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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

ネコを怖がらない! マウス=東京大学、小早川高校

2007年11月08日 | 遺伝子組替マウス
 哺乳(ほにゅう)類が天敵のにおいを怖がるのは危険な目に遭って学習した結果ではなく、生まれながらに嗅覚(きゅうかく)に備わった神経回路の働きによるものであることを東京大の坂野仁教授や小早川高・特任助教らの研究チームがマウスの実験で発見、8日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 この回路を壊したマウスは、ネコやキツネのにおいを識別しても怖がらず、逃げ出さなかった。

 また、こうしたにおいによる危険の判断は、大脳の高次機能を担う領域ではなく、鼻の奥の細胞からにおいの情報を最初に受け取る「嗅球」と呼ばれる低次の部分で行われていることも判明。外界の情報を処理する脳神経回路の構造解明に役立つ成果だという。

 チームは独自に開発した遺伝子操作の手法で、嗅球の一部の機能を失わせたマウスをつくった。腐った食べ物や天敵のキツネのにおいをかがせると、正常なマウスはにおいから逃げたり、すくんだりしたが、遺伝子操作したマウスはにおいを識別しているにもかかわらず逃げなかった。

 チームは、この部位の神経回路に危険を判断して逃避行動を起こす仕組みが遺伝的にプログラムされているとみている。

 坂野教授は「哺乳類の脳では、遺伝的に組み込まれた本能による判断の上に、環境による学習回路が積み重なっているのだろう」と話している。

(写真:ネコをまったく怖がらず、耳の後ろに顔を寄せる遺伝子操作したマウス(東京大・坂野研究室提供))

[MSN産経ニュース / 2007年11月08日]
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071108/trd0711081055007-n1.htm

6時間走り続ける「スーパーマウス」が、遺伝子操作により誕生=ケース・ウエスタン・リザーブ大学

2007年11月02日 | 遺伝子組替マウス
【11月2日 AFP】ピレネー山脈をバイクでのぼる自転車ロードレーサーのランス・アームストロング(Lance Armstrong)にも匹敵する「スーパーマウス」が、遺伝子操作により誕生した。

 スーパーマウスを開発したのは、米オハイオ州ケース・ウエスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University)の研究チーム。同大学のRichard Hanson教授によると、このマウスは、分速20メートルの速度で6キロほどの距離を最長6時間走り続けることができる。

 スーパーマウスは、野生のマウスよりも60%多く食物を摂取するが、それでもスリムな体形を保つことができる。また、寿命も長く、生殖期間も通常より長い。このマウスは激しい運動の際に蓄積される乳酸が極端に少ないため、激しい運動に耐えることができるという。

 通常の動物はエネルギー源が脂肪酸代謝から筋グリコーゲンに切り替わり血中乳酸値が上がるのに対し、スーパーマウスは主に脂肪酸に頼るため、持久力に差が出るという。

 研究結果は1日に出版されたJournal of Biological Chemistryに掲載されている。(c)AFP

[AFP BB News / 2007年11月02日]
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2306041/2304826


【遺伝子組み換えで「スーパーマウス」が誕生 米大学】
 最大6時間も走り続ける「スーパーマウス」を遺伝子組み換え技術で作った、と米オハイオ州のケース・ウエスタン・リザーブ大学が発表した。エネルギー代謝に関係する酵素が活性化しているため、運動の際に筋肉にたまる乳酸が非常に少なく、激しい運動に耐えられるという。

 スーパーマウスは、走行装置の上を、分速20メートル(時速1.2キロ)ほどで5~6キロを走り通した。普通のマウスが200メートルで脱落した後も走り続ける映像が、大学のウェブサイト(http://blog.case.edu/case-news)に掲載された。普通のマウスと外見は変わらないが、行動的・攻撃的で、寿命や生殖期間は長いという。ただし、普通の1.6倍ものエサを食べる。

 研究グループは、このスーパーマウスを著名な自転車レース「ツール・ド・フランス」で7年連続総合優勝したランス・アームストロング選手にたとえた。一方で、今回の動物実験はあくまで運動と病気などの関係を調べるのが目的で、人への応用は倫理的にも不適切と強調。「人の代謝過程への干渉は、どんなものであれ、効果よりも害の方が大きくなるだろう」と注意を促している。

