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ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

統合失調症の発症に関与の新遺伝子を確認=理化学研究所、マサチューセッツ工科大学

2007年02月20日 | 脳、神経
 「統合失調症」の発症にかかわる遺伝子を、理化学研究所(理研)、米マサチューセッツ工科大などのチームが新たに確認した。

 20日の米科学アカデミー紀要電子版に発表する。

 神経伝達物質のドーパミンなどが発症にかかわっているとされている統合失調症。

 同工科大の利根川進教授らは、これらの物質の作用を調整するカルシニューリンというたんぱく質が働かないと、統合失調症に似た症状がみられることをマウスの実験で明らかにしており、研究チームは、このカルシニューリンに関連する遺伝子が人の統合失調症の発症に関連しているかどうかを検証した。

 研究チームは、カルシニューリンを作ったり、関連があったりする14種類の遺伝子が患者とその家族、患者同士で配列がどう異なるかを調べた。統合失調症の子供がいる日本人の124家族を対象に調査を試みた結果、14遺伝子のうち4遺伝子については、血縁者であっても、統合失調症ではない親と失調症の子供ではその配列が異なるケースが多いことを突き止め、これらの遺伝子が統合失調症の発症にかかわっていることがわかった。

 ただ、患者同士でも配列の一部は異なっており、発症が遺伝要因だけではなく、環境など他の要因も関与していることをうかがわせているという。

 4遺伝子のうちの1個は利根川教授らがすでに確認しているが、残りの3遺伝子はまったく新しく、統合失調症患者の前頭前野では、その働きが落ちていることも確認された。

[読売新聞 / 2007年2月20日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070220i301.htm

理化学研究所 プレスリリース
- 統合失調症の発症関連遺伝子群を日本人で発見 -
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070220_2/index.html
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2007/070220_2/detail.html

パーキンソン病、ブレーキ役たんぱく質解明=京都大学先端領域融合医学研究機構

2007年02月15日 | 脳、神経
 手足のふるえなど体の動きが不自由になる難病、パーキンソン病の原因物質が脳内にたまるのを抑えるたんぱく質を、京都大先端領域融合医学研究機構の木下専(まこと)助教授、猪原匡史(いはら・まさふみ)特別研究員らのグループが明らかにした。15日付の米専門誌「ニューロン」電子版に発表する。根本的な治療薬開発につながる成果と注目される。

 パーキンソン病は全国に10万人以上の患者がいるとされる難病。中脳の黒質と呼ばれる部分にある神経細胞に悪玉たんぱく質がたまり、その毒性が細胞を殺し、神経伝達物質ドーパミンの分泌が減って起こる。

 木下助教授らはこれまでに神経細胞内では悪玉たんぱく質とともにSept4というたんぱく質も凝集することを確認、このたんぱく質の役割を調べていた。

 その結果、米国でつくられたパーキンソン病症状を起こすネズミで、Sept4をつくれないように遺伝子操作すると、症状は3カ月ほど速く悪化することが判明。Sept4が、悪玉たんぱく質の蓄積のブレーキ役になっていることがわかった。Sept4は、ドーパミンをつくるシステムを安定化させる役割もあり、善玉たんぱく質ともいえる。

 木下さんは「パーキンソン病では、Sept4が欠乏している例も見られ、悪化に拍車をかけているらしい。研究を進めて治療に結びつけたい」と話している。

[朝日新聞 / 2007年02月15日]
http://www.asahi.com/science/news/OSK200702150100.html

行うのは足し算?引き算?脳測定で意図の判別に成功=マックスプランク、ロンドン大学、東京大学

2007年02月09日 | 脳、神経
 脳活動の測定実験で、被験者がこれから足し算と引き算のどちらを行おうと考えているか、判別できることが分かった。

 ドイツのマックスプランク研究所や英ロンドン大、東大などの研究チームが9日、米科学誌カレント・バイオロジーの電子版に発表した。

 成功率はまだ7割だが、人間の思考を読み解く初歩的な成果。

 将来、測定機の性能やデータ処理プログラムが向上すれば、身体障害者がロボットの義手や義足を自由に動かしたり、身体を動かさなくても思いを伝えられたりする装置の実現が期待される。

[時事通信 / 2007年02月09日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070209-00000013-jij-soci

