オバサンは熱しやすく涙もろい

とてつもなくミーハー。夢見るのはお気楽生活

「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」

2008-04-23 03:02:03 | 
先日「つぐない」を観てきたのですが、どう感想を書いていいものやらさっぱり見当がつきません・・・(汗)。
マカヴォイちゃんの表情は素晴らしかったのですが、どちらかというと「ペネロピ」のマカヴォイちゃんの方がワタシは好みです。


というわけで、またまた本の話です。

宮部みゆき氏が海外のホラー小説の古典、有名作品を中心にセレクトしたアンソロジー「贈る物語 Terror」の中の一編です。

ワタシは怖がりなのに読むホラーは結構好きなんです(映画のホラーはダメなんですが)。
じゃあホラー小説を山ほど読んでいるのかというと、実は殆ど読んでいないのですが(笑)。


この話はまずタイトルに惹かれました。
昨今、映画の邦題は「なんじゃこりゃ~!」というセンスの悪いものばかりですが(特に「○○の作り方」とか「○○の選び方」とかは最悪だと思いますね)、この小説はタイトルだけでまず読む側の心に期待と好奇を抱かせてくれるように思えます。

作者はデイヴィッド・マレル。
宮部氏によると映画「ランボー」の原作「一人だけの軍隊」を書いた作家らしいです。


ストーリーはというと・・・アイオワの大学院に通う主人公が、学友のマイヤーズに「画家のファン・ドールンの論文を書こうと思うのだが」と告げられたところから始まる。
ファン・ドールンというのは、19世紀末に勢いを得た印象主義にぞくしてはいたが、それよりもさらにものとものとのあいだに差異がないことを強調し、強烈な色彩で独特の世界を描き出した画家であった。
だが彼は同時代の評論家には全く不人気だった。
彼は貧窮にあえぎ、最後には発狂して自分の目をえぐり出して死んでしまう。
彼の作品が認められるようになったのは、没後30年もたってからのことであった。

マイヤーズは「ファン・ドールンが最終的に自分の目をえぐり出して死んだように、彼の評論家たちもみなめいめいに彼のような絵を描こうとし、自身の目をえぐりだして死んだ」ことを知り「彼の絵には秘密がある。オレはそれを詳しく調べようと思うんだ」と主人公に告げる。
そして置手紙を残し、マイヤーズは主人公の元から消えてしまう・・・。

マイヤーズは結果的にファン・ドールンの秘密を解明するのだが、それは死を意味するものであった。
主人公は何故マイヤーズが死んだのか、そしてファン・ドールンの秘密とは何なのかを調べ出すのだが・・・というお話。
まあ知的好奇心が、結果的に災いしてしまった(まあ人によっては災いではないのかも?)・・・ということなんですね。


宮部氏は「デイヴィッド・マレルの文章はちょっと角ばっていてとっつきにくい感じがする」とおっしゃってますが、その角ばったクールな感じがピーンと張り詰めた空間を感じさせ、じわじわと恐怖心と好奇心を煽る形になっていると思います。
ファン・ドールンの秘密というのは「なーんだ」というようなオチでもあり、また妙に納得させられるようなオチでもある・・・そんな感じです。
でも文章に無駄がなく最後もきっちり締めくくられていて、ホラー短編としては完成度が高いのではないですかね?これを映画化したらかなり面白いと思います。
作家のデイヴィッド・マレルという人の描写力がすごいのか、浅倉久志氏の翻訳が素晴らしいのか、双方なのかわからないのですが、文章を読んでいるとファン・ドールンの絵のイメージが頭の中に強烈な色彩を放ちながら浮かんでくる・・・というところもすごいなあと思いましたね。

マイヤーズは痩せていて赤毛・・・と書いてあったのですが、取り立てて特徴のないようなイメージが自分の中にはあります。
でもファン・ドールンと主人公は同じイメージなんですよね。二人がダブって見えるんですよ。
あくまでもワタシが感じたことなんですけれど。
そして物語を読み出して主人公としてすぐ頭の中にこの人の姿が浮かびました。



