チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

<論考>防衛局は、辺野古の工事をいったん停止し、大浦湾の活断層と軟弱地盤問題の全容と対応策を説明せよ!(更新版)

2018年03月25日 | 沖縄日記・辺野古

1.活断層の問題について

  辺野古新基地建設事業が進められている名護市大浦湾に、「活断層」が存在する可能性があることが多くの専門家から指摘されている。

 防衛庁(当時)が、普天間代替施設に関する協議会(2002年)に提出した「推定地層断面図」には、大浦湾海底部の50m以上の落込みを、「断層によると考えられる落込み」と記載されていた。加藤祐三琉球大学名誉教授は「この落込みは間違いなく活断層」と指摘されており、立石雅昭新潟大学名誉教授も「紛れもなく活断層である」と断言されている(いずれも、本年2月14日の「活断層シンポジウム」)。

 名護市東部の陸上部には辺野古断層と楚久断層が走っているが、『名護・やんばるの地質』(名護博物館)では、これらの断層を「活構造」に分類しており、活断層研究会の『新編 日本の活断層』(東京大学出版会編)では、これらの断層を「陸上活断層---活断層の疑いのあるリニアメント(確実度Ⅲ)」と記載している。これらの断層の延長上の大浦湾に防衛庁が示した落ち込み部分が重なっている。上記の学者らは、大浦湾の落込みも活断層だと言われているのだ。

 政府はこうした指摘に対して、「既存の文献によれば、辺野古沿岸域における活断層の存在を示す記載はないことから、---活断層が存在するとは認識していない。このため、辺野古沿岸域における海底地盤の安全性については、問題ないものと認識している」と弁明するだけである(2017年11月24日、糸数慶子参議院議員の質問主意書に対する政府答弁書等)。その後政府は、根拠とした2つの「既存文献」を明らかにしたが、何故か、前述の2つの文献は含まれていない。

 政府は長く、ボーリング調査の結果公表を拒否し続けてきたが、高まる批判に、本年3月上旬、2014年度~2015年度に実施した2件の海上ボーリング調査の報告書をやっと公表した。その報告書では、「(これらの2つの断層は)活断層と断定されてはいないが、その疑いのある線構造と分類されている」と記載されていた。政府は2年前からこれらの断層が活断層の疑いがあると認識していたことが分かる。

 また、政府は上記答弁書をまとめるにあたって地質学の専門家の意見を聞いていないことも明らかになった(2018年3月20日、糸数慶子参議院議員の質問主意書に対する政府答弁書)。活断層の問題を調査データーに基づいて科学的に究明しようとする姿勢はなく、隠蔽に必死である。

 活断層の上に、大量の弾薬や化学物質を扱う巨大な軍事施設を建設できないことはいうまでもない。直下地震や津波が発生すれば、その被害や環境破壊は想像を絶するものとなる。辺野古新基地建設の立地条件そのものが根底から問われているのだ。政府はこの問題について、調査結果をもとに具体的に説明する責務を負っている。

 

2.大浦湾海底部の厚さ40mのマヨネーズのような軟弱地盤について

 さらに、3月上旬に公開された2件の海上ボーリング調査の報告書では、活断層の問題以外にもきわめて深刻な問題が明らかになった。大浦湾最深部のケーソン護岸の基礎地盤が、「当初想定されていないような」、「非常に緩い、柔らかい」軟弱地盤であるというのである。

 たとえば、C-1護岸予定地のB-28地点では、水深30mの海底部が厚さ40mにわたって地盤の支持力を示すN値がほぼゼロであったという。N値とは、ボーリング調査の孔にサンプラー(試験杭)を置き、重りを落としてサンプラーが30cm食い込むための打撃数である。大きいほど地盤が硬く支持力があることとなり、大型構造物の基礎地盤とするには、N値は50以上が必要である。ところがこの地点では、N値がゼロというから、サンプラーと重りをセットしただけでズブズブと沈んでしまっているのである。日本大学の鎌尾准教授(地盤工学)は、「マヨネーズ並の柔らかさ」の軟弱地盤と言われている(沖縄タイムス 2018.3.21)。

 さらに他の4地点でも、N値がゼロという試験結果が確認されている。ケーソン護岸基礎の広範な一帯にこうした軟弱地盤が拡がっているのである。

 先の2件の報告書の結論は、「特に当該地においては、構造物の安定、地盤の圧密沈下、地盤の液状化の詳細検討を行うことが必須」とされている。しかし、厚さ40mものマヨネーズのような軟弱地盤の上に、大量の捨石を投下し、巨大なケーソン護岸を設置することは、きわめて大規模な地盤改良工事を行わない限り不可能である。実施するとしても、途方もない費用と時間、そして周辺にきわめて深刻な環境破壊を与える。 

(注)なお、この軟弱地盤の存在については、本年3月22日の衆議院安全保障委員会でも問題となった。赤嶺政賢衆議院議員の質問に対して、防衛省担当者は、「地盤の強度につきましては、ご指摘のN値といった結果だけではなく、室内試験を含みます現在実施中のボーリング調査の結果も踏まえまして総合的に判断するものです。ご指摘のボーリング調査の結果だけでは、地盤の強度等を正しく判断できる段階にはないと考えてございます」と逃げている。そして、「現時点で県に変更申請する考えはない」とも言い切っている(沖縄タイムス 2018.3.21)。

 しかし防衛省は従来から、2014年度~2015年度に実施した2件の海上ボーリング調査は、「護岸の設計のため」のものと説明してきた。当然、各種の室内試験なども行われている。その後、本年3月末まで実施しているボーリング調査は、「施工計画の策定のため」や「埋立区域及び護岸以外の構造物の設計のため」のものだと説明している。「護岸の設計のため」の調査はすでに終っているのであり、防衛省担当者の上記の答弁は全く事実に反する。

 

3 防衛局への要請事項

 大浦湾の活断層の問題、そして軟弱地盤の問題は、すでに2年前には指摘されていたものである。しかし防衛局は、市民らから指摘を受けるまではこれらの問題を隠蔽し続けてきた。

 防衛局に次の2点を求めたい。

 

①大浦湾に活断層が存在するとすれば、新基地の立地条件そのものが問い直されなければならない。防衛局があくまでも活断層の存在を否定するのであれば、今までの海上ボーリング調査の全てのデーターを公開し、専門家の意見を聞いた上で科学的に説明するべきである。 

②ケーソン護岸が設置される大浦湾海底部に厚さ40mものN値ゼロという軟弱地盤が広がっていることが判明した。ケーソン護岸の工法変更や基礎地盤の改良工事等が必要となり、公有水面法に基づき知事への設計概要変更申請を行わなければならない。その時点で知事が承認しなければ工事は頓挫する。

 防衛局は現在、辺野古側での護岸工事を進め、6月にも埋立工事(土砂投入)に入ろうとしているが、大浦湾の工事は活断層や厚さ40mもの軟弱地盤の存在等、当初計画どおりに工事を進めることは不可能である。しかし防衛局は、おそらく秋の知事選まではこうした問題を全て隠蔽し、なんとか翁長知事を倒してから、「実は設計概要変更申請が必要でした」と言い出すのであろう。

 大浦湾の工事の目処が全く立っていないことから、防衛局は辺野古側の工事をいったん停止し、大浦湾の活断層、軟弱地盤の全容と対応策を明らかにし、県と早急に協議するべきである。                        

 

 

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