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医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

肺がんの原因遺伝子を発見=自治医科大学

2007年07月12日 | 癌、腫瘍
 肺がんの新しい原因遺伝子を発見したと、間野博行自治医大教授らの研究チームが、英科学誌ネイチャー電子版に十二日付で発表した。調べた肺がん患者の7%程度にこの遺伝子の異常がみられ、肺がんの原因遺伝子としては二番目に割合が高いという。喫煙者の患者に多いのが特徴。

 遺伝子異常を調べることで、従来は難しかった早期診断が可能になると期待されるほか、この遺伝子の働きを安全に抑えられれば、新たな抗がん剤として有望だという。

 チームは、喫煙者の男性患者の肺がん細胞から遺伝子の断片を二百万種類以上抽出。それぞれ培養細胞に組み込んで、異常増殖が起こるかどうかを調べた。その結果、ALKとEML4という二つの遺伝子が半分ずつ融合してできた遺伝子を組み込むと、細胞ががん化することを突き止めた。

 自治医大病院(栃木県)などの患者七十五人から採取した肺がん細胞を調べると、五人(6・7%)にこの融合遺伝子が見つかった。うち四人は喫煙者だった。

 ALKは、細胞外からの刺激を受けて、細胞の増殖を促す酵素の遺伝子。EML4と融合することで常時働くようになってしまい、細胞が増殖し続けるらしい。

 間野教授は「傷ついたDNAを修復するとき、誤って二つの遺伝子が融合することが考えられる。DNAを傷つけるのにタバコが関係しているのかもしれない」と話している。

[中国新聞 / 2007年07月12日]
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200707120113.html




・肺がん引き金の遺伝子を発見、喫煙に関連=自治医科大学

 肺がんの引き金となる新たな遺伝子異常を、間野博行・自治医科大教授らの研究グループが発見し、11日付の英科学誌ネイチャー電子版で発表した。

 喫煙が関係しているとみられ、これまで困難だった肺がんの早期発見が可能になるだけでなく、有効な治療薬の開発などにつながる成果として注目される。

 喫煙歴のある62歳の男性患者の肺がん細胞から採取した多数の遺伝子を、実験用の正常細胞に組み込み、がん化した細胞から原因遺伝子を特定した。

 この遺伝子は、細胞の増殖を指令する遺伝子「ALK」と、細胞の形の維持などを担う遺伝子「EML4」が融合した異常型で、ALKが際限なく増殖指令を出してがんを引き起こすらしい。さらに、肺がん患者75人を検査したところ、5人の患者から融合遺伝子を検出した。そのうち4人は喫煙者。

 グループによると、融合遺伝子は、たんや血液1cc中に、がん細胞が10個程度含まれていれば検出が可能。顕微鏡でがん細胞を確認する従来の方法に比べ、肺がんの診断が飛躍的に早まると期待される。

 肺がんに関しては、EGFRという遺伝子の変異が知られており、この働きを阻害する治療薬「ゲフィチニブ」(商品名イレッサ)もある。ただ、EGFRの変異は非喫煙者の患者に多く、喫煙による肺がんに特有の遺伝子変異は不明だった。

[読売新聞 / 2007年07月12日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070712i501.htm

肺がん引き金の遺伝子を発見、喫煙に関連…自治医大教授ら(読売新聞) - goo ニュース

アディポネクチン:善玉ホルモンに悪役の顔 動物実験で解明、脳内で食欲増進作用=東京大学

2007年07月12日 | 代謝
 脂肪燃焼や血糖値低下を促す善玉ホルモンのアディポネクチンには、食欲の増進や脂肪の蓄積を促す“悪玉”の働きもあることを、東京大などの研究チームが動物実験で突き止め、10日付の米科学誌「セル・メタボリズム」に発表した。アディポネクチンは血液中でいくつも結び付き、複合体となる。悪玉となるのは小型の、善玉となるのは大型の複合体という。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や糖尿病対策につながる成果として注目されそうだ。【大場あい】

 アディポネクチンは脂肪細胞から分泌される。筋肉や肝臓では脂肪の燃焼を促し、血糖値を下げるインスリンの効きを助ける。肥満すると分泌量が減り、脂肪が燃えにくくなる。脳内にも存在するが、そこでの働きはよく分かっていなかった。

