永野宏三のデザイン館&童画館  アート日和のできごと

イスラエル国立美術館、ミュンヘン国立応用美術館、国立国会図書館、武蔵野美術大学美術館図書館他に永野宏三の主な作品が収蔵。

海峡は赤く、サンセットは向こう岸に。

2012-06-14 04:30:54 | アート・文化
Rimg0003

絵・『関門海峡は赤に染まって。』〈C〉永野宏三


梅雨が始まったというのに、まだそんなに湿気を感じないし暑くもない。そんな空気に駆られて、夕方ふと大里海岸まで歩いてみようと思った。家から徒歩で15分くらいで着く。海岸にはしばらく訪ねていない。
ひさしぶり歩く道だがが歩き慣れている。通りに面する町はところどころに空き地ができていた。かと思えば、この町には不釣合いな高層のマンションが幾つか建っている。世代交替などもあり、都合で古い家が処方されてのことだろうか。
古くこぢんまりとした町だけど長年住み慣れた町だ、風景が変化していることに動揺してしまう。気持ちが遮断されたよう気がする。
今の時代だからこう云う感傷は棄てたほうがいいのかもしれない。変っていく町の姿がそう云っているように思える。
途中にある市場で親子が商売をしているMさんが、店の奥から声をかけてくる。市場の角端にある店は軒先低く間口は狭いが、それが客にとってはかえって親しみやすいつくりになっている。
『久しぶりやね。どうしよったね。最近ぜんぜん会わんかったね』。
Mさんはぼくが以前勤めていた会社の同僚の弟Tの姉さんである。
彼女は嫁いでこの町の市場で長いこと商売をしている。
ごたぶんにもれずこの町も過疎化している。昔ながらの対面商売で地道な仕事を続けているこの店は年寄りに流行っている。
店先にたわいもない近況話しで邪魔をして再びぼくは足を進めた。JR九州大里旧操車場跡下ガードをくぐり抜けて海岸にほどなく着いた。
旧操車場があったあたりは、旧門鉄時代、貨車の入れ替えで夜通しレールを投光機が照らして昼間のように明るかった。そして、『ポヲ?ッ』、『グワッシャーン』と、せわしくかん高い機関車の汽笛と連結の音が鳴っていた・今も耳の奥に残っている。経済がまだまだ成長していたころの音である。
海岸線に出ると、対岸の下関彦島に夕陽が落ち始めいた。ちょうど釜山に向う関釜フェリーが陽の影になっていた。船がつくる波は岸壁にあたると、弾くように下関側へと押し返す。海峡の口いっぱいに夕陽と波を呑込む風景は変っていない。
海峡を挟むふたつの町を潮が繋ぎ互いに引き寄せるように狭い海峡をさらに縮めている。
あたりまえのように見慣れた関門だ。しかし時間が経って眼に映る今両岸には高層の建物も増え、姿は違っていた。








最新の画像もっと見る

コメントを投稿