ラットは今日も、きみのために。

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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

赤ワインは前立腺ガン予防にも効果あり、実験で発症率87%減=アラバマ大学(米国)

2007年09月05日 | 食品・栄養
【9月5日 AFP】男性が1日にグラス1、2杯の赤ワインを摂取した場合、前立腺ガンの発症率が低くなる可能性があるという研究結果が8月31日、米国で発表された。

 アラバマ大学バーミングハム校(University of Alabama at Birmingham、UAB)の研究チームが、赤ワインに含まれるリスベラトロール(resveratrol)と呼ばれる物質を雄のマウスに投与するという実験を行った結果、前立腺ガンの大半の種類で発症率が87%減少することが判明した。

 リスベラトロールを投与していて前立腺ガンを発症するマウスもいるが、その場合も大きな腫瘍ができにくくなる。また、腫瘍の成長が停止する、もしくは遅くなる可能性が、リスベラトロールを投与しなかったマウスに比べて48%以上高いという。

 赤ワインに心臓病予防の効果があることは知られているが、今回の研究により、赤ワインからリスベラトロールを摂取すると強力な化学的予防作用が得られることが新たに判明したと、研究チームを率いるUAB薬理学・毒物学部のCoral Lamartiniere氏は説明する。

 同氏自身が前立腺ガンの家系でガン発症の心配があるため、毎晩グラス1杯の赤ワインを飲んでいると言う。

■問題点は1日の摂取量

 唯一の問題点はリスベラトロールの摂取量だ。実験で雄のマウスに与えたのと同量のリスベラトロールを人間が赤ワインから摂取するには、1日にボトル1本の赤ワインを飲む必要がある。研究チームは現在、人間が抗ガン作用を得るにはどれぐらいの量のリスベラトロールが必要か、特定に努めている。

 医療関係者らは、男性なら赤ワインを1日に平均2杯、女性の場合1杯にとどめておくべきだとの見解を示している。また、ブドウやラズベリー、ブルーベリー、ピーナッツを食べることでも、レスベラトロールを摂取できるという。(c)AFP

[AFP BB News / 2007年09月05日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2276638/2070471

心臓病治療に朗報、人工培養組織で損傷した心臓組織再生可能に

2007年09月04日 | 徒然に
【9月4日 AFP】ヒト胚性幹細胞(ES細胞)を人工培養し、損傷した心臓組織に移植する方法が、まもなく実用化する見通しだという。心臓移植の専門家が3日、英国王立協会(Royal Society)発行の生物学専門誌「Philosophical Transaction B」特別号の中で発表した。

 この方法は、患者自身の骨髄から採取したES細胞を人工的に育てて、心臓筋あるいは心臓弁に移植するというもの。3年から5年後には実用化される見通し。 

■心臓病で年間1750万人が死亡

 世界保健機関(WHO)による2005年度統計によると、心臓病による死者は全世界で1750万人、人類最大の死因となっている。だが、心臓弁と心臓筋を移植すれば、心臓病による死亡の大半は避けられるとされている。

 血液の環流を調整する4つの心臓弁とそれを取り囲む筋肉からなる心臓の組織は、いったん損傷を受けると再生が不可能だ。そのため心臓発作を起こすと、致命的でない場合でも、身体を衰弱させることになる。また加齢とともに、心臓の組織は弱体化していく。

「患者自身の繊維組織から培養した心臓弁を最も必要としているのは、先天的な心臓欠陥をもって生まれてくる新生児。100人に1人がこの問題を抱えている」と指摘するのは、心臓移植研究の第一人者で今回の研究の中心的人物でもある、Simon Hoeurstrup氏。

 現在使用されている人工の心臓弁は、成長にともない定期交換する必要があるため、子どもの患者に多大な苦痛を与えることになるうえ、死亡率も成人の場合より高い。さらに、耐久性の高いメカニックな心臓は心臓裏側の細菌感染の危険性を高め、血液の流れを不正常にする可能性が高い。血液の凝固を阻止する薬を服用せざるをえないため、内出血と塞栓症の危険を高めてしまう。

