ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

統合失調症:脳に未成熟な領域 マウスで確認、治療法開発も=藤田保健衛生大学

2008年09月11日 | 心のしくみ
 統合失調症に似た異常行動を示すマウスの脳の中に未成熟な領域があることを、宮川剛・藤田保健衛生大教授(神経科学)らが発見した。死亡したヒトの脳の研究でも同様の傾向がみられ、統合失調症の客観的な診断や治療法開発につながると期待される。11日、英国のオンライン科学誌「モレキュラー・ブレイン」に発表する。

 宮川教授らはさまざまな遺伝子を欠損させたマウスの行動を網羅的に調べ、CaMK2αと呼ばれる酵素を欠いたマウスが「気分の波」など統合失調症に似た異常行動を起こすことを見つけた。

 この酵素を欠くマウスは、記憶をつかさどる海馬の「歯状回」という領域の神経細胞が未成熟で、ほとんど機能していない。死亡したヒトの脳を調べた米国のデータベースによれば、統合失調症の患者は、歯状回の成熟した神経細胞を示す分子が少ない傾向にある。

 宮川教授は「ヒトの統合失調症の一部は海馬の歯状回の未成熟が原因の可能性がある。成熟を促すことができれば治療法として有望だ」と話す。【西川拓】

[毎日新聞 2008年09月11日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080911ddm003040127000c.html


【大脳に未成熟な神経細胞 統合失調症、発症に関与か】

 統合失調症の症状を示すマウスの脳では、記憶をつかさどる大脳の海馬に神経細胞が未成熟な部分があることを見つけたと、藤田保健衛生大の宮川剛教授(神経科学)らが11日付の英専門誌電子版に発表した。亡くなった患者でも同様の異常が判明、病気の発症と関係があるとみられる。

 これまでは、幻覚などの精神症状や異常行動などから病気を診断していたが、この神経細胞の成熟度を客観的な指標に使える可能性があり、新しい治療法開発にもつながるのではないかという。

 宮川教授らは、遺伝子を改変した約90種類のマウスのうち、えさを効率良く得るための短時間の記憶力が悪く、人間の気分の浮き沈みに当たる動きの活発さの波が激しい1種類を統合失調症のモデルマウスに選んだ。

 海馬での遺伝子の働きを調べると、大人の脳で新たな神経細胞ができる歯状回で著しい異常があり、細胞は通常のマウスの1・5倍できるものの、ほとんど成熟せず活動していないと判明。亡くなった統合失調症患者では、遺伝子の働いている状況から20人中18人で歯状回が未成熟だったと考えられた。

[共同通信47NEWS 2008年09月11日]
http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008091001000676.html

性行動指令の脳細胞特定=東北大学、北海道教育大学

2008年09月11日 | 心のしくみ
 東北大大学院生命科学研究科の山元大輔教授(行動遺伝学)らの研究グループは10日、ショウジョウバエのオスの性行動をコントロールする脳細胞を特定したと発表した。行動の性差のベースとなる細胞の存在を世界で初めて突き止め、「なぜ雌雄によって性行動が違うのか」という疑問に生物学的な回答を示した。

 グループはショウジョウバエのメス205匹で、脳細胞の遺伝子を組み換え、部分的にオス化した。1匹につき10億個ほどある脳細胞の一部を性転換し、行動との関連を調べた。

 205匹すべてを正常なメスとペアにすると、16匹が片羽を震わせるオス特有の求愛動作を繰り返した。16匹を調べた結果、13匹の脳の同じ部分に20個ほどの細胞集団が見つかった。

 「P1細胞群」と名付けた集団はメスの場合、性決定遺伝子の働きで失われるため、本来はオスにしかない。人為的にP1を作ったメスがオスの性行動を取っており、P1がオスの性行動を指令する細胞であることが解明された。

 山元教授は「P1が神経回路に性行動を指令し、性による行動の違いを生みだしていた。行動の性差は遺伝的に組み立てられていることが分かった」と説明する。

 研究が進めば、人間でも男女によって発症率に違いがあるとされる脳疾患の治療法の開発に応用が期待されるという。

 北海道教育大の木村賢一教授(発生遺伝学)との共同研究で、成果は11日発行の米科学誌ニューロンに発表した。

[河北新報 2008年09月11日]
http://jyoho.kahoku.co.jp/member/backnum/news/2008/09/20080911t13001.htm

