BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBC世界ミドル級タイトルマッチ

2010-12-20 23:37:09 | Boxing
王者 セルヒオ・マルチネス VS 挑戦者 ポール・ウィリアムス

マルチネス 2ラウンドKO勝利

考察 ~マルチネス~

Knockout of the Year決定を伝えておきたい。
今年はいくつか先走って賞を決定した気がするが、
これについては異論は出ないものと信じる。
ネット上のファンの声、専門誌でもパッキャオvsハットン、ドネアvsダルチニャン、
ターバーvsジョーンズJrを彷彿させるという声が溢れたが、
管理人はそれらの意見に与しない。
なぜならば上の3つの試合はKOの予感が濃厚に漂っていたから。
この試合、リアルタイムでKOの匂いを嗅ぎつけた人は?
(ネット上ではジャーナリストで現役ボクサーが一名ずつ
マルチネスのKO勝利を予想していたのを記憶している)

サウスポーがサウスポーに対して反時計回りをする根拠は?
それは自身の左を相手の左よりも先に着弾させる自信に他ならない。
絶対的にリーチで劣る相手に先に当てるには?
ハンドスピード、角度、位置取りの最適な組み合わせ。
前戦で良いイメージを掴んでいるのは両者とものことで、
浜田コメントにある「頭を使った方が勝つ」という言葉通り、
前回顔合わせと異なる立ち上がり、すなわちダッキングからのダイレクトの左、
そしてそしてクロスレンジでのストレート系連打とクリンチで、
意図的に左のアッパーを誘っていたのは明らか(来たのはフックだったが)。

文句無しの一発でさらなるビッグマッチを手繰り寄せたはずだが、
パッキャオは階級差がネック、メイウェザーは警察沙汰、
ミドルの対立王者は漏れなく地味、Sミドル級は焼け野原の様相を呈しつつある、
となぜか運に恵まれない。
コット?
ジュダーに手を焼かされたからねえ。
ジンジルク?
報酬9:1で受けるかね?
マルガリート?
トドメを刺す気かい?

え、ラバーマッチ!?
浜さん、そりゃあないぜ。


考察 ~ウィリアムス~

リアルタイムで観ていたが、初回終了後のインターバルでトレーナーが
"Give him more uppercuts!"と叫んでおり、結果論になるが
それはつまり相手の罠にハマれ、という指示に等しかった。
効き腕のアッパーはもう片方の腕がもれなく下がるのでリスクが高いが、
自身のリーチ、身長、前回対戦時のイメージの全てがそのリスクを見えなくした。
そこに軌道の異なる左と左の衝突!
目を見開いて失神していたが、瞳孔まで散大しているのでは?と思わせたほどだった。
ハーンズ的でありながらハーンズと対照的なイケイケドンパチ路線の限界が露呈したが、
これで価値が急落するのはプロモーターの罪。
そして興味が急速に失せてしまうのはファンの性。
だがマニアとなるとそうはいかない。
なぜなら今後の対戦相手のオプションが格段に増えるから。
ウェルターからミドルまで腕撫すボクサーは数多くいるはずで、
特にE・ララ、V・マルティロスヤン、S・アルバレスらとの絡みが注目される。 

前戦は少なくともこのスタイルで五分だったわけで作戦ミスもしくは指示ミスゆえの
敗北と評してしまうとボクシングの本質を見落としてしまう。
それはすなわちボクサー自身の危機回避能力。
リーチを利したボクシングをせず、敢えて打っていく好戦的なところと被弾に動じないタフさの
融合が売りだったのが、ここに陥穽がありましたか。
指導者を変えて出直すのか、練習方針を変えるのかが注目されるが、
確実に言えるのは今よりも地味なボクサーになるだろうということ。
それにしてもあの一撃は左右の違いはあるが間柴と木村の決着の一発に通じるものがあったな。
似ているというのは構図ではなく壮絶さ。
あの一発でアゴを壊して今後は相手を入らせないボクシングを身に着け、
真の意味でのT・ハーンズ2世となるのだろうか。

WBO世界Sバンタム級タイトルマッチ

2010-12-20 21:47:03 | Boxing
王者 ウィルフレド・バスケス・ジュニア VS 挑戦者 イバン・エルナンデス

バスケス 11ラウンドTKO勝利

考察 ~バスケス~

親父が葛西戦で見せたようなジャブ、あるいはリードのフックにかぶせる
カウンターはまだ体得できていない。
当たり前田は広島カープ(古い)だが、今後もそのタイミングを掴もうとは
しないのではなかろうか。
なぜならカウンターパンチャーではなくボクサーファイター寄りのボクサーを
目指しているように見えるから。
なんとなくコットのシルエットが重なって見えたという人も多いと思われる
そのボクシングは、プエルトリコ的というよりも21世紀と呼ぶべきだろう。
ボクシングは時代とともに荒々しさを削ぎ落とす方向に進化していると思うのだが、
親子鷹と云えども無理に息子をクローンボクサー的に育てる必要性は薄れている(はず)。
日本の野球でも一茂、カツノリなどは親父と似ても似つかぬプレーヤーだったではないか、
というのは牽強付会に過ぎるか。
いつの頃からかボクサーのトランクスの丈が長くなり、
太腿の太さが目立たなくなってきたが、
このジュニアも親父やコットと同じくかなりの太腿周りを誇りそうだ。
同一の対戦者との試合内容を通じてだけで言うわけではないが、
西岡との統一戦は完全に時期尚早と断言させていただく。


考察 ~エルナンデス~

サウスポーとの対戦を改めて検分するしかないのだが、
サウスポーが苦手というよりも西岡のスピードに対抗できなかったんだな。
左フックを強く当てようという意識が強く、実際にヒットはしたものの
相手の八の字ガードに対して効果的でなく、相手もスピード豊かではないにせよ、
自身はさらにスピードが無かった。
全てのパンチに鋭角さを欠くのは肘や肩の先天的な可動域のせいだろうか。
西岡戦でも果敢なアタックを右ボディで止められ、
右フックの切り返しに渾身の左をもらってアゴを破壊されたが、
パンチの引きにも致命的な欠陥があるのかな。
世界タイトルには今後も便利屋的存在として呼ばれることはあるかもしれないが。
(たとえば李の自主興行最初の防衛など)
ボディをさりげなく、しかし体ごと嫌がる選手というのは
どこかの時点で攻略されるものだ。
いや、相手が若かりしバスケス・シニアなら西岡より早く沈めたかも。

それにしてもアイスホッケーの乱闘とボクシングを比較対照するところなど
WOWOWの実況・解説陣も相当なボクシング脳の持ち主だ。