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「ひまわり ~沖縄は忘れない、あの日の空を~」 (2012年 日本映画)

2013年09月02日 | 映画の感想・批評


 「ひまわり」という題名を聞いて、自分を『映画』という素晴らしい世界に案内してくれた往年の名作を思い出した。イタリアの巨匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督がソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニという当時の2大俳優を使って描いた恋愛ものだったが、今作と共通していたのは、ひまわりの花が、戦争が引き起こした悲劇を跳ね返して、力強く、美しく咲く花として描かれていたことだ。
 今も後を絶たない米軍機の事故。中でも2004年に米軍のヘリコプターが沖縄国際大学構内という教育現場に墜落した時は驚いたが、本土復帰前の1959年にもさらに悲惨な事故が起きていた。石川市(現在のうるま市)の宮森小学校にジェット戦闘機が墜落し、児童ら17名が死亡し、200人余りが負傷したというのだ。この作品は沖縄国際大学での事故を目撃した主人公・山城良太が45年前のあの事故を思い出すところから始まる。
 忘れたくても忘れられない思い出が心の傷となり、その悲しみを内へと閉じ込めていた良太だったが、変化が現れたのは、沖縄国際大生となった孫の琉一が、ゼミの仲間とともに宮森小ジェット機墜落事件のレポート活動を始めたからだった。若者たちの熱意に動かされ、琉一たちが主催した「基地と平和を考えるピースフルコンサート」に参加した良太は、蛇皮線を弾きながら決意を語る。あの日の空を決して忘れない…と。
 主人公良太を長塚京三がしっかり沖縄の人となって熱演。今年「あまちゃん」でブレイクした能年玲奈の初々しい演技や、「三丁目の夕日」の須賀健太の成長ぶりも見もの。そして沖縄出身の映画、演劇、音楽人が大結集。エンドロールに流れる全国津々浦々から集まったたくさんの製作協力を見ると、平和を願う人たちのこの作品への意気込みが伝わってくる。
(HIRO)

監督・及川善弘
脚本・大城貞俊、山田耕大
撮影・前田米造
出演・長塚京三、須賀健太、能年玲奈、福田沙紀、金森喜祐、鈴木裕樹



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