シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

2016年ベストテン発表

2017年01月01日 | BEST


あけましておめでとうございます。
昨年中はみなさまがた多くの方々に当ブログをご愛読たまわり、まことにありがとうございました。執筆者一同なおいっそう新作映画の道案内に精進を重ねる所存ですので、ことしも相変わりませず暖かいご支援をたまわりますようお願い申し上げます。
さて、恒例の執筆陣によるベストテンの発表です。2016年に関西で劇場公開された映画は1000本あまりに昇ります。その1割を見るのも大変なことなのですが、私たちが見た数少ない作品の中からこれぞという秀作を日本映画、外国映画それぞれ10本、コメントつきで選出しました。みなさんにとって何かの参考になれば幸甚です。(健)

注記:原則として2016年1~12月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには原題、監督、製作年・製作国を入れた。日本公開題名・人名表記はキネマ旬報映画データベース、外国映画の原題・製作年・製作国はInternet Movie Database に従った。

◆Hiro
【日本映画】
1位「怒り」(李相日)
いろんな怒りが重なりあって、悲劇が生み出されて行くプロセスが面白い。モンタージュ写真を巧みに生かし、観客を惑わすところもニクい。
2位「君の名は。」(新海誠)
若者たちをいっぱい映画館に呼び寄せた功績は大。「前前前世」「なんでもないや」などの曲を提供したRADWIMPSの音楽が、今も耳に響いて鳴り止まない。
3位「ヒメアノ~ル」(吉田恵輔)
今の日本の情勢なら、こんな恐ろしい事件も現実味があると思えるところが怖い。森田剛が迫真の演技を披露。
4位「シン・ゴジラ」(庵野秀明、樋口真嗣)
現在の日本の防衛力、戦闘能力、政界が国を動かす力はこんなもんだと、脚本、編集、総監督を務めた庵野英明監督が、ゴジラの上陸を通して暗示した。さあ、これで安心できるか?!
5位「永い言い訳」(西川美和)
本木雅弘の魅力満載。そしてついにCD付きのパンフレットが登場。価格1000円は高いとみるか、お得とみるか…。まだ聞いていないが、映画の中身より気になった。
6位「オーバーフェンス」(山下敦弘)
函館の街が印象的。「フェンス」には、心の中に潜む越えられない垣根を表しているのかもしれない。そこを超えたい!!
7位「64ロクヨン/前編」(瀬々敬久)
オールスターキャストでおくる2部作の前編。1週間しかなかった昭和64年に起こった少女誘拐事件の捜査劇。なぜ後編を観る気が起らなかったのか?!
8位「母と暮せば」(山田洋次)
主演の二宮和也が各賞を総なめ。山田洋次監督が長崎の原爆投下で起きた悲劇を幻想的に表現。かねてより原爆詩の朗読を行っている母役の吉永小百合の気合いも十分。
9位「何者」(三浦大輔)
就職戦線とSNSの脅威を感じさせる今風現代劇。舞台監督でもあった三浦大輔監督の演出が冴える。
10位「海難1890」(田中光敏)
海難事故を通じて生まれた、明治時代から続く日本とトルコの友情劇。今もその繋がりがあることを再認識。


【外国映画】
1位「サウルの息子」(Saul fia、ネメシュ・ラースロー、2015年ハンガリー)
ユダヤの悲劇をリアルすぎる表現力で紹介。ラストのサウルの微笑みが意味するものは…。
2位「ハドソン川の奇跡」(Sully、クリント・イーストウッド、2016年アメリカ)
記憶もまだ新しい有名な飛行機事故を、忠実に、かつ静かな感動とともに甦らせたイーストウッド監督、やっぱりすごいとしか言いようがない。
3位「ズートピア」(Zootopia、バイロン・ハワード、リッチ・ムーア、ジャレド・ブッシュ、2016年アメリカ)
おなかがよじれるほど笑えるアニメは、「クレヨンしんちゃん」以来。登場する動物のすべてを知ってエピソードに生かしているところがいい。
4位「ルーム」(Room、レニー・アブラハムソン、2015年アイルランド・カナダ・イギリス・アメリカ)
狭くて暗い環境から生み出された希望と愛は、とてつもなく大きいものだとわかる。
5位「スポットライト 世紀のスクープ」(Spotlight、トム・マッカーシー、2015年アメリカ)
タブーとされていた宗教界の内側を暴露し、正義を貫いたジャーナリストたちの功績を描く。納得のアカデミー賞受賞作。
6位「マダム・フローレンス! 夢見るふたり」(Florence Foster Jenkins、スティーブン・フリアーズ、2016年イギリス)
メリル・ストりープとヒュー・グラントだからこそできた、笑いと感動の実話劇。音痴な老婦人がカーネギーホールを満員にした!!どうやって???
7位「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」(5 Flights Up、リチャード・ロンクレイン、2014年アメリカ)
ニューヨークに住みたくなること間違いナシ。モーガン・フリーマンとダイアン・キートンが初共演ながら絶妙の夫婦愛を展開。
8位「ブリッジ・オブ・スパイ」(Bridge of Spies、スティーブン・スピルバーグ、2015年アメリカ・ドイツ)
トム・ハンクス渾身の演技。真実に基づくスパイ交換劇。監督はあのスティーヴン・スピルバーグ。まだまだ過去の人ではありません。
9位「007 スペクター」(Spectre、サム・メンディス、2015年イギリス・アメリカ)
007はやっぱりこの人、ダニエル・クレイグ!!歴代ボンドの中でもかっこよさはピカイチ!!交代はまだ早いよ。
10位「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(Star Wars: Episode VII - The Force Awakens、J・J・エイブラムス、2015年アメリカ)
年末にキャリー・フィッシャーが亡くなった。更に実の母親のデビー・レイノルズまで・・・。このシリーズ、これからどうなる?!



◆kenya
【日本映画】
1位「ハッピーアワー」(濱口竜介)
37才の女性4人の物語。離婚、仮面夫婦、不倫等々。5時間17分が短く感じるくらい、物語にのめり込んだ。まだまだ、続きが観たい気がした。プロの演技者ではないのに、スイスの映画祭で演技賞を受賞。それ程、監督(映像)に力があった。
2位「モヒカン故郷に帰る」(沖田修一)
親が子を想う心。これ程、一途なものがあるのだろうか。痴呆が入った父親が大人になった息子に、息子の名前を付けた理由や少年時代を語るシーンは感動した。
3位「嫌な女」(黒木瞳)
黒木瞳初監督作品。オーソドックスに仕上がっていて、驚いた。今後の期待を含めて、3位にした。
4位「リップヴァンウィンクルの花嫁」(岩井俊二)
綾野剛が良かった。今年は、「64ロクヨン/前編・後編」「日本で一番悪い奴ら」どれも素晴らしかった。これからも楽しみだ。
5位「SCOOP!」(大根仁)
二階堂ふみの「最低で最高の仕事ですね」のセリフに思わず、頷いてしまった。仕事ってそんな部分ありますよね。仕事への拘り、恋愛、麻薬問題等々のテーマをうまく織り交ぜていて、うまく仕上がっていたと思う。リリー・フランキーも良かった。
6位「海よりもまだ深く」(是枝裕和)
「海街diary」に続いて、基本に忠実な作品であった。俳優陣も安定していて、安心して観れた。
7位「64ロクヨン/前編」
前編の警察広報官とマスコミとの確執が解かれていく過程に惹かれた。後編は一変して、違うタイプの映画だった。前編が圧倒的に良かった。
8位「だれかの木琴」(東陽一)
単純に言えば、ストーカーの話。ストーカーする側(常盤貴子)とされる側(池松壮亮)との接点は、美容院。美容師(池松壮亮)が髪にハサミを入れるシーンは、エロティックで謎めいていて、映画全体を表現しているようで素晴らしかった。そのシーンだけでも観る価値があると思う。
9位「湯を沸かすほどの熱い愛」(中野量太)
余命2か月を宣告された宮沢りえが、死を迎えるまでにやらなければいけないことを、命を懸けて、実行していく勇気溢れる映画だった。ラストシーンも良かった。
10位「母と暮せば」
基本に忠実な教科書のような映画だった。このタイプの映画が最近少ないように思う。それで、1票入れた。そういう意味では、「家族はつらいよ」も似通っているかも。ただ、長崎の原爆を扱ったことでこちらを上位にした。

【外国映画】
1位「ボーダーライン」(Sicario、ドゥニ・ビルヌーヴ、2015年アメリカ)
自分の原点はどこにあるのか?アクションを売りにしているが実は人間を鋭く深く描いている。更に、ラストシーンに、麻薬問題の神髄が描かれているように思う。音楽も映像もどこを切り取っても、不気味な味があり、「映画」って感じだった。
2位「ザ・ウォーク」(The Walk、ロバート・ゼメキス、2015年アメリカ)
ただ単なる高所スリル映画ではなく、主人公が綱渡りを達成するまでの過程をじっくり描いていて良かった。生きる希望をくれた映画である。
3位「ブラック・スキャンダル」(Black Mass、スコット・クーパー、2015年アメリカ)
今までの演技から一枚脱皮したジョニー・デップが良かった。静かなる怒りを体現していた。「パイレーツオブカリビアン」と同一人物とは思えなかった。
4位「リリーのすべて」(The Danish Girl、トム・フーパー、2015年イギリス・アメリカ・ドイツ・デンマーク・ベルギー)
エディー・レッドメーンの手術前のあの一言。「女性」になる喜びと覚悟が感じられ、身震いした。ラストシーンもこの映画を的確に表していた。一昨年前のアカデミー賞受賞作より、素晴らしかったと思う。
5位「山河ノスタルジア」(山河故人、ジャ・ジャンクー、2015年中国・日本・フランス)
離れていても、母が我が子を想う気持ちがよく表れていた。こういった映画の公開期間が短いのが残念だ。
6位「キャロル」(Carol、トッド・ヘインズ、2015年イギリス・アメリカ・オーストラリア)
ケイト・ブランシェットが良かった。「人」を大きく包んでしまう懐の大きさを演技で感じた。
7位「ハドソン川の奇跡」
機長としての経験とカンで、乗客乗員全員の命を救った飛行機事故後をクローズアップして、「人」として何が大切なのかを訴えかける映画だった。
8位「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(Trumbo、ジェイ・ローチ、2015年アメリカ)
自分の信念を貫く強さと不安と殺されるかもしれないという緊張感とがうまく表現されていた。言いたいことが言える時代に生まれて幸せと感じた。
9位「ヘイトフル・エイト」(The Hateful Eight、クエンティン・タランティーノ、2015年アメリカ)
タランティーノらしい押しが強く、グロテスクな映画だった。でも、心地よい。不思議な監督である。アカデミー賞助演女優候補になったジェニファー・ジェイソン・リーも良かった。
10位「ニュースの真相」(Truth、ジェームズ・ヴァンダービルト、2015年アメリカ・オーストラリア)
報道の情報源は真実なのか?これは報道番組だけではなく、何事にも通じるものである。何を信じ、何をどう発信していくのか?実話がベースとのこと。主人公達のこの事件後の行動(テロップにて)に、どれだけ報道することに命を懸けていたのかにも心打たれた。