 研究チームの門脇孝・東大教授(糖尿病・代謝内科学)らは、マウスで働きを詳しく調べた。

 アディポネクチンを注射したマウスの脳の視床下部を調べると、食欲を高める酵素が増えていた。アディポネクチンを投与したマウスは、実際に食べる餌の量が増える一方で、エネルギー消費量は減り、体重増加を招く状態になっていた。

 また、脳内で働くアディポネクチンは、結合数が3~6個と少ない低分子型複合体のアディポネクチンだと分かった。

 門脇教授は「アディポネクチンは、エネルギーを効率よく蓄え、飢餓に備える倹約遺伝子として働く。肥満で血中濃度が減るのは高分子型で、食欲を高めずに肥満や糖尿病を改善するには、高分子型だけを増やす薬などの開発が必要だ」と話す。

[毎日新聞 / 2007年07月11日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070711ddm012040049000c.html

人体へのウイルス侵入 細胞内で察知の分子特定=北海道大学、東京大学

2007年07月09日 | 免疫
 感染症を引き起こすウイルスのヒトの細胞内への侵入を察知し、自然免疫を活性化させる分子の特定に、北大遺伝子病制御研究所の高岡晃教(あきのり)教授(39)=分子免疫学・腫瘍(しゅよう)学=と東大大学院医学系研究科の谷口維紹(ただつぐ)教授(59)=免疫学=の共同研究班が成功した。高岡教授によると、この分子の特定は世界で初めて。ウイルス感染の初期段階の解明につながり、感染症などの治療分野への貢献が期待される。八日付(現地)の英科学誌「ネイチャー」(電子版)で発表する。

 高岡教授らは、自然免疫の活性化に重要な役割を果たしているインターフェロンによって発現が誘導される分子があることに着目。そのうち、細胞の中にあり、ウイルスの核酸(DNA)と結合するものの特定に成功、DNAを感知するこの受容体(分子)を「DAI(ダイ)分子」と名づけた。研究では、蛍光共鳴エネルギー移動法と呼ばれ、蛍光物質を付けた特定のもの同士が接近した場合に波長が変化する手法などを用いた。

 従来の研究では、細胞外でDNAを認識する受容体は特定されていたが、細胞内でDNAを認識する受容体は分かっていなかった。

 DAI分子の発現を増強させ、インターフェロンとの相互作用で生体の免疫系を活性化させることによって、ウイルスや細菌などの病原体を効果的に排除し感染を防ぐ方法の確立が期待される。

 また、DAI分子は細胞内に侵入した病原体のDNAだけではなく、自己の細胞のDNAも認識することが分かったため、自己のDNAが過剰に作用していると考えられる自己免疫疾患の病態を明らかにすることにもつながるという。

 高岡教授は「感染症や難病の患者の治療に役立てるため、この結果を臨床応用していきたい」と話している。

[北海道新聞 / 2007年07月09日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/environment/36879.html?_nva=6

(写真:細胞内に侵入したウイルスのDNAを感知する分子を特定した高岡教授)

免疫のブレーキ外す がんに新治療法の可能性も=京都大学

2007年07月07日 | 癌、腫瘍
 リンパ球の一種で、さまざまな免疫反応を抑制する「制御性T細胞」の目印となる特有のタンパク質を、坂口志文京都大教授(免疫学)らが見つけた。このリンパ球を減らす抗体を特定、がんを攻撃する免疫力が強まる可能性があるとしている。研究結果を米科学誌イミュニティーに6日、発表した。

 新たながん治療法につながる可能性があるが、現在はマウス実験の段階で、坂口教授は「人に応用できるかどうかが、今後の課題だ」と話している。

 制御性T細胞は、アレルギーなどの過剰な免疫反応を抑制する一方、有益な免疫反応も抑えている。

 坂口教授らは、マウスの研究で、制御性T細胞に「4型葉酸受容体(FR4)」というタンパク質があり、それに対する抗体と反応することを見つけた。マウスの細胞を使った実験では、抗体によって制御性T細胞は4分の1に減少した。