[朝日新聞 / 2007年11月09日]
http://www.asahi.com/science/update/1108/TKY200711080445.html

免疫細胞を改造し拒絶反応抑制、マウス実験で成功=理化学研究所

2007年10月17日 | 遺伝子組替マウス
 理化学研究所は、マウスを使った実験で、免疫細胞を改造することにより、骨髄移植後の重い拒絶反応やアレルギー性ぜんそくの抑制に成功したと17日発表した。

 両疾患の根本的な治療につながる成果で、米国の科学雑誌2誌の電子版に掲載された。

 拒絶反応やアレルギー性ぜんそくは、免疫機能が過剰に働いて起きる。

 理研の研究チームは、体に侵入した異物を見つけ、リンパ球に攻撃指令を出す「樹状細胞」という免疫細胞に着目。そのおおもととなる細胞をマウスから取り出した。これに特殊な試薬を加え、リンパ球の暴走を抑える機能を強化した樹状細胞に育て、培養して増やした。こうして改造した樹状細胞を、アレルギー症状を持つマウスと、別のマウスの骨髄細胞を移植したマウスに3回ずつ注射した。

 すると、気道の炎症などぜんそく特有の症状が著しく軽減。骨髄移植マウスは通常の治療薬を使っても90%に拒絶反応が起きたが、樹状細胞を注射したマウスは20%にしか起きず、しかも症状は軽かった。

[読売新聞 / 2007年10月17日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071017i416.htm

ノーベル医学生理学賞:マリオ・カペッキ氏ら米英の3人に

2007年10月08日 | 遺伝子組替マウス
 スウェーデンのカロリンスカ研究所は8日、07年のノーベル医学生理学賞を米ユタ大のマリオ・カペッキ教授(70)とノースカロライナ大のオリバー・スミシーズ教授(82)、英カーディフ大のマーチン・エバンス教授(66)の3氏に授与すると発表した。授賞理由は「マウスの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使って特定の遺伝子を改変する原理の発見」。その結果、マウスの特定遺伝子の働きを止めたり、別の遺伝子で置き換える「ジーンターゲティング」が可能となり、さまざまな遺伝子の働きが明らかになった。がんや糖尿病をはじめとする病気の解明や治療法開発に役立っている。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金として1000万クローナ(約1億8000万円)が贈られる。

 エバンス氏は81年、さまざまな細胞に分化することができ、万能細胞とも呼ばれるES細胞をマウスで作り出した。哺乳(ほにゅう)類では初の成功だった。スミシーズ氏とカペッキ氏はそれぞれ、染色体上にある遺伝子を別の遺伝子で置き換える手法を開発した。スミシーズ氏はこの手法を使い、貧血や動脈硬化のモデルマウスを作成した。

 さらに、カペッキ氏はマウスのES細胞を活用することで、特定の遺伝子を失った「ノックアウトマウス」を効率よく作成する方法を確立した。カペッキ氏は96年に京都賞を受賞している。

 現在では1万個以上のマウスの遺伝子の操作が可能になった。その数は哺乳類の遺伝子のほぼ半数に達し、500種類以上の病気のモデルマウスが作られている。

[毎日新聞 / 2007年10月08日]
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071009k0000m040031000c.html

筋委縮性側索硬化症(ALS)、進行の仕組みを解明=慶應義塾大学

2007年10月06日 | 遺伝子組替マウス
 運動神経が破壊され、筋力が低下する難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)は、脊髄(せきずい)でアミノ酸の一種「D―セリン」が過剰に作り出されて進行することを、慶応大医学部の相磯貞和教授(形態形成学)らのグループが突き止めた。

 新たな治療薬の開発につながる成果で、英科学誌に発表した。

 ALSに伴う神経の破壊は、情報伝達物質であるグルタミン酸が過剰に神経を興奮させるために起きるとされている。このグルタミン酸の過剰興奮の一端を、神経細胞に栄養を与える「グリア細胞」が作るD―セリンが担うことも知られていたが、その仕組みは不明だった。

 相磯教授らは、ALSを発症させたマウスや、ALSで亡くなった患者の脊髄を分析。病気が進行するにつれてグリア細胞が増え、D―セリンの濃度が脊髄の中で高まった結果、グルタミン酸が神経を破壊する働きも強まっていることがわかった。一方、このアミノ酸の働きを抑えると、グルタミン酸による神経の破壊も抑えられた。

