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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

脳疾患による記憶障害、将来の治療に一筋の光 - フランス=マサチューセッツ工科大学

2007年05月01日 | 遺伝子組替マウス
【パリ 30日 AFP】
将来、アルツハイマー病などの進行性脳疾患による記憶障害を薬物治療によって回復させることが可能になるかもしれない。そんな研究結果が29日、英科学誌『ネイチャー(Nature)』で発表された。

 この論文はマサチューセッツ工科大学(Massechusetts Institute of Technology、MIT)のLi-Huei Tsai教授が主導する研究チーム5人によるもの。研究チームによると、症例によっては「記憶障害」という定義そのものが誤った呼び方となる可能性もあるという。

 たとえば病気のせいで失われたファーストキスの思い出も、実際はただ神経経路が遮断されたため、記憶にアクセスできなくなっただけかもしれない。

 実験では、遺伝子操作でヒトの認知症と同じタイプの脳障害を持った状態にしたマウスが、以前の記憶を取り戻すことに成功したという。

 リハビリ期間に精神的な刺激を与えると、マウスは脳の神経経路の一部の損傷が原因で「忘れていた」タスクを行えるようになった。同様の回復効果が薬物治療でも見られた。

 同様の治療方法がヒトにも適用できるかどうかについては実証されていないものの、今回の研究はいくつかの神経障害について「患者の長期記憶が回復する可能性」のあることを示唆している。

 神経変性疾患は、身体の動きや記憶の蓄積をつかさどる脳や脊髄の一部で発症する。脳細胞は機能が低下したり壊死(えし)した場合には再生しない。ただし、先行研究で精神を刺激する活動や薬物投与などによって健康な神経細胞を活性化し、再構成が可能なことが分かっている。

 Tsai教授の一連の研究成果は、進行性脳疾患によって発生した「重大な脳委縮と神経細胞の欠損」を同様の手法で補うことで、神経経路が遮断されたためにアクセスできなくなった記憶の「解放」が可能であることを証明する画期的な実証結果となった。

 写真は、フランス・リヨン(Lyon)の病院の神経科病棟。(c)AFP/JEAN-PHILIPPE KSIAZEK

[AFP通信BBニュース / 2007年05月01日]
http://www.afpbb.com/article/1554585?lsc=1&lc=3

炎症反応抑制 たんぱく質発見=理化学研究所

2007年04月30日 | 遺伝子組替マウス
 この研究は、横浜市にある理化学研究所の改正恒康チームリーダーらのグループが30日、アメリカの科学雑誌「ネイチャー・イムノロジー」に発表します。

ウイルスや細菌が体内に侵入すると、免疫細胞の働きでサイトカインと呼ばれる物質などが作られ、炎症反応を引き起こしてウイルスなどを攻撃します。研究グループは、細胞の核の中にある「PDLIM2」というたんぱく質に、このサイトカインを作るのに必要な物質の分解を促進して炎症反応を抑える働きがあることを突き止めました。
「PDLIM2」を作ることができないマウスでは、サイトカインを作る量が通常より2倍から3倍多く、過剰な炎症反応を引き起こすことを確認したということです。

ぜんそくやリウマチなどアレルギーや自己免疫疾患と呼ばれる病気は、過剰な炎症反応が原因で起きるとされています。改正チームリーダーは「炎症反応を抑える物質が特定されたことで、新しいぜんそくやリウマチの薬の開発につながるのではないか」と話しています。

[NHKニュース / 2007年04月30日]
http://www.nhk.or.jp/news/2007/04/30/d20070430000013.html


炎症反応止める酵素発見=理化学研究所

 本来は異物の侵入から体を守る免疫機構の1つなのに、過剰に起こるとアレルギー疾患やリウマチなどの自己免疫疾患につながる炎症反応を、正常に終わらせる働きを持つ酵素を理化学研究所などがマウスで発見、29日付の米科学誌ネイチャーイムノロジー電子版に発表した。

