「季語がある豊かさとスリル」と題して「かりん」9月号に『隕石』の紹介を書かせていただいた。俳句にくらいので意を尽くせず、著者には申し訳ない気持ちでいっぱいである。魅力的な句が多すぎて、原稿を手放すまで何度も句を入れ替えては迷っていた。残念なので、挙げたかったけれど割愛した句を以下に引用させていらだく。
てふてふや石の口からいづる息
蟭螟(せうめい)や〈この世自体〉はないらしい
みみず鳴くしんそこ昏き阿頼耶識
ががんぼの脚のはづれてから本気
うきくさの浮くことだつて全力だ
るてんして流転してふんころがしの今
虚無なんて元来たまねぎが包む
天井へ、蟻にくははりいきいきす
ふところ手おもたきゆめは下へおつ
このたびは足袋と生まれてきて干さる
千年の雨の夜星の夜の欅
殺し、殺し、殺し、殺して初日かな
白牡丹夢にも重みあるやうに
さくら森乳暈のいろにふくらめる
ででむしとででむしのめとめとめとめ
前世にも前世ありキャベツ剥く中に
筒鳥やくわこぜの、ポ、ポといまの、ポ、ポ
蝙蝠や〈いま〉〈ここ〉〈われ〉の飛びまはる
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