チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

2月6日、防衛省交渉の報告(第2回)--- 大浦湾で始まった工事の問題点等について(環境保全対策の事前協議、石材の洗浄、辺野古側への土砂仮置工事、海砂問題、生物多様性国家戦略問題等)

2024年02月09日 | 沖縄・南部土砂問題//遺骨問題 

 2月6日、遺骨収集ボランティア・ガマフヤーの防衛省交渉では、遺骨混りの沖縄南部地区の土砂調達問題だけではなく、現在、大浦湾で始まっている海上ヤード工事等の問題点についても追及した。

 昨日のブログでは、南部の土砂問題についての質問・回答についてまとめたが、ここでは石材の洗浄等、工事の問題点についての交渉経過を報告する。

 なお、2月6日の防衛省交渉でも問題とした、実施設計や環境保全対策の事前協議について、沖縄県は7日、防衛局に対して91件の質問を送付した。協議が調うまでの間は工事を中止するよう改めて求めているが、防衛局は全く無視したまま工事を続けている。

 県の質問は、地盤改良、地震動の設定、岩ズリの性状、環境保全対策等、多方面にわたったもののようだが、県は質問事項について公開しようとしない。辺野古新基地建設事業が重大な局面を迎えている今、県民と一体となった対応が必要だが、こうした県の姿勢は残念でならない。

 

           (海上ヤード工事のための石材積替えで舞い上がる白塵 2024.1.11  Nさん撮影)

        (2024.2.8  RBCテレビニュースより)

 

第2.大浦湾で始まった工事の問題点について

1.海上ヤードについて実施設計の事前協議が行われておらず、埋立承認の際の留意事項違反であること

1-1.「海上ヤード工は事前工事の対象外」とした根拠は?

 辺野古新基地建設事業の埋立承認にあたっては、「工事の実施設計について事前に県と協議を行うこと」という留意事項が付されている。

 沖縄防衛局は本年1月10日から、大浦湾でケーソンの仮置場となる海上ヤード造成のための捨石投入を開始した。しかし海上ヤード造成にあたって防衛局は沖縄県との実施設計の事前協議を行っていない。

 林官房長官は1月10日の記者会見で、「今般着手する大浦湾側の海上ヤードの整備は本協議(実施設計の事前協議)の対象外と認識している」と述べた。「海上ヤード造成は実施設計の事前協議の対象外とする根拠」を説明されたい。

 

<防衛省文書回答>

1.現在、沖縄防衛局において、埋立承認に付された留意事項に基づき、沖縄県と実施設計協議等を行っており、引き続き適切に対応していくものと承知しています。

2.その上で、本協議は、埋立承認願書等の「設計の概要」に記載のある護岸等が対象であり、「設計の概要」に記載のない海上ヤードは本協議の対象外であると認識しています。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 「留意事項で定めている実施設計の協議は、埋立承認願書等の「設計の概要」に記載のある護岸等が対象」に限ると主張する根拠について説明していない。 

 

1-2.海上ヤードは仮設構造物ではなく、そのまま存置される可能性が強いこと

 「防衛省は、海上ヤードが県との事前協議の対象外とする理由について、海上ヤードは基本的に撤去する予定であることを挙げた」(2024.1.11 琉球新報)とも報道されている。しかし、環境保全図書では、「撤去するのか生物の生息場として存置するのかを改めて判断する」とされている。

 海上ヤード工は、大量の石材を2年半にもわたって投下する大規模なものであり、撤去には大変な手間や工費を要し、石材の処分問題等もある。

 海上ヤードは存置される可能性が強く、仮設構造物だとして協議の対象外とするのは失当ではないか?

 

<防衛省文書回答>

1.海上ヤードについては、基本的に撤去することとしています。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 環境保全図書では海上ヤードについて、「基本的に撤去することにしているものの、撤去するかは生物の生息場として存置するのかを改めて判断する」としている。撤去するかどうかは、事業後に判断するのであり、「基本的に撤去する」とだけいうのは問題ではないか。

 2年半にもわたって投下した大量の石材を撤去するのは物理的・費用的にも困難。

 

1-3.海上ヤード工を、「環境保全対策の協議」の対象外とする理由は? 沖縄県の指導に従うべきではないか?

 防衛局が、「実施設計に基づき環境保全対策等について県と協議を行うこと」という留意事項を無視して、海上ヤード工に着手した理由は何故か?

