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脊索動物のナメクジウオ、発生段階の体の軸が決まる時、脊椎動物と同じ遺伝子が働いている=京都大学

2007年01月22日 | 生きもの色々
 最も原始的な脊索(せきさく)動物のナメクジウオで、卵からの発生段階に体の軸が決まる時、脊椎(せきつい)動物とほぼ同じ遺伝子群が働いていることが、佐藤矩行京都大理学研究科教授や米スクリプス海洋研究所などの研究で分かった。ナメクジウオがヒトなど脊椎動物の祖先に極めて近いことが、遺伝子レベルで実証された。英科学誌ネイチャー電子版で22日に発表した。

 体の軸となる柔らかな脊索をもつ脊索動物は5億年以上前に地球に現れた。形態を保ったままのナメクジウオなど頭索動物や生態にあわせて形態を変えたホヤなど尾索動物、一部が魚やほ乳類など脊椎動物に進化したと考えられている。

 佐藤教授らは、ナメクジウオと脊椎動物のカエルを比較。細胞層の一部が内部に入る原腸胚(はい)の時期に、体の前後や背腹を決める遺伝子を調べた。

 Wnt遺伝子群やBMP遺伝子群など多くの遺伝子で働く場所が一致し、体の軸を形成していることが分かった。このことから、ナメクジウオと脊椎動物は体の形をつくる「基本設計図」は同じで、脊椎動物はナメクジウオに近い祖先から脊椎や頭部を発達させて進化したことが確認された。

 佐藤教授は「形態から推測されていた脊椎動物への進化を遺伝子レベルで確かめられた。ホヤでは遺伝子群は同じように働いていないようで、脊椎動物とはまったく違う方向で進化したと考えられる」と話している。


 ■ナメクジウオ 体長4センチほどの半透明の生物で、瀬戸内海など浅い海に生息。幼生は浮遊しているが成体になると海底の砂地について暮らす。5億年以上前のカンブリア紀の地層から、よく似た生物の化石が見つかり、「進化の生き証人」と呼ばれているが、環境の変化で数が減っている。

[京都新聞 2007年01月22日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007012200018&genre=G1&area=K1D