毎日新聞に月2回連載の、野坂昭如さんの随筆「七転び八起き」を読むのを楽しみにしている。今回のテーマは「夏の思い出」。戦中時の野坂さんの子どもの生き方と生活が書かれている。野坂さんの子どもの頃の遊びは、僕の子どものころの時代環境とそんなに変らないような気がする。僕は昭和26年生れだが、僕の生れは人吉で八歳まで住んでいた。子どものころの遊びと言えば、夏の遊びは球磨川で泳いだり郊外の畑で遊んだりと、子どもらしく勝手放題に遊んだ。遊びほうけると当然お腹はすく。川のフナやコイを採って土手で焼いたりして食べたりした。年上の子どもたちがよくしたもので、手際よくマッチや肥後守を持っていて年下の子どもたちに食べさせてくれた。たまに小遣い銭を持っていると、街頭に自転車で売りにきていたアイスキャンデーを買って食べる。当時は午後三時過ぎくらいになると、決って夕立ちがあったような気がする。それも一時的にザーッと降りしきると、後はサーッと雨は止んで、涼感があった。今はこんな現象は見られない。数年前、シンガポールに行った時に、毎日決って午後にはスコールがあり、蒸し蒸しした亜熱帯の街中に一時の涼感を感じた時に、全く同じ感覚で子どものころの人吉の夏を思い出した。