 がんのモデルマウスにこの抗体を投与すると生存率が上昇。制御性T細胞が減ってがんへの免疫が強まったと考えられるという。

[共同通信 / 2007年07月06日]
http://www.47news.jp/CN/200707/CN2007070501000906.html

イオン放出支援のタンパク質発見、心疾患究明へ道=京都大学

2007年07月05日 | 遺伝子組替マウス
イオン放出支援のタンパク質発見
京大教授ら、心疾患究明へ道
 筋肉の収縮などに必要なカルシウムイオンを、細胞内の小胞体から円滑に放出するために働く膜タンパク質を、京都大薬学研究科の竹島浩教授(生化学)らのグループが見つけ、英科学誌「ネイチャー」で5日発表した。心筋症や不整脈などの原因究明につながる発見という。

 小胞体は、細胞内の小器官の一つで、合成されたタンパク質の折り畳みや切断を行うほか、カルシウムイオンを貯蔵するなどさまざまな機能を持っている。カルシウムイオンが放出されると、筋細胞が収縮したり、神経細胞からホルモンの分泌などが行われる。

 しかし、小胞体からプラスの電気を持つカルシウムイオンが放出されると、内部がマイナスの状態になり、電気的なバランスが崩れてカルシウムイオンが放出されにくくなる。円滑に放出するには別のプラスイオンを取り入れてバランスを保つ必要があるが、仕組みが分かっていなかった。

 竹島教授らはウサギの筋肉から、小胞体の表面に穴を形成する膜タンパク質を見つけ、TRICチャンネルと名付けた。TRICチャンネルは一辺5ナノメートル(1ナノは十億分の一)で、中心の穴から細胞内のカリウムイオン(プラス)を主に取り入れていることを実験で確かめた。

 竹島教授は「マウスで実験したところ、TRICチャンネルのないマウスは、小胞体からカルシウムイオンが放出できず筋肉の収縮がうまくいかないため、胎児の段階で重度の心不全で死亡することが分かった。今後は、疾患との関係を詳しく調べたい」と話している。

[京都新聞 / 2007年07月05日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007070500052&genre=G1&area=K00

「プリオン病」治療に道、抑制物質を発見=岐阜大学

2007年07月03日 | 蛋白質
 脳神経が破壊されるウシのBSE(牛海綿状脳症)や人間が感染するクロイツフェルト・ヤコブ病などの「プリオン病」の進行を抑制する物質を、岐阜大学人獣感染防御研究センターの桑田一夫教授らの研究グループが突き止めた。

 動物実験で、この物質が脳内に蓄積する異常プリオンを激減させることを確認、治療法につながる成果として注目されそう。研究成果は、米国科学アカデミー紀要(電子版)に掲載される。

 プリオン病は、脳内にもともと存在する正常プリオンが変化して、異常プリオンとなり、これが蓄積して発症する。

 プリオンは、約230~253個のアミノ酸で構成されるが、桑田教授らは、異常プリオンでは、159番目のアミノ酸(アスパラギン)と196番目のアミノ酸(グルタミン酸)との間の距離が、正常プリオンの約3倍に広がっていることに着目した。

 コンピューター上で、32万種類の化合物の中から、距離の広がりを食い止める可能性を持つ44種類の化合物を抽出。その中から、アスパラギンとグルタミン酸との距離が広がらないよう、つなぎ止める働きのある鎖状の化合物「GN8」を作り出した。

 実験では、異常プリオンを持続的に発現するマウスの培養神経細胞に、この「GN8」を投与したところ、異常プリオンを半分に減らすことができた。また、プリオン病を発症させたマウスに、GN8を投与したところ、食塩水だけを投与した場合と比べて、生存期間が長くなった。

 研究グループは、異常プリオンをより効果的に減らすことができるようにGN8を改良し、治験などを行いたいとしている。

 GN8 岐阜大の頭文字「G」と共同研究者である長崎大の頭文字「N」をとってつけた化合物の名称で、自然界には存在しない物質。炭素、窒素、水素、酸素からなる有機化合物で、岐阜大学が独自の論理的創薬方法で作り上げた。

[読売新聞 / 2007年07月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070703i503.htm

「プリオン病」治療に道、岐阜大チームが抑制物質を発見(読売新聞) - goo ニュース