◆健
【日本映画】
1位「怒り」
猟奇的な凶悪犯罪の容疑者が整形手術をして潜伏しているというフリがあって、素性の知れない3人の若者のエピソードが並行して語られる。ミス・ディレクションにまんまと騙されてしまった。
2位「64 ロクヨン 前編、後編」
キネマ旬報に苦言を申し立てたいのだがこの手の作品を前編、後編ふたつの作品として評価するのはいかがなものか。特にミステリは事件編と解決編が不可分一体のものであり、「ゴッドファーザー」パート1、パート2とは意味が違うのである。この映画は力強く群像劇としても優れていた。
3位「セトウツミ」(大森立嗣)
今どきの高校生の男の子ふたりが川べりで放課後のひとときを他愛ない会話で過ごすというただそれだけの話。ところが、ふたりの逢瀬のような出会いにワクワク感があって、結構はまってしまうのだ。
4位「だれかの木琴」
とても80歳の監督が撮ったとは思えない瑞々しい作品。しかも、不倫と想像させておいて実はほんのプラトニック・ラブ、擬似恋愛の域を出ないという物語をかくもスリル満点に描いた演出力がすごい。
5位「クリーピー 偽りの隣人」(黒沢清)
新居に越してきた三人家族を待ち受けていたのは奇妙な隣人であった。得体の知れない粘液質のアブノーマルな隣人を香川照之が怪演する。黒沢にはもっとこういうものを撮って欲しい。
6位「リップヴァンウィンクルの花嫁」
久しぶりに見る岩井ワールドの華麗な映像に酔いしれた。映画的感性に満ち溢れた作品。黒木華を実に可愛く魅力的に撮っているのも見どころだ。
7位「淵に立つ」(深田晃司)
町工場を営む夫婦の三人家族。そこで働いていたという前科者がふらりと戻ってきて再び住み込みとして働くのだが、やがて男は忽然と姿を消すのだ。後半が衝撃的。
8位「日本で一番悪い奴ら」(白石和彌)
ロマンチックな映画よりこういう映画が好きな私としては楽しく見せてもらった。白石は今後に期待する逸材だと思う。
9位「永い言い訳」
スランプで書けない作家が浮気している間に妻が旅行先で事故死する。妻との間には隙間風が吹いていて涙も出ない。男の本性というかダメ男を描かせてはこの人(西川)の独壇場だ。
10位「ヒメアノ~ル」
これもまた犯罪映画の佳作である。「クリーピー」と共通するサイコキラーを森田剛が熱演。

【外国映画】
1位「スポットライト 世紀のスクープ」
事件を追う側に徹してドキュメンタリタッチで最後まで押し通したところがいい。つまり神の視点ではなく、あくまで真実を追及し正義の実現を企図する記者たちの視点で貫かれているところがミソだ。
2位「ブリッジ・オブ・スパイ」
東西冷戦時代の諜報合戦。捕らえたスパイの交換交渉に狩り出された敏腕弁護士が家族にも内緒で極秘任務を遂行する。ラストが後味よくてスピルバーグらしいと思わず微笑んでしまった。
3位「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」
赤狩りが猛威を振るう中、ハリウッドで徹底的に干された反骨の脚本家がその才能ゆえに友人の助けや映画仲間のコネで名作脚本を連打してオスカーを得る。そっくりさんの登場にニンマリさせられた。
4位「ハドソン川の奇跡」
30分ほどの静かなドラマ展開のあと、後半は堰を切ったようにまっしぐら。そのドラマトゥルギーというか構成力に脱帽した。それにしても老いを感じさせないイーストウッドは怪物である。
5位「キャロル」
パトリシア・ハイスミスの自伝的小説。百貨店の売り子に一目ぼれした資産家の妻の愛の煉獄を描いて情熱的だ。それを象徴するような真っ赤な色調が全編を通して貫かれる。
6位「ブルックリン」(Brooklyn、ジョン・クロウリー、 2015年イギリス・カナダ・アイルランド)
アイルランドの貧しい一家に育った娘が最愛の母と姉を残して希望を胸に単身アメリカへ渡る。故郷で彼女を待つ良家の御曹司と新天地で出会った下層のイタリア移民の若者との相克!いい話だ。
7位「手紙は憶えている」(Remember、アトム・エゴヤン、2015年カナダ・ドイツ)
アウシュヴィッツで親族を殺された生存者がひそかに復讐を誓って、米国に逃亡したナチの残党を探し出し正義の鉄髄を下す・・・と見せておいて、大どんでん返しの衝撃のラストには唖然。
8位「シークレット・オブ・モンスター」(The Childhood of a Leader、ブラディ・コーベット、2015年イギリス・ハンガリー・フランス)
まるで天使のような金髪の美少年に振り回される周囲の大人たち。映画は整然と、粛々と、静謐と流れて行くのだが、その演出力、流麗なキャメラワーク、眼を奪う美術に只者ではない気迫を感じた。
9位「ヘイトフル・エイト」
よくもまあこれだけ曲者役者を揃えたものだが、とりわけジェニファ・ジェイソン・リーの怪演には笑ってしまった。最後に姿を現すチャニング・テイタムもけっこうおかしかった。
10位「ヴィクトリア」(Victoria、セバスチャン・スキッパー、2015年ドイツ)
140分の長丁場をワンカットで連続撮影するという快挙を成し遂げた。しかも、カーチェイスありの野外ロケなのに、ほとんどアドリブで撮ったというから驚きだ。


2016年度上半期ベスト5発表

2016年07月21日 | BEST
 恒例により当ブログ執筆者による2016年度上半期ベスト5の発表です。各自のベスト5を参考に今後の鑑賞ガイドとしてください。併せて執筆者のプロフィール(①好きなジャンル、②苦手なジャンル、③好きな監督、④好きな女優、⑤好きな男優、⑥オールタイムでお薦め作品この1本、⑦その他何でも自己PR)を掲載しました。(健)

注記:2016年1~6月に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには原題、監督、製作年・製作国を入れた。タイトル、人名表記はキネマ旬報データベースに従った。


◆Hiro
【日本映画】今年は本当に見ていない!!見たい!と思う作品が少ないのか、それとも映画を観る意欲が薄れてきているのか…。何とか5本を選びました。

1位「ヒメアノ~ル」(吉田恵輔)
ムロツヨシのちょっと危ない先輩ぶりが最初から目に留まるが、それ以上に危ない旧友がいて、お人よしの濱田君が振り回される。期待以上の怖さにKnock out!!
2位「64-ロクヨンー前編」(瀬々敬久)
佐藤浩市をはじめ、オールスターキャストの演技合戦を見ているだけで面白い。新聞記事のようなレイアウトのパンフレットも出色。で、後編はどうなの???
3位「母と暮せば」(山田洋次)
戦後70年記念作品。吉永小百合は確か昭和20年生まれのはずだけど・・・。まだ十分「母」役でいけるなんて、ある意味すごい。広島を訪れたオバマ大統領、今度は長崎もお忘れなく。
4位「海難1890」(田中光敏)
日本とトルコって、こんなに仲がいいんですよ!!人種や国、宗教などで争うなんて、人間が本来求むべき姿ではないはず。さて、「イスラム国」を名乗る人たちと仲良くするにはどうすればいいのだ???
5位「の・ようなもの のようなもの」(杉山泰一)
森田芳光監督デビュー作へのオマージュ。35年たっても変わらぬ思いを、森田作品を支えたスタッフたちが集結してほんわか~とお届け。松山ケンイチ、北川景子もいい味出している。


【外国映画】いろいろなジャンルの作品が並びました。さすがに外国映画はバラエティに富んでいます。こちらは満足。

1位「サウルの息子」(Saul fia、ネメシュ・ラースロー、2015年ハンガリー)
初めて知ったゾンダーコマンドのこと、一生忘れられない映像の数々。戦後70年たった今、映画で描かれることの深い意義を感じた。
2位「ズートピア」(Zuutopia、バイロン・ハワード&リッチ・ムーア、2016年アメリカ)
先日テレビでナマケモノがリスに餌を横取りされるところを紹介していた。あのスピードはホントだったんですね。出てくる動物をしっかり研究してキャラに生かしています。
3位「ルーム」(Room、レニー・アブラハムソン、2015年アイルランド・カナダ)
7年間『部屋』で暮らしていた母子が、脱出したその先にあるものは??「こんにちは」と「さようなら」が上手く使われていた。
4位「スポットライト 世紀のスクープ」(Spotlight、トム・マッカーシー、2015年アメリカ)
この作品がアカデミー作品賞をとったところに、アメリカ映画界の良心がうかがえる。神父たちの苦悩ももう少し掘り下げてほしかったが…。
5位「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」(5 Flights Up、リチャード・ロンクレイン、2014年アメリカ)
モーガン・フリーマンとダイアン・キートンの夫婦がとってもいい雰囲気。ニューヨークに似合っている!!人生のリノベーションも確かに必要ですね。元気なうちに・・・。

【プロフィール】
①スリラー・サスペンス、社会派、アート系、アニメ、ラブコメディ
②アイドル映画、ホラー映画
③クリント・イーストウッド、ジョージ・ミラー、チャン・イーモウ、大島渚、森田芳光、周防正行、呉美保、李相日、是枝裕和、黒澤明
④ジュリア・ロバーツ、メグ・ライアン、黒木華、安藤サクラ、松たか子、薬師丸ひろ子
⑤ロバート・レッドフォード、スティーブ・マックイーン、ジェームス・ディーン、松田龍平、加瀬亮、役所広司
⑥「エデンの東」(若いころに見た名作は、何年たっても忘れられません。主題曲が流れると思わず…。)
⑦歳と共にだんだん字幕やエンドタイトルの文字が見えにくくなり、映画を見ることに危機感を感じていましたが、5月に右目の白内障手術を受けたら、よく見えるようになってほっとしています。眼科の先生に感謝!!目や耳は大事にしたいですね。


◆kenya
【日本映画】

1位「ハッピーアワー」(濱口竜介)
5時間17分が短く感じるくらい、物語にのめり込んだ。まだまだ、続きが観たい気がした。
2位「モヒカン故郷に帰る」(沖田修一)
親が子を想う心。これ程、一途なものがあるのだろうか。
3位「リップヴァンリンクルの花嫁」(岩井俊二)
綾野剛が良かった。これからも楽しみだ。
4位「海よりもまだ深く」(是枝裕和)
「海街diary」に続いて、基本に忠実な作品であった。俳優陣も安定していて、安心して観れた。
5位「64 ロクヨン 前編/後編」
警察広報官とマスコミとの確執が解かれていく過程に惹かれた。


【外国映画】

1位「ボーダーライン」(Sicario、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、2015年アメリカ)
自分の原点はどこにあるのか?アクションを売りにしているが実は人間を鋭く深く描いている。ラストシーンに、麻薬問題の神髄が描かれているように思う。
2位「ザ・ウォーク」(The Walk、ロバート・ゼメキス、2015年アメリカ)
ただ単なる高所スリル映画ではなく、主人公が綱渡りを達成するまでの過程をじっくり描いていて良かった。生きる力をくれる映画である。
3位「ブラック・スキャンダル」(Black Mass、スコット・クーパー、2015年アメリカ)
今までの演技から一枚脱皮したジョニー・デップが良かった。静かなる怒りを体現していた。
4位「リリーのすべて」(The Danish Girl、トム・フーパー、2015年イギリス)
エディー・レッドメーンの手術前のあの一言。「女性」になる喜びと覚悟が感じられ、身震いした。ラストシーンもこの映画を的確に表していた。
5位「キャロル」(Carol、トッド・ヘインズ、2015年アメリカ)
ケイト・ブランシェットが良かった。