 こうした理由から、免疫システムによる拒絶反応を起こさない患者自身の組織を移植する方法は、関係者から移植治療における「聖なる杯」とされていた。
 
■画期的な心臓病治療法と期待される、人工培養組織の移植

 現在利用されている生物繊維組織からなる心臓弁は2種類あるが、いずれも重大な欠陥を抱えている。豚の心臓弁移植は、容易に移植の素材を入手できる利点はあるものの、人間の心臓弁と構造が違うため、摩耗していく傾向が強い。ヒトのドナーから提供してもらう場合その心配はないが、提供の機会が極めて限られているうえ、拒絶反応を引き起こす場合も多い。

 患者自身の骨髄から採取した組織を使用する方法では、細胞を適切な形に育成させる。こうして成熟した繊維組織を心臓弁として患者に移植する一連の過程は、わずか6週間ほどで完了するという。(c)AFP/Marlowe Hood

[AFP BB News / 2007年09月04日]
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2276678/2070687

免疫反応の「制御役」特定 アレルギー構造解明=九州大学

2007年09月03日 | 免疫
 ぜんそくや花粉症、アトピー性皮膚炎の原因となるアレルギー反応を制御する分子メカニズムを、九州大生体防御医学研究所の福井宣規(よしのり)教授(免疫遺伝学)らの研究グループが世界で初めて解明し、2日付の米科学誌ネイチャー・イムノロジー(電子版)に発表した。アレルギー疾患の研究や、リウマチなど自己免疫疾患の治療への応用が期待される。

 抗原(ダニや花粉、食物などアレルギー反応の原因)が体内に入ると、免疫をつかさどるヘルパーT細胞(リンパ球)は、侵入物を直接攻撃するTh1細胞やTh17細胞、抗体を使って排除するTh2細胞に分化。ヘルパーT細胞のバランスが崩れ、Th1細胞やTh17細胞に過度に偏ると自己免疫疾患、反対にTh2細胞が増えすぎるとアレルギー疾患に陥る。

 インターロイキン4と呼ばれるサイトカイン(細胞間の情報伝達をするタンパク質)がTh2細胞への分化を促すことは分かっていたが、抗原の刺激がインターロイキン4の生産につながる仕組みは不明だった。

 福井教授らは、抗原を認識するT細胞受容体からインターロイキン4受容体への信号伝達を、リンパ球を活性化させる分子DOCK2が制御していることを突き止めた。遺伝子操作でDOCK2を欠損させたマウスは、アレルギー疾患を自然発症するという。

 福井教授は「DOCK2に作用する医薬品ができれば、ヘルパーT細胞のバランスを整えて自己免疫疾患や移植後の拒絶反応の予防など、さまざまな疾患の治療に貢献できる」と話している。

[西日本新聞 / 2007年09月03日]
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/science/20070903/20070903_001.shtml

アルツハイマー病発症 日本人女性にリスク遺伝子=新潟大学

2007年09月02日 | 脳、神経
 日本人女性でアルツハイマー病の発症リスクを大きく左右する遺伝子を新潟大などのグループが見つけ、英専門誌に30日発表した。国内の患者1526人とそうでない人1666人のDNA配列を比較した結果だ。75歳以上では女性の方が男性よりも発症率が高いという報告が内外であるが、その原因の解明につながる可能性がある。

 DNA配列には「SNP」(スニップ)と呼ばれるわずかな個人差があり、この個人差と様々な病気との関連が注目されている。

 新潟大脳研究所の桑野良三・准教授らは、すでにアルツハイマー病関連遺伝子として知られているAPOE4遺伝子の影響を除いたうえで、約1200カ所の個人差を調べ、男女で発症リスクに差がある個所を探した。

 その結果、10番染色体にあるCTNNA3という遺伝子が浮上した。この遺伝子で特有なDNA配列を持つ女性は、アルツハイマー病の発症リスクが約2.6倍に高まることがわかった。この配列は女性患者の約3割、患者でない女性の約2割が持っていた。男性ではこの配列による差はなかった。CTNNA3遺伝子の働きはまだわかっていない。

 桑野さんは「この部分の個人差とアルツハイマー病との関連は、欧米では出てこない。DNA配列の個人差と病気の関係には、アジア人特有のものも多数あると思われるので今後さらに詳しく調べたい」といっている。

[朝日新聞 / 2007年09月02日]
http://www.asahi.com/science/update/0901/TKY200709010239.html

