馬場あき子の外国詠 ④(2008年1月実施)
【阿弗利加 2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P162~
参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、T・S、高村典子、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
レポーター 渡部慧子 司会とまとめ 鹿取未放
38 鉄線より打ち出すアラベスクの窓飾り型木(かたぎ)もあらず恐れげもなし
(まとめ)
テレビで少年工たちが、鉄線を金槌などで素早く折り曲げる様子を映していた。汚れきった手の早業からすばらしい形が生み出される。作者は現地で型木もなしに勘や慣れだけで巧みに窓飾りを仕上げるさまに見入っている。下句に手放しで感嘆している様が読み取れる。(鹿取)
(レポート)
金属を裏から打って模様を表面に表すという意味の打ち出す。掲出歌はその打ち出しによりアラベスクと呼ばれる模様の窓飾りができる。それが実に無造作に見えているのだろう。
思えばベルベル人の地へイスラム勢力の侵入があり、その王朝と変遷、その後近代の植民地化、そして独立。その気の遠くなるような歴史の中で、アラベスクという文様がうけつがれてきた。その得体の知れないような底力に思いが至り、一層の感動もあったであろう、それゆえ「恐れげもなし」との断言に至っている。歴史をくぐってきたものの強さ、またなされた後人間の手を離れたものの逞しさ、そんなことも読み取れる一首である。(慧子)
※アラベスク:アラビア人の創始した、装飾用の動植物などを唐草模様や幾何学模様にしたもの
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