【プロフィール】
①スリラー・サスペンス、犯罪もの、社会派、人間ドラマ
②ファンタジー、アメコミもの、ミュージカル
③チャン・イーモウ、クリント・イーストウッド、パトリス・ルコント、北野武
④ケイト・ブランシェット、コン・リー、ミシェル・ファイファー、ミラ・ジョボビッチ
⑤クリント・イーストウッド、マット・デイモン、ジョージ・クルーニー
⑥「Uボート」(1981年、ドイツ)
⑦ハリウッド映画からマニアックな映画まで「観たい!」と思った映画は幅広く観ます。「観たい!」と思う基準は、キャスト・スタッフに加え、予告編の印象も大きく、予告編は煽るように出来ている為、観たい映画が増える一方です。しかも、「映画は映画館で観たい」と思っているので、見逃してしまうことも多く、悩みの種となっております。中学生の頃から映画を観初め、音楽にも興味を持ち、学生時代は、その両方に埋もれて毎日を過ごしておりました。会社勤めが始まってからも、映画は観続け、一時、中断致しましたが、2年前から時間の許す限り、映画館に通っております。感動出来る映画に出会えた時は、人生が豊かになったように感じられ、是非、その感動をたくさんの方にお伝え出来れば幸いかと思っております。



◆健
【日本映画】

1位「64 ロクヨン 前編/後編」
瀬々監督は優れた職人的技量と映像作家としての立ち居地を併せ持って独自の世界を構築してきた人だが、前者の才能が具現化したのがこの迫力満点の刑事映画である。群像劇を見事に裁いた力量に目をみはる。
2位「クリーピー 偽りの隣人」(黒沢清)
東京芸大教授の黒沢監督は理論家でありながら娯楽映画に長けたあたりはどこかマーティン・スコセッに通じる才能を感じる。香川照之の余人をもって代え難いサイコパス・キャラもさることながら、演出の切れがいい。
3位「リップヴァン ウィンクルの花嫁」
久しぶりの岩井ワールドである。何よりも流麗な映像美に目を奪われる。黒木華もよく健闘した。3時間に及ぶ大力作だ。
4位「日本で一番悪い奴ら」(白石和彌)
北海道警察の組織的な不正を暴いた実録ものである。柔道の腕を買われて特別枠で警察官採用に合格した若者がやがて悪徳警官の道をまっしぐら。私がよく知らない傍役陣がそれぞれの役柄によくはまっていてリアリティを感じさせる。そうして綾野剛の怪演!白石の代表作となるだろう。
5位「葛城事件」(赤堀雅秋)
舞台の演出家として頭角を現した赤堀が自身の戯曲を自らメガホンを握り、家族の破綻というきわめて現代的で重たいテーマを映画化した。傍目には幸せそうな4人家族の関係が徐々に修復不可能なところまで崩壊して行くさまは殆ど救いがない。堅実で適度に厳格な父親を演じた三浦友和がいい。


【外国映画】

1位「スポットライト 世紀のスクープ」
実話の映画化で結末がわかっているにもかかわらず、ここまでハラハラドキドキさせる才腕に脱帽せざるを得ない。記者がチームプレイで強大な教会勢力と対峙し、その隠蔽体質に斬りこむ姿がりりしい。
2位「ブリッジ・オブ・スパイ」(Bridge of Spies、スチーヴン・スピルバーグ、2015年アメリカ)
これもまた実話。相変わらずのスピルバーグのうまい話術には「あざとい」と非難する向きもあるが、私はそのプロフェッショナルな職人芸に惜しみない拍手を送りたい。よっ、大統領!
3位「キャロル」
赤を基調とした色調、端正な演出、ふたりの女優のうっとりとするような演技、そうして女同士のねっとりとした禁断の逢瀬。アメリカのミステリ作家パトリシア・ハイスミス女史の自伝的小説を映画化して秀逸だ。
4位「ヘイトフル・エイト」(The Hateful Eight、クェンティン・タランティーノ、2015年アメリカ)
タランティーノは役者を使うのがうまい。とくに、演技派女優ジェニファ・ジェイソン・リーが薄汚れて頭のいかれたお尋ね者に扮するのは見ものである。サミュエル・L・ジャクソンやカート・ラッセルといった曲者スターが楽しそうに演じているのもいい。
5位「ヴィクトリア」(Victoria、ゼバスチャン・シッパー、2015年ドイツ)
映画を知る者ほど信じられない方法で撮られている。夜更けから明け方までの140分間を一切カット割りせずに、全編ロケでアドリブとワンテイクによって撮られた驚くべき一編。ベルリンの町に繰り出した若者たちのドンチャン騒ぎ。ところが、突然堰を切ったように恐怖、スリル、悲劇へと変転する。

【プロフィール】
①スリラー・サスペンス、犯罪もの、社会派、アート系、実験映画
②恋愛映画、SF、冒険・ファンタジー、アニメ
③F・フェリーニ、A・ヒッチコック、B・ワイルダー、今村昌平、寺山修司etc
④メリル・ストリープ、マリサ・トメイ etc
⑤ハンフリー・ボガート、ジェームス・キャグニーetc
⑥「西鶴一代女」(溝口健二の傑作。ぜひ見てください)
⑦苦手なジャンルでも好きな作品はいっぱいあります。自然な表現もよいけれど、むしろ技巧的でスタイリッシュな映画が好きです。映画史とか映画理論に関心があります。アメリカ映画が得意ですが、ほんとうはイギリスやイタリアの映画が好みです。日本映画のよさがわかり出したのは中年になってから。フランス映画には苦手感があります。

2015年ベストテン発表

2016年01月01日 | BEST
 恒例の執筆者ベストテンを発表いたします。HIROさん、わたくしに加えて、新年から新たに執筆陣に加わっていただくこととなったkenyaさんにも今回より参加していただきました。
 年間で日本映画400本、外国映画500本、合わせると900本もの作品が京阪神で劇場公開されました。え?そんなに、と驚かれた読者も多いと思います。その膨大な上映作品の中から我々が見ている作品も限られてきますが、さらに10本だけ選ぶことはかなりたいへんなことです。
 また、当ブログで紹介している作品など月に3本ずつですから全体の5%にも満たないのです。紹介できなかったけれど宝石のように輝くすばらしい作品が昨年もあまたあったことを申し添えて、われらがベストテンをとくとご覧ください。(健)

注記:2015年に京阪神で劇場公開された作品を対象とした。日本映画作品名のあとの括弧書きには監督、外国映画作品名のあとには原題、監督、製作年・製作国を入れた。


HIROさんの2015年ベストテン
【日本映画】
1位「百円の恋」(武正晴)
上半期と変わらずの第1位。安藤サクラの変身ぶりに脱帽です。
2位「恋人たち」(橋口亮輔)
ラストの東京の青空と、黄色いチューリップに希望を見つけ、涙しました。
3位「海街diary」(是枝裕和)
鎌倉と湘南の海が印象的。そこにあの4姉妹が生きています。
4位「あん」(河瀬直美)
あのおいしそうなどら焼き、永瀬店長の店で食べてみたい。
5位「バクマン。」(大根仁)
週連載するマンガ家の大変さを学びました。
6位「きみはいい子」(呉美保)
今の小学校の様子を端的にとらえていて面白い。
7位「神様はバリにいる」(李闘士男)
バリ島って、ほんとに住みやすくて、いいところみたいですね。
 今年の日本映画はやや不作でしょうか。これ以外に見ていないのがつらいところですが、上にあげた作品は粒ぞろいでした。

【外国映画】
1位「セッション」(Whiplash、デイミアン・チャゼル、2014年アメリカ)
今年一番の衝撃作。あのバチさばきには震えます。
2位「パレードへようこそ」(Pride、マシュー・ウォーチャス、2014年イギリス)
イギリスの炭鉱町の面々と、ゲイの若者たちのつながりが何とも愉快。
3位「おみおくりの作法」(Still Life、ウベルト・パゾリーニ、2013年英=伊)
市民のためにコツコツと働く主人公が報われるラストは、何とも哀しく美しい。
4位「マッドマックス・怒りのデスロード」(Mad Max: Fury Road、ジョージ・ミラー、2015年オーストラリア)
シャーリーズ・セロンって、こんな役もできるんだ。さすが役者根性です。
5位「マイ・インターン」(The Intern、ナンシー・マイヤーズ、2015年アメリカ)
定年後、ロバート・デ・ニーロのようにかっこよく生きたいと思うのですが・・・。
6位「アメリカン・スナイパー」(American Sniper、クリント・イーストウッド、2014年アメリカ)
戦地で多くの住民を殺しながら、家族と携帯で話す主人公。ここでもう出来上がっています。
7位「バードマン・あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)、アレハンドロ・G・イニャリトゥ、2014年アメリカ)
やっぱりバードマンは飛んでいてほしい。
8位「キングスマン」(Kingsman: The Secret Service、マシュー・ヴォーン、2014年イギリス)
『威風堂々』の曲に合わせて人間花火を打ち上げるシーンが何とも愉快で切ない。
9位「ゴーン・ガール」(Gone Girl、デヴィッド・フィンチャー、2014年アメリカ)
ラストの微笑みが女性の怖さを物語ります。
10位「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(Star Wars: The Force Awakens、J・J・エイブラムス、2015年アメリカ)
何もかもが第1作(エピソード4)と結びついてくる。3人の主要演者がよく出演を承諾したなと感心。
 今年は外国映画が充実していました。日本映画に流れていたお客さんも戻ってきているようですね。


kenyaさんの2015年ベストテン
【日本映画】
1位「海街diary」
鎌倉を舞台にした4姉妹の物語。その4姉妹はもちろんのこと、出番が少ないが、樹木希林の演技に圧倒された。画面に負けていない。大きなスクリーンであの演技が観れるだけでも価値がある。素晴らしい。出番の少なさと存在感の大きさが反比例する意味では、大竹しのぶも収穫だった。女優陣の演技合戦を楽しめた。
2位「あん」
過去の河瀬直美の印象は良くなかったが、初の原作ものということで、彼女のアクの強さが丁度よい具合に柔和され、肩の力が抜けて、一般人にも理解出来る(=商業映画)に大変身。もちろん、その理解を助けたのは、主役二人の演技だろう。1位に続き、またもや樹木希林に乾杯。
3位「きみはいい子」
呉美保監督は初めて観た。人間の弱い部分を丁寧に描写し、また、それを悲観せず、
少しでも前向きに生きていこうする人間臭さがよく表れていたように感じた。悩んだり、泣いたりして、地味だけどコツコツ生きている人間をじっくり丹念に描こうとする監督の力量が素晴らしい。
4位「駆込み女と駆出し男」(原田眞人)
1位、2位に続き、またもや樹木希林である。特に、今まで見せていた温厚な態度とは一変し、冷徹な対応をする場面は、多くを語らずに、すべてを伝える、人と人との間合いや息遣いまでもが、表現されているように感じ、鳥肌がたった。今年は、樹木希林に尽きる。
江戸の当時の時代背景を、今の時代合わせて軽妙に描く監督の力量も鮮やかだった。
5位「龍三と七人の子分たち」(北野武)
久し振りに映画館で笑った。主人公達はヤクザだが、素直な人達だと思う。根は素朴で純情なので、何事にも真っすぐに向き合ってしまい、他人とぶつかってしまい、一般社会では生活出来なくなり、ヤクザの世界しかなかったのではないか。ビートたけしの皮肉だろうか。個人的には、ヤクザ映画としては、「アウトレイジ」「アウトレイジビヨンド」の方が良かったが。
6位「繕い裁つ人」(三島有紀子)
悩みながらも細々と、でも確実に自らの人生を歩む。地に足を付けている。そんな人が主人公である。そんな生き方に憧れる。少しでも近づきたいと思う。心に温かい光を与えてくれる映画である。
7位「ジョーカーゲーム」(入江悠)
深田恭子が好きな人の為の映画である。よって、内容には特に関心はない。