統合失調症の発症に関与する遺伝子の機能を解明=名古屋大学

2007年01月04日 | 脳、神経
 統合失調症の発症に関与しているとみられる遺伝子「DISC1」は、脳内の情報伝達にかかわるタンパク質の「適正配置」に重要な役割を果たしていることを、名古屋大医学系研究科の貝淵弘三教授と田谷真一郎助手らのグループが世界で初めて解明した。新しい治療薬の開発に道を開く成果として期待される。
3日付(現地時間)の米神経科学学会誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に掲載される。

 DISC1は、イギリスの統合失調症が多発している家系の遺伝的解析から、発症に密接に関与していることが報告されていたが、具体的な働きは分かっていなかった。

 生物の神経細胞は木の枝のように分かれた複数の樹状突起(じゅじょうとっき)と1本の軸索(じくさく)を持っている。樹状突起が他の細胞から信号を受け取ると、軸索が別の細胞の樹状突起の方に伸びて神経回路を形成し、信号を伝える。軸索の伸びは、複数のタンパク質が軸索内の決められた場所に適正に配置されることによりコントロールされている。

 軸策が伸びる際、複数のタンパク質は「キネシン1」と呼ぶ貨車役のタンパク質に乗って軸索内を運ばれる。貝淵教授らは、ラットの脳の神経細胞を使い、DISC1がどのように働いているのかを分子レベルで調べ、DISC1は「積み荷」である複数のタンパク質を貨車に載せる「コンテナ」の役割を果たしていることを突き止めた。

 DISC1の機能が壊れると、軸索の伸びが抑制されて神経回路の形成に支障が起こり、発症すると考えられるという。貝淵教授は「現在の治療薬は、陽性症状には比較的有効だが、陰性症状にはほとんど効果がない。この研究を進めれば、陰性症状に対する新薬の開発につなげられる可能性が高い」と話した。

[中日新聞 / 2007年01月04日]
http://www.chunichi.co.jp/00/sya/20070104/mng_____sya_____010.shtml

神経細胞が伸びる仕組み解明=理化学研究所

2006年12月11日 | 脳、神経
脳と体を結ぶ神経回路が作られる際に、神経細胞が正しい方向に伸びていく仕組みを、理化学研究所の上口(かみぐち)裕之・神経成長機構研究チームリーダーらの研究グループが明らかにした。損傷した神経の治療や、人工臓器と脳をつなぐ技術などに応用できる可能性があるという。米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス(電子版)に10日発表した。

痛みや触覚などの信号を脳に伝える神経回路は、体の各部から神経細胞の先端にある神経突起が脳に向かって伸びることでつながり、作られる。この際、どのような仕組みで伸びる方向が決まるのかは、よく分かっていなかった。

上口さんらは、孵化(ふか)直前のヒヨコの脊髄(せきずい)にある神経細胞を使い、そこから神経突起が伸びていく状態を人工的に作り出して観察した。その結果、神経突起を招き寄せることが知られている分子(誘因性ガイダンス分子)を作用させると、神経細胞内でたんぱく質などを包んで運んでいる小さな袋がそちらへ次々に運ばれ、そのことによって神経突起が伸びているらしいことが分かった。

誘因性ガイダンス分子はこれまで、袋が運んでいたたんぱく質などを、信号として別の神経細胞に渡す際の仕組みとして知られていたが、神経細胞の伸びる方向の決定に関係していると分かったのは世界で初めてという。

[朝日新聞 / 2006年12月11日]
http://www.asahi.com/national/update/1211/TKY200612110082.html

理化学研究所プレスリリース
 神経細胞の突起が伸びる方向を転換するメカニズムを発見
 - 神経回路網の構築に重要な役割を果たす新たな知見 -
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2006/061211/index.html

神経突起を作るタンパク質を発見=九州大学

2006年11月03日 | 脳、神経
 神経細胞で情報のやりとりを担う神経突起を形作るのに欠かせないタンパク質を九州大の中山敬一教授らが発見、「プロトルーディン」と名付け、3日付の米科学誌サイエンスに発表した。神経細胞が変性して下半身がまひする「遺伝性痙性対(けいせいつい)まひ」の治療に役立つ可能性があるという。

