チョイさんの沖縄日記

辺野古や高江の問題等に関する日々の備忘録
 

2月6日、防衛省交渉の報告(第1回) --- 南部地区からの遺骨混りの土砂調達の中止を! 人道上の問題だけではなく、南部の土砂(白石岩ズリ)は強度不足で材料としても使用できない!

2024年02月07日 | 沖縄・南部土砂問題//遺骨問題 

  2月6日(火)、衆議院議員会館で遺骨収集ボランティアガマフヤー・具志堅隆松さん主催の防衛省交渉が行われた。大雪が予報されていたため、当初の予定を急遽変更し、5日の早朝のフライトで羽田に向かった。

 午後から雪が深々と降り始め、辺り一面が白くなっていった。こんな光景の中を歩いたのは何年ぶりだろう。

 5日の夕刻、事前に出していた詳細な質問書に対する文書回答が届いたのでその検討作業に追われた。

 6日の防衛省交渉は、各地から来られた遺族の方々をはじめ、150名を超える人たちで会場は満員となった。10名を超える国会議員さんらも参加。3時間にも及んだ熱気にあふれたやり取りが続いたが、防衛局職員らは、遺族の方々の悲痛な訴えにもかかわらず、「繰り返しになりますが」と手元のメモを読み上げ続けるだけだった。

 交渉課題は、「第1.沖縄南部地区の遺骨混りの土砂調達問題」、「第2.大浦湾で始まった工事の問題点」、「巨大地震・津波への対応。海砂問題。生物多様性国家戦略の閣議決定違反」等に及んだ。

 まず、「第1.沖縄南部地区の遺骨混りの土砂調達問題」についての交渉内容を説明する(「第2」以降は後日)。

            (防衛省交渉。手前が防衛省職員)

(冒頭、「南部地区の土砂採取の中止を求める署名」約6万5千筆を提出)

 

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辺野古新基地建設事業に関する防衛省交渉(2024.2.6)  

質問と防衛省回答全文                 

                 沖縄戦遺骨収集ボランテア・ガマフヤー

 

 

第1.沖縄南部地区の遺骨混りの土砂調達問題

1.沖縄南部地区の土砂調達計画を撤回すること

1―1.沖縄防衛局の設計変更申請書では、辺野古新基地建設事業の埋立に約1,690万㎥の岩ズリが必要とされているが、沖縄南部地区(糸満市・八重瀬町)だけでその2倍近い約3,160万㎥の岩ズリの調達が可能としている。

 しかし沖縄南部地区の土砂には、先の大戦の戦没者の血が染みこみ、今も多くの遺骨が残されている。そのような土砂を基地建設のための埋立に使用することは戦没者への冒瀆であり、人道上も許されない。

 防衛局は「埋立に使用する土砂の調達先は、工事の実施段階で決まるものであり、現時点では確定していない」、「工事の実施段階で受注業者が決める」と繰り返しているが、沖縄南部地区は土砂調達の候補地から外すべきではないか? 

<防衛省文書回答>

1.沖縄県では、太平洋戦争末期に県民を巻き込んだ凄惨な地上戦が行われ、軍民あわせて20万人もの尊い生命が失われました。特に、本島南部一帯では、多くの住民の方々が犠牲になったものと認識しています。

2.その上で、今後新たに発注する工事の土砂の調達先は決まっておりませんが、このような歴史のある沖縄において、御遺骨の問題は真摯に受け止める必要があると認識しており、こうしたことも踏まえながら、事業を進めてまいります。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 具志堅さんや遺族の方々が最も追及されたのは、この問題である。「ご遺骨の問題を真摯に受け止める必要があると認識しているのであれば、何故、南部地区の遺骨混りの土砂は使用しないと言えないのか?」、「調達先はまだ決まっていませんと逃げるのではなく、調達候補地から外すべきだ」と懸命の訴えが続いたが、防衛省は、「調達先はまだ決まっていません」と言うだけだった。 

 

2.埋立土砂の調達地の決定は知事の承認事項であること

2-1.「候補地」ではなく、「実際の採取地」を示すこと

 設計変更申請書に添付された「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」では、確定した採取場所ではなく、「想定される土砂採取場所」しか記載されていない。

 公有水面埋立法施行規則第3条では、埋立願書に「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」を添付するとされており、その「記載要領」として、「山土 ○○市○○町○○地区」等とされている(『公有水面埋立実務便覧』P380)。

 さらに、埋立承認申請の「審査事項」では、「土砂等の採取場所として⑴の工事に対応するすべての場所が記載されているか」とされている(同P396)。

 防衛局は、設計変更申請の時点で、「採取候補地」ではなく、「実際の採取地」を示すべきだったのではないか?

 

<防衛省文書回答>

1.沖縄防衛局が沖縄県へ提出した埋立変更承認申請書については、「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」も含め、関係法令に基づき、必要な事項が記載されていると承知しています。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 関係法令は、具体的な採取場所を記載するようになっている。「関係法令に基づき、必要な事項が記載されている」とするのは通用しない。

 

 

2-2.実際の採取地が決まった時点で知事の承認を受けること

埋立承認の際(2013年12月27日)の留意事項でも、「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取場所を記載した図書を変更して実施する場合は、知事の承認を受けること」とされている。

 この留意事項からも、土砂の採取場所が決まった時点で知事の承認が必要ということになるのではないか? 

