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徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

あれは…春…。

2007-03-29 21:58:00 | ひとりごと
 あれは…高校生の春…。 ぽかぽか陽気の午後のこと…。
校庭で準備運動を終えると部員みんなで一斉に学校の外へ走り出た…。

 通常は練習場で部活を行うのだが、体力と持久力をつけるため、たまに学校の外を走る…。
給水塔のある林であったり、近くの神社であったり、行き先は様々だが、普段の練習とはまた違って、体力的にはしんどいけれど気分的にはゆったりしていた…。

 その日は外回りで…みんなして学校のマラソンコースを走った…。
田舎の学校だから…マラソンコースには用水路あり…畑あり…田んぼあり…。
それらを眺めながら自分のペースで走る…。

 常勝校のような厳しい部活ではないので、タイムがどうのは問われない…。
決められた距離を走ればいい…。

 もくもくと走る部員もいれば、友達同士談笑しながら走っている部員もいる。
外回りの時には、先輩も後輩もわりとのんびりしていた…。

 中学まで運動していなかったから…体力不足で走るのが苦手…。
決して嫌いではないのだが…のろい…。
まあ…一応は運動部員なので…校内でビリッケツ…にはならないけれど…。

一緒に走っていた友だちと自分がマラソンコースのちょうど中ごろに差し掛かった時…目の前に果樹園が見えた…。

それも…見事に花盛りの林檎園…。

林檎の花を初めて間近に見た…。
北の方では五月頃に咲く花も…この辺りでは少しばかり早いのだろうか…。

白い肌にほんのり紅差したような…得も言われぬ艶やかな花びら…。
匂い立つ中にも…初々しい乙女の恥じらいを秘めた…花…。

果樹園を横目に走りながら…少しときめく…。


この先のなだらかな坂が一番苦しいんだて…。

…と…不意に友だちが言った。

急な坂でもないのに確かに足に来る…。
マラソンコースの三分の二を過ぎた辺り…。
ぽかぽかお日さまは持久走にはきつい…。

けれども…この道の片側には竹やぶ…片側には民家の綺麗な庭がある…。

竹は優しく陰を作り…走る者たちに風を送ってくれた…。
さわさわと音を立て吹き抜ける風…。
庭にまだ残る梅の花…。

梅…? 
いや…梅に似た花だったのかも…知れない…。

あの角を曲がると校舎へ向かう最大の坂…。
その坂の途中にも藪があり…小鳥の憩うせせらぎを包んでいる…。

頑張って…あと少し…。
畑を越せば…すぐ…そこ…。

校舎はほら…眼の前だ…。