飲み込めるカプセル内視鏡、日本で発売認可=オリンパス株式会社

2008年09月11日 | 医療技術
 オリンパスメディカルシステムズは9月11日までに、錠剤のように飲み込める小腸用のカプセル型内視鏡について、厚生労働省から日本での製造販売認可を取得した。今後、発売に向けて準備を進める。

 直径11ミリ、長さ26ミリのカプセル状。超小型のCCDカメラと無線送信機構を持ち、飲み込んだ患者の小腸内部の様子を外部モニターで観察できる。チューブを挿入する従来型と異なり、患者の負担を抑えながら消化器内を観察できる。

 同製品は2005年10月から欧州、2007年10月から米国で販売している。

飲み込めるカプセル内視鏡、オリンパスが開発(ITmedia news)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0411/30/news096.html

[livedoorニュース 2008年09月11日]
http://news.livedoor.com/article/detail/3816179/

オリンパス株式会社 ニュースリリース (2008年09月10日)
 内視鏡総合メーカーのオリンパスメディカルシステムズ
 日本メーカー初、通常内視鏡に匹敵する高画質を実現した
 小腸用の「オリンパスカプセル内視鏡システム」"エンドカプセル"
 日本で製造販売承認取得
http://www.olympus.co.jp/jp/news/2008b/nr080910capsulej.cfm

マウスの精子保存、新方法を発案:精巣スライス、アルバム状に凍結=理化学研究所

2008年09月07日 | 遺伝子組替マウス
 マウスの精巣を凍らせて薄く切った切片から、精子の核を取り出して卵子と受精させ子供に育てることに、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の若山照彦チームリーダー、大田浩研究員(発生生物学)らが成功した。生殖能力を損なわず大量の精子を簡単に保存する新方法として、生殖細胞を多数扱う基礎研究の現場で注目されそうだ。

 新しい方法は、マウスの精巣を凍らせた後、約25マイクロメートルの厚さにスライスして薄いフィルムの上に乗せ、そのまま写真用アルバムのようなものにとじてマイナス30度で保存する。

 解凍の際は培養液の中にフィルムを入れて溶かすだけ。凍った精巣の細胞は既に死んでいるが、培養液の中にはDNAを含む細胞の核がはがれ落ちてくるため、核を卵子の中に注入する「卵細胞質内精子注入法」(顕微授精法)で受精させる。実験の結果、凍結1年後に解凍、受精させても正常なマウスが生まれた。

 従来は、精巣からあらかじめ精子を取り出し、凍結保存液に入れて小さな碁石のような形に凍らせたり、ストロー状のチューブに入れて冷凍庫に保存するケースが多かった。若山さんは「大量の精子保存のため多くの研究室が冷凍庫のスペース不足に悩んでいる。新方法なら保存スペースは4分の1以下にできるだろう」と話している。【奥野敦史】

[毎日新聞 2008年09月07日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080907ddm016040009000c.html

「ビスフェノールA」脳の神経組織に悪影響…サルで証明=(米)エール大学

2008年09月06日 | 脳、神経
【ワシントン=増満浩志】プラスチック製の食器などから溶け出す化学物質ビスフェノールA
(BPA)によって、脳の神経組織の形成が妨げられることが、サルを使った米エール大などの
実験で分かった。

 米科学アカデミー紀要電子版で発表した。

 ネズミでは知られていた現象だが、内分泌や脳の構造が異なる人間でも起きるのかどうか、
安全性をめぐる議論の焦点となっていた。

 異常が現れたのは、記憶や学習をつかさどる海馬などの、「スパイン」とよばれる構造。体内の
ホルモン「エストラジオール」の働きで形成が促進され、神経細胞同士の信号のやり取りに重要な
役割を果たす。ところが、アフリカミドリザルにBPAを4週間与え続けた結果、エストラジオールの
働きが妨げられ、領域によってはスパインの数が半分以下に減少した。

