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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

反射と終端抵抗、周波数と電線長

2010-01-16 00:23:42 | 電子回路
一般に、終端抵抗(ターミネータ)は信号電圧の反射を防ぐために、ケーブルの先端部分に取り付けるものとされる。同軸ケーブルなら50Ωか75Ω、ツイストペアケーブルなら100~120Ωと抵抗値も決まっている。では、ケーブルの長さにかかわらず、また信号電圧の周波数にかかわらず、必ず反射が問題となり終端抵抗は取り付けなければならないのか?

この答えを得るために、多くの専門サイトを閲覧してみたが、どうにも明確な回答を見つけることが難しい。どうやらケーブルの「特性インピーダンス」というものと反射は関わっているようであり、またケーブルの長さにかかわらず「特性インピーダンス」は一定値であり終端抵抗は常に必要と説明されていることが多いようだ。

ところが、目から鱗というか、灯台もと暗しというか、フリー百科事典Wikipediaに、かなり明確な回答が記述されていた。以下に同記事を転載する。

(伝送線路と配線:Wikipedia)
【多くの電気回路において、素子に接続される配線の長さはほとんどの場合無視される。これは、ある時刻における、配線の電圧が全ての点で同一であると仮定することができるためである。しかし、信号電圧が配線を伝達するためにかかる時間と同じくらいの時間で変化する場合、配線長は重要となり、その配線は「伝送線路」とみなす必要がある。別の言葉で言うなら、配線長に相当する波長の周波数を扱う場合、配線長が重要となる。

経験則では、ケーブルや配線の長さが波長の100分の1を超える場合、これを伝送線路とみなさないといけない。この長さでは、位相の遅延や配線における「反射」における干渉も重要となり、伝送線路の理論を用いて慎重に設計されていない系の振る舞いを予測不能とする。

解析においては、伝送線路は2端子対回路モデルとして扱われ、これは図の様に表される。

最も単純な場合、伝送線路の回路は線形であると仮定する。すなわち、反射が無いと仮定した場合、両端子間の電圧は、その端子から流れ込む電流に、(複素成分も含め)比例する。この時、伝送線路が、その長さ全体において均一である場合、2つのポートは交換可能であると考えられる。すなわち、この振る舞いは、「特性インピーダンスZ0」と呼ばれる1つのパラメータで記載が可能である。この特性インピーダンスは、伝送線路上の任意の点において同一の波形である複素電圧波形と複素電流波形の比を表している。同軸ケーブルではZ0は50もしくは75Ωであることが多く、ツイストペア線は約100Ω、一般的な平行線は約300Ωである。

伝送線路に、電力を入力する場合、ほとんどの電力が負荷に到達し消費され、電源への反射が極小となるのが望ましい。これには、電源と負荷のインピーダンスをZ0にすることが必要であり、この場合、伝送線路は、「整合」していると言う。】

ケーブルの特性インピーダンスについては、多くの専門サイトが詳しく解説しているので参照されたい。

さて、このWikipediaの記述を読み解くと次のようになるであろう。
電線で出力端子と入力端子を接続することは、出力端子の電圧と入力端子の電圧を同時刻において等しくするということが、そもそもの目的である。例えばファンクションジェネレータの出力端子に1mの同軸ケーブルを接続して、100Hzの正弦波を出力した時、ファンクションジェネレータの出力端の電圧と接続した同軸ケーブルの先端の電圧は同時刻においてほとんど一致している。この場合は何ら問題ない。

しかし、電気の伝播速度を30万km/secとすると、正弦波が1MHzの場合、波長は300mであり(波長=300[m]/f [MHz] )、もしケーブルの長さが100m程度もあれば、出力端の電圧とケーブルの先端の電圧は同時刻において一致しない。この時、ケーブルはもはや単なるケーブルではなく「伝送線路」に姿を変えており、伝送線路とは「特性インピーダンス」である、と言ってるのである。そしてこの場合において反射による干渉が問題となり、特性インピーダンスと整合する終端抵抗を取り付けて反射の発生を防ぐ必要があるということである。また経験則として、ケーブルの長さが波長の100分の1を超える場合に、これを伝送線路とみなさなければならないとしている。つまり信号電圧が1MHzの時、出力端と入力端を3mのケーブルで接続した場合は、そのケーブルは伝送線路であり、よって終端抵抗をとりつける必要があるということになる。

また、以上は正弦波で考えているが、信号波形が矩形波の場合は奇数倍の高調波成分を含むため、1MHzであれば1mのケーブルでも伝送線路とみなす必要があるだろう。

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3 コメント

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Unknown (kt)
2010-03-27 07:22:37
ホロンさん,視点がいい!この問題も以前私も真剣に考えました。10年くらい前かな?ことの発端は,なぜ高周波回路はインピーダンスマッチングがうるさいのかな?です。高周波になれば,基板上の配線長も伝送線路と見なせる長さになるからでした。でも,もっと大切なことは,ホロンさんが引用している
「伝送線路に、電力を入力する場合、ほとんどの電力が負荷に到達し消費され、電源への反射が極小となるのが望ましい。これには、電源と負荷のインピーダンスをZ0にすることが必要であり、この場合、伝送線路は、「整合」していると言う。」
です。これって,最大電力伝送定理なんですよね。最大の電力を負荷へ送り込むための定理とインピーダンスマッチングのお話がここで繋がる!面白いと思うのは僕だけ?


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ごめんなさい。 (kt)
2010-03-27 07:24:45
先のコメントですが,今読み返していて,「視点がいい!」なんて,上から目線で書いてました。すみません。お詫びします。ktでした。
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いえいえ(^^) (ホロン)
2010-03-27 17:34:37
ktさん、心配ご無用ですよ。(^^)冒頭の「ホロンさん、視点がいい!」に瞬間的に感じた私の心象は「嬉しい!」です。誰だって誉めてもらったら嬉しいですよ。

ΔΣ変調の記事のコメントにも書きましたが、実際、私が新たな扉を何枚も開くことができたのは、ktさんが応えてくださっただけではなく、この課題に関して、私よりずっと上におられたからです。

だから、私の”人生、アウトプット!理論”(笑)に沿って、お互いに断定的に「上から目線」でやりましょう。その代わり論破されることも当然にもあります(というか、それを期待して、あえて「こうだ!」と言い切る)。これは勇気が要りますし、もし論破されたら悔しいし短時間的にへこみますよね。でも、それによる成果を考えたら、そんなことは大した問題ではないと思います。「成果」、それは共に大きく飛躍するということですね。

さて、インピーダンスマッチングについては、場所をBBSに移しますね。
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