認知症になる可能性、喫煙で高まる傾向=エラスムス・メディカル・センター(オランダ)

2007年09月02日 | 脳、神経
 [ワシントン 2日 ロイター] 喫煙する人は、たばこをやめた人や喫煙経験のない人と比べてアルツハイマー病などの認知症を発症しやすいことが、オランダの研究チームの調査で分かった。2日発行の神経学の専門誌で発表した。

 オランダのロッテルダムにあるエラスムス・メディカル・センターのモニーク・ブレテラー博士が率いる研究チームは、55歳以上の約7000人を対象に、1人当たり平均で7年間に及ぶ調査を行った。

 この調査では期間中に706人が認知症を発症。対象者のうち喫煙者は、たばこを吸わない人と比べて認知症になる確率が50%高いことが分かった。

 認知症の危険因子としては、「APOE4」または「アポリポタンパク質E4」と呼ばれる遺伝子が知られている。この遺伝子を持つ人に対しては喫煙がアルツハイマー病を発症する危険性に影響を与えることはないが、この遺伝子を持っていない人の場合、喫煙により同病気を発症する危険性が70%高くなるという。

 ブレテラー博士によると、喫煙で小さな発作が引き起こされ、それにより脳がダメージを受けて認知症を誘発する可能性があるという。 

[ロイター通信(ワシントン) / 2007年09月02日]
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-27693720070903

糖尿病は万病のもと アルツハイマー発症4.6倍=九州大学

2007年09月02日 | 生活習慣病
 糖尿病やその「予備群」の人は、そうでない人よりアルツハイマー病になる危険性が4.6倍高いことが、九州大の清原裕教授(環境医学)らの研究でわかった。福岡県久山町の住民約800人を15年間、追跡して分析した。がんや脳梗塞(こうそく)、心臓病も発病しやすいという。糖尿病が、失明などの合併症に加え、様々な病気の温床になることが浮かび、その対策の重要性が改めて示された。

 九大は久山町で1961年から住民健診をして、生活習慣や体質と病気の関係を研究。死亡した場合には解剖への協力を求めている。

 清原さんらは85年時点で、神経疾患などを研究する米国立衛生研究所の研究機関の基準で認知症ではないと判断した65歳以上の826人を追跡。00年までに集めたデータの解析を進めてきた。

 15年間に188人が認知症を発症し、うち93人がアルツハイマー病だった。画像検査のほか、死亡した145人は9割以上を解剖して確定診断をした。

 同じ826人について、ブドウ糖の代謝能力である耐糖能の異常も調査。生活習慣が主な原因とされる2型糖尿病の病歴がある▽空腹時血糖が血液0.1リットルあたり115ミリグラム以上――などの人らをアルツハイマー病調査と合わせて分析した。これら糖尿病やその予備群の人は、耐糖能異常のない人に比べて4.6倍、アルツハイマー病になる危険性が高かった。

 清原さんによると、脳にたまってアルツハイマー病を引き起こすとされる物質は、インスリン分解酵素によって分解される。耐糖能異常の人はインスリンが少ない場合が多く、分解酵素も減るので、アルツハイマー病の危険性が高まるという。

 解剖などによる確定診断に基づいたアルツハイマー病研究で、これほどの規模のものは世界でも例がないという。

 また、別に40~79歳の約2400人を88年から12年間追跡し、糖尿病とがん、脳梗塞などとの関係も調べた。その結果、糖尿病の人は、そうでない人よりがん死亡の危険性が3.1倍高く、脳梗塞も1.9倍、心筋梗塞など虚血性心疾患も2.1倍高かった。

 清原さんは「糖尿病対策がアルツハイマー病予防につながる可能性がある。国内ではここ十数年で耐糖能に異常がある人が女性で2割、男性で4割増えており、対策を急ぐ必要がある」と話す。

[朝日新聞 / 2007年09月02日]
http://www.asahi.com/science/update/0901/TKY200709010236.html

神経細胞を正しく配線、“目印”のたんぱく質を発見=東京大学

2007年09月01日 | 再生医療
 動物の体内で神経細胞が正しく配線されるのに、不可欠な“目印”となるたんぱく質を、東京大大学院新領域創成科学研究科の能瀬聡直教授らがショウジョウバエで見つけた。

