かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠60(アフリカ)

2017年07月27日 | 短歌一首鑑賞

 馬場あき子の外国詠 ⑦(2008年4月実施)
   【阿弗利加 3 蛇つかひ】『青い夜のことば』(1999年刊)P171
   参加者:泉可奈、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・S *レポートの表記は、句読点・誤字脱字を含めママ。
    司会とまとめ:鹿取 未放

60 顔憎き蛇つかひわれより銭を得てまだらの蛇に触(さや)らしめたり

     (まとめ)
 蛇遣いはいかにも憎そうな顔つきだったのだろう。「銭を得て」に狡猾な、金銭に執着する俗っぽいイメージがよく出ている。さわる、ではなく「さやる」という言い回しもおっかなびっくりでさわる感じがよく出ている。触っただけでなく写真も撮ったのだろうか。それは別料金だろう。馬場の旅に同行した人達の中には首に巻いた人もいたというが、そちらはもっと高い料金に違いない。
 「金いろのばつた」の章で、〈十匹のばつたを少年に売らしめて老工はアッラーに膝まづきたり〉〈暗き灯のスークに生きてアッラーに膝まづく一食を得し幸のため〉などとひたすら鏨を打つ職人が出てきたが、それとは対照的な人物像である。(鹿取)


      (レポート)
 顔憎き蛇つかい。銭を得てまだらの蛇に「よしよしよいこ」と触れる。かく見る顔憎き蛇つかいなのである。(T・S)


      (当日意見)
★T・Sさん、「触(さや)らしめたり」の「しめ」は使役の助動詞です。蛇つかいが「われ」から
 お金をとって、蛇に触ることを許したのです。だから、この場合蛇に触ったのは〈われ〉で、蛇 
 つかいではありません。(鹿取)