【外国映画】
1位「フォックスキャッチャー」(Foxcatcher、ベネット・ミラー、2014年アメリカ)
男優3名の演技合戦。デュポンが狂気じみていく様は、異様かつ恐怖。人間の複雑な感情が細かい演技にも表れていたし、風景の移り変わりで物事の進行を表現する技法が映画らしいと感じた。
2位「妻への家路」(歸来、チャン・イーモウ、2014年中国)
チャン・イーモウとコン・リーのコンビ復活。これは観るしかないでしょ。コン・リーの演技には引き込まれる。自然で嫌味がない。変な力みがない。 是非、これからもコンビを続けてほしい。
3位「セッション」
全編を通じての子弟関係のドラマに圧倒された。何度も予想を覆された。ラストは想像を超えた。すべてが尋常ではなかった。その迫力に圧倒された。また、原題との違いに驚いた。久々に外国映画を日本でどのように動員を増やすのか、配給会社の知恵が感じられた。
4位「サンドラの週末」(Deux jours, une nuit、ジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ、2014年ベルギー=仏=伊)
海外では当たり前(?)の解雇から始まり、日本の行く末を暗示している(?)ように恐ろしく感じながら観た。ラストシーンのすがすがしさが最高。主演のマリオン・コティヤールはもちろんのこと、脇役も実力を持った俳優が多く、ラストシーンの感動に繋がっている。
5位「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(Mission: Impossible - Rogue Nation、クリストファー・マッカリー、2015年アメリカ)
予想以上に違和感なく観れたので、上位に入れた。スター出演でシリーズものなので、不死身度合いが半端ない状況ではあったが、トム・クルーズ自身が製作にも関わり、完成させるぞ!アクションを見せるぞ!楽しませるぞ!という意気込みが伝ってきた。駅やレストランのシーン等も編集もうまかった。これもその意気込みか?次回作も楽しみ。
6位「ナイトクローラー」(Nightcrawler、ダン・ギルロイ、2014年アメリカ)
ネット依存社会になり、人と話をするよりも、パソコンを見ている時間の方が長いようになってくると、このような人間が生まれてくるのだろうか。ニュースで流れる映像を見ただけでは、どんなに残酷なシーンでも、痛みを感じている気分になるだけで、実際の痛みは感じない。インターネットで情報を入手することが普通という若者は主人公のどこが悪い?と言い出すのだろうか。 恐ろしや。
7位「あの日のように抱きしめて」(Phoenix、クリスティアン・ペッツォルト、2014年ドイツ)
愛していた人が振り向いてくれない寂しさに耐える主人公。長くつらい時間に別れを告げた時に、新しい人生がスタートした。ラストシーンは「諦め」ではなく、「新たな旅立ち」と理解した。女の人は強い。
8位「フレンチアルプスで起きたこと」(Turist、リューベン・オストルンド、2014年スウェーデン=デンマーク=仏=ベルギー)
この映画も女の人が強い。半端なく強い。 ラストシーンで男にも華を持たせるが、だからといって、女の人の強さは変わらない。とても怖い映画だった。
9位「人生スイッチ」(Relatos salvajes、ダミアン・ジフロン、2014年アルゼンチン=スペイン)
6つのオムニバスになっている。どの話も軽妙でクスッと笑わせ、じっくり考えさせられる。特に、1話「おかえし」と3話「エンスト」は特に面白かった。
10位「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(The Imitation Game、モルテン・ティルドゥム、2014年英=米)
何の為に、誰の為に暗号を解読するのか?この問いを主人公は片時も忘れていなかった。暗号解読の「サスペンス」ものではなく、戦争の恐ろしさや人間の本源に触れる「人間ドラマ」として観れた。


健の2015年ベストテン
【日本映画】
1位「恋人たち」
三つのエピソードが並行して語られ、それぞれを微妙に絡み合わせて人生の機微を抽出してみせる橋口監督の技法に、ほとんど無名に近い俳優たちが応えた奇跡的な一編。
2位「海街diary」
たたずまいの正しい映画である。「恋人たち」が橋口亮輔の最高傑作なら、この映画は是枝の最高傑作だといってもいい。
3位「百円の恋」
どうしようもないぐうたら女がボクシングジムに通う男に恋をして自らもジムに通いはじめる。精神の高揚が肉体の改造として現される手法がすごい。
4位「さよなら歌舞伎町」(廣木隆一)
新宿歌舞伎町の風俗を描いて飽きさせない。市井に生きる底辺の人々の活力というか、貪欲な生活力を生き生きと描いた。
5位「ピース オブ ケイク」(田口トモロヲ)
役者出身の監督らしく俳優をうまく使っているなという印象をもった。
6位「野火」(塚本晋也)
既に映画史的な評価が固まっている市川崑版の名作とはこれが同じ原作かと疑うほど隔たっていて、オリジナリティを感じさせる力作だ。
7位「駆込み女と駆出し男」
軽佻浮薄な登場人物を描いていながら、重厚でかつ丁寧な仕事ぶりに感心した。「日本のいちばん長い日」に比べて人物がよく書き込まれていて格段によくできた作品である。
8位「イニシエーション・ラブ」(堤幸彦)
この手の映画は如何に観客を上手にだますか、ラストのどんでん返しでしてやられた観客が爽やかな心地を残して帰れるか、にかかっているといってもいい。うまいと思った。
9位「あん」
あの河瀬直美にこんな正統な映画が撮れるんだと言った人が周囲にたくさんいて思わず頷いたが、たしかに意外な秀作である。
10位「ソロモンの偽証 前篇・事件、後篇・裁判」(成島出)
前篇で不可思議な謎が提示され、後篇で合理的な解決が示される。「イミテーションラブ」とは対照的な本格ミステリの正統を行く佳作として評価したい。

【外国映画】
1位「セッション」
名門音楽学校の鬼教師がドラマーを目指す若者を徹底的にしごいて、とうとう挫折させるという物語の裏に、鬼教師の過去に何があったのか想像を絶する何かが垣間見える。
2位「パリよ、永遠に」(Diplomatie、フォルカー・シュレンドルフ、20141年仏=独)
ヒトラーのパリ爆破命令を阻止しようとするスウェーデン領事。粛々と命令を実行しようとするドイツ軍司令官。ふたりの駆引きと激論が濃密なドラマを構成する。
3位「パレードへようこそ」
サッチャー時代のイギリスで炭鉱労働者のストライキにゲイ解放運動の若者たちが応援に駆けつける。実話の映画化なのにウェルメイド・プレイのような結末に感動した。
4位「おみおくりの作法」
身寄りのない遺体を誠実に丁寧に処理する役所の官吏が決まりきった動作で判で押したような毎日を送るおかしさ。ビターエンドが英国映画らしい秀作。
5位「裁かれるは善人のみ」(Leviafan、アンドレイ・ズビャギンツェフ、2014年ロシア)
バルト海に面したロシアの小さな町で土地収用をめぐる争いや家族間の確執、妻の不倫などが北海の荒波のごとく押し寄せて引いて行く。ロシアの現在を描いて痛切だ。
6位「草原の実験」(Ispytanie、アレクサンドル・コット、2014年ロシア)
見渡す限り四方が地平線の草原。ぽつんと立つ一軒家。モンゴル系の顔をした父親と少女を取り囲む長閑な日常に、ある日恐るべき兆候が。衝撃のラストに目が点になった。
7位「顔のないヒトラーたち」(Im Labyrinth des Schweigens、ジュリオ・リッチャレッリ 、2014年ドイツ)
1960年前後の西ドイツ。フランクフルトで実際にあったアウシュヴィッツ裁判に至るまでのスリリングなプロセスをサスペンスフルに描いた問題作。手慣れた演出に脱帽。
8位「アクトレス~女たちの舞台~」(Sils Maria、オリヴィエ・アサイヤス、2014年仏=独=スイス)
バックステージものの典型だが、役柄なのか真実の姿なのか見分けのつかない女優たちの火花を散らす競演を堪能した。ジュリエット・ビノシュがみごとだ。
9位「アメリカンスナイパー」
戦争が人間を変質させ破綻させる過程を描いて説得力がある。保守派のイーストウッドが戦争の本質をついて作ったところに大いなる意義がある映画だ。
10位「黄金のアデーレ 名画の帰還」(Woman in Gold、サイモン・カーティス、2015年イギリス)
ナチに資産を奪われたユダヤ人一家の生き残りの女性がクリムトの名画をオーストリア政府から奪還する実話の映画化。ヒッチコック・サスペンスの逸品である。うまい!

2015年上半期ベスト5発表!

2015年08月01日 | BEST
 当ブログ恒例の上半期に公開された作品のベスト5の選出です。「久」さんがずっとお休みされている関係で、今回は座談会形式を取りやめ、各自コメント方式としました。今年の上半期もまたすばらしい映画でいっぱいでした(健)。


【HIROさんのベスト5】

日本映画
1位「百円の恋」」(武正晴監督)
安藤サクラのファイトシーンに思わず力こぶしが入りました。ラストは完全に女の子に戻っていましたが・・・。それもいい!

2位「海街diary」(是枝裕和監督)
見ているだけで心がうきうきしてくる四姉妹の一挙一動。今年の梅は豊作でした。

3位「あん」(河瀬直美監督)
徳江(樹木希林)さんに教えてもらって、あのテカテカに光るあんを自分も作ってみたい。

4位「きみはいい子」(呉美保監督)
高良健吾演じる岡野先生、ぜひ来年度はウチの小学校に赴任してきてもらいたい。

5位「神様はバリにいる」(李闘士男監督)
仕事を辞めたら、こんな楽園のようなところでの~~~んびり暮らすのもいいかも。


外国映画
1位「パレードへようこそ」(マシュー・ウォーチャス監督、2014年イギリス)
ゲイの解放運動に炭鉱の労組のおばちゃんたちが加わるなんてすごい!!それも実話だとか。安保関連法案強行採決に対するデモを見て、また思い出してしまった。

2位「おみおくりの作法」(ウベルト・パゾリーニ監督、2013年英伊)
真面目な中年男に初めて訪れたロマンス!!しかし・・・。ラストのお見送りでさらに涙があふれ出ました。

3位「アメリカン・スナイパー」(クリント・イーストウッド監督、2015年アメリカ)
英雄視された実在のスナイパーも、心の中には埋めようにも埋められない空間ができてしまったようで。やはり人を殺すって、よくないよ。

4位「バードマン あるいは〈無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督 2014年アメリカ)
かつて初代「バットマン」を演じて一世を風靡したマイケル・キートンが「バードマン」になって帰ってきた!!さすがオスカー作品と納得。

5位「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(ジョージ・ミラー監督 2015年豪米)
30年ぶりの新作、ジョージ・ミラー監督健在!どころか御年70歳にしてますます熱くなってる!!「ゴーン・ガール」を蹴落としての5位。



【健のベスト5】

日本映画
1位「海街diary」
実父を亡くした少女が葬儀で腹違いの三人の姉たちと出会い、引き取られて行くという非日常的な出来事のあとは、この四人姉妹が鎌倉を舞台に織りなす何気ない日常を優しい目線でスケッチする。何と快い時間と空間に身をゆだねることができる至福よ。日本映画の大きな収穫である。

2位「百円の恋」(武正晴監督)
どうしようもないぐうたらな女が近くのボクシングジムで見かけた若者に一目惚れし、突如ボクシングに目覚めてジム通いを始めるという成り行きがおもしろおかしく語られ、やがてぶよぶよだった安藤サクラの身体がRIZAPのCMみたいに引き締まってくるのがすごい。

