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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

DCキャンセラ回路

2007-10-26 20:45:16 | 電子回路
直流をカットして信号成分(交流)のみ通したい場合、一般的にはCRのようなハイパスフィルタを用いますが、特にオーディオの世界において、信号がコンデンサを通ると音質が劣化すると言われています。音質などというと多分に主観の世界であり、真偽のほどは定かではありませんが、メーカー製のアンプ回路では、信号ラインに一切コンデンサが使われていない(DCアンプ)こと等、あながち嘘でもないようです。

そこで音質はともかく、コンデンサを通らずにDCキャンセルする回路を紹介します。なかなか面白い回路構成をしているので、考えるヒントの題材としても良いでしょう。

理屈は簡単です。まず上段の図を見てください。回路はおなじみの差動増幅回路ですね。これのIN1に左の図のような5Vの直流成分の乗った交流信号を入力し、出力(OUT)からは交流成分のみ取出したい場合、さてどうすればいいでしょう?はい、そうですね。IN2に直流-5Vを入力してやればよいのです。こうすれば信号をコンデンサに通すことなく直流をキャンセルできます。しかし信号に乗っている直流成分が一定値でなくじわじわと変動するとしたらどうでしょう。それに合わせてIN2に入力する直流電圧をその都度調整しなければなりません。これを手動でやるのは大変です。そこで考え出されたのが下段の回路です。

CRで構成されているオペアンプ回路は完全積分回路です。IN1-OUTの周波数特性は右の図のようになり、f0=1/(2πCR)です。つまりCRのハイパスフィルタとまったく同じ特性ということです。抵抗1個とコンデンサ1個でできるものを、わざわざここまでやるとはオーディオファンの方々には頭が下がりますね。それはともかく、この回路がなぜ緩やかに変動する直流成分をキャンセルするのか(ハイパスフィルタとして動作するのか)は、IN1に直流を入れて積分回路の動きを追ってみてください。IN2に相当する積分回路の出力がOUTのDC成分をキャンセルする様子が浮かんでくると思います。

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コメント (5)
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