが、1人あたりの鶏卵消費量は世界2位という数字も出ている(ちなみに1位はメキシコ)。最近は消費量が低下していく傾向があるが、それでも少なくない数字である。

 ところで、日本人はいつからこれほどの量の卵を食べるようになってきたのだろう。古い日本映画のなかで病気の人のお祝いに卵を持っていく、というシーンを見たことがあるが、かつて──戦後まもなくくらいまでは──卵はそれなりに高級な食べ物だった。

 まもなくして食事情がよくなってくると、卵の消費量は伸び続ける。消費が伸びれば普通、価格は上昇するが、鶏卵の価格は落ち着いていた。

 大きな理由は昭和30年代に起きた飼育法の変化だ。産卵効率の高いニワトリの導入。さらにはそれまでの『平飼い』から『ケージ飼い』に変わり、生産管理が容易になった。餌もアメリカから入ってきた飼料用の安価なトウモロコシに変わった。その結果、大量生産が可能になった。

 そうして卵は『物価の優等生』と呼ばれるに至る。一方で大量生産、大量消費の流れのなかで、コスト的に太刀打ちできない小規模な養鶏場は姿を消していった。

「物価の優等生」を襲う価格上昇の波

 そんな鶏卵事情に変化が起きているのはご存知だろうか? このところ鶏卵価格が上昇しているのだ。

 きっかけは2004年の鳥インフルエンザウイルス。その後も、東日本大震災の影響、また餌となる輸入トウモロコシの価格上昇の影響を受けた。また昨年、夏の猛暑でニワトリが減ったこと、生産調整に失敗したことなどを、3月6日付けの朝日新聞は伝えている。

 戦後の安定した成長を支えてきた『物価の優等生』に起きた変化は、時代の転換点を象徴しているように思う。今後、バイオエタノールなどの需要増が見込まれるトウモロコシに、価格が下がる要因はない。つまり、今までように卵は安価だと喜んでいるだけでいられなくなってきているのである。

 ここで立ち止まり、改めて卵をめぐる状況を考え直そう。

ご存知のようにニワトリたちはいわば経済動物として、今日もケージのなかで卵を産み続けている。安全な無菌状態にされたニワトリたちは、商品を生産する歯車の一部。そうした企業養鶏の努力によって卵の価格は守られてきたのだ。

 でも、大量生産して価格を安定させることは、はたして正しいことなのだろうか?

 卵とはなんだろう。そもそものところから考える必要がある。

 茨城県、石岡市八郷地区。石岡駅から車で20分あまり、里山の風景が織りなす、のどかな雰囲気の道を進むと『魚住農園はこちら』という小さな看板が見えてきた。坂道を上ると、鶏舎と畑、そして農園の主である魚住さん家族の住む母屋がある。


左から魚住道郎さん、美智子さん、昌孝さん。少しずつ理想とする家族農業を実現している。時間さえあえば見学なども快く受け入れてくれるので、いつも僕も勉強させていただいてます

 魚住農園の魚住道郎さんは日本の有機農業の第一人者の1人。メガネにまっ白な髪で、ぱっと見るとちょっと教師風の難しそうな雰囲気があるが、話をしてみるとわりとお茶目なところのある人だ。今は奥様の美智子さんと最近、結婚したばかりの息子、昌孝さん、文さん夫婦と家族で農園を営んでいる。

「一昨日もイギリスのBBCから取材が来てました。今年のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の会議に際して『気候変動がどれくらい有機農業に影響を及ぼすのか』ということで」

 魚住さんはその世界では有名な人だ。気候変動は国際的な課題のひとつ。夏の猛暑でニワトリが大量死したニュースは記憶に新しい。野菜の価格も気候変動によって大きく上下している。

「うちにはさほどの影響はありません、とお話しました。たしかに温暖化の影響などによって種まきの時期は徐々に変わっていくなどの変化はあります。むしろ、影響を受けるのは有機農業よりも、慣行農業でしょうね」

 有機農業の特徴のひとつは多品種栽培である、ということ。気候変動の影響を受けると一気に被害を受ける単一栽培とは違い、リスクを分散できるため、安定して野菜が出荷できている、というわけだ。