 霊長類への影響を初確認したことで、研究チームは「うつ病などの気分障害にもつながる可能性が
あり、医療機器や食器などへのBPA使用について懸念が増した」と指摘している。

 実験では、アフリカミドリザルの背中にポンプを埋め込み、1日に体重1キロ当たり50マイクロ・グラムの
BPAを体内へ送り込んだ。日本など世界各国で、同じ量のBPAが、毎日摂取しても問題がない基準値と
されている。

[読売新聞 2008年09月06日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080906-OYT1T00503.htm

ボルトの速さの秘密? ヤムイモに運動効果=タカラバイオ

2008年09月04日 | 食品・栄養
 ボルトの速さはヤムイモのおかげ? 滋養強壮作用があるとされるヤムイモの一種に、脂肪の代謝を良くして運動機能を高める効果があるとする研究結果を、大津市の医薬品企業タカラバイオが4日までに発表した。

 北京五輪の陸上短距離で3つの世界新記録を打ち立てたジャマイカのウサイン・ボルト選手も、普段からヤムイモを食べているという。

 同社が研究したのはジャマイカのヤムイモと異なる種類だが、似た成分は含まれており、同社は「ボルト選手の驚異的な速さの秘密に関係しているかも」と話している。

 同社は、沖縄などで育つヤムイモの一種トゲドコロに着目。少し混ぜた餌をマウスに与え、週1回の水泳運動を2カ月続けると、普通の餌を食べたマウスより水泳時間が10-20%長く続くようになった。体脂肪の量も減少。肝臓を調べると、脂肪を燃やしてエネルギーに変える酵素をつくる遺伝子の活性が高まっていた。

 同社によると、トゲドコロはアジア原産で粘りや甘みが強いのが特徴で、国内生産量が年数トンという希少品種。

[共同通信47NEWS 2008年09月04日]
http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008090401000101.html

タンパク質の「鍵」構造解明、不要なDNAを調節=京都大学

2008年09月04日 | 蛋白質
 不要なDNAが読み込まれることがないようにDNAに「鍵」をかける「DNAメチル化」の維持で働くタンパク質の構造を、京都大工学研究所の白川昌宏教授(分子生物学)、有吉眞理子助教らのグループが解明した。メチル化のパターン変化は、がん細胞やiPS(人工多能性幹)細胞と深くかかわっており、創薬や再生医療につながる成果という。英科学誌ネイチャーで3日に発表した。

 どんな細胞もDNA総体は同じだが、細胞の種類ごとに読み取られる遺伝情報は違い、不要なDNAは塩基の一部がメチル化して堅く畳まれている。細胞の機能が決まる分化によってメチル化のパターンが決まるが、そのパターンが変わると、がん細胞になって暴走したり、iPS細胞のように再びさまざまな細胞に分化する能力を獲得する。

 細胞分裂では、親から引き継いだ片方のDNAのみがメチル化されており、メチル化パターンの維持には、新しく複製されたDNAのメチル化が必要。

 白川教授らは、親のDNAのメチル化塩基の場所を認識するタンパク質UHRF1の構造を解析した。

 UHRF1にはDNAを抱え込み、メチル化塩基をDNAらせん構造の外に放り出す「手」があり、「ポケット」の構造に塩基を取り込んでメチル化を正確に認識していることが分かった。

 UHRF1は塩基を認識してメチル化酵素を呼び込み、新しいDNAを親と対応するようにメチル化しているらしい。

 白川教授は「タンパク質を操作してメチル化を調節することで、がん細胞を抑えたり、iPS細胞の産生効率の向上や、がん遺伝子やウイルスを使わない安全な作成法の開発が期待できる」と話している。

(写真:タンパク質がDNAと複合体を作ってメチル化塩基を認識するメカニズム(白川昌宏京大教授提供の資料から作成))

[京都新聞 2008年09月04日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008090400042&genre=G1&area=K00

京都大学 プレスリリース
細胞分化を決定するゲノム中のメチル化塩基は、2重らせんの外に引き出されて認識される
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/080904_1.htm

