かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 229

2015年07月09日 | 短歌一首鑑賞

 渡辺松男研究28(15年6月)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)98頁
   参加者:石井彩子、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:曽我 亮子
      司会と記録:鹿取 未放

229 星微光いまだ届かぬものもあり待ちきれざればわれら抱きあう
  
          (レポート)
 遠い宇宙から来るかすかな星の光は中々届かないものもあるように、恋人との仲もまだ良い雰囲気が醸されたとは言い難い。けれどとても待ちきれなくて私達は抱き合ってしまった。(曽我)


         (当日意見)
★「待ちきれざれば」は曽我さんと違って、お互い求め合っているから待ちきれないのだ
 と解釈しました。だから「良い雰囲気が醸されたとは言い難い」も違う意見です。
   (鹿取)
★鹿取さんと同じ事を言っているんだけど、書き方が悪かったかな。(曽我)
★待ちきれずに抱きあう恋人同士に星微光が取り合わせられているところが面白いです
 が、他の方いかがでしょう?(鹿取)
★星のひかりはまだ届いていないものがたくさんあって、見えないところで爆発している
 星がいっぱいある、と考えました。それで「待ちきれざれば」とうまく結びつかなくて、
 よく分からない一首でした。(真帆)
★詠い起こして結句に行くまでにどう繋ぐかというのがあるのですが、これはうまく繋い
 でいると思います。星の微光が届かないというのと待ちきれないのがうまく合っている
 と思います。(慧子)
★どううまく繋がっているのですか?(鹿取)
★抱きあいたいのですね。だけど、それに何を付けるかというと日常のちまちましたもの
 でなくて宇宙を持ってこられた。待ちきれないこころの中が届かない星微光でようく見
 える。とても上手いつなぎ方だ。(慧子)
★届かない星の光を待つ気分が、早く抱きあいたいという思いと似通っているというこ
  と?星の光を待つ茫洋とした気分と、抱擁を待ちきれない切迫感とは少し遠い気がする
 のですが。(鹿取)
★まだ夕方で周囲が明るいので星の光が届かない。もっと暗くなれば星は輝き出す。二人 
 で星を見ようと思うけれど、その時間を待っていられない。それで抱きあっちゃう。
  (鈴木)
★なるほど、星が光り始める暗さまで待ちきれないで抱きあっちゃう、その解釈だと星微
 光と待ちきれないがすんなり繋がりますね。(鹿取)
★スケールの大きなものと身近な恋人同士の対比が面白い。星というのは爆発して何万光
 年とか届くまでかかるけれど、そういうことを暗示しているのかなあと。(石井)



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