シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

2019年上半期ベスト5

2019年07月10日 | BEST


 令和という新しい年号を迎え、その上半期の成果を総括するという意味で私どものベスト5を発表いたします。映画は着実に進化しているという期待に応えた品がどれほどあったか、それは読者の皆さまの体験に任せるとして、執筆者がお薦めするベスと5をどうかお遊びとはいえ、参考にして頂ければ幸いです。(健)

注記:原則として2019年1月~6月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには監督、原題、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Database に従った。

◇久
【日本映画】
特になし

【外国映画】
1位「バハールの涙」(エヴァ・ウッソン Les filles du soleil 2018年フランス=ベルギー=ジョージアほか)
ISに拉致された息子を取り戻すため、銃を取って立ち上がったクルド人女性バハール。最近読んだ2018年ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドの自伝と重なった。

2位「バジュランギおじさんと、小さな迷子」(カビール・カーン Bajrangi Bhaijaan 2015年インド)
真面目なインド人青年が、声の出ないパキスタン人の迷子の少女を故郷へ帰そうと出た旅の途中で出会う様々な困難。心が通い合えば国や宗教が違っても争いごとは避けられる。

3位「マイ・ブックショップ」(イザベル・コイシェ The Bookshop 2017年イギリス=スペイン=ドイツ)
イギリス東部の海辺の小さな街で、周囲の反対にあいながら書店を開店した女性の物語。最近は本屋で本を買うよりも図書館で借りるばかりだが、活字の奥に広がる世界は好きだ。

4位「天才作家の妻-40年目の真実-」(ビョルン・ルンゲ The Wife 2017年スウェーデン=アメリカ=イギリス)
女性の書いた本は読まれないという言葉に小説家になることを諦めた妻と、ノーベル文学賞を受賞した夫の間の秘密。夫を“支え続けた”愛情と怒りに揺れ動く妻役のグレン・クローズが良かった。

5位「僕たちは希望という列車に乗った」(ラース・クラウメ Das schweigende Klassenzimmer 2018年ドイツ)
1956年、ベルリンの壁建設5年前、自分たちの人生を左右する重大な選択を迫られた東ドイツの高校生たちの苦悩と友情の物語が感動的。

◆Hiro
【日本映画】
1位「愛がなんだ」(今泉力哉)
猫背でひょろひょろだけど、ちょっとイケメンのマモちゃんに出会い、一目惚れ。相手は完全に自分中心なのに、ちょっとでも関わっていたいと思う、平凡なOLテルコの究極の片思いを描く。主役の二人と友人たちのやりとりに「それってアリだよね。」と妙に納得。今時の若者の恋愛模様を複雑に交差させながら、見る者をドキュンとさせてくれる。

2位「半世界」(阪本順治)
三重の山中で、父から引き継いだ備長炭を黙々と作り続ける稲垣吾郎に役者としての成長を見た。人生の半ばにさしかかって、これからどう生きるかという心の葛藤や、家族や友人との絆、あたらな希望を阪本順治監督が崇高ともいえるレベルで映し出す。

3位「長いお別れ」(中田量太)
やがて5人に一人がかかるという認知症。ゆっくり記憶を失っていく父とのお別れまでの7年間を、新たな発見と希望を導き出しながら、ユーモアたっぷりに描く。家族の繋がりを再認識させてくれる佳作。

4位「来る」(中島哲也)
様々な役柄に挑戦する岡田准一と、独特の映像センスで注目の中島哲也監督がタッグを組み、ホラー小説大賞受賞作に挑戦。次々と現れる奇想天外な闇の世界。のれるかのれないかは見る者の心掛け次第。

5位「キングダム」(佐藤信介)
紀元前、中国春秋戦国時代を舞台に、大将軍になるという夢を描く少年と、中華統一を目指す若き王の友情物語。スペクタルな迫力の映像と激しいアクション、そして原作漫画や史実に基づいた世界観がしっかり描かれていて飽きさせない。次作が楽しみ。