 沖縄県は1月23日、沖縄防衛局に対して、「留意事項の環境保全対策等に係る協議については、埋立本体工事全体の各環境保全対策等について検討を行うものでありますので、海上ヤードの工事に係る環境保全対策等についても、協議の対象であります。留意事項に基づく協議が調うまでは、海上ヤードの工事も中止するよう求めます」との文書を送っている。沖縄県の指導に従うべきでないか?

 また、木原防衛大臣は1月26日の記者会見で、「(事前協議は)工事の実施設計に基づいて環境保全対策などについて協議するもの」として、海上ヤード工事は環境保全対策の協議対象にもならない」として、「工事は続ける」と主張した(2024.1.27 琉球新報)。しかし、海上ヤード工事は2年半にもわたって約9万㎥もの大量の石材を大浦湾に投下するという大工事で、環境への影響はきわめて大きい。県と環境保全対策等について協議するのは当然ではないか?

 

<防衛省文書回答>

1.現在、沖縄防衛局が行っている「実施設計協議」及び「環境保全対策等協議」については、平成25年の埋立承認に付された「留意事項」に基づき、昨年9月から沖縄県との間で行っております。

2.このうち、環境保全対策等協議については、留意事項の記載を踏まえれば、実施設計協議の対象である工事の実施設計に基づき環境保全対策等について詳細検討し協議を行うものであると認識しております。海上ヤードについては、実施設計協議の対象外であることから、同様に、環境保全対策等協議の対象外であると認識しているところです。

3.いずれにせよ、海上ヤード工事に係る環境保全対策等については、部外の専門家からなる環境監視等委員会の指導・助言を踏まえつつ、環境保全図書に基づき、適切に実施しており、引き続き、適切に対応してまいります。

 

<当日の質疑の経過・問題点> 

 海上ヤード工は2年半も石材を投下し続ける大規模なものであり、環境への影響は大きい。形式論ではなく、環境への影響という面から判断すべきではないか。

 

2.防衛局が昨年9月に提出したという実施設計の事前協議書について

2-1.大浦湾の全体工事の実施設計の事前協議が終了するまで工事着手は許されない

 防衛局は昨年9月、大浦湾の護岸工について実施設計の事前協議書を提出したというが、設計変更が承認されていない時点での事前協議などあり得ない。また、一部の護岸工の事前協議では不十分であり、大浦湾の全体工事の事前協議が終了するまで工事着手は許されないのではないか?

 

<防衛省文書回答>

1.現在、沖縄防衛局において、埋立承認に付された留意事項に基づき、沖縄県と実施設計協議等を行っており、引き続き適切に対応していくものと承知しています。

2.その上で、本協議は、埋立承認願書等の「設計の概要」に記載のある護岸等が対象であり、「設計の概要」に記載のない海上ヤードについては、本協議の対象外であると認識しています。 

 

3.海に投下する石材が洗浄されておらず、環境保全図書の内容に反していること

3-1.現在、海上ヤード工で投下している基礎捨石の事前の洗浄状況について  

 下の写真は、1月11日の海上ヤード工の基礎捨石投下状況である。捨石の積替えの際、凄まじい白塵が舞い上がっている。

 連日、このような実態が報道されており、投下している捨石は事前に洗浄されていない可能性が強い。 

 この問題につき、沖縄防衛局長は本年1月22日、オール沖縄会議、沖縄選出野党国会議員団の要請行動の際、「海上ヤードの整備に用いる石材は、環境保全図書に基づいて、採石場において洗浄している」、「洗浄時間は、ダンプ1台毎に150秒間」と回答した。

 しかし、ダンプ毎に150秒間も洗浄しておればこのように白塵が舞い上がることはない。また、本部塩川港に入ってくるダンプトラックに積まれた石材は乾いており、とても洗浄されているとは思えない。

 洗浄しているというのなら、その状況を示す写真や記録等を提出されたい。

 

<防衛省文書回答>

1.海上ヤードの整備に用いる石材については、埋立変更承認申請書の添付文書である環境保全図書に基づき、採石場において洗浄されたものを使用していると承知しています。

2.具体的には、採石場において、洗浄設備を用いて所定の時間(150秒)石材の洗浄を行っているものと承知しています。 

 

<当日の質疑の経過・問題点> 

 防衛省交渉の会場のスクリーンには、白塵が舞い上がっている写真が写された。「150秒間、洗浄しているというのなら、何故、このような白塵が舞い上がるのか」と追及しても、防衛省は、「洗浄しています」というだけだった。 

 防衛局は実際の洗浄の状況を確認をしているのか、その関係資料・写真等を提出されたいと求めた。

 

3-2.K5~K7護岸造成のための石材はシュワブ内の現場で2次洗浄しているか?

