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「モーリタニアン 黒塗りの記録」(2021年 イギリス映画)

2021年12月08日 | 映画の感想・批評
 本作は、無実ながら、アメリカ同時多発テロ9・11の首謀者の一人として、長年、キューバのグアンタナモ収容所で拘束されたタハール・ラヒム演じるモハメドゥ・ウルド・スラヒが書いた手記を基にされている。彼の弁護士役にジュディ・フォスター、軍の弁護をする中佐役をベネディクト・カンバーバッチが演じている。ベネディクト・カンバーバッチは、製作にも名を連ねている。先日、取り上げた「クーリエ 最高機密の運び屋」と似通っている気もする。
 副題の“黒塗りの記憶”にもあるように、2015年に出版されたこの本は、アメリカ政府によって、黒く塗りつぶされていたことから、大ベストセラーになった著作(恥ずかしながら知らなかった)が黒塗りしてあったという事実が、当時何が起こっていたのかを物語っている。政府や軍にとって都合が悪いことであることは容易に察しが付く。
 本作では、その事実を再度知らしめることがメインだと思うが、それ以上に、本作では、ジュディ・フォスターとベネディクト・カンバーバッチの、敵同士でありながらも、どこか通じる部分を感じる、その人と人との温かみを描いているところがとても良かった。ラストの二人の表情もとても良かった。グアンタナモでの人間として扱われない状況との対比で、映画全体をドキュメンタリー要素が強くせず、バランス良く仕上がっていたと思う。
 と、少し前置きが長くなったが、なんといっても、私はジュディ・フォスターがスクリーンで観られたのが嬉しかった。映画の中身も面白そうと思ったが、それ以上に、一番の目的は彼女だった。私が学生の頃、映画を観始めた頃に、何度も観た記憶がある。プロフィールでは来年還暦。監督もやって、まだまだ衰えない。初めて、グアンタナモ収容所に行った際のサングラス姿は颯爽としつつも幾分かの不安があり、とうとうここに来てしまった、もう後戻りは出来ないといった覚悟を感じて、その姿に身震いした。
 モハメドゥ・ウルド・スラヒの手記を発刊した時の気持ちを代弁していたのかも。飛躍し過ぎかもしれませんが。
(kenya)

原題:The Mauritanian
監督:ケヴィン・マクドナルド
脚本:M・B・トラーヴェン、ローリー・ヘインズ、ソフラブ・ノシルヴァン
撮影:アルウィン・H・カックラー
出演:ジュディ・フォスター、タハール・ラヒム、ザカリー・リーヴァイ、サーメル・ウスマニ、シェイリーン・ウッドリー、ベネディクト・カンバーバッチ


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