 神経細胞は、核のある細胞体から多数の神経突起が伸びている。突起は長いもので約1メートルにも達するが、突起が作られるメカニズムは謎だった。

 研究チームは、突起形成にかかわる分子を探すうちにプロトルーディンを発見。がん細胞にこのタンパク質を大量に入れたところ、丸い細胞の細胞膜が部分的に伸びて突起ができた。

 一方、神経細胞でこのタンパク質の働きを抑えると、細胞膜がすべての方向に伸びて広がるだけで、突起はできなかった。このことから、プロトルーディンが特定の方向に細胞膜を伸ばして突起を形成する働きを担っていると判断した。

 中山教授は「プロトルーディンが細胞膜の材料となる脂質を運ぶと、そこで細胞膜が伸びて突起になるのだろう」と話している。

[京都新聞 / 2006年11月03日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006110300023&genre=G1&area=Z10

Protrudin Induces Neurite Formation by Directional Membrane Trafficking
Science 3 November 2006: Vol. 314. no. 5800, pp. 818 - 821
DOI: 10.1126/science.1134027
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/314/5800/818

軸索形成過程で“司令塔”の役割を果たすタンパク質を特定=奈良先端大学

2006年10月10日 | 脳、神経
 神経細胞が次の神経細胞に情報を伝える通路となる軸索ができる過程で“司令塔”の役割を果たすタンパク質を見つけたという研究結果を、稲垣直之奈良先端科学技術大学院大助教授(神経科学)らが米科学誌に9日、発表した。

 稲垣助教授は「脊髄損傷や脳卒中で軸索が切れ、障害が残った人の治療法を開発できる可能性がある」と話している。

 軸索は、神経細胞にあるスパイク状の短い樹状突起とは別に、細胞から1本だけ長く伸びた部分。

 稲垣助教授らは、高性能のタンパク質分離装置を開発し、神経細胞で軸索だけに集中するタンパク質を特定、「シューティン」と名付けた。ラットの実験で、このタンパク質は樹状突起ができる際に急激に増加、やがて1本の突起の先端部分に集まり、この突起が伸びて軸索になった。

 軸索形成にかかわるほかのタンパク質を誘導しており、シューティンが減少すると軸索の伸びが抑えられた。

[共同通信社 / 2006年10月10日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006101000003&genre=G1&area=N10

インスリンが脳の「学習」に関与=東京大学

2006年09月07日 | 脳、神経
 脳で学習機能が働くには、体内で糖分の消費や貯蔵にかかわるインスリンが欠かせないらしいことを、飯野雄一・東京大助教授(行動遺伝学)らの研究グループが、動物実験で示した。7日付の米医学誌ニューロンで発表した。将来、認知症の治療などに役立つ可能性もあるという。

 飯野さんらは、土の中で細菌を食べる体長1ミリほどの線虫が通常、細菌のいるところに多い食塩を、えさ探しの手がかりの一つにしていることに着目。えさの細菌なしに食塩だけを与え続けると、「学習」して食塩には寄りつかなくなることを確かめた。

 一方、遺伝子操作でインスリンを作れなくした線虫に同じ実験をすると、変わらず食塩に集まり続けた。

 どちらも学習に関係する中枢神経そのものは問題なく働いていることを確かめ、「学習に、インスリンが必要であることがわかった」とした。実験には、約10万匹の線虫を使ったという。

 インスリンは、糖代謝を制御するホルモンの一種。人間では膵臓(すいぞう)でつくられ、血液を通じて全身に送られて筋肉などにぶどう糖を送り込む。分泌が悪くなると血糖値が上がり、糖尿病の原因となることが知られている。少量だが脳でも作られており、インスリンと結合する受容体も脳に広く存在している。

 飯野さんは「今回の発見を糸口にして、人間の脳でのインスリンの働きが明らかになれば、将来、認知症や記憶障害などの治療に役立つ可能性があるのではないか」と言っている。

[朝日新聞 / 2006年09月07日]
http://www.asahi.com/science/news/TKY200609070086.html

The Insulin/PI 3-Kinase Pathway Regulates Salt Chemotaxis Learning in Caenorhabditis elegans
Neuron, Vol 51, 613-625
http://www.neuron.org/content/article/abstract?uid=PIIS0896627306005897