 この酵素の働きを制御できれば、アレルギーなどの治療につながる可能性があるという。

 研究チームは、樹状細胞と呼ばれる白血球の一種が細菌やウイルスへの感染を感知すると、同細胞内でタンパク質「NFκB」が炎症反応を起こす遺伝子の働きを高めることに着目。NFκBの働きが低下した細胞を調べ、ある特定の酵素がNFκBを分解する反応を促進していることを突き止めた。

[共同通信 / 2007年04月30日]
http://www.47news.jp/CN/200704/CN2007042901000611.html


理化学研究所 プレスリリース
 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明
 - アレルギー・炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり -
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2007/070430/index.html

不整脈、突然死を左右するたんぱく質を発見=慶応大学

2007年04月09日 | 遺伝子組替マウス
 慶応大医学部の福田恵一教授らのグループは、突然死を引き起こす不整脈の防止に不可欠なたんぱく質を発見した。

 このたんぱく質が不足したり過剰に作られたりすると、心臓の交感神経の分布が異常なパターンを形作り、心臓の電気活動が安定化しないため、致死的な不整脈が起きるという。9日の医学誌ネイチャー・メディシン(電子版)に発表する。

 福田教授らは、脳内で神経軸索が伸びるのを防いでいるたんぱく質「セマフォリン3a」に着目。このたんぱく質の心臓での分布を調べたところ、交感神経の分布の形成に関係していることが分かった。

 このたんぱく質を作れないように遺伝子を改変したマウスを作製し、その心臓を調べたところ、交感神経の分布は無秩序となった。

 こうしたマウスは8割が生後1週間以内に死亡し、生き残ったマウスを調べてみると、心拍数が減少したり、心拍が一時的に停止する不整脈を起こしていた。

 一方、このたんぱく質を過剰に分泌するマウスを作製したところ、心臓内の交感神経が激減し、生後8週以降、心拍数が異常に増加する不整脈で突然死を起こす傾向が見られたという。

[読売新聞 / 2007年04月09日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070408i517.htm?from=main5

不整脈左右するたんぱく質、慶大グループが発見(読売新聞) - goo ニュース

慶應義塾大学 プレスリリース
 セマフォリン3aは心臓において交感神経の分布様式を決定することにより不整脈の発生を抑制する
 ―交感神経支配の統制による不整脈抑制―
http://www.keio.ac.jp/pressrelease/070406.pdf
参考資料
http://www.keio.ac.jp/pressrelease/070406_2.pdf

心筋神経偏り、不整脈を防止 慶応大グループが発見(朝日新聞) - goo ニュース

アルツハイマー病ワクチン、マウスで効果確認=国立長寿医療センター、名古屋大学

2007年03月29日 | 遺伝子組替マウス
 アルツハイマー病の原因物質アミロイドを脳から取り除くワクチンの開発を進めていた国立長寿医療センター研究所(田平武(たびら・たけし)所長、愛知県大府市)と名古屋大などのチームが、マウスを使った実験で発症後に飲むと認知能力が戻ることを確かめた。脳炎や出血などの危険な副作用もなかった。4月6日から大阪市で始まる日本医学会総会で発表する。完成すれば、欧米で開発中のワクチンの難点である安全性やコストの問題を解決した新ワクチンになる。研究チームは次の段階として、少人数の患者を対象にした臨床試験の準備を進めている。

 このワクチンは、病原性がないウイルスの殻にアミロイドというたんぱく質を作る遺伝子を入れてある。口から飲むと、腸の細胞がこの「偽ウイルス」に反応してリンパ球がアミロイドを攻撃する抗体を作る。この抗体が脳にたまったアミロイドにくっつき、ばらばらにして取り除く。

 研究チームは、月齢を重ねると必ずアルツハイマー病を発症するよう遺伝子を変化させたマウス28匹を使って、効果を試した。アルツハイマー病を発症した生後10カ月の時点で、半数の14匹にはワクチンを飲ませ、残りには飲ませなかった。

 その結果、ワクチンを飲んだマウスはほぼすべて、3カ月後、記憶力や学習能力など認知力を試す4種類のテストすべてで成績が発症前のレベルまで戻った。一方、ワクチンを飲まなかったマウスは全テストで成績が落ち、認知力の大半を失っていた。