 1月中旬以降、キャンプシュワブの工事用ゲートからは、捨石が積んだダンプトラックが入っている。

 これらの捨石はK5~K7護岸造成のためのものと思われるが、現場に仮置きしているので、2次洗浄を行っているか?

 

<防衛省文書回答>

1.海中に投入する基礎捨石については、環境保全図書に基づき、採石場において洗浄されたものを使用していると承知しています。 

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 K5~K7護岸の基礎捨石は2次洗浄しているのかという質問に答えていない。

 

3-3.今回契約された工事の特記仕様書に石材の洗浄について記載していないのは何故か?

 以前の「シュワブ(H26)傾斜提護岸新設工事」等の特記仕様書では、「石材の洗浄」が明記されていたが、今回の海上ヤード工の「シュワブ(R5)C1護岸新設等工事」の特記仕様書ではその記載がないのは何故か?

 

<防衛省文書回答>

1.御指摘の工事の特記仕様書において、石材の洗浄について記載しているものと承知しています。

 

<当日の質疑の経過・問題点> 

 「シュワブ(H26)傾斜提護岸新設工事」等の特記仕様書では、「石材は洗浄したものを使用する」と明記されていたが(P12)、今回の海上ヤード工の「シュワブ(R5)C1護岸新設等工事」の特記仕様書には石材の洗浄について記載していない。防衛省の上記回答は事実に反する。

 

4.辺野古側での土砂仮置き工事について

4-1.現在、施工している本部塩川港・安和桟橋から大浦湾への土砂搬送工事は何か?
 「シュワブ(R4)埋立追加工事(1~3工区)」の工期は、当初、昨年6月末までだったが、防衛局はその後も、8月末、11月末、そして本年2月末まで延期し、土砂搬送を続けてきた。昨年9月末時点で318万㎥(辺野古側埋立の必要土量は319万㎥)の土砂投入を終えたが、その後は、「大浦湾埋立土砂を仮置きする『シュワブ(R5)造成工事(1~2工区)』(昨年8月3日契約)ではなく、 『シュワブ(R4)埋立追加工事(1~3工区)』の赤土流出防止対策のための土砂搬送」と主張している。

 現在も土砂搬送を続けているが、現在の工事は、 「シュワブ(R4)埋立追加工事(1~3工区)」の続きか、あるいは「シュワブ(R5)造成工事(1~2工区)」に入ったのかを説明されたい。

 

<防衛省文書回答>

1.現在、キャンプ・シュワブで行っている土砂の搬入については、「シュワブ(R4)埋立追加工事(1~3工区)」において実施しているものではありません。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 防衛省は、「1月16日から、『シュワブ(R5)造成工事(1~2工区)』に着手した」と認めたが、実際には昨年9月から着手している。

 

4-2.埋立土砂の細粒分含有率について

 「シュワブ(R5)造成工事(1~2工区)」の大浦湾埋立のための仮置き土砂は、外周護岸を完全に閉鎖する前の先行埋立として、埋立区域③―5(非閉鎖水域)の埋立に使用される。非閉鎖水域での埋立であるから、環境保全図書の定めどおり、「細粒分含有率:概ね10%前後」とすべきではないのか?


<防衛省文書回答>

1.閉鎖的な水域とならない埋立区域において使用する岩ズリの細粒分含有率は、概ね10パーセント前後とする予定であると承知しています。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 防衛省はこの日の交渉で、「仮置き土は、埋立区域③ー5の埋立に使用する」と認めた。しかし、「③ー5地区は外周護岸を閉鎖する前に先行埋立を行うが、仮置き土は、外周護岸が閉鎖された後に投入するので、細粒分含有率40%で問題はない」と、とんでもない回答をした。

 ③ー5地区が閉鎖され、先行盛土が完了するのは5年次の後半である。5年先の工事のために、今から土砂を仮置きしているというのか。

 

5.その他

5-1,M8級の巨大地震の想定について

 政府の地震調査委員会の「南西諸島でM8級の巨大地震のおそれ」という長期評価(2022年3月25日)を受けて、耐震設計の見直しが必要となったのではないか?  