【外国映画】
1位「ROMA/ローマ」(アルフォンソ・キュアロン ROMA 2018年メキシコ=アメリカ)
政治的混乱に揺れる1970年代のメキシコを舞台に、一人の家政婦と雇い主一家の関係を、メキシコ人監督アルフォンソ・キュアロンが鮮やかに、感情豊かに描く。監督の個人的な人生の記憶が原動力となって、この上ないリアリティが生み出された。アカデミー賞外国語映画賞を争った「万引き家族」もこれにはかなわない。

2位「グリーンブック」(ピーター・ファレリー Green Book 2018年アメリカ)
本年度アカデミー賞3部門(作品・脚本・助演男優)受賞作品。ガサツで無教養なイタリア系用心棒が、孤高の天才黒人ピアニストの運転手に。コンサートツアーで同行する中で、様々な奇跡が舞い起こる。これが実話だってことが、見る者を幸せな気分に導いてくれる。

3位「彼が愛したケーキ職人」(オフィル・ラウル・グレイツァ The Cakemaker 2017年イスラエル=ドイツ)
イスラエルで生まれ育った若手監督が、国籍や文化、宗教や性差を超えてめぐり逢う男女の人間模様を繊細に描く。ドイツ人の菓子職人トーマスが愛したのは、イスラエル=ドイツの合弁会社で働くイスラエル人のオーレンだった。オーレンの不慮の事故死により彼の妻のアナトと出会うことで、新たな関係が生まれてくる。"彼”の水着を借りて泳ぎ、亡き人を偲ぶというのは、この監督だからこそなしえた発想なのでは。ちなみに「シネマ見どころ」で毎月Yasuo Shimizu氏が描くイラストのMy Best1でもあります。

4位「家へ帰ろう」(パブロ・ソラルス El ultimo traje 2017年アルゼンチン=スペイン)
ブエノスアイレスに住むユダヤ人の仕立屋・アブラハムが、故郷ポーランドに住む親友に最後に仕立てたスーツを届けに行くという感動のロードムービー。旅の途中で関わる人たちに助けられ、心を開いていく頑固オヤジがだんだん可愛く思えてくる。

5位「運び屋」(クリント・イーストウッド The Mule 2018年アメリカ)
88歳、映画界のレジェンド、クリント・イーストウッドが監督し、主演もつとめた渾身作。この名優の心を動かしたのは、「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」というニューヨークタイムズ・マガジンの記事。この作品も実話が元になっている。とても88歳とは思えないイーストウッドの行動力に脱帽だ。


◆kenya
【日本映画】
*鑑賞本数が少なかった為、2本のみとさせて頂きました。
1位「居眠り磐音」(本木克英)
昔からの友人を斬らざるを得ないことになり、恋人とも別れ、浪人生活の中で、人の優しさに触れていく哀しみを抱えた主人公役に、松坂桃李が合っていて、現代にも通じるチャンバラエンターテイメント映画だった。

2位「マスカレード・ホテル」(鈴木雅之)
1位と同じで、エンターテイメント映画の王道の王道で、普通に楽しめた。

【外国映画】
1位「ROMA/ローマ」
終始、壮絶な人生展開に圧倒させられる。白黒だが映像に力がある。2001年公開の同監督作品「天国の口、終わりの楽園。」もお薦め。

2位「芳華-Youth-」(フォン・シャオガン 芳华/youth 2017年中国)
苦しい時期を共有した仲間が、時と共に離れ離れになる。そして、落ち着くべく時が来れば、落ち着いていく。人の一生とは儚く切ないもの。京都シネマで観たが、1日1回だけの上映では寂しい。

3位「女王陛下のお気に入り」(ヨルゴス・ランティモス The Favourite 2018年アイルランド=イギリス=アメリカ)
女優3人の演技が観応え十分。個人的には、アカデミー賞を獲ったオリビア・コールマンより、レイチェル・ワイズが良かった。本作品には関係無いが、レイチェル・ワイズの旦那は、ダニエル・クレイグだった!ビックリ!