 03年にワクチンを飲んだマウスの脳内のアミロイドが消えることを明らかにしていたが、今回初めて、実験で症状が改善することまで確認した。

 アイルランドの製薬会社が開発した世界初のアルツハイマー病ワクチンは、臨床試験中の02年に患者の6%が重い脳炎を起こしたため、開発中止になった。今回名古屋大などが開発したワクチンは直接たんぱく質などを注射する方法ではないため安全性が高く、大量生産が可能なうえ、薬液を飲むだけで簡単という利点がある。

 実験をした名古屋大の鍋島俊隆教授(医療薬学)は「アミロイドはたまり始めているが症状はまだ出ていない、という段階で使えば予防効果も期待できる」と話す。




(写真説明)上は、ワクチンを飲んでいない発病マウスの脳。赤く見えるのがアミロイドで、シミのようになっている。下はワクチンを飲んだマウスの脳。アミロイドはほとんど消えている=名古屋大大学院生の毛利彰宏さん提供

[朝日新聞 / 2007年03月29日]
http://www.asahi.com/life/update/0329/005.html

アルツハイマー 発症抑制酵素を発見=大阪バイオサイエンス研究所、大阪大学

2007年03月27日 | 遺伝子組替マウス
根治療薬開発に光

 大阪バイオサイエンス研究所の裏出良博研究部長と大阪大学大学院生の兼清貴久さんの研究グループは、認知症のアルツハイマー病を発症段階で抑えるタンパク質(酵素)が脳脊髄(せきずい)液に含まれていることを見つけ26日、米国科学アカデミー紀要に発表した。この病気の治療法はいまだ確立されておらず、発症予測の方法や治療薬の開発に役立ちそうだ。

 アルツハイマー病は、今では早期発見し、症状の進行を遅らせることができるが、根治させる治療薬の開発が待たれている。

 この病気は脳内でつくられるアミロイド・ベータという小さなタンパク質が神経細胞の周囲に取り付き、細胞を死滅させることが原因のひとつ。裏出部長らは、脳脊髄液の主要なタンパク質であるリポカリン型プロスタグランジンD合成酵素が、アミロイド・ベータと固く結合し、凝集を抑えることを発見。

 この酵素を作る遺伝子を欠いたマウスと正常のマウスで比較したところ、脳内にアミロイド・ベータを加えると、遺伝子を欠いたマウスでは3倍以上も凝集した。逆に、この酵素を遺伝的に多量につくるマウスでは数分の1に減った。さらに、ヒトの脳脊髄液からこの酵素を除くと、凝集を抑制する効果が半減した。

[産経新聞 2007年03月27日]
http://www.sankei.co.jp/seikatsu/kenko/070327/knk070327002.htm

炎症を起こすたんぱく質 発見=大阪大学

2007年03月23日 | 遺伝子組替マウス
アレルギー性の皮膚炎などの病気で炎症の引き金になるたんぱく質を大阪大学の研究グループが発見し、将来、病気の治療につながる可能性がある成果として注目されています。この研究成果はイギリスの科学誌「ネイチャー」のオンライン版に22日に掲載されます。

研究を行ったのは大阪大学微生物病研究所の菊谷仁教授らのグループです。
金属アレルギーなどの皮膚炎や関節リューマチでは、細菌などから体を守る免疫が過剰に働いて強い炎症が起きるとされています。
研究グループは、免疫の働きをする「T細胞」と呼ばれる細胞の表面に炎症が起きるときに現れる「セマフォリン7A」というたんぱく質に注目しました。
研究グループがこのたんぱく質の遺伝子がないマウスの耳に皮膚炎を引き起こす化学物質を塗って実験したところ、ふつうのマウスと違って耳はほとんど腫れず、このたんぱく質が炎症の引き金になっていることがわかったということです。
また、免疫の働きが原因で起きる難病の多発性硬化症についても調べたところ、正常なマウスは2週間で症状が悪化したのに対し、たんぱく質の遺伝子がないマウスは軽い症状で済んだということです。

