かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

ブログ版 渡辺松男の一首鑑賞 2の58

2018年04月09日 | 短歌一首鑑賞
  ブログ版渡辺松男研究2の8(2018年1月実施)
    【百年】『泡宇宙の蛙』(1999年)P40~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:泉真帆 司会と記録:鹿取未放
  

58 木となりて一生泣いておりたしと泣きながら締めなおすネクタイ

         (レポート)
 職場で苦しい思いをしている作者がうかがえる。ああ、このまま木になって、この部屋から一歩も動かずにいたいというサラリーマン悲歌。だれもが共感できる一首だ。「締めなおす」が切ない。(真帆)


     (当日意見)
★職場のある部屋から出たくないのではなく、場面は自宅で仕事に行きたくないという設定でしょ
 う。(鹿取)
★木だったら泣いていてもいい。(慧子)
★どうして「泣いておりたし」なんでしょうかね。普通の人だったら「立っておりたし」って詠む
 でしょうね。もちろん、「立って」ではつまらないけど。(鹿取)


      (後日意見)
 〈われ〉にも木の不動性が羨ましい時もあるのだろう。仕事に行きたくない気持ちを抑えて〈われ〉は泣きながらネクタイを締め直す。木になったら楽勝、なのではなく「一生泣いておりたし」というところが、この歌のポイントだろう。『寒気氾濫』には次のような歌もある。(鹿取)

  直立で泣き叫びいし翌朝の杉は一層真っ直ぐに立つ



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