BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

2010年 RECAPITULATION

2010-12-30 21:52:52 | Boxing
☆ Fight of the Year ☆

○ ジョバンニ・セグラ VS イバン・カルデロン セグラの8ラウンドKO勝利

意外に思われただろうか?
BoxingScene.comのCliff Roldとセレクションがかぶってるとか言わないでください。
偶然の一致です。
日本からでも手が届く階級。
安定王者の陥落。
技術vs根性という分かりやすい図式。
メキシカンvsプエルトリカンという構図もドラマティック。
ベテランと中堅という年齢差も哀愁を誘う。
ボディへの執拗なアタックと顔面へのカウンター勝負。
さあ、どっちが先に倒れるかというひたすら手に汗握る展開。
とにかくボクシングの魅力満載の一戦だった。


次点:西岡利晃 VS レンドール・ムンロー

次々点:ビック・ダルチニャン VS 挑戦者 ロドリゴ・ゲレロ


☆ Knockout of the Year ☆

○ セルヒオ・マルチネスがポール・ウィリアムスを2ラウンドKO
 
観戦記でも書いたとおり、パッキャオvsハットン、ドネアvsダルチニャン、
ターバーvsジョーンズを超えるワンパンチノックアウト。
ボクシング史にまた一つ、衝撃的なKOシーンが加わった。
連打によるレフェリーストップが多い中、
10カウントまできっちり入ったのもポイント高し。
唐突に見えて伏線が散りばめられた濃密な4分間だった。
巨木がゆらりと崩れ落ちるその瞬間に右手を高々と掲げるマルチネス。
目を見開いたままうつぶせで失神するウィリアムス。
ボクシングの勝者と敗者の強烈なコントラスト。
とにかくMARAVILLA(マラヴィーヤ)なノックアウトだった。


次点:フェルナンド・モンティエルが長谷川穂積に4ラウンドTKO勝利

次々点:ルシアン・ビュテがエディソン・ミランダを3ラウンドKO



☆ Decision of the Year ☆

○ 長谷川穂積がファン・カルロス・ブルゴスに判定勝利

心臓に悪いことこの上ない試合だった。
普通に考えて年間最高試合でもいいのかもしれない。
突然の連続KOで一躍その名を馳せた王者がKOで陥落、
新たな階級で世界を奪取した試合だから。
しかし、管理人的には長谷川のバンタム防衛ロードに不満があったのだ。
それは上述の突然のKO増加。
12ラウンド見せろ、というのはある意味で矛盾したファン心理。
コアなファンとは往々にして選手自身にとっても歓迎すべからざる存在である
ことは理解しているつもりだ。


次点:アンセルモ・モレノがネオマール・セルメニョに判定勝利(2試合)

次々点:亀田大毅が坂田健史に判定勝利


☆ Upset of the Year ☆

○ 李冽理がプーンサワット・クラティンデーンジムに判定勝利  

予想が外れて爽快な気分になるのは珍しいことではない。
なぜならその方がボクシングを楽しめるから。
しかし、この試合(&粟生の試合もか)に限っては、
御見それしましたと言うしかなかった。
戦力的に圧倒的に上と予想されるファイター型チャンピオンに
一階級下げて挑戦するという図式に、またかという念を抱いたファンも多かったはず。
自分もその一人。
しかし、現王者が挑戦者として見せたボクシングはゲームプラン、
コンディショニング、集中力、決断力、判断力のすべてをフル稼働させた、
まさに最近の日本ボクシングの中では傑作と呼べるものだった。
ガムシャラな特攻がもてはやされる傾向が依然続く日本において、
そのガムシャラさを正しいベクトルに向けた好個の一例にして、
多くの識者、ファンの予想を鮮やかに裏切った点でこの試合は特筆大書される。


次点:ジャン・パスカルがチャド・ドーソンに負傷判定勝利

次々点:シルビオ・オルティアーヌが亀田大毅を追い詰めた……??