脳内にあった「腹時計」=JST柳沢プロジェクト

2006年08月01日 | 脳、神経
 JST(独立行政法人 科学技術振興機構=理事長 沖村憲樹)の研究チームは、動物を1日のうち一定の時刻でのみ摂食が可能な環境(時間制限給餌)におくと、これまで特定されていなかった脳内の部位で時計遺伝子が新たに概日周期注1を刻み始め、生存に必須な食行動を食餌の得られる時刻に合わせるように制御すること(食餌同期性)を明らかにしました。
 全ての哺乳動物は、様々な行動パターンを24時間周期で制御する体内時計(サーカディアン・ペースメーカー)注2を持っています。例えばマウスなど夜行性の動物の場合、いつでも餌がある状態では、視神経に直結した脳内の分子時計(「光同期性クロック」)によって、夜は行動・摂食し、昼は眠るように支配されています。しかし、餌が昼間の一定の時間帯でのみ得られる環境に置かれると、マウスはこのクロックを無視して、行動パターンを昼夜逆転させ、餌のある昼間に行動し摂食するように順応することが知られています。ところが、この「食餌同期性」の概日行動パターンを支配しているはずの体内時計がいったいどこにあるのかは、これまで全く不明でした。
 今回研究チームは、通常飼育環境下のマウス(自由給餌)と昼間の一定の時間帯でのみ摂食できる環境に置かれたマウス(昼間制限給餌)からそれぞれ脳を取り出して、時計遺伝子注3の24時間発現パターンをあらゆる脳部位でくまなく比較しました。その結果、脳内の視床下部背内側核と呼ばれる場所において、昼間制限給餌下でのみ時計遺伝子(「分子腹時計」)が24時間周期でスイッチオン・オフし始めることを見出しました。
 近年、ヒトにおいては、睡眠時間や食事の時刻などのライフスタイルと、肥満やメタボリック・シンドローム注4の発症との間に密接な関係があることが注目されています。今回、分子腹時計が脳内のどこに局在するのかが突き止められたことにより、この腹時計がいかにして食餌によって制御され、またいかにして食欲・食行動を支配しているのかを解明してゆくための、最初の突破口が開かれました。将来、ここから肥満や生活習慣病を予防する新たな手段が発見されることが期待されます。
 本研究成果は、JST創造科学技術推進事業(ERATO)柳沢オーファン受容体プロジェクト(総括責任者:柳沢正史 テキサス大学教授)が、東京医科歯科大学難治疾患研究所(三枝理博助手)、ハワード・ヒューズ医科学研究所、およびテキサス大学との共同研究で得たもので、米国科学アカデミー紀要(PNAS)オンライン版に2006年7月31日(米国東部時間)付けで公開されます。

[2006年08月01日/科学技術振興機構プレスリリースNo.318]
http://www.jst.go.jp/pr/info/info318/index.html

睡眠時間の短縮:脳のたんぱく質操作で成功 ラットで実験=大阪バイオサイエンス研究所

2006年06月18日 | 脳、神経
 眠りを引き起こす働きが知られるホルモンの一種「プロスタグランジンD2」(PGD2)の受け皿となる脳表面のたんぱく質(受容体)を作用させなくすると、睡眠時間が短くなることを、大阪バイオサイエンス研究所(大阪府吹田市)の研究グループがラットを使った実験で確認した。居眠り防止薬の開発にもつながる成果だとして、18日から京都市で開かれる国際生化学・分子生物学会議で発表する。

 PGD2は、脳の周囲を覆うくも膜から分泌され、くも膜と脳の間を流れる脳脊髄(せきずい)液中に微量に存在する。研究グループはこれまでに、PGD2をラットの脳に投与すると、受容体からアデノシンという神経伝達物質が発生し、それが睡眠を誘発することを突き止めている。しかしどうすれば睡眠を抑制できるかは確かめられていなかった。

 実験では、脳のうち受容体が集中して存在する「前脳基底部」という部位に、受容体を作用させなくする薬の水溶液を6時間にわたり微量に投与し続けた。すると、薬の濃度が高いほど睡眠時間が短縮。ラットが通常睡眠に入る昼間で、睡眠時間は通常1時間あたり約40分だったのが20~25分まで減少した。