ポール・ベタニー。
この人が目の痛くなるようなオレンジとブルー・・・つまり狂気と苦悩に塗りたくられたカンバスに囲まれて、目にハサミを突き刺そうとしている姿が浮かんで頭から離せません。
彼の色素の欠落したような白い肌や、向こうが透けて見えそうなブロンドには、真っ赤な血・・・鮮血が似合うような気がするんですよね。


ああ・・・長くなってしまいました。
最後まで読んでくれた、もの好きな人・・・いるのかなあ(笑)?
最後まで読んでくれた人、ありがとう~~。
コメント (22)
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時代小説にはまる。「あかんべえ」

2008-04-19 21:52:56 | 
先日病院に精密検査を受けに行ったのだが、待合室で長く待たされるであろうことを見越して、何とはなしに購入したのが宮部みゆき氏の「あかんべえ」。

彼女の作品は殆ど読んでいるのだが、時代小説だけは避けていた。
今考えるとどうして避けていたのか理由が定かでない。
20代の初めに坂本竜馬と土方歳三にはまり、彼らの名のつくものは片っ端から読んだという過去があり、あまりに一気に読みすぎて飽きがきて今までたたっていたのかも。


 

さて「あかんべえ」。
江戸・深川の料理屋「ふね屋」が舞台。
太一郎は、賄い屋「高田屋」から独立し、深川で「ふね屋」という料理屋をはじめるのだが、その店の船出ともいえる宴の席で、突然抜き身の刀が暴れ出し、座敷を滅茶苦茶にされてしまう。
「ふね屋」はお化けが出る店として人々の噂にのぼり、客足が途絶えてしまった。

そのふね屋の一人娘の名をおりんと言う。
おりんには不思議な力が備わっていた。
なんとおりんにはお化けの姿が見えるのである。

ふね屋には沢山のお化けが住んで(?)いた。
おりんよりずっと小柄な女の子のお化け。
二十歳くらいの美男子の若いお侍のお化け。
あんまのお化けや、あだっぽい姐さんのお化けや、刀を持って暴れるお化け・・・などなど。
おりんにはその全てのお化けの姿が見えた。

だがそのお化けたちが何故ふね屋に住んでいるのか、おりんには全くわからない。
当のお化けたちも自分たちが何故そこにいるのかわからない。
そのお化けたちと話をするうちに、おりんはふね屋に現れるお化けたちには何が繋がりがあるのではないかと思うようになる。
おりんは過去にふね屋の土地で何があったのかを調べるうちに、驚くべき事実を知る・・・というお話。

お化けたちと、生きている人間たちの業をからませ、話はテンポよく進んでいく。
イマジネーションを膨らませてくれる、温かみのある宮部さんの文章はやっぱり素晴らしいし、中盤までは「相変わらず読ませてくれるよなあ」と思うのだが、ラストがちょっと惜しい気がする。
中盤が盛り上がれば盛り上がるほど、ラストへのもって行きかたが難しいと思うのだが、この作品はまるで枚数制限でもあったかのように、最後ばたばたっと終わってしまった感がある。
ひっぱるだけひっぱってなんだよう~~とちょっとだけ思った。ちょっとだけね(笑)。
それは「模倣犯」の時もそう感じたのだが、それはワタシだけなのかな。

まあそれを差し引いたとしても、面白い作品だった。
時代小説ではあるが、考えさせられる人間ドラマでもあり、極上のサスペンスでもある。


で、この物語に出てくる二十歳くらいの美男子の若い侍のお化け。
名を玄之介というのだが、このお化けがなかなかよろしい。
彼は生前は放蕩息子で、女性には目がない男だったらしいのだが、性根は悪くない。むしろよろしい。
そしてあろうことか、ワタシはこの玄之介に惚れてしまった・・・(汗)。
最後は無事に成仏するのだが、その時のワタシの心の中は「よかったね」という安堵感と「もういなくなっちゃうなんて・・・悲しすぎる」という悲しみが入り混じった複雑なものであった。