──今日は卵の現場を見学させていただこうと思いまして。

「じゃあ、さっそく鶏舎を見てみますか?」

餌は国産の材料ばかり
純日本風の食生活を送るニワトリ達

 鶏舎は小部屋が連なる長屋風の建物だ。ニワトリたちはそれぞれの部屋で、元気にしている。ちなみにヒヨコたちは一番、手前の部屋で育てられる。大きくなるまではこたつで寒さをしのぐそう。こたつで温まるひよこ達の姿を想像するとなんだかかわいい。

ニワトリ達が食べる餌は、すべて国産の材料だ。餌として与えられるのは酒糠(米の粉)、糠、小麦、鮭の魚粉にかき殻、貝化石、大豆。それに自家製醤油の絞りかすと近くの牧場でつくっているチーズの絞りかす(乳清)など。それを基本として、農園で育てられている野菜が与えられる。

「トウモロコシを与えなければ美味しい卵はできない、という意見もあって、すべて国産に変えたときは不安もあったのですが、元気に育ってくれます。卵の味もいいようです」

 米と魚、それに野菜を食べて育つニワトリたちは、純日本風の食生活である。すべて国産品だけでつくられた献立なんて、贅沢なのかもしれない。

 この日はキャベツなどを与えたが、放り込むとニワトリたちは喜んで(いるように僕には見える)ついばむ。

「大型の養鶏場だとクチバシを切ってしまうところがあるけれど、やっぱり餌をついばむにはクチバシがあったほうがいい。カブや大根などの固い野菜でも、クチバシがあればニワトリたちは問題なく食べてしまいます。あとはミネラルを摂取させるために落ち葉などを発酵させた腐葉土も与えます」

 毎日、与える野菜のお陰で、ニワトリたちの体調は整う。野菜を食べることで、フンの匂いも和らぐのは、人間と一緒だ。ニワトリの足下にはもみ殻と腐葉土が敷かれているが、動き回るニワトリたちがそれを踏んでかき混ぜる。結果、落ちたフンなどがあわさって、発酵が進み、自然に分解される。だから鶏舎に悪臭はない。

「自然分解できる範囲の飼育数というのが重要。ニワトリたちがつくってくれる堆肥は作物を健康に育ててくれます。ニワトリも循環、自然のサイクルの一部なんです。卵はその副産物といっていい」


日が差し込み、風が通るようになっている鶏舎。快適な環境がニワトリのストレス軽減に重要なのはいうまでもない

 重要なのは薬を飲ませることでも、無菌状態に置くことでもなく、ニワトリを健康でストレスのない状態にすることだ。薬を投与しているわけではないので、サルモネラ菌による汚染の心配もないわけではない。抜き打ちの検査もしているが、目立ったトラブルはない。

 サルモネラ菌とニワトリのストレスには相関関係がある。ストレスをかけないことがニワトリの免疫力を高めているのかもしれない。

 小屋の奥には産みたての卵があった。大きくなったニワトリの卵は大きく、若いニワトリの卵は小さく固い。ひとつひとつ違う形であり、新しい命なのだと思わされる。スーパーでパック詰めを買っているだけではなかなか気づかないかもしれない。

有機農業を通して豊かになる方法とは?
生産者と消費者が直接つながる「提携」も

「トウモロコシを使った大量飼育。また、農薬や化学肥料を使った単一品種作物の大量生産は経済的には正しいのかもしれない。でも、そうした方法が環境問題をはじめ、様々な弊害を産み出してきたには事実です。もう少し豊かになれる方法があるんじゃないか、と思います」

 有機農業の第一人者として、現在の状況にも苦言を呈する。

「有機農業が流行って有機認証マークがついた商品がたくさん流通すればいい、というわけじゃない。それじゃ、グローバル経済のなかに野菜を放り込んでいるだけ。そうすれば価格競争の同じ過ちを繰り返すだけですよ」

 生産地をまわって感じることだが、有機農業、慣行農業と一言でくくることは難しい。驚くほど多様な生産現場のなかで、消費者は情報の少ないなか、よりいいものを選ばなければいけなくなりつつあるように思う。

 話を伺っている途中も、ニワトリの鳴き声が聞こえる。卵を産むわけではない雄鳥も何羽か小屋のなかにいるからだ。

「雄鳥は普段、訳に立たないんだけど、いないと雌鳥の落ち着きがなくなるんです」と料理をつくってくれた美智子さんが説明してくれる。「大昔の話ですけど、野外に鶏を放していたのね。そしたら雄鳥がいない日は一晩で野鳥にやられてしまったことがあったの。あんな雄でも雌を守っていたのかもしれないなぁ、なんてって思って」

 ちなみに雄はたくさんいすぎても喧嘩をはじめるので、少ない方がいい、とのこと。このあたり、人間社会に照らし合わせするとどうだろう?