子どもの脳に悪影響か ビスフェノールAで最終報告=米、厚生省

2008年09月04日 | 食品・栄養
 米厚生省は3日、プラスチック原料として広く使われているビスフェノールA(BPA)について、現在の摂取量でも子どもの脳や行動に悪影響を及ぼす懸念があるなどとする最終報告書を公表した。カナダ政府は既に、BPAを含む哺乳(ほにゅう)瓶の販売などを禁止する方針を明らかにしており、日本の食品安全委員会も健康影響評価を始めている。

 米厚生省は、これまでの動物実験を検討。胎児と乳幼児の脳や行動、前立腺への悪影響について「深刻な懸念」から「無視できる」までの5段階のうち、上から3番目の「いくらかの懸念」があるとした。女児の乳腺への影響や早熟に関して、4番目の「わずかな懸念」があるとした。人間への直接的な影響を確認したわけではないが「人間の健康への悪影響が否定できない」と結論付けた。

 BPAはポリカーボネート製の哺乳(ほにゅう)瓶や一部の玩具に触れたり、BPAを含む塗装剤を使った缶詰の食品を食べたりして体内に入るとされる。(共同)

[msn産経ニュース 2008年09月04日]
http://sankei.jp.msn.com/life/body/080904/bdy0809041049001-n1.htm

疲労感じる原因たんぱく質を発見=東京慈恵会医科大学

2008年09月04日 | 蛋白質
 疲れを感じる原因となるたんぱく質を、東京慈恵会医科大がマウスを使った研究で突き止めた。このたんぱく質は、徹夜や運動の直後に心臓や肝臓、脳などで急激に増え、休むと減る。元気なマウスに注射すると、急に疲れた。疲労の謎を解く鍵として、科学的な疲労回復法の開発につながりそうだ。沖縄県名護市で開かれている国際疲労学会で4日、発表する。

 近藤一博教授と大学院生の小林伸行さんは、人が疲れると体内で増殖するヘルペスウイルスに関係するたんぱく質に注目、疲労因子を意味する英語からFFと名付けた。水があると眠れないマウスを、底に1センチほど水を張った水槽に一晩入れて徹夜状態にし、その直後に臓器を取り出し、FFの量を調べた。

 その結果、睡眠をとったマウスに比べ、徹夜マウスでは、FFが脳、膵臓(すいぞう)、血液で3~5倍、心臓と肝臓では10倍以上も増えていた。2時間泳がせた場合も、同様に変化した。どちらも休息後は平常値に戻った。

 さらに、FFを元気なマウスに注射すると、大好きな車輪回し運動をほとんどしなくなった。疲れの程度に応じて増減し、かつ、外から与えると疲れが出現するという「疲労原因物質」の二つの条件を満たした。

 FFは、細胞に対する毒性が強い。心臓、肝臓で特に増えるため、過労に陥ると心不全や肝障害が起きやすくなる、という現象に関係している可能性が高い。

 人が疲れを感じる仕組みは、まだ十分解明されていない。運動疲労の原因とされていた乳酸は、運動すると筋肉中に増えるが、疲労の程度とは関係せず、筋肉に注射しても疲れが出現しないため、原因物質ではないことが数年前に実証されている。

 近藤教授は「FFは、疲労が起きるとすぐに反応するため、疲労に対し最初に働く回路だろう。正確な疲労の測定装置や、科学的な疲労回復法の開発につながる」と話す。(編集委員・中村通子)

[朝日新聞 2008年09月04日]
http://www.asahi.com/science/update/0903/OSK200809030091.html

「学習意欲」、本能かかわる脳中枢に=大阪市立大学、生理学研究所、科学技術振興機構

2008年09月03日 | 心のしくみ
 人は達成感があると、学習意欲がわく。この心の動きは脳のどこで生まれるのか。答えは意外にも、言語や理解など高度な知性を受け持つ大脳皮質ではなく、より原始的な本能にかかわる脳の奥深くの線条体という場所だった。達成感がなければ、この中枢は働かない。意欲を育む教育法開発に脳科学が一役買いそうだ。

