【ストーリー】
デンマーク。コペンハーゲン近郊のとある街。新任牧師アンドレアス、ホテルのフロント係ヨ―ゲン、美容師のカーレン、パン屋に勤めるオリンピア、スタジアム・レストランに勤めるハル、ウェイトレスのジュリア。彼らは仕事、恋愛、家族などさまざまなトラブルや悩みを抱え、うつむき加減な日々を送っていた。そんな彼らが週に一度のイタリア語の初級講座へ通うことに。いくつもの出来事や偶然の中で、講座に集まる人との触れ合いを通じて、彼らの中で何かが少しずつ変わってゆく…。
とりたてて盛り上がる場面がある訳ではないのに、のめりこむようにして見てしまった。
それはきっと、誰にでもおこりうる現実を描いていて、悲しいはずなのにちょっと笑えるような人生に共感するからではないかしらん?
等身大の登場人物が泣いたり悩んだりもがいたりする姿を、自分と重ねあわせてしまうからではないかしらん?
私個人としてはアンドレアスが一番印象的な存在だった。
温厚な彼が老牧神に「あなたはエゴイストだ」と言い放つシーンは、ちょっと驚いたとともに哀れを感じた。
老牧師は妻を亡くし、神を信じなくなったけれど、アンドレアスだって同じように妻を亡くしていたのだ。
「牧師」という職業ゆえ、何かあるとみんなアンドレアスに相談していたけれど、アンドレアスだって妻を失った悲しみから逃れられず、苦しんでいたのだ。
そのアンドレアスがオリンピアに見せた優しさは、涙ものである。
店のパンのトレイをひっくり返し、おまけに卵までひっくり返したオリンピアがアンドレアスのところへやってくる。そして「私は解決する力がないの。役立たずなの」と泣くのだ。
そんなオリンピアにアンドレアスは「君はずば抜けていないだけだよ。さて僕に何ができるかな?まず涙を拭くティッシュを。次はコーヒーかな。パンはやめておこうか。また落とすといけないからね」と優しく微笑みながら言うのだ。
ううう~~~ん!アンドレアス!最高!
「私が後妻になります!!!」と立候補したくなるほど、素敵だった。
さて、すったもんだと色々あった末に、イタリア語講座の仲間たちはベネチアまで旅行に出かけることになる。
旅というのは不思議な力がある。
それぞれが「この旅で、素直になろう。勇気を出して伝えよう」としていた。
それぞれが、一歩前に進もうとしていたのだ。
だがこの旅先でみんながみんなハッピーエンドになるわけではない。
幸せを掴みかけたような、幸せを予感させるような感じで幕を閉じるラストがいいのだ。
しかし…パン屋に勤めるオリンピア…。
あれは不器用を通り越している気がしたけどなあ…。
「不器用だから」ですませていて、努力をしているようには見えなかったけど。