研究グループの菊谷教授は「このたんぱく質の働きを抑えられれば、関節リューマチなどさまざまな炎症性の病気の治療につながる可能性がある」と話しています。

[NHKニュース / 2007年03月22日]

http://www3.nhk.or.jp/news/2007/03/23/k20070322000022.html

大腸がん転移に骨髄が関与、促進たんぱく質を確認=京都大学

2007年03月19日 | 遺伝子組替マウス
 悪性化する大腸がん細胞は、“サイン”を出して骨髄細胞を呼び寄せ、増えたり転移したりするのに利用していることが、武藤(たけとう)誠・京都大大学院医学研究科教授(遺伝薬理学)らのグループによって明らかになった。

 骨髄への働きかけを止める物質を見つければ、がん治療薬の開発に応用できるかもしれない。米科学誌ネイチャー・ジェネティックス電子版に19日掲載される。

 グループは遺伝子操作したマウスを用いて、大腸がんの増殖などにかかわるたんぱく質の働きを分析。その結果、大腸がん細胞が「CCL9」と呼ばれるたんぱく質を大量に放出すると、骨髄細胞の一種が骨髄から血液に溶け出し、がん細胞の周囲を取り巻くように集まることがわかった。骨髄細胞は、がん細胞の増殖を促進する2種類のたんぱく質を出していた。

 CCL9がうまく働かないように改造したマウスでは、がん細胞の周りに骨髄細胞が集まらなくなり、悪性化しなかった。

 武藤教授は「がんは体内機能をうまく利用して生き延びている。この仕組みを逆に利用し、がんの増殖を抑える新たな治療法へつなげたい」と話している。

[読売新聞 / 2007年03月19日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070319i501.htm




 京都大大学院の武藤誠教授(遺伝薬理学)のグループは、大腸がんが周囲の組織に広がる「浸潤」の仕組みを解明した。がん細胞は「CCL9」というホルモンを使って血液中にある極少量の免疫細胞を引き寄せた後、免疫細胞が出す酵素を使って正常細胞の中に潜り込んでいた。武藤教授は「CCL9の受容体を阻害する薬剤ができれば、免疫細胞ががんに引き寄せられるのを防げる。浸潤を抑制し、がんの拡大を防ぐ新治療法につながる可能性がある」と指摘する。成果は19日、米科学誌「ネイチャー・ジェネティックス」(電子版)に掲載される。

 同グループは、人為的に大腸がんを発症させたマウスで、がん細胞の先端に免疫細胞の一種である未分化の骨髄球が集まり、がん細胞の浸潤を促進する酵素を作り出すことを確認した。骨髄球はCCL9の受容体を持っているため、がん細胞が出すCCL9に引き寄せられる。この骨髄球は骨髄内にあることが知られていたが、血液中にもわずかに存在していることが新たに分かった。また、人の大腸がんの一部でも同様の仕組みが働いていることも確認した。

 浸潤は、良性腫瘍(しゅよう)が悪性化する際の特徴で、転移の兆候でもある。このため以前、浸潤促進酵素の働きを直接阻害する薬剤の開発が進められたが、頭痛など強い副作用が出るため失敗していた。【中野彩子】

[毎日新聞 / 2007年3月19日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/medical/news/20070319k0000m040123000c.html

京都大学医学研究科 生体制御医学講座 遺伝薬理学教室のページ
http://www4.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/frameTOP(J).htm

がん抑制遺伝子が発症関与 心不全、新たな治療に道=千葉大学

2007年03月05日 | 遺伝子組替マウス
 がんを抑制する働きを持つ遺伝子「p53」が、高血圧や動脈硬化などさまざまな原因で起こる心不全の発症に深くかかわっていることを、千葉大の小室一成教授(循環病態医科学)らがマウスの実験で突き止め、英科学誌ネイチャー電子版に4日発表した。

 多くの心不全では心臓が肥大し、最後は心臓を動かす筋肉(心筋)が働かなくなる。p53は、心筋の周囲に新たな血管ができるのを抑え、心筋の酸欠状態を引き起こすらしい。遺伝子レベルで発症の仕組みが分かったのは初めて。