3位「さよなら歌舞伎町」(廣木隆一監督)
親には一流ホテル勤務と偽って連れ込みホテルで働く今風の若者とそれを取り巻く人々の私生活をのぞき見るような興味といえばよいか。多様な性風俗の坩堝と化した巨大都市の生態が生々しい。ことに時効まであと何日と指折り数えてアパートの一室に潜む夫婦のエピソードが素敵だ。

4位「駆込み女と駆出し男」(原田眞人監督)
徳川末期の江戸の風俗と緊縮財政を推し進めようという時代の空気や市井の人々の生き生きとした生活が丁寧に描かれる。軽佻浮薄な主人公が上滑りしそうな話を原田監督はオーソドックスで重厚な演出を駆使してじっくり見せるのだ。

5位「イニシエーション・ラブ」(堤幸彦監督)
いっぱい食わされたというか、本来なら中村義洋監督が得意とする分野だが、堤の思わせぶりな演出は堂に入ってまんまとだまされた。

外国映画
1位「セッション」(デミアン・チャゼル監督、2014年アメリカ)
名門音楽学校で自らの演者としての夢を若者たちに託そうというのか、学生をしごきにしごいて、さしずめアカハラの限りを尽くす鬼教師と、必死について行こうとする現代気質の若者の決闘は如何に。最後に笑う者はどっちだ。

2位「パリよ永遠に」(フォルカー・シュレンドルフ監督、2014年仏独)
パリを破壊せよとのヒトラーの命令に背けば故国に残した妻子に危険が及ぶというナチのパリ占領軍司令官と、欧州の宝石であるパリを何とか救おうとする中立国スウェーデン領事の息をのむ駆け引きが展開されスリル満点。外交の何たるかを痛感させる秀作である。

3位「パレードへようこそ」
テレビ・ニュースで警官隊に弾圧される炭鉱労働者のストライキを見たゲイの若者が自分たちと同じ痛みを感じて連帯しようと決意する。最初は差別と偏見の目で彼らを見ていた労働者たちがやがてその心意気に感謝して・・・とこの映画は本当に心が癒される。

4位「おみおくりの作法」
身寄りがなく引き取り手がない遺骨を保管してわかる限り縁者を探し、それでも引き取り手が現れない場合は葬儀から埋葬までを丁寧に行うことを天職のように考えている孤独な市役所事務員。この男の律儀で誠実な人柄が一挙手一投足から感じられる演出に目を奪われていると、英国映画らしい皮肉な結末が待ち受けている。

5位「アメリカン・スナイパー」
反戦反軍映画ではないにしても戦争が人を狂わせ精神を破綻させるという真実をついて強烈である。安倍政権は憲法を蔑ろにして武力の行使範囲を広げることで平和が担保されるという詐欺まがいの法案を通そうとしている。だまされてはいけない。武力は所詮武力を誘発するだけだ。

2014年度ベストテン発表

2015年02月01日 | BEST
ken:昨年のベストテンを日本映画、外国映画それぞれについてみなさんに発表頂き、コメントをお願いしたい。対象は昨年1年間に封切られた作品で、今年見た場合でも昨年封切りのものは対象とする(注1)。まず久さんからどうぞ。
久:日本映画はあまり見ていなくて6本選ぶのがやっと。1位から6位まで、もうこれ以上見ていないということで、私の場合はどうしようもない状態だった。実際は日本映画ももっと見たような気はする。そんなたくさん見ているわけではないが、昨年見た映画は全部で77本だった。
HIRO:いや、けっこう見ている(笑)。
久:そんな中で今年見た1位の「百円の恋」以外は5本しか入っていなかったという悲しい結果だ(笑)。
ken:ということは70本くらいは外国映画を?
久:そう。ただ、その中に日本と韓国が合作した映画、テノール歌手の話(注2)とかあるのでこれはどちらに入るのかよくわからないが。私は出ている俳優が好きで見に行っただけで映画そのものは特によかったわけではなかった。それで純粋の日本映画ということで6本を選んだ。私としては特にどれが1位ということでもない。上半期ベスト5選出のときは「太秦ライムライト」を1位にしたが、年間では「百円の恋」、「舞妓はレディ」が1,2位となり、6位に「ふしぎな岬の物語」を新たに加えた。本当はどれが1位とも5位ともいえないので評しようもない感じだ。外国映画は、1位が「めぐり逢わせのお弁当」。上半期ベスト5では「あなたを抱きしめる日まで」を1位にしたが、年間では4位に降りて後半見た映画が新たに3本加わった。印象もどうしても後半に見た映画ほど鮮明さが強くなるので、そういうことからも変わってくると思う。いろんな国の映画を見ているが、最近は単独の国の製作ではなくて合作が増えている。1位に挙げた作品もインドが舞台の物語だけれど、インド、フランス、ドイツの合作だ。こうして見るとドイツが合作として入っている映画が多い。2位に挙げた「シャトーブリアンからの手紙」もドイツとフランスの合作だし、3位の「リスボンに誘われて」もドイツ、スイス、ポルトガルの合作だ。「悪童日記」もドイツとハンガリー。このようにドイツが関わっている映画を去年はたくさん見ているのだなと改めて思った。
ken:個別の感想は?
久:1位については、昨年はインドに関わる映画をほかにも「きっと、うまくいく」「マダム・イン・ニューヨーク」を見ており、いずれもよかったが、3本の中では一番「めぐり合わせのお弁当」がよかった。主人公の女性の生き方というか、徐々に変わって行くところがおもしろかった。「シャトーブリアンの手紙」は去年1位に挙げた「アンナ・ハーレント」の監督と、この映画の監督が夫婦である(注3)。
HIRO:あ、そうなんだ。
久:舞台は題名からわかるとおりフランスで、戦後70年がたつ中で反省とか、そういうことで映画を作り続けていることとか、すごいなあと思った。それから「リスボンに誘われて」は久しぶりにジェレミー・アイアンズが出ていて、大学の先生(アイアンズ)がある日自殺しようとする女の子を助けて、彼女が落としていった本というのがポルトガルの反政府運動をしていた若者の手記みたいなもので、そのページに乗車券が挟んであって、先生は彼女を追いかけてスイスのその駅まで行くんだけれど結局見つからなくて、そのチケットで自分が乗ってリスボンまで行ってしまう。その間にその手記を読んで行くうちに書いている本人のことを調べたくなる。それで、その遺族、妹とか、友だちとかそういう人たちを訪ねて行くのが、すごくよかった。
HIRO:題名からして誘われそうだ。
久:ポルトガルの歴史とか、私たちはあまり知らないが、そういうことを抜きにしても、あの時代を生きた若者たちの気持ちとか恋愛とかそういうことを絡めて、おもしろかった。
HIRO:もう上映していないのか?
久:上映は終わった。
ken:去年の秋ごろだったような・・・
久:そうだ。秋ごろだった。
HIRO:もう見るならDVDでしか見られない。京都シネマで見た?
久:京都シネマで。私のベストテンのほとんどは京都シネマで見た。去年、シニア料金が1100円に値上がりして、私はプレミア会員だから900円なのでどうしても京都シネマで見る(笑)。年金生活者にとっては・・・(笑)。
HIRO:今もいいの上映しているね、「百円の恋」。
久:そう。キネマ旬報ベストテンに入っている(注4)。京都での公開は遅いから。
HIRO:「百円の恋」はなぜ百円なのか、と。
久:安藤サクラのアルバイト先のコンビニへボクサー志望の男がやって来て百円のバナナを6束買って千円札出すのだけれど、彼女がお釣りを渡し損ねて落としてしまい、落っこちた百円を拾って渡すと、かれがそれをごまかして百円足りないという。それで、彼女がまたレジから百円出して渡す。結局、百円は返してくれるのだが、そこから始まったみたいな。
HIRO:なるほど。ブルー・リボン賞は安藤サクラだった(注5)。
ken:「百円の恋」は脚本(足立紳)を読んだが非常におもしろかった。安藤サクラ主演、姉の安藤桃子監督「0.5ミリ」も京都シネマで上映していて見に行こうと思ったら、京都シネマのホームページに連日混み合っていますと書いてあるから、すいてから見に行こうと思って、そのうちキネマ旬報ベストテンの2位に選出されたのできっと延長されると思っていたら、突然上映終了で見逃してしまった。あれはひどいと思った(笑)。安藤サクラ、いま一番油がのりきっている。
久:安藤サクラって美人でもないが、すごく個性があるというか、味があるというか、かえって美人じゃないところがよかったのでは。
HIRO:それは見なければいけない。
ken:それではHIROさん、どうぞ。
HIRO:日本映画の1~3位は上半期に入れた作品で、4位が「太秦ライムライト」。久さんの1位だが、京都ならではのチャンバラがどのように作られていったのかよくわかったし、傍役が初めて主役になったというのがいい。それから、このおじさんどこかで見たことがあるんですよね、知らない人だったが。剣の使い方など、あれが昔の殺陣の形かと、そういうのを教えられた。6位が「舞妓はレディ」。これはかなり期待して見た。京都をうまく売っているなというか、印象づける作品になっていた。ああ、ここは「マイ・フェア・レディ」のあの場面だというような両者の結びつきが分かって楽しかった。もう少し盛り上げて欲しかったが(笑)。続いて「紙の月」。キネマ旬報賞で助演男優賞をとった池松壮亮がもうちょっと魅力的だといいのだけれど、こんな若い大学生にそこまで貢ぐかという、その印象が初めにあって上位には行かなかった。しかし、宮沢りえがものすごく熱演していて印象に残った。あとは不満が残る作品もあったが、「渇き。」と「ふしぎな岬の物語」を8,9位に入れた。そして10位には続編の期待を込めて「寄生獣」を入れておく。外国映画の1位は「インターステラー」にした。「2001年宇宙の旅」みたいな高尚な宇宙映画という感じがして、将来そういう世の中が来るのかなと思った。実はきのう小学校のクラブ活動で液体窒素の実験をしてマイナス200度の世界を体感。一瞬で花が凍ってびっくりした。映画では凍らせて何十年か生命を維持して若い状態で蘇生させたりするのが不思議に思ったが、きのうの実験で可能なのだということを知って、よく出来ているなと感じた。金魚でも一瞬凍ってしまい、また元に戻すと生き返る。将来、時代が進めばもっと大きな生命体でも可能だと感じさせる映画だった。2位は「フューリー」。戦い慣れない若い兵士、最後に彼だけが生き延びるのだが、ブラッド・ピットが熱演していて、ああいう指揮官ならついていけるなという感じで予想以上によかった。「ゴーン・ガール」も妻が最後に生きて戻ってくる。ああ、そういうわけなんだと納得。最初のシーンに戻るんですね。髪の毛を撫でている場面。喉をかき切るという女とこの先も付き合って行かなければならないというところにもの凄く恐ろしさを覚えた。5位は「マダム・イン・ニューヨーク」で、インドでも英語が重要視されているというところがよくわかった。英語学校に通って段々英語が上手になるんだけれど、最後に飛行機の中で英語でヒンズー語の新聞を頼むところが痛快だった。やっぱり自分の国を大切にしているんですね。6位は「イコライザー」。えげつなく人を殺す。なんと19秒で5人も!ちょっと世の中からはみ出てしまった女の子のために頑張る、デンゼル・ワシントンがカッコよかった。次は「王の涙」。韓国映画だ。どろどろしているというか、ドラマチックで、今の日本映画に欠けている部分が韓国映画にはあるとうことが再認識できた。大垣で見たが、がらがらなのではと思っていたら、年配の女性陣でいっぱいでびっくり(笑)。あと「トム・アット・ザ・ファーム」もよかった。仲良く付き合っていた人が亡くなるんだけれど、故人の実家へ行って、自分がゲイだということを最後まで明かさないで雰囲気だけで匂わせるところが、森の中の湿気がいっぱいの中で撮影された空気とマッチして、とても印象に残った。トム・クルーズががんばった「オール・ユー・ニード・イズ・キル」と、ピーチパイが忘れられない「とらわれて夏」も入れておこう。以上です。
ken:さて私だが、日本映画のベストワンは「そこのみにて光輝く」。これはもう揺るがないというか、非常に重たいテーマだが、しっかりした作りで、みごとな出来だった。上半期のベスト5で挙げた作品以外では3位が「紙の月」。これはHIROさんの感想とは反対に池松壮亮がよかった。若手の男優の中では「そこのみにて光輝く」に出ていた菅田将暉と、この池松にとくに注目していて、なかなかうまい。それに少し前の銀行なら可能だった犯罪だと思った。
久、HIRO:なるほど、銀行OBの感想として(笑)。
ken:それもある(笑)。脚本家(早船歌江子)いわく、原作は不倫が本筋だけれど、映画ではサスペンスとして犯罪に軸足を置いて脚色したという。私も実はサスペンスとして見ておもしろかった。あと6位の「舞妓はレディ」はHIROさんのいうとおり「マイ・フェア・レディ」をうまくパロっていて純粋に楽しめた。「渇き。」は賛否両論ある映画だが私はおもしろかった。「超高速!参勤交代」か「WOOD JOB!」、どちらを入れようかと迷って「参勤交代」にした。これも娯楽映画としてよくできている。最後の「私の男」は1位の「そこのみにて光輝く」同様、きわめて重たい映画だが、近親相姦が前面に出すぎていてそこがちょっと引っかかるというか、10位に置いた理由だ。外国映画はなんといっても「誰よりも狙われた男」が最高におもしろかった。昨年の2月に亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンの主演で、名前からするとドイツ系なのだろう、ドイツの諜報機関のテロ対策班リーダーをやっている。
HIRO:その映画のことは前から知っていたのか?
ken:いや、それがたまたま仕事が休みの日にこれといって見たい映画がなかったので探していたら、浜大津のアレックスシネマにかかっていて、私がひいきにしているホフマン主演で原作が英国のスパイ小説の大家ジョン・ル・カレだというので見に行った。私もこの映画のことは事前には知らなかった。それから2位は「6才のボクが、大人になるまで。」。監督はリチャード・リンクレイターといってアメリカには珍しいタイプの「映画作家」という感じの人。これはもう驚いたというか、6才の男の子と少し上の姉がいて、イーサン・ホークが父親。夫婦が離婚していて母親が親権をもっているので、父親のホークが定期的に子どもに会いに来るという設定で、この男の子が大学に入学する18才までを描いている。6才から18才までの途中もあって12才になり15才になりと順を追って描いていて、アメリカ映画というのはすごいなあ、よくこれだけ姉も弟もよく似た子役を連れて来ると感心した。あとで解説を読んだら、似ているのも当たり前で本人だと知って驚いた。つまり12年かけてこの一家を撮っている。
久:それはほかの俳優も含めて全員を12年かけて撮っているということ?
ken:そのとおり。だから、最初ホークがまだ若い父親として出てくるのだけど、男の子が18才になったときはホークも白髪交じりになっていてうまくメークしていると思ったら、12年経って本当に老けているわけ(笑)。実験的手法というか、それに物語もよかった。男の子が大学進学が決まって高校卒業のホーム・パーティーを開くのだが、親戚や友だちやバイト先の店長とかみんなやって来る。それで、ホークが別れた妻とキッチンでふたりきりになったところで、「子どもたちをここまで立派に育ててくれてありがとう」というところが泣かせた。
HIRO:これ、アカデミー賞にノミネートされていた。
ken:そう。ゴールデングローブ賞では最優秀作品賞をとった。今度、浜大津のアレックスシネマでもやってくれる。
HIRO:それは是非見に行かないと。
ken:3位は「アデル、ブルーは熱い色」。これもすごい映画だった。カンヌで注目を集めたフランス映画だが、女性同士の熱烈な恋愛を描いていて、二部構成と長いながら本当におもしろかった。5位の「悪童日記」も起伏があるおもしろい映画だった。8位の「監視者たち」は香港映画をリメイク(注6)した韓国映画で、オリジナルを見た人にいわせるともっとおもしろかったということだが、黒澤明の「天国と地獄」を思わせるような、捜査官が犯罪者を集団で追うジェットコースター・ムービーだ。あと「トム・アット・ザ・ファーム」は不思議な雰囲気をもった映画だった。最後はやはりイーストウッドの「ジャージー・ボーイズ」にした。「舞妓はレディ」と奇しくも同じ趣向のエンディングで、岸部一徳が踊るのは元ミュージシャンだから驚かないが、クリストファ・ウォーケンが出演者全員と最後に出て来て一緒に歌っている姿がじーんと来た。
久:たしか、ウォーケンもミュージカルの出身では?前にも歌ったり踊ったりしたところを見たことがある。あのトラヴォルタが女装して太った母親役をやった映画で。娘がミュージカルスターを目指していて、ウォーケンが父親の役で踊っていたのでは?(注7)
ken:ああ、何となくわかる。そういえばそうだったか。