「農園から届けられる段ボールのなかに卵が入っているとやっぱり喜ばれますよ。野菜セット、食卓が豊かになるよね」

 魚住農園から卵だけを購入することはできない。他の有機農家と同じように「提携」という方法をとっているからだ。

 提携とは日本の有機農業の初期からある考え方で、市場経済に振り回されがちなモノカルチャー農業ではなく、他品種少量栽培の有機農業に適したやり方を模索していくなかで生まれた。農業生産物を一般の市場に流すことなく生産者と消費者が直接つながる。その結果、生産者は収入の安定を図れるし、消費者は様々な旬の生産物を味わえるというメリットがある。また経済から食べ物を切り離すシステムでもある。

「先日のBBCからきた方も提携という言葉はご存知で、関心を持たれていました。どうやら日本的な考え方のように映るようです。提携というのは消費者に自分の農園を持ってもらうことです。普段は都会に暮らしていてもたまにはこうして来てもらって、里山の景色に触れるのもいいでしょ?」

 魚住さんはそういって笑う。

「一年に一度、サポーター(提携している消費者)の方に手伝ってもらって、山の落ち葉拾いをします。落ち葉を発酵させて腐葉土にします。それは苗木を育てるのに使い、そのあと畑の土になるわけです。皆さんに集めてもらったこの落ち葉はお金で買うことができません」

大規模化で「日本らしい味」は作れない
“日本オリジナル”の模索へ

 経済が世界的に行き詰まっているなかで、どうしたら幸せに暮らせるかを人々は真剣に考えはじめている。どこまでを経済という流れに預けるのがいいのか、それとも切り離すか。どうすればみんなが──ニワトリも含めて──幸せになれるのだろう。

「私は近代的なものや、経済そのものを否定しているわけではありません」と魚住さんは言う。「農業には機械を使いますし、消費者に野菜を運ぶ宅配業者のトラックだって必要です。ただ今のような消費者と生産者、あるいは自然との繋がりがすべて絶たれている現状には疑問があります。有機農業運動にはそうした社会を変えていく力があると思うのです」

 もう一度、冒頭の疑問を繰り返してみる。卵とはなんだろう? 答えは簡単だ。卵とはニワトリが産み出した新しい命だ。命という点では野菜も肉も魚も同じだけれども、そうしたものを経済のまな板に載せることは正しいこととは思えない。

 魚住農園でランチをご馳走になった。柑橘が入ったコールスローサラダに、きんぴらゴボウ。一般市場には出回らない茎の太い小松菜のお浸しに、焼き魚。どれも美味しく、舌だけではなく、心も満たされる。

 温かいご飯に農園で育った大豆と麦でつくった醤油と初卵をかけた卵かけご飯を食べた。国産の食材、米と魚、野菜を食べて育った魚住農園の卵は淡い黄色をしている。さらっとしていて油っこくない。まさに日本の味だ。

 卵の味は実は餌で決まる。かつて昭和40年代に来日したフランス人シェフが「日本の卵は魚臭くて使えない!」と怒ったという話を聞いたことがある。当時はニワトリに脂を絞りとった鰯の残渣を大量に食べさせていたので、卵から鰯の味がしたのだろう。

最近は濃い色の卵黄が人気だ。黄身の色はパプリカやにんじんを大量に与えれば、簡単に変えることができる。トウモロコシをたくさん食べさせれば濃厚な味になる。そうしてつくられた味の卵は不自然な感じもするが、喜んで食べる人もいる。味は結局のところ、好みの問題だから難しい。

 おそらくほとんどの日本人が「農業は大事だ」と考えてはいる。しかし、どこか自分たちから遠い存在のように思える。おそらく食べ物をつくる現場が、あまりにも自分たちの暮らしから離れていてしまったせいかもしれない。

