あまり知られることのない職業として、刑務所や拘置所の収監者に家族などの代わりに衣類や食べ物だけでなく、手紙も届けるという「差入屋」というのがある。そこを舞台に監督自身が脚本も書いたデビュー作品。多様性が叫ばれる傍ら、きわめて不寛容な現代社会に対して一石を投じる思いが感じられる。
主人公(丸山隆平)自身がかつて収監された経歴をもち、その体験から差入代行業の必要性を感じて、伯父(寺尾聡)の店を継承し、妻と小学生の息子とともにつつましく暮らしている。
気丈な妻(真木よう子)は「あんたの仕事は必要なの!」と夫を励まし続ける。主人公の実母(名取裕子)には夫に内緒でお金を工面し、「余計なことをするな」と派手な夫婦げんかも絶えない。そのたびに伯父がそっと息子(三浦綺羅)を守ってくれる。
職業に貴賤はないはずだが、「世間一般」からは「犯罪者に肩入れするなんて」という感情で、しつこい嫌がらせもされる。極めつけは息子への強烈ないじめも起こる。
息子の幼馴染の女の子が無残な殺され方をし、犯人の母親(根岸季衣)に差入を頼まれる。この犯人の北村匠海が、「悪い夏」以上の圧巻の演技で、不気味さ全開。母も主人公に言われた「犯罪者といえど権利はある」を盾にして、だんだん熱を帯びてくる異様さが際立つ。
この拘置所の面会時に交わされる会話のすれ違い、「2割の働きバチ・・・」は考えさせられる。
拘置所で強盗殺人事件の犯人(岸谷五朗)との面会を受付で求め続ける被害者家族の少女(川口真奈)の存在も物語を動かす。
彼女の背景が複雑ですさまじい。「生き続けてほしい」という少女の叫びを受け止めながら崩れ落ちる犯人。死に場所を探していた犯人にとって、守りたいものができたのか。真実を明かすことだけがすべてではないということか。
この少女を演じた川口真奈、映画出演は初の様子。これからが楽しみ。
主人公の葛藤を乗り越えていく成長物語。肝っ玉母ちゃんと、「自分が弱いばかりにいじめられたんだ」と父を守ろうとする息子、主人公に仕事を与え一家を見守り続ける伯父。この家族愛も泣かせる。
若い男を追いかけまわす主人公の母のくずっぷり、名取裕子がお見事。
黙々と主人公一家を見守る伯父の寺尾聡が暖かい。久しぶりの主演作「父と僕の終わらない歌」も期待でいっぱい。
主人公を演じた丸山隆平の俳優としての大きな成長ぶりを見られたのがよかった。
8年前の「泥棒役者」は面白かったし、アイドルとして見かける人柄がそのままあふれていた。関ジャニ(現スーパー∞)の他メンバーがそれぞれ癖の強い役で活躍している中、特別ファンということでもないが、彼についてもちょっと楽しみができたかな。
エンドロール後に、後日談が描かれている。お見落としなく!!!
希望になるのか、はたまた「何も変わってない!」になるのか、解釈はそれぞれ。
(アロママ)
監督:古川豪
脚本:古川豪
撮影:江崎朋生
出演:丸山隆平、真木よう子、北村匠海、岸谷五朗、根岸季衣、名取裕子、寺尾聡
主人公(丸山隆平)自身がかつて収監された経歴をもち、その体験から差入代行業の必要性を感じて、伯父(寺尾聡)の店を継承し、妻と小学生の息子とともにつつましく暮らしている。
気丈な妻(真木よう子)は「あんたの仕事は必要なの!」と夫を励まし続ける。主人公の実母(名取裕子)には夫に内緒でお金を工面し、「余計なことをするな」と派手な夫婦げんかも絶えない。そのたびに伯父がそっと息子(三浦綺羅)を守ってくれる。
職業に貴賤はないはずだが、「世間一般」からは「犯罪者に肩入れするなんて」という感情で、しつこい嫌がらせもされる。極めつけは息子への強烈ないじめも起こる。
息子の幼馴染の女の子が無残な殺され方をし、犯人の母親(根岸季衣)に差入を頼まれる。この犯人の北村匠海が、「悪い夏」以上の圧巻の演技で、不気味さ全開。母も主人公に言われた「犯罪者といえど権利はある」を盾にして、だんだん熱を帯びてくる異様さが際立つ。
この拘置所の面会時に交わされる会話のすれ違い、「2割の働きバチ・・・」は考えさせられる。
拘置所で強盗殺人事件の犯人(岸谷五朗)との面会を受付で求め続ける被害者家族の少女(川口真奈)の存在も物語を動かす。
彼女の背景が複雑ですさまじい。「生き続けてほしい」という少女の叫びを受け止めながら崩れ落ちる犯人。死に場所を探していた犯人にとって、守りたいものができたのか。真実を明かすことだけがすべてではないということか。
この少女を演じた川口真奈、映画出演は初の様子。これからが楽しみ。
主人公の葛藤を乗り越えていく成長物語。肝っ玉母ちゃんと、「自分が弱いばかりにいじめられたんだ」と父を守ろうとする息子、主人公に仕事を与え一家を見守り続ける伯父。この家族愛も泣かせる。
若い男を追いかけまわす主人公の母のくずっぷり、名取裕子がお見事。
黙々と主人公一家を見守る伯父の寺尾聡が暖かい。久しぶりの主演作「父と僕の終わらない歌」も期待でいっぱい。
主人公を演じた丸山隆平の俳優としての大きな成長ぶりを見られたのがよかった。
8年前の「泥棒役者」は面白かったし、アイドルとして見かける人柄がそのままあふれていた。関ジャニ(現スーパー∞)の他メンバーがそれぞれ癖の強い役で活躍している中、特別ファンということでもないが、彼についてもちょっと楽しみができたかな。
エンドロール後に、後日談が描かれている。お見落としなく!!!
希望になるのか、はたまた「何も変わってない!」になるのか、解釈はそれぞれ。
(アロママ)
監督:古川豪
脚本:古川豪
撮影:江崎朋生
出演:丸山隆平、真木よう子、北村匠海、岸谷五朗、根岸季衣、名取裕子、寺尾聡