 大阪市大と生理学研究所(愛知県岡崎市)の研究グループの成果で、3日から沖縄県名護市で始まった国際疲労学会で発表する。

 大学生14人に、パソコンで数字を使ったテストをさせ、脳の動きを特殊な装置で調べた。学生には事前に「知能の検査です」と告げた。正解するたびに画面上のマス目が埋まり、自分がどれだけ正しく答えたのか分かる。マス目が埋まっていくことで学生は達成感を得、好成績をあげることで「自分は頭がいい」と実感する仕組みだ。

 達成感を与えるマス目を表示せずに同様のテストをしたときと比べると、脳の記憶や計算に関係する部分はどちらも同じように働いていたが、線条体は「マス目あり」のテストの時だけ活発に働いていた。さらに14人それぞれの日頃の学習意欲を調べると、日頃の学習意欲が高い人ほど、線条体は活発に動いていた。

 線条体は、卵をつぶさないようにそっと握るなど、細かな運動にかかわっていることが知られている。実験をした水野敬・科学技術振興機構研究員は「学習意欲という複雑な心の動きが、脳の特定の1カ所に集約されていたのは意外だった」と話す。(編集委員・中村通子)

[朝日新聞 2008年09月03日]
http://www.asahi.com/science/update/0903/OSK200809030026.html

認知症予防でDHA、EPA臨床研究へ=島根大学、島根県立短大、仁寿会加藤病院

2008年09月03日 | 食品・栄養
島根ワイド : 川本(島根県川本町)で認知症予防でDHA、EPA臨床研究へ

 物忘れ、認知症の予防で、青魚に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)の効果を実証しようと、島根大医学部生理学講座(出雲市)の橋本道男准教授(環境生理学)らの研究グループが十月、二年間の臨床研究に乗り出す。疫学調査を進めている島根県川本町の六十五歳以上百人が対象で、国内ではかつてない規模。DHA、EPAを多く含むソーセージを食べ続けてもらい、認知機能の維持、改善との関連を確かめる。

 研究メンバーは、DHAによる脳の神経細胞の再生効果を動物実験で確認し、国際特許を出願している橋本准教授のほか、県立大学短期大学部(出雲市)の山下一也教授、仁寿会加藤病院(川本町)の加藤節司院長ら。

 川本町を含む県内三カ所で、継続中の食事と認知機能の関連を調べる疫学調査で「魚介類の摂取は認知機能低下の進行を遅らせる可能性がある」との中間結果を得たのを踏まえ、DHA、EPAの効果実証に絞った介入研究に入る。

 認知症予防をめぐっては、国内外の研究で、サプリメントによるDHA、EPA摂取と比べ、食事介入による治療、食事療法がより効果的との報告がある。

 このため、DHA、EPAを食事から取るのが有効と仮定。被験者には、厚生労働省許可の特定保健用食品で、焼きイワシ一・五尾相当のDHAを含むソーセージを支給。二年間、毎日一、二本食べてもらい、半年ごとに問診と血液検査を実施。記憶や計算などを点数化して調べる認知機能の変化と、血中のDHA、EPA濃度の相関関係から効果を実証する。

 代表研究者の橋本准教授は「認知症の予防により、究極的には、超高齢化社会を乗り切る手段として医療費抑制、介護負担軽減につなげたい」と、成果に期待している。

 川本町内で近く説明会を開き、研究への協力を呼び掛ける。問い合わせは、健康と福祉のサポートショップ「うさぎとかめ」(電話0855・72・2718)
[山陰中央新報 2008年09月03日]
http://www.sanin-chuo.co.jp/news/modules/news/article.php?storyid=505960004

子宮体がん:「毎日コーヒー」で減 1~2杯で効果、発症率4割低く=厚生労働省研究班

2008年09月02日 | 食品・栄養
 コーヒーを毎日1~2杯飲む女性は、週に2日程度しか飲まない人に比べて、子宮体がんの発症率が4割少ないことが1日、厚生労働省研究班の大規模調査で分かった。飲む量が多いほど、発症率は低い傾向がみられた。研究班は、9府県の40~69歳の女性約5万4000人を05年まで追跡調査。約15年間に117人が子宮体がんを発症した。

 コーヒー摂取量と発症率との関係を調べると、コーヒーを毎日1~2杯飲むグループは、週2日以下しか飲まないグループに比べ、子宮体がんの発症率は4割少なかった。毎日3杯以上飲むグループは6割も少なかった。緑茶の摂取量も調べたが、発症率に関連はみられなかった。