 卵かけご飯を食べながらこんなことを考えた。

 農業には課題が山積している。課題のいくつかを解決するために、大規模化し、合理化を推し進め、国際競争力を高めるというのも、たしかに方法のひとつだ。しかし、それが唯一の答えだ、と考えるのは早急ではないだろうか。

 卵は典型的な例だが、大規模なやり方では日本らしい味がつくれない。これだけ日本の味が世界から注目されるなかで、それを捨ててしまうことは、強みを自ら捨てることと同じである。農業を生き残らせる方法は諸外国の真似をすることだけではないはずだ。日本オリジナルのやり方があるはずなのだ。

 日本オリジナル。それを見つけるためには消費者も変わる必要がある。僕らは農業への関心と理解をもう少し深める必要があるのだ。そして、いつも卵を食べるときに、少しだけ産んだニワトリのことを考えてみよう。そして新しい命を頂くことに、もう少しだけ感謝をしよう。
DAIAMOND ON LINE ニッポン 食の遺餐探訪
【第17回】 2014年4月2日 樋口直哉 [小説家・料理人]

【第17回】 外国人から珍重される日も遠くない?
世界が真似できない「日本の卵」の凄さ 

[2014年04月02日]
日本の卵が世界に誇れる理由は、国産食材の安全性を象徴しているからだ。外国では卵の生食を勧めていないが、日本は生食が基準であることからも明らかだろう。しかし、そんな鶏卵事情に変化が起きている。鶏卵価格が上昇しているのだ。



【第15回】 “消えゆく業界”から海外シェフ注目の食材へ
日本の食文化を守る「幻の昆布問屋」 

[2014年03月19日]
今、世界のシェフたちが「昆布」に関心を寄せている。カロリーゼロ、豊富な旨味、日本にしかない神秘性が彼らを惹き寄せる。そんな昆布が世界から注目されることになった立役者の1人が、福井県敦賀の昆布問屋『奥井海生堂』社長・奥井隆さんだ。


【第15回】 おいしいお茶は“磨けば光る石”の集合体
茶葉の敏腕プロデューサー「茶師」の仕事 

[2014年02月05日]
「お茶は難しいですね」。静岡市にある茶問屋〈やまはち〉の事務室でお話を伺っている途中、茶師の前田さんは何度も「難しい」という言葉を繰り返した。前田さんは日本屈指の茶作りの匠と評される人物。そんな人が「難しい」と言うのだ。


【第14回】 広島産、厚岸産に負けない味を宮城でも
三陸の若き「カキ養殖家」の逆襲 

[2014年01月08日]
「三陸のカキ養殖場を廻りませんか?」2013年の11月。ヤフーの復興支援室の方に誘われて、三陸のカキ養殖場をいくつか見学した。まわっていて気がついたのは、その味わいがかの有名な広島産にも劣らないということだった。


【第13回】 誤った環境意識で危機に瀕する木の「折箱」から知る
「日本は資源の乏しい国」という幻想 

[2013年12月04日]
僕が子どもの頃、「日本は資源の乏しい国です」と教わった。でも、日本は本当に資源の乏しい国なのか?なぜそんなことを考えたか。それは取材した『折箱』という器は日本が森林資源を有効に使えなくなったことを象徴していると考えたからだ。


【第12回】 大根、ニンジン…に砂糖をまぶした江戸からの逸品
「野菜菓子」に見るレシピのない味の伝承 

[2013年11月06日]
簡素な箱のなかに砂糖がまぶされた野菜が肩を寄せ合うようにして詰まっている。淡い野菜の色合いがきれいだ。梅鉢屋の『野菜菓子』は江戸時代から続くお菓子。野菜をつかったお菓子は最近定着したが、江戸時代からあったとは知らなかった。


【第11回】 世界が認める“日本人らしさ”とは何か
「馬毛の漉し器」が象徴する我々の武器 

[2013年10月02日]
外国で働く日本人シェフは、「日本人らしさ」を求められるという。その「日本人らしさ」とは何か。それは「日本人の繊細な味覚を通した料理」なのだという。今回、紹介するのはそんな日本の繊細さを象徴している道具『馬毛の漉し器』である。


