さっき、ご近所さんであるMさんが突然うちに来た。
Mさんちにはワンちゃんが2匹いて、うちも数年前まで犬を飼っていた
ので、散歩中に良く顔を合わせていた。
奥さんも娘さんも割と壁を作らずに話してくれるタイプなので、私も
話しやすかった。
うちの犬を介護していたある日の朝、ゴミ捨てでMさんに会い、介護
していることを話した。Mさんは「私今日買い物に行くので一緒に買い物
してきましょうか?」と言ってくれた。優しい人だなと思った。でも少し
やはり女性特有のマウント体質のある人だなという印象もあった。
うちの犬が亡くなり、火葬をする日にもMさんとバッタリ会った。
その時にも少し話したのを覚えてる。
その次の年に、ウチの屋根がボロボロになっているのをMさんちの屋根
の工事をしていた業者の人が気づいてくれて、教えてくれた。Mさんちは
建設業をしているし、業者とも横の繋がりがあるお宅なので半分は営業
も入っていたとは思う。でも自分達では本当に気がつかなかったことだった
ので教えてくれたことは本当に助かった。結局旦那の兄の知り合いに頼む
ことになったので、Mさん経由で業者を紹介してもらうことにはならなか
ったが、あとで「こういうことになりましたが、大変助かりました」と
挨拶には行った。
その後はずっと、話という話はしていなかったと思う。
数回もしかしたらゴミを捨てに行った時に出勤する彼女に挨拶をした
ことくらいはあったかもしれない。
ところが今日。
そのMさんが突然うちに来た。
以前屋根のことを教えてくれた時も突然うちに訪ねて来たので、また
その類いかなとも一瞬思いドキッとした。
すると。
Mさんちのワンちゃんが亡くなったという。
「え?!いつ?」と聞くとさっきという。
ビックリした。
「前に○○ちゃんが亡くなった時に火葬の業者さん頼まれたと話されて
いたじゃないですかぁ、だからお話伺いたくて。」と
言っていたが、恐らくそれが一番に聞きたくて来たんじゃないとは
すぐにわかった。
たぶん誰かに話を聞いて欲しかったんだと思う。
それは変な話、誰でも良かったんだと思う。
でも「犬が亡くなっちゃってーーーーー!」と例えば犬を飼っていない
誰か友達に泣きつくよりは葬儀や火葬のことを聞きたくてという名目が
あり、すぐ近所の家で恐らくいつも家にいそうな暇そうな奥さん、である
私が思いついたんだろうと思う。
私は玄関の中に彼女を入れて、話を聞いた。
連絡先を交換したり、犬以外のこともずいぶん話したかな。
ひとしきり話したら少し落ち着いた様子で帰っていった。
ま、悪く言えば私はちょっと利用されたというか。
でもまぁ、女性にはこういう場面良くあるのかもしれない。
自分には長くこういう場面はないけど。
たぶん思いつきで突発的に
家から飛び出してきたんだろうけど、それでも私のことが頭の片隅に
あって、近くではあるけどあの人には頼りたくはないわ、とは思われて
はいなかったんだな、と思ったら少し嬉しかった。
「娘に止められたんだけど~」と何回か言っていた。
「そんな泣いて行ったら○○さん(私)が戸惑っちゃうよ!可哀想だよ!
って止めたれたんだけど、来ちゃった」という風なことを言っていた。
でも私が嬉しかったと思ったのは、やはり私が暇で孤独な人間だから
かもしれない。すごく忙しくて人の相談ごとになんか乗ってる時間も
暇もないという人だったら少しは嬉しい気持ちはあるけど、例えばすごく
疲れている夜とかに電話とかかかってきてグチグチ話されたらやっぱり
迷惑とか思うのかな。
でも女同士、こんな風に泣いたり泣きつかれたりすることはもう何十年と
ない私にはかなり貴重で嬉しくて、でも刺激が強すぎて今興奮状態
からなかなか冷めない体験だった。
今晩寝れるかな、私。
いや~でもこのところ特に孤独を感じていて、今はまだ旦那がいるから
いいけど、この先旦那が闘病したり旦那の介護をしたり旦那を見送ったり
する時に私には相談したり話を聞いてもらったりできる人は誰もいない
だろうな、その時はどうやって自分で自分を支えていくんだろうと思って
いた。
いや、今Mさんとこういうことがあったとて、Mさんに今度は私が泣きつ
いたりはやっぱりできない。でも今日話していた時に、たまたまMさんが
ウチの横の家の大木の話をしてきて、「あの大木が倒れてきたら困りますよ
ね?いつも心配していました」と言っていた。それは実はつい最近にも
私が心配していたことだった。それも業者を紹介できますよ、の営業も兼ね
ているのかもしれないが、それでも、もし私が年を取ってうちの家に何か
があった時に、どこにどういう依頼をしたらいいのかわからないという
日も来ると思う。そういう時私はどうするんだろうと思っていた。
まぁ、その頃にはMさんもいい年になっているだろうし、
Mさんの旦那さんだっていずれは現役ではなくなるけど、息子さんが今
ちょうど旦那さんのお仕事を一緒に始めたとも言っていたので、最悪、
声をかけることくらいはできるかもしれない、とちょっと思えた。
ま、とはいえ、またここから何十年も経って、そこまで何のつきあいも
できなかったら実際は同じことかもしれないが、気持ちは少しだけ楽に
なった。
Mさんも帰り際、「ちょっと元気になった~、来て良かった~」と言って
くれた。
私こそありがとう。
私も少しだけ孤独だった気持ちがほぐされた。