[読売新聞 / 2007年10月06日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071006i515.htm

「RNA干渉」でがん増殖抑制、マウス実験で成功=東京大学医科学研究所

2007年10月03日 | 遺伝子組替マウス
 がんの固まりに、がん遺伝子の働きを抑え込む遺伝物質を注射し、がんの増殖を抑えることに、東大医科学研究所ヒトゲノム解析センターの中村祐輔教授らのチームが、動物実験で成功した。

 正常な細胞にはほとんど影響しないため、副作用が少ないがん治療法の開発に向けた研究として注目される。横浜市で開催中の日本癌(がん)学会で3日、発表された。

 実験で使われた手法は「RNA干渉」と呼ばれ、がん遺伝子の情報をがん細胞中で運ぶRNAという物質の働きを、注入した別のRNAで止めてしまう。特定の遺伝子の働きを抑えるこの技術は、がんや感染症治療などへの応用が試みられている。中村教授らは、マウスの皮膚に人間の肺がん細胞を移植し、成長したがんの固まりに、この遺伝子の働きだけを抑える人工的に作ったRNAを注射した。その結果、RNAを注射したマウスでは、何もしなかったマウスに比べ、がんの増殖を約半分に抑えることに成功したほか、がん細胞の一部が死んでいることを確認した。

[読売新聞 / 2007年10月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071003i508.htm

肥満のままでも糖尿病改善 特定酵素の欠損が鍵=筑波大学

2007年10月01日 | 遺伝子組替マウス
 肥満でも、ダイエットしないで糖尿病やメタボリック症候群を治療できる-。そんな夢のような方法を島野仁筑波大准教授(内分泌代謝・糖尿病内科)らの研究グループがマウスの実験で突き止め、1日付のネイチャーメディシン(電子版)に発表した。

 糖尿病は、膵臓が分泌するインスリンが不足したり効きが悪くなったりして、細胞が血液中のブドウ糖を取り込まなくなる。今回、ある特定の酵素を欠損させることでインスリンの効きが悪くなる状態の「インスリン抵抗性」を改善することに成功した。

 島野准教授は「太り放題でも病気にならない治療薬ができるかもしれない。しかし、あくまで生活習慣病には食事や運動の改善が1番で、それがどうしても続かない患者への手段だ」と話した。

[東京新聞(共同通信発) / 2007年10月01日]
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007093001000637.html

精子:おおもと細胞が特定場所に存在=京都大学

2007年09月07日 | 遺伝子組替マウス
 京都大医学研究科の吉田松生(しょうせい)助教(生殖細胞学)らのチームは、精巣内で精子を作るおおもととなる細胞「未分化型精原細胞」が、血管近くなど特定の場所に存在することを発見した。また、この細胞が分裂しながら分化する際、精巣全体に広く移動する様子の動画撮影にも成功した。精子の形成過程の解明や、将来的には男性不妊の問題解決などにつながる基礎となるという。成果は6日(米東部時間)、米科学誌「サイエンス」(電子版)に掲載される。

 哺乳(ほにゅう)類の精子は、精巣内に曲がりくねった状態で詰まっている「精細管」の中で形成される。チームは、マウスに蛍光遺伝子を組み込んで“おおもと細胞”が光るようにしたうえで、露出させた精巣の一部を顕微鏡に固定。3日間、コマ送りでビデオ撮影した。

 その結果、おおもと細胞は、精細管を取り巻く血管や、男性ホルモンを作る細胞の近くに多く存在していることが判明。血管の場所を移すと、おおもと細胞もその近くへ移った。また分化して精子になるにつれ、精細管内で分布が均一になるように動いていった。

 吉田助教は「精子の形成過程はいまだに謎が多い。次の課題は、おおもと細胞が好む場所で、どんな物質が出ているかを探ること」と話している。【鶴谷真】

[毎日新聞 / 2007年09月07日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070907k0000m040167000c.html

