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「パラサイト 半地下の家族」(2019年 韓国)

2020年01月22日 | 映画の感想、批評
 

第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画史上初のパルムドール、第77回ゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞し、来月10日に発表される第92回アカデミー賞®︎では作品、監督、脚本、国際長編映画(旧外国語映画)の各部門にノミネートされている話題の韓国映画。『殺人の追憶』『グエムルー漢江の怪物ー』のポン・ジュノ監督と、それらの作品で主役をつとめた韓国の名優ソン・ガンホが4度目のタッグを組んで、世界中の観客を魅了する。
 度々事業に失敗しても楽天的な父親、元ハンマー投げメダリストの母親、大学受験に失敗し続ける"受験のプロ"の息子ギウ、美大へ行きたいが予備校に通う金がない娘ギジョンのキム一家は、全員失業中で「半地下」住宅で暮らしている。ギウの友人のエリート大学生が留学の間、高校生ダヘの英語の家庭教師をギウに頼みにきたことから物語は始まる。
 家庭教師先のIT企業のパク社長宅は、高名な建築家が設計した高台の大豪邸。若くて美しい妻、高校生の娘、小学生の息子ダソンと、まるで絵に描いたような理想的な一家だ。そして有能な家政婦。ギウはギジョンをいとこの友人と偽って、ダソンの家庭教師に推薦する。
 日本でも就職氷河期で職に就けなかったり、競争社会に馴染めず家庭に引きこもったり、親の収入や年金に依存して暮らす人たちを指して"パラサイト(寄生虫)"と報道していたことがあった。ずい分と酷い言い方だと思っていたら、さらに勝ち組、負け組などという言葉さえ現れてきた。全員失業中という本作のキム一家はさしずめ負け組代表。対するパク一家は勝ち組代表と言ったところだろうか。しかしポン・ジュノ監督は今世界中が直面している格差社会の問題をストレートに批判するような描き方では、観客が満足しないことを心得ている。
 劇場用パンフレットにポン・ジュノ監督から「本作をご紹介頂く際、出来る限り兄妹が家庭教師として働き始めるところ以降の展開を語ることは控えてほしい。思いやりあるネタバレ回避は、これから本作を観る観客と、この映画を作ったチーム一同にとっての素晴らしい贈り物です」というメッセージがある。ということで、キム一家が貧乏生活から脱出するために、どのような計画を立て、実行していったか、その結果どのような事態が起きたのか、ぜひ映画館に足を運んで、132分のハラハラドキドキの展開を楽しんでほしい。こんなかたちでラストを締め括るのか、ポン・ジュノ監督にやられた〜と唸ってしまう。(久)

原題:GISAENGCHUNG
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、ハン・ジヌォン
撮影:ホン・ギョンピョ
出演:ソン・ガンホ、チェ・ウシク、チャン・ヘジン、パク・ソダム、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チョン・ジソ、パク・ソジュン、イ・ジョンウン

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2 コメント

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Unknown (アロママ)
2020-01-28 13:50:04
背筋がゾゾっとなりました。でも、面白い!
そう、「やられた~!」って思いました。
韓国映画は食わず嫌いだったのを返上しなければ。
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DAD=Joker? (VENOM)
2020-02-24 21:32:30
アカデミーの俎上に「ジョーカー」と一緒に登ったせいか、格差社会云々で共通点を指摘されましたが、(ちょっとネタバレ失礼)庭での惨劇の時立ち尽くしていた父親の顔が私にはジョーカーに見えました。
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