 小室教授は「心不全の予防には食事や生活習慣の改善が一番だが、心臓弁膜症などが原因となっている場合にはそれだけでは回復が望めない。p53の働きを心臓だけで弱めることができれば、新たな治療法につながる」としている。

 小室教授らは、マウスの動脈を糸で縛って高血圧に似た状態を作り、心臓が肥大して心不全を発症する過程を再現。さまざまな遺伝子の働きを解析した。

[北海道新聞 / 2007年03月05日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070305&j=0045&k=200703050209

 がんを抑制する遺伝子に心不全を促進する働きがあることが、千葉大などの研究チームのマウス実験で明らかになった。4日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)に発表された。

 高血圧などで心臓に負荷がかかると心臓の壁が厚くなって「心肥大」になり、やがて心臓が動かなくなる「心不全」に至る。だが、なぜ心臓が動かなくなるかは解明されていなかった。

 マウスの心臓に負荷をかける研究チームの実験では、心臓は心肥大になったものの、最初は心筋細胞へ血液を送る血管が新たに作られ順調に拍動を続けた。だが、2週間を過ぎると心臓の血管の数が減り心臓の動きが落ちた。こうした操作で心不全を起こしたマウスでは、健康な心臓にはほとんど現れないがん抑制遺伝子「p53遺伝子」が多く発現していた。この遺伝子が、新たな血管を作るたんぱく質の働きを抑制し、結果として心臓の動きを悪くしたらしい。

 この遺伝子が働かないように遺伝子操作したマウスは、心臓に負荷をかけても、心肥大状態にはなるが心不全は起きなかった。一方、この遺伝子の働きを促進する操作をしたマウスは、2週間たたないうちに心臓の動きが悪くなった。

 p53遺伝子は、正常細胞ががん細胞に変化するのを抑制する遺伝子として知られ、がん患者にp53遺伝子を注射する治療も研究されている。

 研究チームの小室一成・千葉大教授(循環器内科)は「p53遺伝子の働きを抑える薬や血管を増やす薬が新たな心不全薬として効果を発揮する可能性がある。一方、p53を増やす治療は心不全に気をつける必要がある」と話している。【永山悦子】

[毎日新聞 / 2007年3月5日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070305k0000m040107000c.html

人間の皮膚組織持つマウス、遺伝子操作で誕生=北海道大学大学院

2007年02月26日 | 遺伝子組替マウス
 マウスの遺伝子を操作して、皮膚の一部に人間の組織を持つ「ヒト化マウス」を作ることに、北海道大大学院医学研究科皮膚科の清水宏教授のグループが成功した。

 従来の動物実験では難しかった、人間の免疫疾患の解明や治療法の開発につながる研究として注目される。26日、米医学誌電子版に掲載された。

 清水教授らは、免疫が自分の皮膚を攻撃し全身に水疱(すいほう)ができる病気「水疱性類天疱瘡(てんぽうそう)」の治療法を研究。その中で、マウスや人間の皮膚にある17型コラーゲンと呼ばれるたんぱく質に注目した。

 マウスの遺伝子を操作し、17型を作る遺伝子を壊したマウスと、人間の17型の遺伝子を組み込んだマウスを作製。これらのマウスを数世代交配させた結果、皮膚の17型だけが人間の組織になった、健康なマウスが誕生した。

 このマウスに患者の血液成分を注射すると、マウスが水疱性類天疱瘡を発症し、患者の免疫が17型を攻撃することも証明した。

 研究を主導した同大大学院生の西江渉さんは「マウスの一部を人間の組織にする技術は、他の自己免疫疾患の研究にも応用できる」と話している。

[読売新聞 / 2007年02月26日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070226it03.htm

人間の皮膚組織持つマウス、遺伝子操作で誕生(読売新聞) - goo ニュース

遺伝子壊した実験用メダカ 短期間、低コストで=京都大学

2007年02月13日 | 遺伝子組替マウス
 特定の遺伝子を壊した実験用のメダカをつくることに成功したと京都大の武田俊一教授、谷口善仁助手(放射線遺伝学)らが13日、発表した。