☆ MVP ☆

○ セルヒオ・マルチネス

この一年のミドル級奪取と防衛は、その内容の鮮烈さと相手のネームバリューも手伝って
最高殊勲選手の栄に浴するに文句無し。
来年はコット戦も視野に入っているらしいが、
実はシュトルム戦やピログ戦の方が管理人は興味がある。
まさかのパッキャオ戦、もしくはメイウェザー戦実現ともなれば
現地まで飛ぼうかな。
 
次点:西岡利晃

次々点:マニー・パッキャオ

WBA世界Sライト級王座統一戦

2010-12-30 21:51:56 | Boxing
正規王者 アミール・カーン VS 暫定王者 マルコス・マイダナ

カーン 判定勝利

考察 ~カーン~

すべてのパンチがキレキレで目にも止まらぬ速さのコンビネーションを放つが、
闇雲にハンドスピードを重視するだけでなく、隙間も見えている。
打っては離れ、離れては打ちは自身の身体能力と疑問視されるアゴにマッチしており、
肝臓にめりこませた一発はパッキャオがマルガリートに効かせたのと同じコンビ。
左右の違いはあるにしてもローチの指導に間違いない。
それにしても惚れ惚れするスピードですね。
ジャブ、ワン・ツー、フットワークのいずれもが超速で、
連打のフィニッシュはしっかり体重を戻して引きの速さにもつなげている。
これでは打ち終わりを狙うのは難しい。
かといって始動を狙うのも難しい。
なぜならスピードボクサーに対峙した選手は往々にして見入ってしまうから。
先天的な要素のスピードを極限まで利したボクシングで、
なるほど28歳で引退したいと常々表明するわけだ。

欠点を挙げるならばバックステップ時のガードの置き所。
相手の追い足のなさも手伝ってのことだが、
スウェーも交えることができるはずなのにそれをしないのは
やはり一発を被弾することの恐怖が沁みついているのか。
誰かが喝破していたと思うが、ガードを上げるのは臆病さ、ガードを下げるのは勇敢さ
というを主張には素直に首肯できないが、カーンのようなボクサーを見ると
それも真理かなと思えてくる。
パッキャオと対戦しない(できない)のはここらへんにも理由がありそうだ。


考察 ~マイダナ~

puncher's chanceという言葉通りに、一発で相手を追い詰めたが、
惜しむらくは自身にもダメージが深く蓄積されていた。
抜群の回復力もやはり無尽蔵ではないということか。
10ラウンドの詰め時の単発アッパーへの固執を批判する向きもあろうが、
あれはあれで正解。
なぜならマイダナ自身のイズムだから。
ちまちまガードの上を叩いて隙間にぶち込むなどというのは
凡百のボクサーの仕事。
勝っても負けても価値が上がるボクサーというものは不変の哲学を持つべきだ。

それにしても見るほどに一撃に特化したボクサーで、
やや低めのピーカブーでタイソン風にのっしのっしと歩き回り、
打ち合い時限定だが、前後に開き過ぎと思えるほどのポジションからダッキングと体の戻りで
パンチにつなげるのだから日本人選手のみならず世界的に異端ではなかろうか。
Sライト級は順調に淘汰されていっているが、その他のトップ連中も危ない。
俺ならあんなの喰わないよ、とか高を括っていると想像されるが、
実際に対戦相手に選ぶプロモーターもマッチメーカーもいないだろう。
では我らが亀海が乗り込むか、あるいは招聘してはどうか。
うーむ、徳山vs長谷川のような見たいけど見たくない、みたいな感じがしますなあ。

閑話休題。
レフェリングについては不勉強なのだが、
コルテスのあの減点1にはルールブックに根拠が記されているのだろうか。
対戦相手への反則、危害ではないと考えるのだが。
ご存知の方はコメント欄ででもご教授賜りたいと思います。