 同研究所の裏出良博・第2研究部長は「PGD2はこれまで強制的に投与して眠気を引き起こすことは知られていたが、今回の実験で、結果的にPGD2が自然な睡眠にも関与していることが分かった」と話している。


[2006年06月18日/毎日新聞]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20060618k0000m040103000c.html

脳の巧みな時間順序の推定法の解明=科学技術振興機構、順天堂大学

2006年05月29日 | 脳、神経
 JST(理事長 沖村憲樹)と順天堂大学(理事長 小川秀興)は、左右両方の手に加えた刺激の順序の判断に、これまでの経験を加味した「ベイズ推定」が用いられることを明らかにしました。
 本研究チームは、右手と左手に少し時間をずらして刺激を加える、という作業を何回も繰り返すと、左右の手に同時に与えた刺激が、繰り返した刺激と同じ順序に感じられるようになることを見出しました。この錯覚は皮膚の感覚器からの情報に加えて、事前の経験を総合して判断する「ベイズ推定」と呼ばれる効率の良い推定法で良く説明できました。感覚器からの信号にノイズがある場合には、ある程度経験に頼る「ベイズ推定」を行うことで誤りを最小化できることが数学的に示されています。この錯覚の発見は、脳の中には時間順序を判断する際に巧みな「ベイズ推定」を行うメカニズムが組み込まれていることを示す成果です。
 学習障害の一つである「難読症」の背景には、次々と入力される感覚信号の順序判断をする脳の機能に障害がある可能性があると言われています。脳が感覚信号を順序付けるメカニズムの一端を解明した本研究の成果は、これらの障害の原因を解明する手がかりとなる可能性があります。
 この研究成果はJST戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」研究領域(研究総括:津本 忠治(独立行政法人理化学研究所脳科学総合研究センター ユニットリーダー))の研究テーマ「応用行動分析による発達促進のメカニズムの解明」の研究代表者・北澤 茂(順天堂大学大学院医学研究科 教授)と宮崎 真(早稲田大学人間総合研究センター 助手)、山本慎也(独立行政法人産業技術総合研究所 研究員)らの共同研究によって得られたもので、米科学雑誌「Nature Neuroscience(ネイチャー・ニューロサイエンス)」オンライン版に2006年5月28日(アメリカ東部時間)に公開されます。

Bayesian calibration of simultaneity in tactile temporal order judgment
Published online: 28 May 2006 | doi:10.1038/nn1712
http://www.nature.com/neuro/journal/vaop/ncurrent/abs/nn1712.html

[2006年05月29日/JSTプレスリリース]
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20060529/index.html

脳細胞:死なないメカニズムを解明=東京大学

2006年04月21日 | 脳、神経
 年齢とともに脳細胞は減るが、頭をよく使うと脳細胞が死なないのはなぜか。このメカニズムを解明することに、東京大の緑川良介特別研究員と広川信隆教授(分子細胞生物学)らが成功した。脳細胞が死ぬのを食い止めたり、神経の再生が可能になるかもしれないという。21日発行の米科学誌「セル」で発表する。

 広川教授らは、細胞内で物質を運ぶ役割を担う「KIF4」というたんぱく質に着目し、マウスなどで調べた。あまり使われない神経細胞では、損傷した遺伝子の修復にかかわる酵素「PARP1」と結合し、酵素の活性が失われ細胞死を導くことが分かった。一方、よく使う神経細胞では、細胞の活動によりカルシウムが多く流れ込み、酵素が変形(リン酸化)してKIF4と結合しないため細胞死を免れていた。

 広川教授は「神経細胞の生死の鍵はKIF4が握っていることが分かった。細胞内の“運び屋”という本来の役割とは違う機能は驚きだ」と話している。


 ▽長田重一・大阪大教授(生化学)の話 神経の生き死にに予想外の物質を使って調整が行われており、思いもよらない発見だ。今回は神経細胞だが、リンパ球など他の細胞ではどうか。この結果、何が起きているのか調べていくことで応用面にもつながるだろう。


[2006年04月21日/毎日新聞]
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060421k0000m040148000c.html
Cell -- Summary : KIF4 Motor Regulates Activity-Dependent Neuronal Survival by Suppressing PARP-1 Enzymatic Activity
http://www.cell.com/content/article/abstract?uid=PIIS0092867406003734&highlight=KIF4