4位「ブラック・クランズマン」(スパイク・リー BlacKkKlansman 2018年アメリカ)
スパイク・リーの手にやっとアカデミー賞が渡った。ここ最近の世の風潮を忖度し、アカデミー協会が気を遣ったのか。充分、作品としては出来上がった印象があるので、気を遣ったと云われるアカデミー協会にとっては、酷な話かな?原題のスペルにも一工夫が見られますね。

5位「運び屋」
やはりイーストウッドは監督だけではなく、画面に登場してほしい。それにしても、かなり老体にムチを打って演技している印象が強くなってきた。

◇アロママ
【日本映画】
5月末までの邦画鑑賞数は5本、洋画に比べて圧倒的に少なく、これというのもなく、上半期ベスト5はどうなるやらと思っていたら、6月になってようやく面白そうな作品に出会えた。さらに締め切りぎりぎりの駆け込みで「新聞記者」を見られたのは良かった。
1位「新聞記者」(藤井道人)
日本の政治の裏側をタイムリーに描いた、フィクションだけれどノンフィクションに思えるくらい、リアリティが高いドラマ。背筋の凍るようなサスペンスでもある。この国で起こっていることをしっかり見届けなければと思った。出演者、制作陣の勇気に敬意を表したい。

2位「小さな恋のうた」(橋本光二郎)
単なる青春物かと思っていたら、音楽を通じて、沖縄の現状も多面的に考えさせてくれる。理屈でないところで、若者たちは障害も国境も飛び越えていける。

3位「愛がなんだ」(今泉力哉)
こじれ系女子、あるある!恋愛って、うまくいくばかりじゃないよ、ヒリヒリする思いを乗り越えろ!おばちゃんは中原ッチの頭をワシワシしながらハグしてあげたかった。

4位「泣くな赤鬼」(兼重淳)
中年教師が教え子の死と向き合う中で再生していく。柳楽優弥と堤真一、川栄李奈がいい味を出している。上半期だけで柳楽優弥を「夜明け」「ザ・ファブル」も合わせて3作品。彼のふり幅のある演技、せつないワンこのような目がたまらない。

5位「町田くんの世界」(石井裕也)
ファンタジーだし、風船のシーンでは「プーさんか、メリーポピンズか!」と笑ってしまった。やさしさの波紋を広げる人になりたい。根底にある町田くんの両親の愛情の大きさを想う。

【外国映画】
上半期18本。5作品選ぶのが辛いくらい、良い作品にたくさん出会えた。それでもまだまだ見落としたのが多い!
1位「ある少年の告白」(ジョエル・エドガートン Boy Erased 2018年アメリカ)
LGBTの「矯正」施設を取り上げている。その洗脳ぶりの恐ろしさ。現代のアメリカの話しという事に驚かされる。主人公の少年を演じたルーカス・ヘッジズは「とらわれて夏」の息子だったのか!「ベン・イズ・バック」でも、薬物依存症の少年。重くハード役が続くので、彼自身の精神面を心配してしまう、おせっかいおばちゃんファンの私。母(ニコール・キッドマン)の強さと共に、聖職者である父親(ラッセル・クロウ)の苦悩も描かれていた

2位「天才作家の妻-40年目の真実-」
女性が作家として名乗りを上げられないのは、「メアリーの総て」の時代だけではない。現代もまだまだ!「コレット」を見られなかったので、比較はできないが。グレン・クローズに主演女優賞をあげたかったなあ。もちろん、「女王陛下のお気に入り」も良かったんだけれど。

3位「それだけが、僕の世界」(チェ・ソンヒョン그 것만이 내 세상 2018年韓国)
韓国映画をずっと避けてきたけれど、それを反省している。主演者みんな、素晴らしかったが、特にサヴァン症候群の少年役を演じた俳優さんが圧巻。

4位「メリー・ポピンズ リターンズ」(ロブ・マーシャル Mary Poppins Returns 2018年アメリカ=イギリス)
やっぱり、メリーポピンズは外せない!50年前の作品への敬意にあふれている。トラヴァース夫人も納得してくれるかな。CGに頼らず、アニメで実写との融合を図った制作陣に拍手。

5位「グリーンブック」
納得のアカデミー賞?というわけではないが、とても分かりやすくて、すっと心に入ってくる。珍しく吹き替え版でも見られた。彦根の映画館、グッジョブ!