(注1)上半期ベスト5はキネマ旬報ベストテン方式で2013年12月から2014年6月までの間に公開された映画を選考対象としたが、年間ベストテンの今回は2014年1月から12月公開の作品を選考対象とした。
(注2)「ザ・テノール 真実の物語」(2014年、キム・サンマン監督、伊勢谷友介主演)
(注3)「シャトーブリアンからの手紙」(2011年)はフォルカー・シュレンドルフ監督。「ハンナ・アーレント」(2012年)はマルガレーテ・フォン・トロッタ監督。このふたりが夫婦。
(注4)第88回(2014年度)キネマ旬報ベストテン第8位
(注5)「0.5ミリ」「百円の恋」に主演した安藤サクラは第57回ブルー・リボン賞、第69回毎日映画コンクールの主演女優賞を受賞した。
(注6)「天使の眼、野獣の街」(2007年、ヤウ・ナイホイ監督の香港映画)のリメイク
(注7)クリストファ・ウォーケンは舞台のミュージカルからキャリアをスタートさせた。ジョン・トラヴォルタと共演したのは「ヘアスプレー」(2007年)。



各自2014年度ベストテン(日本映画は監督名を、外国映画は製作年、製作国と監督名を付した)

久さんのベストテン
【日本映画】
1.百円の恋(武正晴)
2.太秦ライムライト(落合賢)
3.舞妓はレディ(周防正行)
4.超高速!参勤交代(本木克英)
5.小さいおうち(山田洋次)
6.ふしぎな岬の物語(成島出)

【外国映画】
1.めぐり逢わせのお弁当(2013年インド/フランス/ドイツ、リテーシュ・バトラ)
2.シャトーブリアンからの手紙(2011年フランス/ドイツ、フォルカー・シュレンドルフ)
3.リスボンに誘われて(2013年ドイツ/スイス/ポルトガル、ビレ・アウグスト)
4.あなたを抱きしめる日まで(2013年イギリス/フランス、スチーヴン・フリアーズ)
5.悪童日記(2013年ドイツ/ハンガリー、ヤノーシュ・サース)
6.ソウォン 願い(2013年韓国、イ・ジュンイク)
7.鉄くず拾いの物語(2013年ボスニア・ヘルツェゴヴィナ/フランス/スロヴェニア、ダニス・タノヴィチ)
8.世界の果ての通学路(2012年フランス、パスカル・プリッソン)
9.ワン チャンス(2013年イギリス/アメリカ、デヴィッド・フランケル)
10.フォンターナ広場 イタリアの陰謀(2012年イタリア、マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ)


HIROさんのベストテン
【日本映画】
1.WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常(矢口史晴)
2.ぼくたちの家族(石井裕也)
3.太秦ライムライト
4.小さいおうち
5.映画 クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん(高橋渉)
6.舞妓はレディ
7.紙の月(吉田大八)
8.渇き。(中島哲也)
9.ふしぎな岬の物語
10. 寄生獣(山崎貴)

【外国映画】
1.インターステラー(2014年アメリカ、クリストファ・ノーラン)
2.フューリー(2014年アメリカ/イギリス/中国、デヴィッド・エアー)
3.ゴーン・ガール(2014年アメリカ、デヴィッド・フィンチャー)
4.ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(2013年アメリカ、アレクサンダー・ペイン)
5.マダム・イン・ニューヨーク(2012年インド、ガウリ・シンディ)
6.イコライザー(2014年アメリカ、アントワン・フークワ)
7.王の涙 イ・サンの決断(2014年韓国、イ・ジェギュ)
8.トム・アット・ザ・ファーム(2013年カナダ/フランス、グザヴィエ・ドラン)
9.オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014年アメリカ/カナダ、ダグ・リーマン)
10.とらわれて夏(2013年アメリカ、ジェイソン・ライトマン)


kenのベストテン
【日本映画】
1.そこのみにて光輝く(呉美保)
2.ぼくたちの家族
3.紙の月
4.小さいおうち
5.白ゆき姫殺人事件(中村義洋)
6.舞妓はレディ
7.渇き。
8.愛の渦(三浦大輔)
9.超高速!参勤交代
10.私の男(熊切和嘉)

【外国映画】
1.誰よりも狙われた男(2013年アメリカ/イギリス/ドイツ、アントン・コルベイン)
2.6才のボクが、大人になるまで。(2014年アメリカ、リチャード・リンクレイター)
3.アデル、ブルーは熱い色(2013年フランス、アブデラティフ・ケシシュ)
4.8月の家族たち(2013年アメリカ、ジョン・ウェルズ)
5.悪童日記
6.あなたを抱きしめる日まで
7.罪の手ざわり(2013年中国/日本、ジャ・ジャンクー)
8.監視者たち(2013年韓国、チョ・ウィソク)
9.トム・アット・ザ・ファーム
10.ジャージー・ボーイズ(2014年アメリカ、クリント・イーストウッド)

2014年上半期ベスト5発表!