 子宮の入り口にできる子宮頸(けい)がんは、ウイルス感染が原因と考えられている。一方、子宮の奥の内膜にできる子宮体がんは、女性ホルモン「エストロゲン」や血糖値を調節する「インスリン」との関連が指摘されている。

 担当した国立がんセンター予防研究部の島津太一研究員は「コーヒーを飲むと、エストロゲンやインスリンの濃度が下がることが知られている。この作用が発症率に影響している可能性がある」と話す。

 欧米ではコーヒー摂取と子宮体がんの関連がみられないとの研究が多い。その理由として、ホルモン補充療法が日本より広く行われ、コーヒーの影響が表れにくいと考えられているという。【下桐実雅子】

[毎日新聞 2008年09月02日]
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/09/02/20080902ddm012040107000c.html

大腸がんの抑制遺伝子解明=シンガポール国立大学

2008年09月02日 | 癌、腫瘍
 シンガポール国立大の伊藤嘉明教授らの研究グループが、RUNX3と呼ばれるがん抑制遺伝子の欠如が、大腸がんの発症や増殖に深く関与していることを解明した。この遺伝子は胃がんの抑制遺伝子として知られているが、大腸がんでも早期診断や治療への応用が期待される。

 米科学誌キャンサーセルの9月号に掲載。同大学などが9日、発表した。

 発表によると、グループは動物実験やがん患者の細胞の分析を通じ、大腸がんの増殖を引き起こすタンパク複合体を抑制するRUNX3が、がんの極めて早期に不活性化することを突き止めた。

 伊藤教授は「乳がんやぼうこうがん、大腸がん、肺がん患者の治療に臨床応用が期待できる」と話している。

 伊藤教授は東北大で医学博士号を取得、京大ウイルス研究所所長などを経て、2002年にシンガポール国立大教授(がん研究所所長)に就任した。(共同)


[msn産経ニュース 2008年09月02日]
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080909/trd0809092203010-n1.htm

アルツハイマー病 記憶障害改善に成功 マウス実験 神経伝達物質がカギ=理化学研究所

2008年09月02日 | 脳、神経
 アルツハイマー病での記憶障害には、情報の伝達を抑制する神経伝達物質がかかわっていることを、理化学研究所などの研究チームがマウスを使った実験で突き止め、米科学誌プロス・ワンに発表した。

 この伝達物質の働きを妨げると記憶障害は改善され、チームは「新たな治療法の開発につながる可能性がある」としている。

 アルツハイマー病では、脳にベータアミロイドというタンパク質がたまり、老人斑と呼ばれる染みができる。このタンパク質がたまりやすいように遺伝子操作したマウスの脳を詳細に調べたところ、神経回路の信号伝達を抑制するガンマアミノ酪酸(GABA=ギャバ)と呼ばれる神経伝達物質の働きが、通常のマウスより活発になっていた。

 迷路を使った実験で、遺伝子操作したマウスにGABAの働きを妨げる薬剤(GABA阻害剤)と塩水をそれぞれ注射して成績を比較。塩水を与えたマウスは、トレーニングを重ねても失敗が減らなかった。一方、阻害剤を投与されたマウスは徐々に成功が増え、GABAの働きを妨げると記憶力が高まることが分かった。

 脳の神経回路は、信号を伝達する「興奮性神経細胞」と、信号伝達を抑える「抑制性神経細胞」で構成されている。理研の吉池裕二研究員は「GABAの働きが活発になり、『興奮』と『抑制』のバランスが崩れることで記憶障害が生じると考えられる。記憶力を正常に戻すには、抑制と興奮のバランスを取ることが重要」と話している。

<ガンマアミノ酪酸(GABA)> アミノ酸の一種で、ヒトをはじめとした哺乳(ほにゅう)動物の海馬や小脳などに多く存在する。脳内では、神経信号の伝達を抑える抑制性神経細胞の間で、情報を伝える働きをする。一つの神経細胞から放出されたGABAが、別の神経細胞の受容体と結合することで情報を伝達する。

