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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇サンソン・フランソワのリスト:ピアノ協奏曲第1番/第2番

2009-08-11 09:10:58 | 協奏曲(ピアノ)

リスト:ピアノ協奏曲第1番/第2番

ピアノ:サンソン・フランソワ

指揮:コンスタンティン・シルヴェストリ

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団

CD:新星堂1000クラシックス ANGEL1000(EMI SAN-19)

 このピアノ協奏曲第1番/第2番のCDは、サンソン・フランソワの迫力のあるピアノ演奏に圧倒されてしまう。フランソワはショパンを弾くときは、“幻想のフランソワ”などという形容詞が付くほどのファンタジー溢れる演奏でリスナーを魅了するが、ここでのフランソワは、そんな幻想的な雰囲気は一掃して、ラテンの天性にそった自由奔放な演奏ぶりを披露している。果たしてどっちが本当のフランソワの実像なのであろうか。フランソワはかつて「ベートーベンの音楽は性に合わない」(そのくせベートーベンの3大ピアノソナタの名盤を残している)と言い放って、ラテン精神の持ち主であることを誇示したことを見ると、どうもフランソワは本質的にリストが大好きのように感じられる。このCDでもリストの曲芸のような曲想を盛り上げると同時に、ロマン的なりも存分に盛り込むことに成功している。

 ところで、リストのピアノ協奏曲、特に第1番は誰もがクラシック音楽に馴染み始めたときに一度は聴く曲である。それだけに耳の肥えた年季の入ったリスナーはあまり聴くチャンスに恵まれないケースが多い。特にハンスリックが「トライアングル協奏曲」と第1番をからかったこともあって、何か初心者向きの曲という固定概念が定着しているような気がする。私も今回暫くぶりに第1番を聴いたが、なかなかいいピアノ協奏曲であることを思い知らされた。ここでのはっきりとした旋律やリズム感は通常のクラシック音楽ではなかなか味わえないものだ。

 それにリストのピアノ協奏曲は、第1番も第2番も全部の楽章が間を置かずに演奏されるが、これが意外に新鮮に感じられる。第2番は第1番ほど有名でないが、内容の点では第1番を凌いでいるといってもよいであろう。リスト自身は第2番のピアノ協奏曲に“交響的協奏曲”と名づけていたようだが、通常のピアノ協奏曲とは違い、“交響詩”とか“幻想曲”に近いという感じだ。第2番は現在、もっと聴かれてもいいピアノ協奏曲のように思うのだが・・・。

 このCDで指揮をしているコンスタンティン・シルヴェストリ(1913年ー1969年)は、年季の入ったリスナーの方には懐かしい名前であるのに違いない。ルーマニア出身で、ルーマニア国立放送管弦楽団やイギリスのボーンマス交響楽団の首席指揮者を務めた。1967年にはイギリスに帰化し、ロンドンで亡くなった。1964年には来日しNHK交響楽団を指揮している。演奏スタイルは個性的であったようで、このCDでの
指揮ぶりもエキセントリックとでもいった方が当てはまるような、熱演を披露している。これはフランソワに触発されたものなのか、または逆にフランソワのラテン魂を呼び覚ましたのがシルヴェストリだったのかは分からないが、テンションの高い指揮でフランソワのピアノを守り立てているのが印象的なCDだ。(蔵 志津久)


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