筋ジストロフィーの進行抑える可能性、性機能不全治療薬に=ハーバード大学シュライナー病院、東京大学

2007年09月01日 | 遺伝子組替マウス
 全身の筋肉が徐々に弱くなる「筋ジストロフィー」の進行を、性機能不全治療薬が抑える可能性があることを、米ハーバード大シュライナー病院と東京大の研究チームが動物実験で突き止め、米科学誌電子版で報告した。

 同病院の安原進吾講師らは、筋ジスを発症するマウスの筋肉を、顕微鏡を使った特殊な方法で観察。その結果、筋肉が動いていない間は血流は正常だが、筋肉が動いた時に自然に増えるはずの血流が増えず、筋肉に供給する酸素が不足するなどして、細胞に障害が起きることがわかった。

 筋ジスを発症するマウスは、もともと筋肉の細胞が壊れやすくなっていることに加え、運動時の血液の不足が引き金となって、細胞が壊れることを確かめた。

 そこで、このマウスに血管を広げる作用のある性的不全治療薬「シアリス」(一般名=タダラフィル)を口から与えると、投与したマウスは薬を与えなかったマウスに比べ、首の筋肉細胞の障害が約4分の1に抑えられ、筋肉の障害を少なくすることに成功した。

 シアリスは、日本では7月に製造承認され、今月から販売が始まる予定。バイアグラも、ほぼ同じ薬理作用を持っている。

[読売新聞 / 2007年09月01日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070901i412.htm

卵子だけの子マウス誕生、成功率4割達成=東京農業大学

2007年08月20日 | 遺伝子組替マウス
 精子なしで卵子だけを使って、40%以上の高い確率で子マウスを誕生させることに、東京農業大の河野友宏教授(動物発生工学)らが世界で初めて成功し、20日の米科学誌「ネイチャーバイオテクノロジー」電子版に発表する。

 生殖に雄が要らない「単為発生」と呼ばれる技術で、雌雄を決定する精子がかかわらないため、雌のマウスしか誕生しない。河野教授らは2004年に、哺乳(ほにゅう)類では世界初となる単為発生マウス「かぐや」を誕生させたと公表している。

 遺伝子改変を伴うため、ただちに人間には応用できない。だが、マウスの体外受精に匹敵する高い確率で子マウスを誕生させたことで、男性なしでも人類が子孫を残していける可能性がより現実味を増し、生命倫理での議論を呼びそうだ。

 河野教授らは、精子と卵子が作られる過程で発生の際に機能を果たすよう、それぞれの遺伝子に付けられる特有の目印に着目した。遺伝子の2か所について、精子特有の目印があるのと同じ状態に改変した雌マウスを作製。さらに、卵子特有の目印が付かないよう、未熟な卵子(卵母細胞)の段階でこの雌マウスから取り出して、卵子になるまで体外で成熟させた。この卵子の核を精子の代わりに、別の雌マウスの普通の卵子に移植して分裂が始まった胚(はい)を、子宮に戻したところ、40%以上の確率でマウスが誕生。子宮に戻した胚の約30%は大人に育ち、出産し繁殖能力もあった。

 河野教授は「今回の方法を使えば、ほぼ確実に単為発生マウスを誕生させることができるだろう。人間への応用は全く考えていない」と話している。

(2007年8月20日2時0分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070820i501.htm

イオン放出支援のタンパク質発見、心疾患究明へ道=京都大学

2007年07月05日 | 遺伝子組替マウス
イオン放出支援のタンパク質発見
京大教授ら、心疾患究明へ道
 筋肉の収縮などに必要なカルシウムイオンを、細胞内の小胞体から円滑に放出するために働く膜タンパク質を、京都大薬学研究科の竹島浩教授(生化学)らのグループが見つけ、英科学誌「ネイチャー」で5日発表した。心筋症や不整脈などの原因究明につながる発見という。

 小胞体は、細胞内の小器官の一つで、合成されたタンパク質の折り畳みや切断を行うほか、カルシウムイオンを貯蔵するなどさまざまな機能を持っている。カルシウムイオンが放出されると、筋細胞が収縮したり、神経細胞からホルモンの分泌などが行われる。

 しかし、小胞体からプラスの電気を持つカルシウムイオンが放出されると、内部がマイナスの状態になり、電気的なバランスが崩れてカルシウムイオンが放出されにくくなる。円滑に放出するには別のプラスイオンを取り入れてバランスを保つ必要があるが、仕組みが分かっていなかった。

