かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠49(アフリカ)

2017年07月16日 | 短歌一首鑑賞

 馬場あき子の外国詠 ⑥(2008年3月実施)
   【阿弗利加 2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P168
   参加者:KZ・I、KU・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       田村広志、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H       司会とまとめ:鹿取 未放


49 衣裳まち鍛冶まち食のまちつづき路地ゆくは騾馬も人ももみくちや

      (まとめ)
 内容的には単純だが、句割れ・句またがりを援用して不思議なリズムを作りだしている。「騾馬も人ももみくちや」という表現も作者らしく、いかにも混沌としたスークの様子が活写されている。
土屋文明の「牛と驢が騾と驢が馬と牛が曳く車つづきて絶えざる朝の市」(『韮青集』)を思い出したが、こちらは昭和19年中国は大同雲岡で詠まれている。馬場の歌からも文明の歌からも活気に溢れた外国の街を面白がっている気分が伝わってくる。(鹿取)


      (レポート)
 今、作者は、きっとフェズのスークを訪れておられるのだろう。そのスークには、衣料品を扱う店の続きに鍛冶屋さんがあり、食べ物を扱う店もあり、その細いいりくねった路地は、荷物をめいっぱい担わされた驢馬や人でごった返している。スークの状況を余すところなくよく伝えており、その匂いまでも伝わってくるようだ。「もみくちや」の語句が、この歌の中によく生かされている。
      (T・H)