 今後、土砂の採取場所が決まった時点で、県に対してどのような手続きをとるのか?

 

<防衛省文書回答>

1.ご指摘の点について、改めて承認を得る必要があるとは考えておりません。 

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 防衛省は、「調達地は未だ決まっていない」と逃げながら、「決まっても知事の承認を得る必要はない」と開き直った。追及すると、「県と協議する必要もない」と言い切った。後は、防衛省が好き勝手にするというのだ。

 

2-3.「受注業者が採取地を決定する」のではない

防衛省は、「土砂採取地は工事の実施段階で受注業者が決める」と繰り返している。しかし、設計変更申請書の「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取場所を記載した図書」では、「調達にあたっては適正な調査を経て採取場所を決定する」(P7)とされている。主語はあくまでも防衛局であり、受注業者ではない。「受注業者が決定する」という説明は撤回すべきではないか?

 

 <防衛省文書回答>

1.一般に、工事で使用する材料については、仕様書で示された規格等を踏まえ、まずは、受注者において選定することとなりますが、沖縄防衛局においても規格等に適合しているか確認を行うものと承知しています。 

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 この回答では、やはり「調達地は受任者が選定」し、防衛局は、材料の規格(最大粒径、細粒分含有率等)の確認を行う」だけである。遺骨混りの土砂について「真摯に対応する」というのは、全くの虚偽説明である。

 

3.立の岩ズリは「黒石岩ズリ」と指定されているが、南部地区の岩ズリは「白石岩ズリ」であり使用できない

 

3-1.そもそも南部地区の岩ズリは材料としての規格面でも使用できない

 沖縄島の石灰岩には、北部地区の「黒石」(古生層石灰岩)と南部地区の「白石」(琉球石灰岩)がある。南部地区の「白石」は北部地区の「黒石」に比べて、強度が弱く、比重も小さくて吸水率が高い。

 今までの辺野古側の埋立工事(シュワブ(H29)埋立工事、シュワブ(R元)追加埋立工事、シュワブ(R3)追加埋立工事、シュワブ(R4)追加埋立工事)、そして昨年8月契約の造成工事(シュワブ(R5)造成工事)のいずれの工事契約でも、特記仕様書で埋立材は「黒石岩ズリ」と指定されている。また南部地区からきわめて近い、那覇空港第2滑走路増設事業の埋立工事でも、埋立材の岩ズリは北部の本部地区から調達され、南部の「白石岩ズリ」は使用していない(土砂に関する図書 10-5)。

 そもそも、南部地区の「白石岩ズリ」は辺野古の埋立材として使用できないのだ。

 

<防衛省文書回答>

1.一般に、工事で使用する材料については、仕様書で示された規格等を踏まえ、まずは、受注者において選定することとなりますが、沖縄防衛局においても規格等に適合しているか確認を行うものと承知しています。

2.埋立てに用いる土砂についても、同様に、埋立てに用いる材料として必要な規格等に適合しているか確認を行うものと承知しています。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 当日の質疑で、防衛省は、「沖縄の石灰岩には強度の固い黒石と、弱い白石がある。南部地区の石灰岩は白石と言われている」と認めた。

 岩ズリについては、「規格に適合しているか」だけを確認するとしているが、今までの辺野古側の埋立工事(シュワブ(H29)埋立工事、シュワブ(R元)追加埋立工事、シュワブ(R3)追加埋立工事、シュワブ(R4)追加埋立工事)、そして昨年8月契約の造成工事(シュワブ(R5)造成工事)のいずれの工事契約でも、特記仕様書で埋立材は「黒石岩ズリ」と指定してきた。

 岩ズリについても、南部地区の白石岩ズリは使用できないのではないか。

  

3-2.護岸材・基礎材の石材も「黒石」

 南部地区の「白石」は、護岸材や基礎材としても強度不足で使用することはできない。

 辺野古新基地建設事業にあたって、防衛局の普天間飛行場代替施設建設事業資材調達検討委員会が、2010年に「普天間飛行場代替施設建設事業に係る資材調達に関する報告書」をまとめている。

 この報告書では、事業に使用する資材の仕様として、「JIS A 5006」の「硬石の品質を有するもの」とされている(9-13)。これは圧縮強度が4,900N/㎠ 以上必要だが、南部地区の白石は、4,000N/㎠ 程度と弱く、JISの規格に達しない。

 防衛局が施工してきた「シュワブ(H26)傾斜提護岸新設等工事」の特記仕様書でも、基礎捨石、砕石は「黒石」と指定されている。

 南部地区の石材は、護岸材や基礎材としての捨石や砕石として使用できないのではないか?

