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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇へブラー、グリュミオーなどのシューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」

2009-04-16 07:12:11 | 室内楽曲

シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」

ピアノ:イングリット・へブラー
バイオリン:アルテュール・グリュミオー
ビオラ:ゲオルク・ヤンツェル
チェロ:エヴァ・ツァロ
コントラバス:ジャック・カツォラン

CD:PHILIPS(日本フォノグラフ) 420 990-2

 このCDは1966年8月にロンドンで録音されたものであるが、史上最も美しい「ます」のCDとでも言っても過言ではなかろう。ピアノのイングリット・へブラー、バイオリンのアルテュール・グリュミオーを含む5人の息がぴたりと合い、典雅で限りなく美しい世界を、我々リスナーに思う存分聴かせてくれる。「ます」はピアノ、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスという今では変則的な組み合わせの室内楽ではあるが、現在少しの違和感もなく聴けるのはシューベルトの天才の天才たる所以なのだろう。

 この「ます」は、シューベルトがオーストリア旅行で世話になった鉱山業者のシルヴェスター・パウムガルトナーという人からの依頼を受けて作曲した作品で、歌曲「ます」の変奏曲を取り入れたのもパウムガルトナー氏のすすめに従ったものだそうだ。歌曲「ます」は世界中の人から今でも愛されている。このメロディーを聴くと、今我々が生きている世界においても少しの古めかしさを感じることなく聴けることに驚かざるを得ない。シューベルトが歌曲「ます」を作曲したのは1817年なので、今から192年前ということになる。

 この「ます」の五重奏曲は全部で5楽章からなる、華やかな室内楽の名曲である。これをシューベルトが感じたオーストリアの自然の息吹をそのまま伝えるには、奏者の持っている“資質”が最も問われることになるが、このCDの5人はまさに打って付けの奏者だといえる。ヘブラーの端正で優美なピアノとグリュミオーのバイオリンが誠に美しく響きあい、聴いているとオーストリアの山間の小川を散策している自分が彷彿としてきてしまいそうだ。このCDは、クラシック音楽における“奇跡の出逢い”とでも言ったらいいような、滅多に聴けない空間を我々リスナーに提供してくれている。(蔵 志津久)


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