 竹島教授らはウサギの筋肉から、小胞体の表面に穴を形成する膜タンパク質を見つけ、TRICチャンネルと名付けた。TRICチャンネルは一辺5ナノメートル(1ナノは十億分の一)で、中心の穴から細胞内のカリウムイオン(プラス)を主に取り入れていることを実験で確かめた。

 竹島教授は「マウスで実験したところ、TRICチャンネルのないマウスは、小胞体からカルシウムイオンが放出できず筋肉の収縮がうまくいかないため、胎児の段階で重度の心不全で死亡することが分かった。今後は、疾患との関係を詳しく調べたい」と話している。

[京都新聞 / 2007年07月05日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2007070500052&genre=G1&area=K00

たんぱく質:栄養吸収の仕組み解明 肥満改善も=群馬大学

2007年06月28日 | 遺伝子組替マウス
 小腸から栄養素を細胞に送り込むトランスポーターなどの分布を決めているたんぱく質を、群馬大生体調節研究所などのグループが突き止めた。生後間もなく栄養が吸収できなくなる病気の治療への応用や、同たんぱく質の機能調整で栄養吸収を抑制し肥満改善に役立つ可能性があるという。研究成果は28日、英科学誌「ネイチャー」電子版に掲載される。

 小腸から栄養素を細胞に送り込むトランスポーター(たんぱく質)や酵素は小腸内壁に集中して分布している。一方、分布を決めている物質は特定されていなかった。

 同グループの実験では複数の候補物質のうち「ラブ8」というたんぱく質をなくしたマウスが栄養失調になり、生後3~4週間で死んだ。このことから「ラブ8」を失うと、小腸内壁に集中分布するトランスポーターや酵素が細胞内部にとどまったまま機能せず、糖分やアミノ酸をほとんど吸収しなくなった。

 これは、小腸内壁細胞の絨毛(じゅうもう)が萎縮(いしゅく)する先天性疾病「微絨毛萎縮症」とよく似た症状で、実際、同症患者の小腸細胞ではラブ8が大幅に減っていた。同グループは「さらに研究の余地がある」としながらも、ラブ8の機能を抑える薬品を開発できれば、肥満改善に役立つと期待している。【塩崎崇】

[毎日新聞 / 2007年06月28日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070628k0000m040179000c.html

緑内障:世界初のモデル動物=東京医科歯科大学

2007年06月27日 | 遺伝子組替マウス
 眼球内の圧力が正常でも発症する「正常眼圧緑内障」と同じ視覚障害があるマウスを作ることに、東京医科歯科大の田中光一教授(神経科学)らが成功した。正常眼圧緑内障では世界初のモデル動物で、病気のメカニズム解明や新しい治療薬の開発に役立つという。

 緑内障は、視神経が死んで徐々に視野が欠けていく病気。国内では最多の失明原因で、40歳以上の約5%に発症し、患者数は約400万人と推定される。7割が正常眼圧緑内障で、眼球内の圧力が高くなる高眼圧緑内障に比べ治療法の開発が遅れている。

 田中教授と東京都神経科学総合研究所の原田高幸部門長(眼科学)らは、光の情報を脳に伝える「グルタミン酸」が細胞外で過剰に増えると、神経細胞を死なせる性質があることに着目。グルタミン酸を運んで細胞内に回収し、細胞外の濃度を制御するたんぱく質の機能異常が、緑内障に関係していると考えた。このたんぱく質を作る遺伝子を壊したマウスを調べると、加齢に伴って視覚機能が低下し視神経も萎縮(いしゅく)していたが、眼圧は正常だった。

 田中教授は「マウスは新薬の開発や評価にも有用だ」と話している。21日付の米医学誌で発表した。【須田桃子】

[毎日新聞 / 2007年06月27日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070627ddm016040121000c.html

様々な臓器に分化、「ES」並みの人工幹細胞作りに成功=京都大学

2007年06月07日 | 遺伝子組替マウス
 京都大再生医科学研究所の山中伸弥教授らは、さまざまな臓器になり得る胚(はい)性幹細胞(ES細胞)と同程度の万能性を持つ幹細胞を作り出すことに、マウスを使って成功した。これまでの人工万能幹細胞は分化能力が低かった。受精卵を使わずに万能細胞を手に入れる技術の実現に向け、また一歩前進した。7日の英科学誌ネイチャー電子版に発表する。