 伸びる神経細胞に対し、「こっちに来るな」と働きかけるもので、交通事故などで傷付いた神経の再生治療に役立つ可能性がある。米科学誌「カレント・バイオロジー」(電子版)で発表した。

 神経細胞は、「軸索」という突起を伸ばして、決まった相手の神経や筋肉などの細胞と結合することで、正しい神経回路をつくっていくが、その仕組みは詳しくわかっていなかった。

 能瀬教授、稲木美紀子研究員らは、幼虫になる前のショウジョウバエを解剖。筋肉に神経細胞が結合する過程を詳しく調べた結果、「Wnt4」と呼ばれるたんぱく質が、本来の相手とは異なる細胞と結合しないよう、伸びる神経細胞を拒絶する役割を担っていることがわかった。

 能瀬教授によると、神経回路の配線時に、神経細胞に「こちらにおいで」と働きかける、たんぱく質はこれまで3種類見つかっているが、「来るな」というたんぱく質の発見は初めて。

[読売新聞 / 2007年09月01日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070901it11.htm

筋ジストロフィーの進行抑える可能性、性機能不全治療薬に=ハーバード大学シュライナー病院、東京大学

2007年09月01日 | 遺伝子組替マウス
 全身の筋肉が徐々に弱くなる「筋ジストロフィー」の進行を、性機能不全治療薬が抑える可能性があることを、米ハーバード大シュライナー病院と東京大の研究チームが動物実験で突き止め、米科学誌電子版で報告した。

 同病院の安原進吾講師らは、筋ジスを発症するマウスの筋肉を、顕微鏡を使った特殊な方法で観察。その結果、筋肉が動いていない間は血流は正常だが、筋肉が動いた時に自然に増えるはずの血流が増えず、筋肉に供給する酸素が不足するなどして、細胞に障害が起きることがわかった。

 筋ジスを発症するマウスは、もともと筋肉の細胞が壊れやすくなっていることに加え、運動時の血液の不足が引き金となって、細胞が壊れることを確かめた。

 そこで、このマウスに血管を広げる作用のある性的不全治療薬「シアリス」(一般名=タダラフィル)を口から与えると、投与したマウスは薬を与えなかったマウスに比べ、首の筋肉細胞の障害が約4分の1に抑えられ、筋肉の障害を少なくすることに成功した。

 シアリスは、日本では7月に製造承認され、今月から販売が始まる予定。バイアグラも、ほぼ同じ薬理作用を持っている。

[読売新聞 / 2007年09月01日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070901i412.htm

バター風味食品香料、工場従業員に肺病多発=ユトレヒト大学(オランダ)

2007年09月01日 | 食品・栄養
 【ワシントン=増満浩志】バター風味の食品用香料「ジアセチル」が、製造工場の従業員に重い肺の病気「閉塞(へいそく)性細気管支炎」(BOS)を引き起こしていることを、ユトレヒト大(オランダ)などの研究チームが突き止めた。

 米国では、バター風味の香料を使う食品工場などで、BOS患者が多発している。ジアセチルは日本でも多用されており、厚生労働省は「情報を集めた上で対応を検討したい」と話している。

 研究チームは、2003年に閉鎖したオランダ国内のジアセチル製造工場の元従業員を追跡調査。生存者176人の中から、本来はまれな病気であるBOSの患者が4人も見つかった。米胸部学会の専門誌「呼吸器・クリティカルケア医学」9月号に発表される。

 BOSは、細気管支に慢性的な炎症が起き、肺機能が低下する病気。重症化すると肺移植が必要になる。米国では00年以降、電子レンジ用ポップコーンやその香料などを製造する工場から40人以上の患者が報告されている。

 日本香料工業会によると、国内では42社が年間計1・6トン(05年)のジアセチルを使って香料を製造。防護マスク装着や換気などの自主対策を講じている。ただ、米国立労働安全衛生研究所は03年末、香料を扱う事業所に対する勧告で、「防護マスクは、対策として(有効性が限られ)最も好ましくない」と指摘。設備の密閉による揮発防止などに重点を置くよう求めている。

[読売新聞 / 2007年09月01日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070901it01.htm