 同様の実験動物はマウスが一般的だが、谷口助手は「マウスは1年、1匹約350万円掛かるが、メダカは約4カ月ででき30万-100万円で済む。マウスで発病しにくいがんなどの研究に役立つ」と話している。

 谷口助手らは、メダカに突然変異を起こすように、特殊な薬の水溶液に雄のメダカ100匹を入れた。約80匹が生き残り、これと健康な雌との間で生まれた雄5760匹の精子を凍結保存した。

 メダカのゲノム(全遺伝情報)は解読されており、保存した精子のDNAを解析し、目的の遺伝子が壊れている精子を特定、これを健康な雌の卵子と人工授精した。生まれた世代同士を組み合わせて子どもをつくった。通常は1つの遺伝子を両親からそれぞれ受け継ぐが、この方法で両方の遺伝子が破壊されたメダカができた。

[北海道新聞 / 2007年02月13日]
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070213&j=0047&k=200702135541

放医研ニュース"放医研のGFPトランスジェニックメダカ"
http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/200310/hik3p.htm

学習や記憶に使われた神経細胞だけが生き残り神経回路に組み込まれる=ソーク研究所

2006年08月14日 | 遺伝子組替マウス
 「人生いくつになっても勉強」――そんな格言の正しさを示すような動物実験の結果を、米ソーク研究所グループが14日、英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。大人になっても神経細胞は新たに生まれ、学習や記憶に使われた神経細胞だけが生き残って神経回路に組み込まれる可能性が高いらしいという。

 グループは、遺伝子操作したマウスで学習や記憶にかかわる脳の領域で新たに生まれた神経細胞に蛍光色素を組み込んで見分けられるようにした。同時にこの神経細胞で特定の神経伝達物質の受容体が働かず、情報を受け取れないように遺伝子操作したマウスもつくった。

 両方のマウスを比べると、情報を受け取れなくしたマウスでは、新たに生まれた神経細胞の生存率が4分の1に低下していた。

 グループの田代歩さん(現ノルウェー科学技術大学研究員)は、「情報を受け取れない細胞は死に、情報を受け取った細胞が生き残って回路に組み込まれた。新たにできる神経回路には、学習した特定の情報が刻みこまれていることが示唆された」と言っている。

[2006年08月14日/朝日新聞]
http://www.asahi.com/science/news/TKY200608140136.html

NMDA-receptor-mediated, cell-specific integration of new neurons in adult dentate gyrus
Nature advance online publication 13 August 2006 | doi:10.1038/nature05028
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/abs/nature05028.html

“がらくた”遺伝子、実は胎盤形成関与=東京医科歯科大学

2005年12月13日 | 遺伝子組替マウス
 哺乳(ほにゅう)類のゲノム(全遺伝情報)の中で、かつて“がらくた”と思われていた部分に、種の存続に欠かせない遺伝子があることを、科学技術振興機構と東京医科歯科大の研究チームが突き止めた。

 母体と胎児をつなぐ胎盤が作られる際に必要な遺伝子で、12日付の米科学誌ネイチャー・ジェネティクス電子版に発表された。



 哺乳類のゲノムの3分の1以上は、細胞内を動き回り突然変異などを起こす遺伝子(レトロトランスポゾン)が元になっている。その大部分はたんぱく質を作らず、ゲノム中のがらくたとみなされていた。

 同チームは、こうした遺伝子の一つ「Peg10」を、多くの哺乳類が共通してもつことを発見。その機能を調べるため、Peg10を壊した受精卵を雌マウスの体内に入れて妊娠させたところ、子供は妊娠約10日目ですべて死んだ。胎盤の形成に異常が起きていた。同大の石野史敏教授は「この遺伝子は、哺乳類の祖先のゲノムへウイルスなどの形で侵入した後、進化に伴って変化し、妊娠形態を発達させたのではないか」と推測している。

[読売新聞 / 2005年12月13日]
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20051213ik02.htm