2014年07月26日 | BEST
 本年も折り返し点を通過し、ブログ執筆者3名が7月20日(日)に大津市の某所に集い、上半期の総括ということでベスト5作品を発表して個々の作品についてコメントして貰いました。以下はその座談会の採録です。(Ken)


Ken:上半期総括ということで、みなさんから順にベスト5を発表してください。まず久さんから。

久:私は日本映画を見た本数が少なくて、いろんな国の映画を見てたら日本映画が少なくなるのは当たり前かなと、これ言い訳です(笑)。日本映画は3本しか見ていない。1位は「太秦ライムライト」、2位は「超高速!参勤交代」、3位は「小さいおうち」。全部でこれだけ。「太秦ライムライト」はつまらないかなと思って見たら、意外としっとりした映画で、主人公が斬られ役一筋で来た人で、ものすごい真面目さとか、役者としては上手じゃないかも知れないけれど、人柄が滲み出ているような作品だった。外国映画はとりあえず5本選んで来たが、なかなか順位をつけにくい。テーマもまるっきり違うし、出ている人たちも違うし、描かれている中身、社会とかも全然違うし、それが一つ一つ見ていておもしろかったとか、いろいろ迫ってくるものがある。4位の「ワンチャンス」などは明るい映画で。それから3位に挙げた「世界の果ての通学路」はドキュメンタリ。見ていると泣けてくる。といっても悲しいとかじゃない。世界の4カ所かな、インド、ケニヤ、モロッコ、あと中南米の国だったと思うが、その子どもたちが学校に通う苦労を描いている。例えばモロッコなどは学校まで4時間かかるのだけれども、毎日ではなくて週末に自宅に帰りまた学校へ行って向うで1週間過ごす。ケニヤなどはジャングルじゃないけれど野生の動物とかを避けながら学校まで2時間かけて通う。中南米でも1時間かかる。日本の子どもたちでそこまでして学校に行きたいという子がいるかどうか。

HIRO:いまの日本の子どもたちに見せたいですね。日本の子どもたちは手厚くされているので(笑)。

久:インドの話は車椅子で行くんだけれど、その車椅子を幼い弟たちが押して行く。それも1時間とか1時間半かけて。貧しい家の子どもだと思うが車椅子も日本のように性能のよい車椅子ではないので途中でパンクしたり、それはいろんなこととかあって、それでも学校へ行きたいという子どもたちの、目の輝きがね、すごい。本当に日本の子どもたちにも見て欲しい。

Ken:1位はどうですか。

久:「あなたを抱きしめる日まで」、見ましたか。

Ken:見ました。

久:この映画は主人公のジュディ・デンチが貧しい家で育ってあまり学も無い。アイルランドはカソリックだから、バージンでなければいけないとか、宗教的なこととかいろんな縛りがある中、ジュディ・デンチはそれに外れた女で、結婚しないで妊娠して修道院に入れられ、実際に生んだ子どもは取り上げられて、そこの修道院はその子を里子に出したりしていた。その後の子どもの行き先とか全然教えてくれないので、彼女がだいぶ年を取ってからその子を探すという物語だが、今でもイギリスとは違ってアイルランドはカソリックの意識が強かったりして、宗教関係者の欺瞞性が痛烈に出ていた。私自身が神とか信じないが、本来は宗教は人を幸せにするためにあるべきものなのに、人を不幸にしてしまうということに対して怒りを感じた。彼女と一緒に子どもを探してくれる人がどちらかというとイギリスのエリートで、ふたりの教育の差などが会話の中に出ていてすごくおもしろかった。

Ken:2位は何ですか。

久:「鉄くず拾いの物語」。主人公たちとかを本人が演じている。

Ken:これはドラマですか。

久:ドキュメンタリじゃなくてドラマです。

HIRO:どこの国の映画ですか。

久:ボスニア・ヘルツェゴヴィナとフランスなどの合作。主人公達は保険がない。妊娠して出血して医者に行ってもお金が無い、保険が無いので診てもらえない、そういう状況とかが描かれ、医療というのは人を助けるためにあるのにお金とか規則とかそういうものが優先される。こういうことがあるんだという、知らないことが見られるというのが映画のいいところだ。5位はイタリア映画「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」。ミラノで起きた事件で、警察権力とか裁判とか、1960年代の話で、労働組合の幹部とかは常に公安警察に監視されていて、事件が起きると彼等の犯行のように疑われる。警察の中にはまともな人もいて労働組合の幹部が犯人だということに疑いを覚えるが、最終的に彼も殺される。事件の表面的な裏にはいろんなことがあるということを思わせられたりする。けっこう重い映画だった。4位の「ワンチャンス」は、実話の映画化で本人が全部歌ってくれていて、オペラね。ある意味、歌を聴くだけでも映画を見る値打ちがある。

Ken:それではHIROさん。

HIRO:すばらしい作品ばかりですごいですね。私など見たくても見られないものばかりで。田舎に住んでいるのでメジャーな作品ばかり並んでしまったが、日本映画の1位は「WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~」。若い俳優がやっている単なるコメディかなと思っていたら、段々とその中に見ている者が入って行けるというか、上手に作られていて、さすが「ウォ-ターボーイズ」などを作った矢口監督らしい作品になったと思う。最後は感動できるというか、今までにない撮り方で見せてくれたので、すごいと思った。日本のよいところ、田舎のよいところも撮っていて、時間をかけてスーパーに買物に行くし、恋愛のシーンを入れたりして、普段ありそうな、妙に作られていそうで作られていないところがいい。むかしから伝わる伝統行事など日本の文化にも触れていて、そういうのが非常に印象に残った。私は初めて近江八幡のイオンシネマの試写会に当たって、これを見たが、子どもからお年寄りまで幅広く来ていて、みんな非常に感動していた。残念なのは公開されてからヒットしなかったことだ。もっと見て欲しいと思う。2位は「ぼくたちの家族」。1位と2位をどうしようか迷ったが、こちらが1位でもよかった。お母さんが脳腫瘍と診断されて、それまでバラバラだった男たちが一緒になってどうにかして助け合う。悪あがきしながら希望の道を見つけ出す作品だが、私の家も同じ家族構成なので、年格好もそっくりで、本当にこういう家族って日本中いっぱいいるだろうなと思った。やはりいざというときにバッとこう一緒になってできるというのはいいなと思いながら、バラバラなんだけど一つに繋がっているということが分かった。これからこの家族が、病気も治っていないし、どうなって行くのか、分からないけれども、ぜひみんなでハワイに行ってもらって(笑)、療養して欲しいと思った。3位は「麦子さんと」。これもお母さんが病気になって、今まで放っておいた子どもらと一緒に過ごしたいということで突然やって来るが、最初煙たがっていた子どもたちもお母さんの生まれ故郷に行ってその生い立ちや考え方などを地元の人たちと一緒に知って、自分のことをずっと気にかけてくれたんだなあというのが分かって感動できる。主演の堀北真希は新人だった「三丁目の夕日」でも感動させてもらったが同じように感動した。なかなか上手な俳優さんだと思った。4位は「小さいおうち」。ちょっと期待が大きすぎてもう少し盛り上がるかと思ったが。細かいシーンでもう1回見て確かめたいというところがある。濡れ場のシーンなんか全然無いのだけれど、松たか子の足が映ったり、吉岡秀隆の裸が映ったり、じわっと何かあったのだろうなと考えさせられるような場面が出てきて、山田監督だから上品に撮っていると思われて、そういうところがよかった。5位は「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」。Yahooの評価では今でも1位で、大人が見ても感動させる作品だった。父親の存在を確認させる作品となっていてよかった。「利休にたずねよ」は次点。海老蔵ファンにとってはものすごくいいんじゃないかと思った。外国映画も悩んだが、1位がこれもまた家族の映画で「ネブラスカ」にした。父親がインチキ宝くじに当たったことを信じていて、息子が父親を連れて引き替えに行く。その道中で父親の若い頃や母親との出会い、そうしたことを息子が知っていくという作品。これも最後に家族愛が感じられるいい終わり方だった。2位は「ゼログラビティ」。これ1位にしてもよかったが、映像、映画という素材であれだけの宇宙空間を描けたのはすごい。これはアイマックスで見たがよかった。宇宙に行きたいとは思わなかったけれど(笑)。最後、宇宙から地球に戻ったときはこういう風なんだと思った。3位は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」にした。ディカプリオは前から演技が巧いなと思っていたが、またこれで確認できたという感じで、ウォールストリートで働いている人たちのハッタリとか、それを思いっきり出すにはエネルギーが要るので女性の力とか麻薬の力を借りてやってるんだなと思った。日本だと規制が厳しいがアメリカではあんな風に簡単に麻薬を手に入れて使っているんだなと思った。豪快な作品だった。4位は「とらわれて夏」にした。これは拾いものだった。Kenさんの推薦もあって見たんだけど、けっこう印象に残った。(母ひとり子ひとりの)主婦が脱獄囚を匿ってしまう。この脱獄囚が魅力的な人物で、なぜ刑務所に入っていたのかという過去がフラッシュバックで途中に入れられて段々分かってくる作りになっていた。この男に惹かれて行く母親と息子の気持ちもよくわかった。彼がちょっと恐そうなんだけれどもいいところもある。上手にピーチパイを作る。みんなで作るところがものすごく印象に残っていて、最後それを生かして息子がケーキ屋さんになって大成功するオチもいいし、刑を終えて出所してきたときにちゃんと待っていたというシーン、いま思い出すだけで鳥肌が立つほどよい。5位は「それでも夜は明ける」。アカデミー賞を取った作品で、重たかったけれど、なるほど、みなさんの支持を得られる作品だと思った。注目は「アナと雪の女王」。子どもが本当にクラスのうちでも三分の一以上いや半分ぐらいが見ている。休み時間でもみんなが唄を歌う。1年生、2年生の子がね、上手に(笑)。それだけ社会に浸透している作品というのが最近なかったから、すごいなと思った。DVDも買ってしまった。100万枚以上、最初の段階で売れたらしい。まあ、中身はディズニーの域だったけれど。

久:氷にばーっと変わって行くところがすごかった。

HIRO:あれすごかったですね。3Dでは見てないので、ぜひ3Dで見たいなと思う。

Ken:私の日本映画の1位は「そこのみにて光輝く」。ずいぶん重い映画で、日本映画伝統のリアリズムの秀作というか、非常に重たいけれど強く印象に残る作品だった。2位は「ぼくたちの家族」。動物ものと難病ものは苦手で見ないのだが(笑)、これは昨年「舟を編む」を撮った石井裕也監督だから見ておいたほうがよいと思って見たら、想像していたのと全然違う映画で、難病もののお涙頂戴どころか、途中で話をがらっと変えちゃって、ラストがハッピーエンドだというのにびっくりして、これはこの監督にしてやられたな、と。難病物と見せかけておいてハッピーエンドに持って行くその手法はすごいなと思った。3位は「小さいおうち」で、これは反戦映画の一つの秀作というか。去年の例の「東京家族」。あれは微妙な映画だった。映画監督としては二人目の芸術院会員に選ばれた山田洋次が、あの黒澤明ですらなれなかった芸術院会員の名誉を受けて、第一号の先輩である小津安二郎に敬意を表してその「東京物語」という傑作をリメイクするという冒険をあえてした。失敗したら晩節を汚すというリスクも顧みず「東京家族」を撮って、結局小津を超えられなかったけれど、まあリメイクとしてはよく出来ましたという程度の水準を確保して、俺は「男はつらいよ」だけじゃないんだと言いたかったのだろう。それで「小さいおうち」で本来の山田監督にまた帰って来たという、そういう位置づけの作品ではないか。反戦を声高に叫ぶのではなくごくありふれた日常を描くことによって戦争がひたひたと足下に寄せてくるような時代の雰囲気を描いてみごとだった。例えば東京オリンピック。当時ヘルシンキと最終決戦になって東京が勝った。これで日本も一等国になったとみんな喜ぶ。中国と戦争をしてアメリカやイギリスとも関係が悪化して、そういう中でソ連に急速に接近して行く。まさにそれは現代に通じるような話で、当時と同じ状況だと山田監督が警鐘を鳴らしているように理解した。日独伊三国同盟のドイツやイタリアは独裁者が国民を力づくで押さえ込んで戦争を遂行していたので、戦争が終わりみんなほっとした。ところが、日本は少し違って国民もまた戦争指導者と一緒に戦争を煽っていた。連合軍は日本を開放して日本人に喜ばれると思っていたところ、実は日本人の多くが戦争に負けて悔しがり泣くのを見てショックを受けた。日本人というのはそういうところがあって、いまの政権はそうした危険をはらんでいる。4位は「白ゆき姫殺人事件」。これは実にうまいというか、話術が巧みで見る者はすっかり術中にはまってどんでん返しを喰わされる。5位は「愛の渦」。ポルノチックな内容がやがて変貌して、乱交に参加した男女がディスカッションドラマのようにお互いの人となりを暴いて行く進行に、これまでの映画には無い新鮮さを感じた。モスクワで賞を取って話題となった「私の男」は「そこのみにて光輝く」同様きわめて重いテーマだが、近親相姦というテーマが倫理的にちょっとついて行けなかった。それから「WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~」「超高速!参勤交代」もおもしろかった。外国映画の1位は「ゼロ・グラビティ」。この映画のすばらしさは今さらいうまでもない。2位はカンヌ映画祭で喝采されたという「アデル、ブルーは熱い色」。一発ぶん殴られたような衝撃を受けた。主人公の女の子はとても魅力的な可愛い子だが、彼女が惚れて絡め取られてしまう相手のレズの女性に扮した女優がいかにもという感じで、適役だった。男の私でも素直に感動した。3位は「8月の家族たち」。メリル・ストリープがやたらうまい。みごとだった。最後は母娘で取っ組み合いとなる家族の確執をうまく描いた。4位は「罪の手ざわり」。いくつかのエピソードが収斂されて行く語り口に感心した。5位は「あなたを抱きしめる日まで」。英国の老女がアメリカに里子に出されたわが子のその後を案じて探す。さあ、次はどうなるかというスリルがよかった。外国映画は選ぶのに苦労して、結局、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「アメリカン・ハッスル」「ネブラスカ」「ダラス・バイヤーズ・クラブ」「とらわれて夏」などおもしろい作品がいっぱいあって選外に漏れてしまったのは残念だ。