【第10回】 鍋界の“ロールス・ロイス”
「銅鍋」が日常から影をひそめた理由 

[2013年09月04日]
「芸術品をつくる人はともかく、道具をつくる人は減っていくと思うよ」。浅草・銅銀銅器店の三代目、星野保さんがいかにも江戸っ子という、べらんめえ口調で言う。鍋の中でも優れた性質を持つ銅鍋だが、なぜか最近使われなくなってしまった。


【第9回】 日本独特の道具「巻きす」に見る
“ムダ”が美しさを生む日本のものづくり 

[2013年08月07日]
巻きすは、日本独特の道具である。日本料理では、巻き寿司をつくるときはもちろん、大根おろしや茹でたホウレン草の水気を絞ったりもする。そんな巻きすはどこで作っているのか疑問に思い検索すると、一軒の簾屋「田中製簾所」がヒットした。


【第8回】 日本人が愛する「昭和の麦茶」で世界を目指す
暑い職場で働く麦茶焙煎職人の熱さ 

[2013年07月03日]
貴族の飲み物だった麦茶は江戸時代から屋台で飲まれ出した。一般家庭の定番になったのは、昭和30年代、冷蔵庫が普及してから。そんな昔ながらの煮出し麦茶をつくる小川産業を訪ねると、古い木造の工場で大きな音を立てながら麦茶が煎られていた。


【第7回】 西洋の歯ブラシの伝播、安価な中国製品の台頭…
なぜ「楊枝職人」は2度の危機を乗り越えられたのか 

[2013年06月05日]
千葉県君津市久留里の城下町では、江戸時代から武士の内職として、楊枝作りが行われていた。ここでつくられているのは〈雨城楊枝〉と命名された高級楊枝だ。しかしこの雨城楊枝、今日に至るまでに2度の大きな危機に襲われていた。


【第6回】 永く使える国産の刷毛・ブラシは高いか、安いか
日本の遺産を支える「ブラシ」職人のこだわり 

[2013年05月08日]
上野駅から合羽橋道具街へとのびる浅草通りを歩き、稲荷町の駅を抜けたあたりにある『宮川刷毛ブラシ製作所』には様々な種類の刷毛とブラシが並ぶ。普段はあまり存在感のない刷毛だが、じつは伝統的な日本の美を支える重要な要素である。


【第5回】 時代を越えて再び“輸出産業”へ
100年生き残る「硝子メーカー」のしたたかさ 

[2013年04月03日]
戦後、ガラス産業は東京の一大産業となり、数多くのガラス製品が輸出され、神武景気を支えた。その後、輸出は減少し、海外から安価な製品が輸入されるようになったが、今再び海外から評価され、製品を輸出するガラスメーカーが東京にある。


【第4回】 『巨人・大鵬・卵焼き』の時代から
卵焼きだけがずっと愛されてきた理由 

[2013年03月06日]
『巨人・大鵬・卵焼き』の時代には〈幸せな暮らし〉という言葉のイメージに、ある程度の普遍性があったように思える。時が過ぎて、巨人人気のピークは過ぎ去り、大鵬さんは先ほど亡くなった。それでも人気を保ち続けているのが「卵焼き」だ。


【第3回】 外国人が嫌う“黒い紙”とは何が違うか
品評会優勝の若き海苔師がつくる極上の「海苔」 

[2013年02月06日]
寿司が世界に広まって久しいが、そんななかにあっていまいちブームに乗りきれなかった存在が「海苔」である。外国人には黒い紙とも揶揄されることも多いが、宮城県東松島市で、パリパリしているのに口に入れると消えてしまう極上の海苔を見つけた。


【第2回】 子どもの学費を稼ぐために元広告マンが脱サラ!?
不況に強い「麩」職人の知られざる秘密 

[2013年01月09日]
麩というのは実に地味な存在だ。しかし、そんなイメージを払拭するような「すごい麩」が西会津にある。その麩をつくる職人は、麩とは縁もゆかりもなかった元広告マン。彼がその道に進んだのは、「子どもの大学進学資金を稼ぐため」だった。


【第1回】 名脇役だけど地味で儲からない世界
日本独特の道具「おろし金」職人が生き残れた理由 

[2012年12月05日]
日本料理は特徴的である、とよくいわれる。例えば「おろす」という調理法はフランス料理や中国料理にもない。そもそもおろし金という道具自体、日本にしか存在しないらしい。だからなのか、成田空港でやたらおろし金が売れたことがあったという。