BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

Sフェザー級10回戦

2010-12-27 19:01:20 | Boxing
ホルヘ・リナレス VS ヘスス・チャベス

リナレス 4ラウンド終了TKO勝利

考察 ~リナレス~

精神的なダメージから回復し、階級アップも視野に入れていることから
肉体的なコンディションも良かった。
高速ジャブからの左右ショートアッパーの切れ味を今回は試すプランだったかな。
ダメージングブローというよりは牽制かつジャッジへのアピール的な意味合いが濃そうだが
「左を制する者は世界を制す」のだから、これでいいのだ。
バックステップの際のガードの置き所もルーズにならず、
この方向でのスタイルチェンジもある程度完成したといえる。
これはA・カーンと共通点を持つ。
すなわち、自身でも自覚している「初回の体の冷たさ」は完全に解凍、
じゃない解決されていないということだと思うが、敢えてそれを試す必要はもはやない。
だが初回終了間際の連打は体の硬さの方が目立つようだった。

今回初めて目についたのがリナレスの左右の耳の腫れ、潰れ具合の違い。
左の方がやや程度が悪いね。
サルガドに喰った左は右テンプルだった。
右の顔面はもらい慣れてないのかな。
その点をテストする必要もやはり無いと思うが。


考察 ~チャベス~

ガードの置き所すら決められず、まさにスピードに翻弄されっぱなしだった。
打たれ慣れているとはいえ、打たれるほどに脳内麻薬全開となるような年齢でもメンタルでもなく、
トレードマークの左、とくにアッパーとフックは「昔取った杵柄」たりえず。
当たるパンチと当てさせてくれないパンチと当てさせてくれるパンチが
自分でも容易に分かっただろうが、だからといって遮二無二勝ちに行く姿勢はなかった。
単に生き延びるためのtrickならばいくつか隠し持っていただろうが、
それを使おうとしないあたりもある意味で矜持。
豊富なキャリアを誇る選手ゆえに受けて立つようなボクシングになりやすく、
経験豊かでかつ今後も視野に入れているからこそ見切りも早くなるのかな。
怪我のしやすさとどう付き合うかを今後はテーマにするのだろう。
再来日はないと思うが、あるとすれば亀海の世界前哨戦かな。

WBA世界Lフライ級暫定王座決定戦ローマン・ゴンサレス VS フランシスコ・ロサス

2010-12-27 18:15:46 | Boxing
ローマン・ゴンサレス VS フランシスコ・ロサス

ゴンサレス 2ラウンドTKO勝利

考察 ~ゴンサレス~

当て勘に優れるのは新井田戦前から判明していたことだが、
打ち合いの最中のみならず、仕留めにかかるシーンでもその実力がいかんなく発揮された。
腰のタメと膝のバネが連打に効いていて、豪腕のみならずセンスも感じさせる。
F・モンティエル的と言えばいいのかな。
レバーブローは重く、コンビネーションはキレキレ。
2回のダウンを獲った、それぞれの連打見た?
ニカラグアはコンスタントとは言えないが、実に特徴的な選手と輩出する。
ただし、実力を安定して発揮しているだけのメンタルと調整法を持っているかどうかは
今後2~3戦を見てあらためて判断することになる。
ジョバンニ・セグラとの対戦なった暁には凄絶な打撃戦となりそうだ。


考察 ~ロサス~

急遽抜擢された代役ということで負け役の気配が漂っていたが、
首へのホールディングからあわやのノックダウンの演出など
どうしてなかなかの反骨精神の持ち主だ。
勢いのままに打ち合いに突入し、華麗かつ豪快に顔面にパンチを浴びる様は
そんじょそこらのカマセ犬にはできない芸当。
ロサスがカマセ犬だという意味ではない。
オーソドックスがオーソドックスの左アッパーが見えていないということは
そのアッパーの使い手の技量が称賛されなければならず、その逆はない。
井岡は記録狙いの世界戦よりも前哨戦にこれぐらいの相手を明確に退けた方が良い。