【久さんのベスト5】
日本映画
1位「太秦ライムライト」(落合賢)
2位「超高速!参勤交代」(本木克英)
3位「小さいおうち」(山田洋次)
外国映画
1位「あなたを抱きしめる日まで」(スチーブン・フリアーズ、2013年英国)
2位「鉄くず拾いの物語」(ダニス・ダノヴィッチ、2013年ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、フランス、スロヴェニア)
3位「世界の果ての通学路」(パスカル・プリッソン、2012年フランス)
4位「ワンチャンス」(デヴィッド・フランケル、2013年英米)
5位「フォンターナ広場 イタリアの陰謀」(マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ、2012年イタリア)

【HIROさんのベスト5】
日本映画
1位「WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~」(矢口史靖)
2位「ぼくたちの家族」(石井裕也)
3位「麦子さんと」(吉田恵輔)
4位「小さいおうち」(山田洋次)
5位「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」(高橋歩)
外国映画
1位「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」(アレクサンダー・ペイン、2013年アメリカ)
2位「ゼログラビティ」(アルフォンソ・キュアロン、2013年アメリカ)
3位「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(マーチン・スコセッシ、2013年アメリカ)
4位「とらわれて夏」(ジェイソン・ライトマン、2013年アメリカ)
5位「それでも夜は明ける」(スチーヴ・マックィーン、2013年アメリカ)

【Kenのベスト5】
日本映画
1位「そこのみにて光輝く」(呉美保)
2位「ぼくたちの家族」(石井裕也)
3位「小さいおうち」(山田洋次)
4位「白ゆき姫殺人事件」(中村義洋)
5位「愛の渦」(三浦大輔)
外国映画
1位「ゼログラビティ」(アルフォンソ・キュアロン、2013年アメリカ)
2位「アデル、ブルーは熱い色」(アブデラティフ・ケシシュ、2013年フランス)
3位「8月の家族たち」(ジョン・ウェルズ、2013年アメリカ)
4位「罪の手ざわり」(ジャ・ジャンクー、2013年中国・日本)
5位「あなたを抱きしめる日まで」(スチーブン・フリアーズ、2013年英国)

2013年に見た映画ベストテン

2014年01月01日 | BEST
ブログ「シネマ見どころ」執筆者3名の2013年に見た日本映画、外国映画それぞれのベストテンを以下に発表します。(ken)

<久さんのベスト>
【日本映画】
1 人類資金
2 千年の愉楽
3 かぐや姫の物語
4 清須会議
5 利休にたずねよ
 
 年間の日本映画の鑑賞本数が少なく、結果ベスト10ではなくベスト5しか選べなかった。小林政広監督・仲代達矢主演の「日本の悲劇」を見逃したのが残念。

【外国映画】
1 ハンナ・アーレント(ドイツ・ルクセンブルグ・フランス)
2 東ベルリンから来た女(ドイツ)
3 もうひとりの息子(フランス)
4 天使の分け前(イギリス・フランス・ベルギー・イタリア)
5 偽りなき者(デンマーク)
6 スタンリーのお弁当(インド)
7 声をかくす人(アメリカ)
8 拝啓、愛しています(韓国)
9 命をつなぐバイオリン(ドイツ)
10 ヒッチコック(アメリカ)
 
 ファンタジー・ロマン・スペクタクル・サスペンス等々が溢れる映画も好きだが、いわゆる社会派といわれる映画の方が好きである。1位「ハンア・アーレント」、2位「東ベルリンから来た女」、9位「命をつなぐバイオリン」とドイツ映画が3本入っている。自国の歴史の恥部を捻じ曲げずに描き、真摯に向き合う姿勢に好感を持つ。「もうひとりの息子」はイスラエル人とパレスチナ人の赤ん坊の取り違えを扱っているが、紛争が続く地域の人々もこの二つの家族のようにいつかは仲良くなれるのではという希望を持ちたくなった。


<Hiroさんのベスト>
【日本映画】
1 舟を編む
2 かぐや姫の物語
3 清須会議
4 東京家族
5 そして父になる
6 許されざる者
7 クレヨンしんちゃん~バカうま!B級グルメサバイバル~
8 ペコロスの母に会いに行く
9 風立ちぬ
10 ひまわり~沖縄は忘れない、あの日の空を~
 
 今年は本当に見逃した作品が多くて、「ベストテン」には恥ずかしい結果なのですが、自分の好きな作品ということであげさせてもらいました。
 1位は「舟を編む」。松田龍平の演技力はただものではないことがわかりました。2位は「かぐや姫の物語」。今までに見たことのない、とんでもないアニメを見せてもらったという感激で、思わず鳥肌が立ちました。間違いなく高畑勲監督の代表作となるでしょう。3位の「清須会議」は役所広司の柴田勝家と、大泉洋の豊臣秀吉とのキャラクター合戦が実におもしろかった。原作、脚本、監督、全部やってくれた三谷幸喜監督って、やっぱりすごいです。

【外国映画】
1 ゼロ・グラビティ(アメリカ)
2 パッション(フランス・ドイツ)
3 スタ-・トレック~イントゥ・ダークネス~(アメリカ)
4 悪の法則(アメリカ)
5 フライト(アメリカ)
6 ヒッチコック(アメリカ)
7 オブリビオン(アメリカ)
8 ザ・フューチャー(ドイツ・アメリカ)
9 パシフィック・リム(アメリカ)
10 クラウド・アトラス(アメリカ)
 
 洋画は更に見た本数が少なく、薄っぺらい「ベストテン」になってしまいましたが、年末にⅠMAXで見た「ゼロ・グラビティ」が印象に残りました。あの無重力空間をどのような方法で表現したのでしょう。本当に驚きました。そして、やはり原題は「グラビティ」と納得させられるラストがよかったです。2位はブライアン・デ・パルマ監督5年ぶりの新作「パッション」。“デ・パルマ・マジック”といわれた独特の作風は今も健在。そのスリルとサスペンスの魔力に見事にはまってしまいました。3位の「スター・トレック/イントゥ・ダークネス」は悪役のベネディクト・カンバーバッチの存在感に圧倒されました。映画史に残るヒール(悪役)の誕生です。


<kenのベスト>
【日本映画】
1 舟を編む
2 東京家族
3 凶悪
4 みなさん、さようなら
5 共喰い
6 はじまりのみち
7 許されざる者
8 千年の愉楽
9 夏の終り
10 日本の悲劇
 
 「船を編む」がぶっちぎりの1位。辞書を編むという気の遠くなるような作業同様、実に丁寧に作られた秀作。「東京家族」は松竹の大先輩である小津安二郎の世界的傑作をリメイクするという功成り名を遂げた巨匠が手を出すには危険すぎる大冒険を敢えて実行した山田洋次に敬意を評して。「凶悪」「みなさん、さようなら」は話術に引き込まれ、「共喰い」「夏の終り」は文芸映画の収穫として推挙したい。「はじまりのみち」は、いつも弱き者、女々しき者に寄り添う木下恵介が好きだ。イーストウッドの西部劇を北海道の開拓時代の復讐劇に置き換えアイヌ差別を絡ませた「許されざる者」は李相日の重厚な演出がみごと。晩年に至るほど若き日の血がたぎるように過激さが復活した若松孝二。小林政広の「日本の悲劇」はモノクロ画面と極端に限定したカメラ位置という制約の中で少子高齢化の老人問題を鮮やかに抉り出した。

【外国映画】
1 ゼロ・グラビティ(アメリカ)
2 ゼロ・ダーク・サーティ(アメリカ)
3 欲望のバージニア(アメリカ)
4 ハンナ・アーレント(ドイツ・ルクセンブルグ・フランス)
5 キャプテン・フィリップス(アメリカ)
6 L.A.ギャングストーリー(アメリカ)
7 悪いやつら(韓国)
8 危険なプロット(フランス)
9 熱波(ポルトガル・ドイツ・フランス・ブラジル)
10 プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命(アメリカ)
 
 「ゼロ・グラビティ」には驚かされた。恥ずかしながら3Dを初めて見たが、まさに3Dでしか味わえない迫真性がここにある。ビン・ラディン暗殺場面の迫力がみごとな「ゼロ・ダーク・サーティ」、同じくドキュメンタリ・タッチが冴え渡る「キャプテン・フィリップス」。キザでケレンミたっぷりに物語るギャング映画「欲望のバージニア」「L.A.ギャングストーリー」にニンマリ。「ハンナ・アーレント」では、小役人然としたアイヒマンがイスラエルの法廷で「ユダヤ人をアウシュヴィッツに輸送する承認書には機械的に判を押していただけだ」と弁解するニュースフィルムが挿入され、収容所経験のある哲学者アーレント女史がそれを肯定しながら思考を停止した人間の罪を問う。「危険なプロット」はスランプに陥って久しいフランソワ・オゾンが復活したのが嬉しい。「悪いやつら」の話術の妙、「熱波」のエキゾチズム、「プレイス・イン・ザ・パインズ」の因果は巡る糸車。みんなおもしろかった。あと「バーニー」「ザ・コール」「声をかくす人」も入れたかった。

2013年 上半期の総括~ベスト5

2013年07月21日 | BEST
 さて、2013年も後半に入り、HIROさんの提案で上半期のベスト5を批評欄執筆者3名で選出することになりました。

久さんのベスト5
1 東ベルリンからきた女(ドイツ)
2 天使の分け前(イギリス・フランス・ベルギー・イタリア)
3 偽りなき者(デンマーク)
4 スタンリーのお弁当箱(インド)
5 The Door(ハンガリー)

HIROさんのベスト5
(日本映画)
1・舟を編む
2・藁の楯
3・東京家族
4・映画クレヨンしんちゃん バカうま!B級グルメサバイバル
5・だいじょうぶ3組
(外国映画)
1・ホビット 思いがけない冒険
2・007スカイフォール
3・フライト
4・レ・ミゼラブル
5・ヒッチコック

kenのベスト5
(日本映画)
1・舟を編む
2・東京家族
3・みなさん、さようなら
4・はじまりのみち
5・千年の愉楽
(外国映画)
1・ゼロ・ダーク・サーティ
2・L.A.ギャングストーリー
3・007スカイフォール
4・欲望のバージア
5・レ・ミゼラブル