 

<防衛省文書回答>

1.文部科学省の地震調査研究推進本部が公表した内容については承知しています。

2.普天間飛行場代替施設の護岸等については、使用者である米側と調整した上で、施設の用途等を踏まえ、国土交通省港湾局が監修する「港湾の施設の技術上の基準・同解説」に準拠して設計を行い、技術検討会において有識者に、所要の安定性を確保していることをご確認いただいており、設計の見直しが必要であるとは考えていません。

 

<当日の質疑の経過・問題点> 

 政府の地震調査委員会が「南西諸島周辺でM8級の巨大地震のおそれ」という長期評価を出したのは2022年3月25日であり、設計変更申請よりも後のことである。「米軍との調整」、「技術検討会での検討」は、この長期評価よりも前のことではないのか。 

 南西諸島周辺で M8級の巨大地震が来襲した場合でも護岸の安定性は確保できるというのか?

 

5-2.津波の浸水想定について

 沖縄県の「津波浸水想定」(2015.3)では、辺野古崎周辺で最大遡上高 11.7mの津波が想定されている。しかし辺野古新基地の外周護岸の標高は8.1m、滑走路中央部でも標高10.0mにすぎない。

 しかもこの県の予想は、前述の政府の地震調査委員会の長期評価の前であり、M8級の巨大地震の際にはさらに深刻な津波被害が想定される。

 少なくとも新基地の標高を12m以上とするなど、設計の全面的な見直しが必要ではないか? 

 

<防衛省文書回答>

1.普天間飛行場代替施設の護岸等に係る設計を見直すことは考えておらず、現在得られている埋立承認に基づき、工事を進めていく考えです。

  

<当日の質疑の経過・問題点>

 県の想定によれば、津波の場合、辺野古新基地は全て水面下に埋没するが問題はないというのか。

 

5-3.海砂の調達問題

 辺野古新基地建設事業では、地盤改良工事や護岸の中詰材として394万㎥もの海砂が必要とされている。しかし、沖縄県の年間海砂採取量は81万㎥~140万㎥(2018年~2022年)程度に過ぎない。大量の海砂採取により、沖縄沿岸海域の環境は破壊され、水産資源にも大きな影響が危惧されるのではないか?

 この点について、防衛局は「沖縄県内の年間調達可能量は564万㎥」としているが(環境保全図書1-203)、その根拠を示されたい。

 

<防衛省文書回答>

1.本事業では、環境保全図書に基づき、沖縄防衛局において、海砂の供給元が海砂の採取による環境への影響に配慮していることを確認するなど、埋立土砂の調達に伴う環境への著しい影響がないように慎重に判断することとしています。

2.海砂の調達可能量については、資材に関するアンケート調査の結果に基づいて記載したものです。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 「防衛局において、海砂の供給元が海砂の採取による環境への影響に配慮していることを確認する」とは具体的にどのような方策を講じるのか説明せよ。

 過去5年ほどの沖縄の年間海砂採取量は81万㎥~140万㎥にすぎないのに、業者へのアンケート調査で、沖縄の年間海砂調達可能量が576万㎥とするのは不適切。そもそも、誰に対して、どのようなアンケート調査を行ったのか。

 年間採取量の3~5倍もの大量の海砂採取が、「環境への著しい影響」を与えることは当然ではないか。

 

5-4.「生物多様性国家戦略」の閣議決定は考慮されているか?

 辺野古・大浦湾の埋立は、2023.3に閣議決定された、「陸域、海域の30%以上を保護区として守る」という、「生物多様性国家戦略2023-2030」に抵触しないか?

<防衛省文書回答>

1.令和5年に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023―2030」において、「30by30」目標が記載されたことは承知しております。

2.他方、同戦略に基づく保護地域の拡張等の取組については、環境省において検討されていくものと承知しており、防衛省としてお答えする立場にありません。

3.いずれにせよ、防衛省としては、本事業の実施に当たり、引き続き、部外の専門家から構成される環境監視等委員会の指導・助言を踏まえつつ、環境保全に十分に配慮して工事を進めてまいります。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 辺野古・大浦湾の埋立について、防衛省が「生物多様性国家戦略」について回答したのは初めてであろう。

「同戦略に基づく保護地域の拡張等の取組については、環境省において検討されていくものと承知しており、防衛省としてお答えする立場にありません」という。

 しかし閣議決定された同戦略のロードマップ(2023.3.31)では、関係省庁についても、「保護地域の拡張等につとめるとともにOECMとしての整理を段階的に追加」とされている。「防衛省としてお答えする立場にありません」というのは、閣議決定に対する防衛省の責任を無視したものである。

 

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