かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠 143(スペイン)

2014年03月05日 | 短歌一首鑑賞
   【西班牙 3 オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P61
               参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
               レポーター:渡部慧子
                 まとめ:鹿取未放


99 西班牙のオリーブの樹人口の五倍を立てりその実の津波

     (レポート)(2008年9月)
 オリーブと人口の具合を計数化させたものをまず据えて近代を詠っているようだ。そのスペインの近代化への分岐点はEC(現在のEU)加入であったかもしれない。オリーブ栽培を近代農法に切り替え、EC市場へ輸出をはかるのだが96番歌のレポートはここにも若干当てはまる。さらに加入による援助を受ける一方で、農業技術の効率化、それに伴う農業人口削減、それらの人々の海外へ出稼ぎ、また輸入が恒常的に輸出を上回る等の事実が生じる。総合判断すれば効果大なりというところへ達していないことも考えられる。
 「オリーブの樹人口の五倍を立てり」であればその状況如何は人々の生活にたちまち影響し、時代の様相となるであろう。スペイン近代化に伴う大きな痛み、揺れの部分をオリーブの実に照準を当て「その実の津波」とたらえた一首である。(慧子)


      (発言)(2008年9月)
★レポーターはそこまで深読みする必要があるのか。(崎尾)
★こんなに収穫できても国が豊かになれない、社会詠(T・H)


      (まとめ)(2008年9月)
 収穫の豊かさをいっているのだろう。人口の五倍ものオリーブの木が見渡す限り豊かに実って津波のように押し寄せてくる感じだという。脚韻の「ミ」「ミ」が弾んだリズムを生んでいる。
 スペインはオリーブ生産量で世界一だが、その七割をアンダルシア地方でまかなうそうだ。収穫は2月でジブラルタル海峡を渡ってはるかモロッコから季節労働者が来るそうだ。灌漑を利用して半月に一度はオリーブの根元に充分な水やりもしている。収穫したオリーブはその日のうちに工場で搾られ良質なオリーブ油になる。(鹿取)

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