◆KOICHI
【日本映画】
日本映画は何本か見たのですが、なかなか気に入る作品との出会いがありませんでした。6月になってようやく2本の秀作を見つけ、それぞれを1位、2位としました。
1位「愛がなんだ」
愛という死に至る病をコミカルに描いた作品。テーマは主人公テルコの狂気。流血騒ぎになってもおかしくないテーマを淡々とユーモラスに描いている。テルコはマモルに夢中になるあまり、仕事のミスが多くなって会社をクビになり、マモルから呼び出しがあればいつでも駆けつけられるようにスタンバイしている。ついにはマモルと合体してしまいたいという幻想(性的な意味ではない)すら抱くようになってしまった。けれどもマモルはすみれが好きで、テルコを「都合のよい女」ぐらいにしか思っていない。マモルが自分を愛していないことがわかったテルコは、マモルの前で他の男性が好きなフリをして二人でデートに行く。マモルとすみれを振り返って見つめるテルコの表情が切ない。ここで映画が終われば、センチメンタルな片思いの青春映画になっただろう。ところが最後に予想外の展開が待っていた。テルコのマモルへの想いは愛から執着へと変貌し、テルコはかつてマモルがなりたいと言っていた動物園の飼育員になるのだ。これは依存する相手との自己同一化ではないか。自分がマモルになって、叶わぬ愛を成就しようとしたのだ。淀川長治が「太陽がいっぱい」の解説で自己同一化について語っている。アラン・ドロンはモーリス・ロネを愛しており、ロネの服を着て、鏡の中に映し出された自分(=ロネ)にキスをする。現実の愛が成就しないことがわかると、ロネを殺して自分がロネになった。自己同一化とはかくも恐ろしい狂気である。

2位「さよならくちびる」(塩田明彦)
インディーズで人気のある2人組の女性バンド「ハルレオ」が解散を決めた。ローディ(バンドのサポータ―)のシマと共に、「ハルレオ」が解散ツアーに出るところから物語は始まる。ロードムービーにして音楽映画。恋愛映画にして夢追い物語。ハルとレオの関係は崩壊寸前であり、そこにシマが入ることで関係はよりややこしくなる。レオはシマに恋をし、シマはハルに想いを寄せ、そしてハルは同性であるレオに友情以上の感情を抱いている。三人の関係が1対2ではなく、1対1対1であることが関係性を複雑にしている。けれども逆にそれは救いでもある。それぞれの愛のベクトルがトライアングルを形成して微妙なバランスを保っている。三人が決定的な崩壊に至らないのはベクトルの向きが交差していないからだ。音楽映画は音楽を心ゆくまで観客に聴かせることが最大の目的であり、ミュージカルならダンスを観客に堪能させることが一番の狙いであるはずだ。この作品はそのあたりを心得ていて、演奏場面では十分な見せ場を作っている。秦基博とあいみょんの曲もよく、「ハルレオ」の音楽は観客の心を揺さぶる力を持っている。三人の気持ちは離れたままでも、音楽によってひとつになれる。登場人物の個々の問題に深入りせず、音楽を聴かせるという本来の目的に立ち返ったところにこの作品の成功がある。

3位「洗骨」(照屋年之)
沖縄の離島に伝わる「洗骨」という風習を通して、崩壊寸前の家族が再生していく物語。死者の骨を洗うという行為によって、生者は死という現実の過酷さをいやがおうにも認識する。「洗骨」とはメメント・モリ(死を想え)という警句をまさに体現する行為である。