[東京新聞 2008年09月02日]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008090202000165.html

カッコウの托卵 だまし、見破られて進化(コラム)=信州大学

2008年09月02日 | 生きもの色々
 家族も友人も持たず、子育ては一切しない鳥、カッコウ。他種の鳥の巣に卵を産み、他の鳥に子育てさせる「托卵(たくらん)」の習性がある。そんななぞに包まれたカッコウの生態が、遺伝子解析など先端技術で少しずつ明らかにされている。「カッコウの生態研究がライフワーク」という信州大学教育学部の中村浩志教授を訪ねた。 (引野肇)

 信州大学から車で三十分も走れば千曲川。ここが中村教授の研究フィールドだ。中村教授は同大の助手時代から、この不思議な托卵という行動に魅せられてきた。

 カッコウが托卵する相手としては、オオヨシキリ、モズ、オナガなどがある。卵がある鳥の巣を見つけると、そこから卵を一個取り除き、自らの卵を一個産みつける。他の卵よりいち早くふ化したカッコウのひなは、もともとあった卵を背中に乗せて巣外に捨てる。親もずる賢いが、ひなも相当の“ワル”だ。

 被害者の鳥もだまされてばかりではない。カッコウを見かけると巣に近づかないよう威嚇したり、カッコウの卵を見つけると外へ捨てたりする。中村教授は「カッコウと托卵される側との長い攻防戦を通じて、巧妙な托卵という行動が磨きあげられ、進化した」と説明する。

 江戸時代の文書によると、中部地方では当時、カッコウはホオジロに托卵していた。やがて、ホオジロもカッコウの悪だくみに気づき、ホオジロの卵を識別できるようになった。現在、ホオジロへの托卵はほとんど見られないという。「十種の鳥の巣に紙粘土製の擬卵を入れ、それが偽物と識別できるかどうか調べたが、ホオジロが一番識別能力が高かった」という。苦い歴史がホオジロの観察眼を磨いたのだ。

 メスが托卵する鳥の種類は決まっている。オナガに育てられたカッコウは、オナガの巣にオナガの卵に似た卵を産む。オオヨシキリに育てられたカッコウは、オオヨシキリの巣に、というわけだ。

 一方、オスは不特定のメスと交尾する。そこで中村教授は「カッコウの卵の形や色、模様は、オスにはないメスだけが持つW染色体上の遺伝子で決定される」と考えた。カッコウの血液を集めてDNA解析を実施して、その可能性が高いことを確認。二〇〇〇年、米科学誌「ネイチャー」に発表した。

 卵の模様には、線模様と斑点、斑紋の三つがある。ホオジロの卵には線模様が多く、江戸時代のカッコウの卵にも線模様が多かった。ところが、線模様がないオナガやオオヨシキリに托卵するようになると、卵から線模様が大幅に減った。「カッコウの卵にまだ線模様があるのは、ホオジロに托卵していたころの名残。いまは、線模様が多いとカッコウの卵と見破られて捨てられてしまう」と中村教授。

 オナガへの托卵が始まったのは約三十年前。当初、オナガはほぼ百パーセント、カッコウにだまされていた。しかし、じきに托卵に気づき、カッコウへの攻撃性も獲得、カッコウの卵を識別できるようになった。現在、だまされるオナガはほとんどいない。カッコウは、長い時間をかけて托卵の相手を次々と変えているのだ。

 中村教授は「カッコウは、夫婦関係も、親子関係も、友人関係も持たない孤独な鳥。生まれて死ぬまで悩むこともない。生まれて死ぬまで悩み続ける人間とは正反対だ」と言う。そこがカッコウ研究の奥深いところでもある。

<記者のつぶやき> 巣作り、ひなのエサやりなど子育てはたいへん。これを他の鳥にやらせ、そのうえ他の卵は捨ててしまう。人間だったら極悪非道だ。中村教授は「いったん悪の道に入ったら、とことんその道を追求せざるを得ないのが進化」という。托卵だって、そうそううまくはいかない。カッコウは「できればまっとうに生きたい」と思っているのかも…。

[東京新聞 2008年09月02日]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008090202000166.html