この物語を読んでいる間、玄之介はワタシの中では堺雅人だった(ちょっと年いってるけど)。
もうそれは当然のように、玄之介が出てきた瞬間からワタシの頭の中では堺雅人が紋付袴姿になっていた。



山南敬助もよかったが、この玄之介の役もぴったりなのではないか?
と思ったら、どうにもこうにも堺雅人が気になって仕方がない。
全然見るつもりのなかった「アフタースクール」(公式サイトこちら)も、鑑賞予定に入れてしまおう。



なんだか堺雅人が自分の中では「日本のジェームズ・マカヴォイ」になっている(笑)。
そう「あかんべえ」のことが書きたかったというより、自分のお気に入りに堺雅人が加わったということが言いたかっただけなの。
ああ「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」も見ないとなあ~(笑)。
コメント (14)
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河童のスケッチブック

2006-04-27 17:07:23 | 
ふと自分のカテゴリーの欄を見てみたら…「本」という項目があるにもかかわらず、本についてひとつしか記事(と呼べる代物ではないが)を書いていないことに気がつきました。
こりゃーまずいなーってことで久々にお気に入りの本について書いてみようと思いました。

最近は雑誌やマンガさえあまり読まないのですが、でもヒマがあるとよく開く本があるのです。
それが妹尾河童さんの本です。

河童さんの本は大抵どれも好きなのですが、特に好きなのが「河童が覗いたトイレまんだら」とこの「河童のスケッチブック」。



河童さんのイラストは人柄がにじみでるように、優しい線で描かれております。
しかもおかしなところに凝っていたりして、一度見たイラストでも次に見た時に違った発見が出来たりして、何度みても飽きることがございません。
そして脇にそえられた文章がまた楽しいのです。
この本には河童さんが旅先で訪れたところや、好きな食べ物、収集した珍品などイラスト付きで紹介されております。

デンマークの卵ホルダーはこの本ではシンプルな部類のイラストなんですが、河童さんの絵の中にホルダーの木のぬくもりや、丸みをおびた卵の可愛らしさが感じられて優しい気持ちになるのです。

私がいつも時間をかけて見るのは立花隆さんの部屋のイラスト。
地下一階から三階まで、立花さんの部屋を上から見た図が描かれているのですが、これが気が遠くなるくらい細かく描かれているのです。
本棚にある本、一冊一冊まできちんと描かれているのです。
河童さんのイラストにも感服しますが、立花さんの部屋の膨大な資料にも驚いてしまいます。
宇宙や物理、オカルトや臨死体験、政治や官僚、人類学や環境問題、法律や医学、戦争や軍事などなどジャンルを問わず、壁一面ぎっしりと並んでおります。

イラストを見ていると河童さんが細部にこだわりつつ、愛情を込めながら楽しんで描いているのがよくわかります。
その楽しさがこちらに伝わってくる、素敵なスケッチブックなのであります。
コメント (4)
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マンガ「毎日かあさん」

2005-11-02 12:57:33 | 

毎日新聞に掲載されている(らしい)ので知っている方も多いかも。
妹が入院していた母に買ってあげたマンガです。
これは漫画家の西原理恵子さんの子育て奮闘記。
西原さんのはちゃめちゃな母親ぶりと、二人のお子さんのユニークさがとっても笑えます
んで、ちょっとほろっときて「家族っていーな」って気持ちになります。
私は母の病室に行く度、これを読んでました。で大声で笑ってヒンシュクかってました。
面白いのですが、絵は汚いし(私はこーゆー絵、好きなんだけど)字も汚ないのでなかなか読みにくいのが難ですね。味がある…ともいえますが。まあとにかく読むのに時間がかかります。
こちらは「カニ母編」。二人のお子さんがまだ小さい頃の話です
男の子がはちゃめちゃで(というより家族全員はちゃめちゃ)他人ごとながら西原さんは大変だろうな~と思いました。でも私が子供の頃もこんなだったかも?
今年の春頃に「お入学編」というのが出ましたが、私は「カニ母編」の方が好きかな?



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