永野宏三のデザイン館&童画館  アート日和のできごと

イスラエル国立美術館、ミュンヘン国立応用美術館、国立国会図書館、武蔵野美術大学美術館図書館他に永野宏三の主な作品が収蔵。

あかるくおしゃれでペーソスがあった時代。レクイエム。

2016-07-20 08:47:16 | 日記・エッセイ・コラム
灘本唯人さんが亡くならたそうです。戦後日本グラフィックデザイン界の隆盛を築かれた方々のおひとりです。
現在のデザイン界はデジタル化して、視覚にちょっと仕掛けをしただけで、あまりしつこくなく、さらっとしたビジュアルが定番化しています。そして、ブランヂイングというマニュアル的なデザイン思考になってきています。わたしはこのような現象にはまったく興味がありませんが。
灘本唯人さんの時代のデザインは人間的で個性的で説得力で、主張を持ったビジュアル思考がありました。灘本唯人さんの描かれるイラストレーションは個性があり、惹き付けられるものがありました。しかも、絵の中に人間の根源的の持つペーソスも感じられ、ほろっとするところがありました。
灘本唯人さんには、ある機会に一度だけお会いしたことがあります。大作家で人生の大先輩である灘本唯人さんを目の前にして固まってしまったことがあります。灘本唯人さんがそのころ70代くらいで、わたしは30代、緊張しました。やさしくラフに相手に気遣いながら気さくにお話していただいたことを憶えています。
そのお会した何日かころに、灘本唯人さんからご自身のイラストが入ったご著書を送ってこられて、感激したことがあります。たった一度お会いしただけで、若造にしまされるお気遣いにおどろき、また、そのことがわたしの人生の勉強になりました。
最近、昭和一桁のかたたちが亡くなられています。さみしいです。
ご冥福をお祈りいたします。