 山中教授らは昨年、大人のマウスのしっぽの皮膚細胞に、万能性に関係していると思われる四つの遺伝子を組み込んで、万能細胞を作る方法を世界で初めて開発した。この細胞を「人工万能幹細胞(iPS細胞)」と名付けたが、ES細胞に比べ臓器に分化する能力が十分でなく不安定だと指摘されていた。

 今回は、胎児の皮膚の下にある細胞を利用。細胞を取り出す時期と、できあがった人工細胞の中から質の良い細胞を選び出す方法を改良した。

 この結果、選び出した細胞は、遺伝子の働きはES細胞とほとんど同じで、全身のさまざまな細胞に分化することが確認できた。また、生殖細胞に分化する能力があることも確認、全身がこの万能細胞からできたマウスも誕生した。

 ただ、生まれたマウスを1年近く観察したところ、2割で遺伝子組み換えの際に使うウイルスや遺伝子が原因と思われる甲状腺腫瘍(しゅよう)ができていた。山中教授は「ヒトへの応用には、まだ解決すべき課題は多いが、将来的には脊髄(せきずい)損傷や心不全の治療につながる可能性がある」としている。

 米マサチューセッツ工科大も同じ方法で万能細胞の作製に成功、同日付のネイチャー電子版に発表するほか、別の科学誌に米ハーバード大が近く発表する予定。万能細胞獲得をめぐり、国際競争が激化している。

[朝日新聞 / 2007年06月07日]
http://www.asahi.com/science/update/0607/TKY200706060414.html



万能細胞2割発がん 京大研究チーム

 あらゆる細胞や組織に分化できる能力を秘めた「万能細胞」を、マウスの体細胞から作った京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らの研究チームは、この万能細胞の分化能を胚性幹細胞(ES細胞)並みに高めることに成功した。ただ通常の細胞と万能細胞由来の細胞が入りまじったキメラマウスやその子では、約2割の確率でがんが発生することも判明。再生医療への応用では、安全性の確保が大きな課題となる。英科学誌「ネイチャー」(電子版)に7日、論文が掲載された。

 皮膚などの体細胞から作る万能細胞は、胚や卵子から作るES細胞と違って倫理的問題が生じないため、再生医療の実現に向け期待されている。発がんはヒトへの応用の重大な障害になるが、山中教授は「課題がはっきりしたという意味では前進だ。発がんを抑える方法を見つけて壁を乗り越えたい」と話している。


 研究チームは昨年、万能性に関与する4つの遺伝子をマウスの体細胞に導入し、万能細胞の作成に成功したと発表。今回は、ES細胞との遺伝子発現の一致率を従来の70%から90%まで高めた改良型万能細胞を作り、受精卵に導入した。その結果、万能細胞はさまざまな細胞に正しく分化し、受精卵由来の細胞と混じり合ったキメラマウスが誕生。子も正常に生まれ、ES細胞に匹敵する万能性が確認された。


 だがキメラマウスでは4匹中1匹、キメラの子は121匹中16匹で甲状腺がんが発生した。万能細胞を作る際に利用しているがん遺伝子が再び活性化するためで、研究チームは安全性確保を目指して、遺伝子導入の方法を再検討する。

[産経新聞 / 2007年06月07日]
万能細胞2割発がん 京大研究チーム(産経新聞) - goo ニュース

うつ病、統合失調症のマウス 遺伝子操作で開発=理化学研究所など

2007年05月04日 | 遺伝子組替マウス
 うつ病や統合失調症によく似た症状のマウスを遺伝子操作で生み出すことに成功したと、理化学研究所とカナダのマウントサイナイ病院研究所、英エディンバラ大の研究チームが4日、米科学誌ニューロンの電子版に発表した。発症の仕組みの解明や新しい薬・治療法の開発に役立つと期待される。

[時事ドットコム / 2007年05月04日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007050400027

理化学研究所 プレスリリース 2007年05月04日
 世界初:うつ病と統合失調症の2系統モデルマウス開発に成功
 - 精神疾患の解明や治療法の開発に貢献する貴重な変異マウス系統を確立 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070504/index.html