 

<防衛省文書回答>

1.護岸等に用いられる基礎捨石等については、「JIS A 5006」を満たすものが使用されるものと承知しています。 

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 防衛省は、護岸等に用いられる基礎捨石等は、南部地区の石灰岩は使用できないことを認めたことになる。これはこの日の交渉の重要な確認事項である。

 

3-3.残土が混入するおそれ

 南部地区の鉱山には残土が持ち込まれているところも多く、鉱山周辺にも多くの残土処分地がある。

 南部地区からの土砂調達にあたって、こうした残土が辺野古に持ち込まれるおそれはないか?

 

<防衛省文書回答>

1.問1-1でお答えしたとおり、今後新たに発注する工事の土砂の調達先は決まっておりません。

2.その上で、埋立てに用いる土砂についても、埋立てに用いる材料として必要な規格等に適合しているか確認を行うものと承知しています。

                              

<当日の質疑の経過・問題点>

 南部地区からは3160万㎥もの大量の土砂調達が可能というが、南部地区の鉱山やその周辺には残土処分地もあり、それらの土砂が辺野古に持ち込まれる可能性がある。

 

 

 4.南部地区からの土砂搬送による環境への影響

4-1.南部地区からの土砂搬送ルートは何処の港を想定しているのか?

 沖縄県は、今回の設計変更申請の審査の中で、「岩ズリの調達可能量のうち約7割が南部地区(糸満市・八重瀬町)となっており、搬出経路に那覇の港及び中城港が示されている」として、2回にわたって防衛局に質問した。

 防衛局が示した南部地区からの土砂搬送の東側ルートでは搬出港は中城湾港であるが、西側ルートは那覇周辺の何処の港を想定しているのか?

 前述のように、埋立承認申請に対する審査基準では、「埋立地への土砂の搬入経路が表示されているか」とされている(「公有水面埋立実務便覧」P396)。防衛局は土砂の搬出港を明らかにしなければならないのではないか。

 

<防衛省文書回答>

1.問1-1でお答えしたとおり、今後新たに発注する工事の土砂の調達先は決まっておりません。

2.また、沖縄防衛局が沖縄県へ提出した埋立変更承認申請書については、「埋立に用いる土砂等の採取場所及び採取量を記載した図書」も含め、関係法令に基づき、必要な事項が記載されていると承知しています

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 設計変更申請書の「土砂に関する図書」で、南部地区から那覇市付近の港湾から搬出すると図示したのだから、何処の港湾を想定したのかを明らかにすべきではないか。

 

4-2.南部地区から土砂搬送の環境問題 -- 業者任せにすることはできない

 土砂調達量の大部分が南部地区から搬出された場合、搬出港付近や搬出元における生活環境の悪化」、「平和祈念公園や沖縄戦跡国定公園への観光客等への影響」等について懸念を示し、防衛局の見解を求めた。

 しかし防衛局の回答は、「環境影響の予測は事業実施区域とその周辺」に限定し、「南部地区の採石場から調達される場合は、採石業者において粉じん対策や道路清掃、運搬時間帯の調整が適切に実施されるものと考えています」という無責任なものであった。

 土砂運搬車両の公害対策を業者に押しつけているのは何故か? 防衛局としてどう対応するのか?

 

<防衛省文書回答>

1.問1-1でお答えしたとおり、今後新たに発注する工事の土砂の調達先は決まっておりませんが、一般的に、購入する資材の生産等に際して必要な環境対策は、各調達先の事業者において講じられているものと認識しています。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 環境対策が事業者の責任とすることは、公共事業の発注者としてあり得ない。  

 

4-3.南部地区の鉱山の巨大な採掘跡の埋戻し土はどうするのか?

 沖縄北部地区の鉱山・採石場は山を削り取っているが、南部地区はほぼ平坦な地形が続いているため、採掘跡は巨大な穴となってそのまま放置されているところが多い。

 また、辺野古新基地建設事業で南部地区から辺野古埋立に3,160万㎥もの土砂調達が可能としているが、それによりさらに多くの採掘跡の穴が生じる。南部地区で今後発生する土砂は、辺野古埋立に持ち出すのではなく、こうした採掘跡の巨大な穴の埋戻しに使用すべきではないか?

 南部地区から大量の土砂を採取した場合、その採取跡の埋戻しをどうするのかを明らかにされたい。 

 南部地区の土砂は、現在の巨大な採掘跡の埋戻し、そして今後、大量の土砂採掘により生じる採掘跡の埋戻しに充てるべきであり、辺野古に持ち出す余裕などないのではないか?

 

<防衛省文書回答>

1.問1-1でお答えしたとおり、今後新たに発注する工事の土砂の調達先は決まっておりません。

2.また、一般論として申し上げれば、個々の採石場における埋め戻しなどについては、採石事業者において法令等に基づき適切に対応されるものと認識しています。

 

<当日の質疑の経過・問題点>

 「埋戻しは各採石事業者の責任」とすることはできない。業者が、本来、埋戻しに必要な土砂を辺野古に出そうとしても、防衛局はそのような土砂を購入してはならない。

 また、辺野古に大量の土砂を搬出した場合、それと同量の埋戻し土が必要なるのは当然である。南部地区の各地に、さらに無数の採掘跡の巨大な穴が拡がるのではないか?

 

 

 

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