WBA世界バンタム級王座決定戦

2010-12-27 01:05:23 | Boxing
亀田興毅 VS アレクサンドル・ムニョス

興毅 判定勝利

考察 ~ムニョス~

かつての対日本人戦は今や参考にはならず、
復帰戦以降は見ることが出来なかったので
比較の材料になるのはミハレス戦、川嶋戦となる。
(相澤戦は論外)
それ以前のムニョスのパンチはミサイルの発射台さながらの下半身の強さとタメで
打っていたが、以降は上半身とリーチのしなりを活かしてヒットポイントを遠くすることで
打たせずに打つボクシングに変わっていた。
(それ以前はパンチ力そのものが威嚇になって挑戦者は打てなかった)

黒光りする肉体と意志のこもった表情はなく、
実際にパンチは伸びなかった、というより伸ばせなかった。
ミハレス戦では中盤以降、相手のボディワークに手を焼き、
川島戦では終盤(11ラウンド除く)に下がる相手を詰め切れなかったことからして
動く相手を追う足はなかったわけで、実際に追い足の無さを披露してくれた。
ボクサーは様々なカテゴリに分類でき、この選手はフィジカルで分けるなら瞬発力型。
スピード型と並んで年齢、そしてブランクが一番の敵となる。
経験と勘に優れるボクサー型はアウトボクサーとしての純度を高めるか、
あるいは省エネのためにあえてファイター型にシフトすることもある。
前者の代表例はW・クリチコ、後者の代表例はJ・ペニャロサ。
ムニョスにはしかし、いずれの展開もなかった。
なぜなら元々息が長いファイトスタイルではなかったから。
(身も蓋もないな)
パンチが威嚇にならず、射程も短く、ハンドスピードもないようでは
カウンターパンチャーの餌食となるしかない。
事実、完敗だった。

色々な重石もこれで無くなっただろう。
今後は日本の新世代のための良い踏み石になってくれるのだろうな。
今でもネームバリューだけは抜群ですから。


考察 ~興毅~

うん、素晴らしいパフォーマンスでしたね。
かつて日本のリングで猛威を振るった強打をことごとく防御。
基本に忠実な高いガードとモーションの小さな正確なカウンター。
ゆるい左ジャブに被せるサウスポーならではの右フック。
効き手のアッパーに連動して下がる左ガードを突いた右フックに左ストもポイント高し。
右の強打を常に念頭に置きながら、なおかつ自身の右フックにこだわりを持つのも
パッキャオを意識しているようで非常に見栄えがいいですねえ。
そしてホルトがトーレスとのリマッチをフィニッシュしたコンビネーションの
再現を見るかのような見事な12ラウンドのノックダウン。
前半のラビットパンチのアピールも最後に生きましたねえ。
レフェリーも人の子、貸し借りの感覚は必ずあるものです。
いやはや、様々な技の使いどころを心得てますねえ。
石橋を叩いて壊してきた相手に、石橋を叩いてもギリギリまで渡らないスタイルは
計算高さ、もといインテリジェンスの証明ですよ。

長く君臨していた長谷川のバンタムを、長谷川と同じく飛び級で制覇するというのは
どこかしら運命的なものすら感じさせられますね。
フライ、Sフライだけじゃない。
バンタムだって日本のものだよという気概の表れと受け取りたい。
防衛2桁を目指してほしいですねえ。
それにしても対戦相手がムニョスというのも渋いですなあ。
日本のリングを荒らしまくった怨敵で、ファン、関係者の溜飲を下げてくれましたね。
そうそう、日本にはまたまた良いことわざがありますね。
「腐っても鯛」
つまり、衰えててもムニョスはムニョスってことです。
さあ、皆さん。
この前人未到の業績に惜しみない喝采をどうぞ。

PS.
トランクスを下げてローブローをアピールするって……
実況は頭がオカシイ。
忘年会を優勢して録画で見て正解だった。