かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

渡辺松男の一首鑑賞 2の7

2017年07月12日 | 短歌一首鑑賞

  渡辺松男研究2の1(2017年6月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【無限振動体】P12
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子       司会と記録:鹿取未放
  

7  頭のなかに茸がぎっしり詰まっては冷蔵庫のようで眠れやしない
 
          (レポート)
 頭の中にぎっしり茸が詰まっていて、一晩中稼働している冷蔵庫のように眠れないとの意だろう。詰め込まれた茸が知識・情報そのようなものだとすれば、頭が冴えてしまうだろう。それを現代の暮らしに欠かせない冷蔵庫と組み合わせて「眠れやしない」とぼやくように、現代の知識人の呟きをする。(慧子)


     (当日意見)
★頭の中をCTスキャンのように割ってみたら喉の辺りの筋肉のへんに皺が出るように、頭のなか
 に茸がびっしり詰まっていて一晩中胴震いしているようで眠れないという妙なリアリティがあっ
 て面白い。(真帆)
★慧子さんのような考えも真帆さんのような考えもあるのでしょうが、私はやはりこのまま取って、
 頭の中には本当に茸がびっしり詰まっている像を思い浮かべました。まあ、冷蔵庫は新鮮さを保 
 つために働いて眠ることが出来ないのでしょうが、〈われ〉は茸の本質を守るために眠れないの 
 でしょうかね。次の歌を見てもそうですが、茸と知識・情報というものとは全く相反するもので、
 茸は原始的な生命そのものみたいです。そういう原始のものがもやもやむくむく蠢いていて眠れ 
 ないと。この解釈には文明の利器の冷蔵庫がちょっと邪魔ですが、食べ物がびっしり詰まってい
 るイメージでとりました。松男さん、客観的には知識人でしょうけれど、知識人、嫌いだと思い
 ます。それにほんとうの知識人って知識がある人のことではないと思います。(鹿取)