【外国映画】
1位と2位は甲乙つけがたく、3位以下の作品と比べると出色の出来です。
1位「運び屋」
失意のどん底にいた90歳のアールは、ひょんなことからコカインの運び屋をするようになる。アールは華やかな生活を取り戻していき、失った家族との絆も回復させていく。アールの勝手気ままな行動が、麻薬取締局の捜査を混乱させてしまうというコミカルな展開に、作者の人生哲学が垣間見える。天真爛漫で道徳や倫理に縛られない主人公をイーストウッドが飄々と演じている。

2位「ROMA/ローマ」
1970年代初頭、メキシコ・シティのローマ地区で住み込みの家政婦として働くクレオ。クレオは雇い主である医者のアントニオと妻ソフィア、彼らの4人の子供たち、ソフィアの母とクレオの同僚と一緒に暮らしている。クレオと雇い主一家に起こった苦難のエピソードを中心に物語は展開する。クレオはフェルミンという若い男と関係を持ち妊娠するが、男は父親であることを認めず、クレオの前から姿を消してしまう。クレオはひとりで赤ちゃんを産むが死産であった。雇い主であるアントニオは若い愛人ができ、ソフィアや子供たちを残して、愛人と逃亡してしまう。基本的なストーリーはいたってシンプルであり、起伏に富んだ物語が繰り広げられるわけではない。むしろ単調と言ってもいいほど事態は動かない。警官隊と反政府勢力との衝突の場面があるが、特に社会的、政治的メッセージがあるわけではない。クレオもソフィアも運命に従順で、自分を裏切った男に復讐するとか、絶望して自殺する・・・というドラマチックな展開にはならない。悲しみを悲しみとして受け止めて、傷ついた者同士が手を取り合って生きていこうとする。悲しみを深く掘り下げることにより、悲しみそのものを表現しようとしている。万人が共感できる普遍的な悲しみを描こうとしている。高波に溺れかけた子供たちをクレオが救うシーンがある。泳げないクレオが海の中にどんどん入っていくところを移動撮影でとらえている。たすけられた子供たちとクレオは砂浜でしっかりと抱き合う。とても感動的なシーンだ。その時クレオは唐突に「赤ちゃんが産まれてこなくてよかった」と告白する。やや場違いとも思えるつぶやきだが、感極まったクレオは胸の内に秘めていた思いを吐露したのだ。クレオと子供たちの絆には、時代や地域を超えた美しさがある。個人的な感動が普遍的な感動に昇華したのだ。ここに芸術表現のひとつの理想がある。

3位「魂のゆくえ」(First Reformed ポール・シュレイダー 2017年アメリカ)
イラク戦争で息子を亡くした牧師のトラーは、重い自責の念と深い失望の中にいた。トラーはエコ・テロリストの自殺を機に、自らテロリストへと変貌していく。ラストシーンの解釈で評価は分かれる。

4位「コレット」(Colette ウォッシュ・ウェストモアランド 2018年アメリカ=イギリス=ハンガリー)
19世紀末、ベル・エポックの時代のパリで、田舎町出身のコレットが女性としての自立を獲得していく物語。コレットは夫のゴーストライターという立場に反旗をひるがえし、自分の名前で執筆することを求めるようになる。性に保守的であった時代に、性的マイノリティーである事実を世間に公表していく。「作家としてのアイデンティティーの確立」と「セクシュアリティーの自立」がコレットの人間としての自立と三位一体で描かれている。


◆chidu
【日本映画】
1位「新聞記者」
実際にリアルな政治を知らないですが、田中哲司さん演じる多田智也の「この国の民主主義は形だけでいい」のセリフが残った作品です。ただ残念なのはラストのシーンですかね。

2位「愛がなんだ」
一人の男性に生活の全てを捧げてしまう。救いようが無いけれど、ここまで一人の人に夢中になれる事の素晴らしさを淡々とした映像の中でみせてくれた作品。

