ルーセル:交響曲第3番/第4番
指揮:シャルル・ミュンシュ
管弦楽:ラムルー管弦楽団
CD:BMGビクター B18D-39147
アルベール・ルーセル(1869-1937年)はベルギーに生まれ、もともと海軍志願であったため、フリゲート艦に乗り込んだという作曲家としては異色の経歴を持っている。1894年に海軍を退き、パリのスコラ・カントルムで音楽を勉強し、あのダンディに師事。また、教育者としてサティやヴァレーズの育成に当たったという。ドヴュッシー亡き後、ラヴェルなどとともにフランス音楽を支えた一人であったわけである。ドイツ音楽の作曲技法とフランス音楽の感性をつなぎあわせたような作風で、ジャズにも興味があったというとおり、伝統的なクラシック音楽の作曲者とはいささか異なる。
私がルーセルを初めて聴いたのは、確かラジオから流れていた交響曲の3番か4番であったと思う。当時私は、ルーセルなどという作曲家などはまったく知らず、あまり身近なものではなく、フランス音楽かなといった印象しか残っていない。しかし、その交響曲は一度聴くと忘れられない何かが耳に残って気になってしょうがなかったわけである。実にさわやかで、何しろテンポが現代的で、現在のわれわれが聴いても違和感がない。そして、曲全体が開放感にあふれ、何しろ明るい印象が聴いていて満足感が得られる。今、ルーセルのことを調べてみるとこれらのことが、なるほどなと理解できる。海軍でフリゲート艦に乗っていたので、開放感ある曲想を思い付いたであろうし、ジャズに興味があったことから、現在のわれわれの感性と違いがないリズム感の曲を作曲できたのであろう。
そんな、あるときCDショップでミュンシュがラムルー管弦楽団を指揮した、1965年4月録音のルーセルの交響曲第3番と第4番のCDを発見し、迷うことなく購入した。当時ミュンシュ/ラムルー管弦楽団は最高のコンビで、演奏は最上という判断があったからだ。そして聴いてみると、昔聴いたあのなんともいえない開放感と独特のリズム感に満足この上なかった。最近そのCDを引っ張り出してきて聴いてみたが、やはりいい。どうもクラシック音楽には理屈が成り立たないと、名曲と見なさない良くない風習が昔からあるが、ルーセルのこれらの交響曲は理屈抜きに聴いていて楽しい。別にこれらの曲が何を表しているのかを聴き取る必要もないし、別に解説もいらない。そんなわけでルーセルはそんなに有名な作曲家ではないかもしれないが、意外にこれからも聴き続けられる作曲家になるかもしれない。(蔵 志津久)