3位「空母いぶき」(若松節朗)
原作を読まれた方と読んでない方とで、意見が真っ二つに分かれた作品です。個人的には少ない予算の中で頑張った作品だと思います。

4位「ザ・ファブル」(江口カン)
原作の漫画を読んではいませんが、単純にアクションコメデイーが楽しめた作品です。個人的には浜田役演じる光石研さんと海老原演じる安田顕さんやり取りが群を抜いて楽しめた作品です。

【外国映画】
1位「マイ・ブックショップ」
とにかく脚本の完成力が凄いと思わせられる作品でした。回収力が見事。意味不明なエンディングで終わりがちなムービーですが、キチンと観ている物にも分かりやすいエンディングに脱帽です。

2位「ファースト・マン」(デイミアン・チャゼル First Man 2018年アメリカほか)
2014 年からほぼ毎年制作しているデイミアン・チャゼル監督。今作は人類で初めて月面着陸した男ニール・アームストロングの実話でした。迫力ある画像といかに月に行く事が容易で無いかを丁寧に描いた作品です。

3位「22年目の記憶」(イ・ヘジュン 나의 독재자 2014年韓国)
キャスト全員演技力は上手いですが、その中でも主演のソル・ギョングさは凄いです。22 年前と 22 年後の役作りの見事さ、凄まじいです。役者魂です。


◆健
【日本映画】
1位「町田くんの世界」
周りにいるのはかけがいのない人びとであり、自分のことは二の次でかれまたはかの女が困っていれば率先して助ける、そういう町田くんのような人ばかりなら、世界には争いもイジメもハラスメントも起きない。その町田くんを育てた父がいう、わからないことを恐れるな、と。

2位「さよならくちびる」
二人組の女性同士のデュエットにマネジャー兼伴奏担当の男が絡み、微妙な三角関係を維持しながら解散コンサート・ツァーのロードムービーが進む。やがて緊張感がマックスとなってアウフヘーベンするような映画だ。

3位「愛がなんだ」
今どきの若者たちの恋愛事情を描いて秀逸なのは原作と脚本の手柄といえそう。ただ、それを視覚化して成功させるのはキャスティングも重要で、テルコ、マモちゃん、謎の年長女とどれも原作の雰囲気どおりだ。

4位「旅のおわり世界のはじまり」(黒沢清)
テレビの制作姿勢に対する皮肉や文明批判が利いている。前田あっちゃんがウズベキスタンに飛んで異文化紹介レポーターをソツなくこなすのが健気で、人間として着実に成長して行く姿が頼もしい。

5位「半世界」
林業主体の山村に残った者、一度は町に出て舞い戻って来た者。かつて三人組の仲良しだった幼なじみが中年にさしかかろうとする人生の岐路で迎えた悲劇を扱い、そこから新たな希望を紡ごうとする。

【外国映画】
1位「芳華-Youth-」
文化大革命を経て毛沢東の死、5人組の失脚、中越戦争と70年代から90年代にかけて歴史に翻弄され、その後の人生の明暗を分けた若者たちの大河ドラマにして青春賛歌。傑作である。

2位「THE GUILTY/ギルティ」(グスタフ・モーラー Den skyldige 2018年デンマーク)
無声を出自とする映画は音を得てトーキーにバージョンアップしたが、その音だけでスリルとサスペンスのみならずカーチェイスまで描いてしまう着想と工夫にすっかり舌を巻いた。

3位「ROMA/ローマ」
10年に1本の傑作だという触れ込みは決して大げさではない。イタリアン・ネオ・レアリズモならぬヌーボ・レアリズモ・メキシカーノの傑作である。

4位「女王陛下のお気に入り」
中世英国宮廷の権謀術数渦巻く権力闘争を見ているだけで楽しいが、キューブリック「バリー・リンドン」を彷彿とさせる絢爛豪華な絵巻物という風情が飽きさせない。

5位「天才作家の妻-40年目の真実-」
ノーベル賞作家の妻として陰で夫を支える良妻賢母のグレン・クローズがみごと。女性のゴーストライターというテーマでは「コレット」があり、後者はジェンダー論に重きを置く点で少し違うが、いずれにしても男社会が生んだ知的搾取の最たるものだ。


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